4.自立活動1−発音、発語、言語指導

岩手県立一関聾学校

小野寺 直樹

「聴覚障害児の社会的な自立・参加を円滑に進めるために自立活動が果たす役割について考える。」というテーマのもと、6つの発表があり、その都度の質疑応答と馬場顕先生、板橋安人先生の指導・助言をいただくという形で進められました。

助言者でもある筑波大学付属聾学校の板橋先生からは、後輩におくる卒業生の発音・発語に関するメッセージから発音の学習の参考点・留意点を学ぶという実践が報告されました。「学習者にとって授業が楽しいものになっているか?」「生徒がイメージしている発音発語の授業というのは極めて多様である。」など、大切なポイントをいくつもあげていただきました。長岡聾学校の袖山先生からは、「拗音の段階指導の一考察」として、ヤ(J)行音の渉りからの誘導の試みが報告されました。発音をフィードバックさせるために奥歯をかみしめさせることの有効性や、ヤ行音の練習として「 イ〜ア〜 → イア → ヤ」のように、はじめから「キャ、キュ、キョ」と短く切って発音させるよりも、伸ばさせたほうが調音が行いやすいなどの、具体的で興味深い内容が発表されました。筑波大学付属聾学校の山本先生からは、小学部1〜3年の7月の日記を分析し、聴覚障害児の日記文中に表出される感情表現を豊かにするための手だてについての実践が報告されました。様々な体験をさせて、それを言語化させたり、感情を表す動作をそのまま書くこと(「・・飛び上がりました・・」など)で気持ちの表現ができるなどの発表があり、「感情が豊かに表れるのはその地方の言葉(方言)では?」などの意見も出されました。宮城県立ろう学校の松野先生からは、宮城ろうの発音発語指導の現状と、「自立活動の個別の指導計画」の作成と「語彙チェック表」の作成の意義と手順について発表が行われました。指導の方向性・児童の実態把握が少しずつできてきた一方で、作成を始めてまだ間もないこともあり、とらえ方やまとめ方についての職員間のばらつき(見解の相違)が見られた様子もあげられていました。特に語彙チェック表のような資料の作成では、項目の内容やその後の活用の仕方など、難しい要素が含まれていることを感じました。群馬県立聾学校の岡本先生からは「言語指導計画の作成とその映像化(2)」というテーマで、群馬校幼稚部での言語指導計画表の内容と、それを映像化したもののVTRが公開されました。「言語の指導は『現場』が大事である。」、「逆説の表現は具体的状況での指導が重要と考える。」などの報告がなされました。秋田県立聾学校の菊地先生からは、日本語対応手話を活用した書き言葉の指導実践が報告されました。生徒側では、子ども同士の会話は日本手話、教師と話すときは日本語対応手話と使い分けているとのこと。聴覚口話の指導も効果的な児童と、聴覚口話が活用できない児童への指導方法の整理が必要という改善点なども提示されました。

全体討議では『日本語の獲得に向けて』という柱のもと、のどの手術をして思うように発音できない児童に対する指導の方法や、幼稚部・小学部における手話の導入に関する留意点などについての話題が出され、活発な意見交換が行われました。

最後に板橋先生から、「明瞭に話せるだけが発音指導ではない。発音指導を通して日本語を豊かに獲得していくことが必要。そして自分はどう生きていくのがよいかを考えられる人間に育てることが「自立」の指導なのではないか?また、教員は日本語話者として日本語にきちんと向き合い、日本語の分析を1度は勉強していかなければならない。」、馬場せんせいから、「聴覚活用の最高は言語習得だが、たとえば自己の環境を理解できたり、見えない世界で何が起きているかを考え理解できる力を育むことにもつながる。また、我々は言葉の発達に対して早急すぎるのではないか?待つことも大切。人はまちがいながら覚えていくのだから、もっとゆっくり指導していく気持ちが必要。また、年齢相応の言語指導も大切なことの一つで、非言語的な発達をうまく活用して指導していくべき。小学部以降は言葉は「ことば」だけでなく、「ことば」という「知識」である。」という、今後の方向と支援のあり方を示唆する貴重な助言をいただいて分科会は閉会しました。