11.教育工学


京都府立聾学校

市川 正人

本分科会は、「情報を主体的に活用する力を育てるための補聴機器や情報機器の効果的な活用の在り方」というテーマのもとに開かれました。多岐にわたる内容の11本の研究発表は、あらかじめ司会運営者で4つのまとまりに分けて発表・協議が進められました。午前中の初めは、筑波大附属聾の「校内LANを活用した文字放送システムの導入について」、筑波技短の「Webベースで実現した新しいリアルタイム字幕提示システムの開発」、愛媛大教育学部の「音声認識を利用した聴覚障害学生学習保障システムについて」の3本の研究発表がなされました。協議では音声認識システム・ソフトウエアに関する質問が多く出され、今後の字幕システム等の一つの方向性が提起されているように思えました。

次の研究発表は、岡崎聾の「情報活用能力の育成を目指したコンピュータの活用」、北海道高等聾の「自ら学び考える力を育てるために」、岐阜聾の「高等部情報処理コース・情報処理科における高度な授業を目指して」の3本でした。いずれも情報教育の内容に関わる発表で、学ぶところ大でした。協議の中では、岡崎聾の小学部での実践に対し、学習時間の確保や使用教材について等いろいろな質問が出され、各校での取り組み状況の交流も一定なされました。学校間でのIT環境の整備状況の差も大きい中で、各校模索をしながら実践を進められていますが、今後一層交流を深め学んでいきたいと思いました。

午後は、札幌聾の「本校における相互通話式集団補聴器の更新について」及び、川崎聾の「聾学校幼稚部における聴覚学習の内容の変化」の2本の発表から始まりました。協議では、「相互通話ができるようになることは、いままで教師を介して行っていた交流が子ども達同士で自然にできるようになり、子ども達同士が育ち合う場になった。」という報告がとても印象的でした。助言者の先生も、1970年代と比較して今日、子ども達自らが主体的に取り組んでいける環境を整えていくことが重視されてきており、どのように環境を整えていくかが重要になっていると指摘されていました。

最後は、筑波大附属聾の「乳幼児の補聴器装用効果の評価について」、筑波技短の「小児を対象とした語音検査実施の現状と試作検査について」、上越教育大の「中国における補聴が遅れた10代の聴覚障害児への補聴器装用に関する担当教師と保護者の評価」の3本の発表を受け、補聴器装用に関してや、語音検査について活発に意見交流がなされました。最後に助言者の先生から、各発表について丁寧な助言をしていただきました。その中で、今回のレポートの中で見られた母親が記録を取ることの意味にかかわって、「母親が記録をとりながら静かに子供と向き合う関係を作っていく、その中で母親も安定し、子どもの発声などにも対応していく。親の態度が変わり、母親がコミュニケーションを取ろうとして、いろんなところで話しかけたり、お互いの意味を作り合ったりする中で子どもの発声発語などの様子も変わっていく。そのような関係の中で子どもが変わっていくということを深めていくとおもしろい研究になっていくのではないでしょうか。」と述べられていたのが大変印象に残りました。