中学部研究協議会(2)

大阪府立生野聾学校

中熊 朋也

大会3日目の午前は筑波大学附属聾学校で公開授業および指定授業があり,午後からは指定授業に基づく授業研究会や,学部研究協議会が行われた。
 公開授業や指定授業を参観して強く印象に残ったことは視覚教材の豊富さであった。板書の提示や,カードを使ったキーワードの提示,絵カードや写真の提示,地図および実物の提示はもちろんのこと,e-黒板やパワーポイントなどを駆使しながら,授業が展開されていた。視覚教材が学習活動において効果的なツールになることを改めて実感させられる。それが,聾学校の専門性のひとつであると言える。授業研究会において,e-黒板の利点として三つのことがあげられていた。ひとつは,教材掲示の切り換えを早く行うことができ時間に余裕ができるということ,次に,様々な教材を一つのe-黒板に集約でき保存ができるということ,そして,教材作成において無駄な労力を削減できるということ,などである。 
なるほど,指定授業の「国語」の「枕草子」の授業では,e-黒板の利点を生かすことで時間的に余裕ができ,生徒たちの好きな季節を発表させる時間ができた。そういった余裕のおかげで,枕草子の作者の季節感や価値観を共有できるようになった。e-黒板のなせるわざである。しかし,便利だが万能ではないということも実感させられた。もう一つの指定授業「理科」の授業では,e-黒板が使えなくなり,指導案どおりに授業展開ができなくなってしまったというトラブルがあった。不具合が生じると何もできなくなるという電子機器の弱点が露出した形となったが,代わりに,化石の実物を提示することとなった。生徒に実物を感じさせるだけではなく,それ以上に昔のことを考えさせる視点を持たせた。授業者が化石を通じて「学力」を学ばせる展開で,生徒たちの学ぶ姿勢を促すことができた。むしろ,その失敗があったからこそ授業の展開がおもしろかったという見学者の声があった。
研究協議会においては,「なぜ学力をつけるのか?」という根本的な問題を改めて考える機会を得た。個別指導や読み書き能力を高める指導の実践を通して,「ことばを育てる」から「ことばを磨く」という指導への転換,「知識」から知識を主体的に活用できる「知恵」力の育成の大切さについて報告された。e-黒板などのような視覚教材は,「なぜ」「どうして」と理由を考えさせるのに重要な役割を持っていたし,授業者側の意識的な支援は「ことばを磨く」のに重要な役割を持っていた。その両者の融合によって,教科を学ぶことは面白いと生徒たちが感じることで,教科で学んだ知識や考え方を多角的に活用させ,自ら疑問を抱き,考え,学ぶ姿勢を育てることができる。そんなことを学ばせていただいた研究会だった。