1.基本問題

愛知県立千種聾学校
加藤 芳子

本年度の「基本問題」分科会は、まさしく現在の聴覚障害児教育がおかれている状況を反映する内容であったように思われます。ほとんどの発表が特別支援教育の施行に向けての実践報告であり、それぞれの地域において積極的にセンター的な役割を果たそうとする聾学校の取り組みが発表されました。

新潟県立長岡聾学校からは2件の発表があり、「特別支援教育の施行に向けて」の全体的な報告では、担当者の個人的なつながりや力量に負うところから、学校という一つの組織として担っていくことの必要性が指摘されました。また、「子どものきこえ相談室」についての報告では、他機関との連携を進める中で、より親しみやすい名前を使うことの必要性を感じたとのお話がありました。千葉県立千葉聾学校の「地域支援部の取り組み」についての発表では、養護学校からの公開研修講座への参加者が多くなっているという報告が印象的でした。また、県内の聴覚障害児を対象にした「なかまの集い」についての報告も参考になりました。京都府立聾学校舞鶴分校の発表では、「地域の数だけ地域支援の進め方がある」また「誰のための支援か、何のための支援か」という視点が大切であるとの指摘がありました。和歌山県立和歌山ろう学校からは、福祉事業である「障害児(者)地域療育等支援事業」に参画し、地域の支援事業コーディネーターと連携しながら巡回相談を行っているとの報告がありました。

大阪府立生野聾学校の「学習が困難で異なる障害を持つ生徒たちと関わって」の発表は、「聴覚の障害とともにADHDやLD、高機能自閉症等をあわせもつ児童・生徒に対する支援を今後どのようにしていくか」ということへの問題提起ともなったと思われます。

6件の発表の後、助言者の大沼先生に、いろいろな視点からの御助言をいただきました。その一つに、聴覚障害の理解啓発のための資料作成に当たっては、時限を決めて自分たちの得意なチップシートを1枚だけ作るというのが長続きする方法ではないかとのご指摘がありました。また、プラスの事例を整理し内省し分析するという疫学的な検証も外への支援の足がかりになるだろうとの御助言もいただきました。更に、統合と分化の繰り返しの中で、かつての統合と同じではなく一つ上に行くための統合を目指しているのだという認識が必要であることなど、多くの御助言をいただきました。

この大会に参加し、今日的な課題に前向きに取り組む必要性を痛感するとともに、現実の限られた状況の中で「何ができるのか」「何をすればよいのか」をきわめて冷静に問いつつ、長い聴覚障害児教育の歴史の中で積み上げられてきた「大切なもの」を見失わず、拙いながらも地に足のついた実践を積み上げていかなければならないと思いました。