3.コミュニケーション

富山県立高岡ろう学校
土田 昌作

聾教育の現場が、「初めに言葉ありき」から「初めにコミュニケーションありき」に変わってきたと言われるようになり、コミュニケーション分科会でも「手話口話論争」の域を脱して、子ども本位のコミュニケーション環境づくりの視点で実践を持ち寄り協議する場となってきている。

平成5年の文部省専門家会議「報告」以降、本格化した中・高等部での手話の導入と、それに続く幼稚部での早期手話使用の取り組みが進められる中で、小学部段階でコミュニケーション活動の活性化が重視される傾向があり、今回の発表5件のうち4件が小学部での実践をもとにした報告であった。

研究集録や口頭発表では伝わりにくい子ども同士のコミュニケーション状況は、ビデオによってわかりやすく提示されさまざまな質疑応答や意見交換ができた。なかでも、教師の仲介を得ながら「タテ」の話し合いが主となる形態に対しては、「ヨコ」の子ども同士のコミュニケーションを活発にする方途について意見が交わされた。また、コミュニケーションが成り立ちにくい子どもに、どのような支援をしたらよいかについては、呼び水を差し向けるという方法に対して、子どもの話したいという気持ちを大切にすべきとか、誘導が会話のパターン化を招くのではという異論も出された。

さらに、地方の聾学校の在籍数の減少はコミュニケーション学習の取り組みにも大きな影響を及ぼしている。

ほかの教科・領域と違いコミュニケーションの活性化にはある程度の集団が保障されることが望ましいが、各学年1〜3名で障害が多様化しているなど全国的に困難な状況が相当数に上る。ある学校からは、架空のクラスメートを作って話しかけるなどの苦肉の策も報告された。

このほか、教職員の手話コミュニケーション力向上の取り組みも報告され、各地の情報交換から比較的多くの聾学校で専門性の重要な柱として手話研修が進められていることがわかった。

助言者からは、聾学校ではコミュニケーションを論じていても、言語力や学力の話にすり替えられてしまう傾向が強く、それとは一線を画して議論する必要がある。また聴覚障害児にとって十分にコミュニケーションが取れていないという現状を、将来の自己実現と関連して重大に受け止める必要があるとの指摘があった。

この分科会に参加して感じたことは、コミュニケーションを論ずる際に、使用しているメディアなど対象児の実態をきちんと提示してから協議に入ることが大切であるということ。また、この分科会には(できれば複数の)聴覚障害者の参加は必要不可欠であるとの思いを強くした。