1.早期教育
(3歳未満)

静岡県立静岡聾学校

竹下 美也子

本分科会では,12の口頭発表を,「視覚コミュニケーション」「早期教育プログラム」「保護者支援」「アジアにおける早期教育」の4つに分けて,発表と協議が行われた。

「視覚コミュニケーション」では,ベルギーや台湾,国内ではゆうなぎ園から,視覚−触覚による早期介入,ベビーサイン,手話などが,親子のコミュニケーションにおいて有効であると報告された。ベルギーでは早期発見に伴い生後6〜7カ月で人工内耳埋込術を受けるケースも多く,台湾では手話等についてあまり理解されていないのが現状のようである。様々な選択肢があることを両親に説明する必要性,視覚コミュニケーションの留意点(関心を誘い視線を捉えてサインを出さないと断片的理解になる)等が話題に上った。

「早期教育プログラム」では,ベトナムの教育センターより,家庭訪問をし,家庭内に子どもが落ち着いてセッションをするワークコーナーを作る等のアドバイスを行っているという実践報告があった。

「保護者支援」では,国内の聾学校3校より,難聴疑似体験を用いた障害理解と受容に関する支援(附属校),コーチング理論を用いた支援(久留米校),個別指導での具体的助言(日聾)の各テーマでの発表があった。その中で,「父親に聞こえない子の気持ち(予告なしに出て行かれることの不安等)を想像してもらう」「保護者の中に子どもとの関わり方の答えや能力は既に備わっていると捉えて気づきを促し主体的取り組みを支援する」「個別指導や家庭訪問指導で母親の良い点を3つ,課題を1つ挙げるという具合に,より具体的にイメージでき生活に生かせる助言をする」など,より効果的な支援をめざした取り組みが紹介された。

「アジアにおける早期教育」では,タイの農村地域等での予防や早期介入への取り組み,ベトナムろう教育との交流という視点からの報告があった。また,静岡校からは,医療と保健福祉と教育の連携について,1歳半健診の聴覚2次検診に耳鼻科医やST,聾学校教員が参加し,「新生児聴覚スクリーニング検査と事後対応マニュアル」が作成される中,地域的な広がりやリファー後の連携した支援体制の整備が課題であると報告された。

最後に座長の廣田栄子先生から次のようなお話があった。「Early Intervention(早期介入)は聴覚障害児教育の基盤であり,とても重要な時期である。本人に伸びる力があると想定し子どもや保護者の主体性を尊重しどうサポートするかが重要である。12カ月未満の乳児が大人の顔を見てまねをする,そのコミュニケーションへの主体性,乳児とのコミュニケーション成立過程から,密度の高いコミュニケーションの成立を学ぶことができる。「新生児聴覚スクリーニング」「聴覚活用と人工内耳」「早期からの手話の導入」が早期教育のトピックスとなっているが,これらをどう「日本語」につなげるかが課題となる。」

この大会に参加し、今日的な課題に前向きに取り組む必要性を痛感するとともに、現実の限られた状況の中で「何ができるのか」「何をすればよいのか」をきわめて冷静に問いつつ、長い聴覚障害児教育の歴史の中で積み上げられてきた「大切なもの」を見失わず、拙いながらも地に足のついた実践を積み上げていかなければならないと思いました。