8.幼稚部教育

茨城県立水戸聾学校
稲沼 憲子

幼稚部分科会は,「幼児が主体的に環境に働きかけ,心豊かに発達する幼稚部教育について考える」をテーマに,9件の発表と活発な討議が行われました。はじめは,「友達とかかわり生き生きと活動するための支援」(豊橋校),「自分から関わって活動を楽しみ,進んでことばでやりとりできる子どもを育てる −絵本の読み聞かせを通して−」(酒田校),「個別指導によることばを育てる取り組み −カレンダーワークの実践から−」(浜田校)の発表でした。3校の発表から,読み聞かせの定義,手話から書記言語への移行,幼稚部修了段階での日本語の力等が話題に上りました。助言者の田邊ひろみ先生からは,イメージを共有して遊び込み,互いに伝え合うことによって遊びが発展すること,教師はヒントを与えながら環境を作り,出過ぎず支援することが大切であること,また,絵本の読み聞かせでは,ことばの理解力によってはできるだけ簡単な絵本がよいこと,幼稚部では基礎的な母国語の文を楽しみながら身につけていく段階であり,ステップを大事にし,子どもの反応を記録することも大切とのお話がありました。

次に,「人との関係の中で心とことばを育てる取り組み −遊びの中での集団化とコミュニケーション−」(生野校),「幼児の活動意欲を受け止め,育む指導法の研究 −授業研究を通して−」(札幌校),「子どもたちは歌が好き −聞くことを通して,歌を楽しむ子どもたち−」(日聾校),「小動物に関わる保育を通して」(こばと校)の発表でした。これらの発表に関して,教師が一緒に入って遊ぶ際の観点や配置,新しい曲を教える際の工夫等について意見交換をしました。田邊先生からは,大人はつい入り込み過ぎて主導権を取ってしまいがちだが,入り方・引き方を常に工夫すること等の助言がありました。

続いて,「人と豊かにかかわる力と心を育てるために −気持ちを表すことばを育てるための援助のあり方を考える−」(岡山校),「幼稚部3年間の子どもの姿 −人間関係,きこえ,ことばの面から−」(附属校)の発表がありました。大変充実した時間を過ごし,気が付くと終了予定時刻はとうに過ぎていました。全国の先生方の熱心な取り組みの一端に触れることができ,本当に力付けられる思いでした。

最後に田邊先生から「障害への配慮をしながらその子らしさを引き出し,人間性の根っこを育てること。保護者の育児不安を取り除きつつ子育ての喜びを伝えること。教師は10年後の子どもに責任を持つこと。今後の日本の大きな変化の中でも幼稚部時代にすべき課題は変わらない。 地道な実践と検証を・・・。」とのお話があり,長年の実践に裏付けられた先生の熱いお言葉は心に深く染み入りました。