12.総合的な学習

愛媛県立宇和聾学校
金子 和美

本分科会は、「子どもの生きる力を目指し、聾学校としての創意工夫を生かした取り組み、活動の在り方を考える。」をテーマに4校の実践事例研究が発表された。分科会参加者は18名と少人数で、家庭的な雰囲気の中で協議が行われた。4校の発表とも、この4年間、試行錯誤を繰り返しながら真摯に取り組んでこられた様子が伝わってくる重みのある内容のものであった。千葉県立館山聾学校の発表では、生徒数が少ないことを生かした個別のテーマ追及型の学習の中で、「生き方」と「学び方」に焦点を当て、生徒の興味関心に基づくテーマ学習が行れていた。その中で、生徒の主体的に取り組む様子や、生徒の実態に合わせて教員がサポートの仕方を工夫する様子がみられた。また、東京都立葛飾ろう学校は、1つのビデオレターをきっかけに、近隣の農村で行った米作りの活動が報告された。その活動を通して村の方たちとの交流を深めたり、運動会や文化祭などの校内行事と関連させたり、授業で新聞やホームページを作ったりと多彩な活動を展開されていた。自然と土に触れるようになったり、村へ行くことを楽しみにしたりといったような子どもたちの変容もみられた。他にも兵庫県立神戸聾学校では、「地域学習」「環境学習」「国際理解」の3テーマを、中学部の3年間で学習するといった学習内容をサイクル化することで、幅広い学習を積み上げることができていた。愛知県立豊橋聾学校は、唯一高等部での取り組み発表であった。小中高のプロジェクトチームを作り、内容が重ならないように話し合ったり、評価表の作成をしたり、系統的な取り組みがなされていた。

研究協議では、1 授業の工夫、2 評価の方法、3 重複障害児童生徒の取り組み、4 成果と課題の4つの柱を立てて協議された。1では、目標・内容の決定には、児童生徒の実態にもよるが、教員が大きく関わって決めているところが多く、小中高の関連については、まだまだ課題といえる。2では、ほとんどの学校で観点別評価を行っており、生徒間評価や外部評価を取り入れているところもあった。3では、個別にあるいは、その子の実態に応じて実施したり、縦割りなどのグループ作りをして、どのグループにも入るようにし一緒に活動したりしていた。集団の中に入ることでよい刺激を受けたり、逆に他の生徒たちによい刺激を与えることができているといったように、課題を含みながらも一緒にやっていく利点は大いにあるということであった。教育課程上の位置付けに関しては、生活単元との兼ね合いにはまだ考える余地がある。4では、集団の確保ができることでコミュニケーションが広がり、外部とのいろいろなかかわりを経験できる。また、発表会を持つことで責任を持って調べたりまとめたりすることを経験できる。子ども自身が考え、主体的に取り組み、生きる力を育成するといったことは、まだまだ実践過程上にあるが、これまで蓄積されてきた多くの取り組みは聾学校の大切な財産であると感じた。

最後に国立特殊教育総合研究所総括主任研究官の藤本裕人先生より、聾教育にとって総合的な学習は体験活動の自由度が高く非常に価値が高いものである。そこで、目の前にいる耳の聞こえにくい中学生や高校生に、同年齢の子どもたちがいかにTPOに合わせて自分をコントロールしているかということを、どう知らせていくか、また、設定された多くの活動が、いろいろな人たちの様々な思いや、配慮によってなされていることに気付く気持ちをどう育てていくかといった視点が大切であるとの助言をいただいた。上杉賢士先生の言葉を引かれて『「大人になったなあ」がゴールである』の言葉が印象的であった。