17.重複障害教育


奈良県立ろう学校

劔持 弥貴

「一人一人が心豊かに自立した生活を送るための指導のあり方について考えよう」というテーマのもと、6件の研究発表がありました。午前中は発表、午後はそれぞれの発表をうけて、座長の佐藤先生に討議の柱を整理していただき、情報交換を兼ねた研究協議を行う、という形で分科会がすすめられました。

小樽聾学校、札幌聾学校、釧路聾学校からは個別の指導計画の作成とその展開について事例に基づいた報告がありました。個別の指導計画は、どの学校も試行錯誤しながら作成、実践を行っている最中ということで参加者の関心の非常に高い内容でした。重複する障害の多様化により一人一人の実態を的確に把握し、それに対応した指導計画を作成することの大切さを実感しました。愛知県立千種聾学校からは、行事の経験などの写真を使っての「思い出カード」作りを通した取り組みについて発表がありました。学級内の児童に障害の種類や程度の差がある中で、何をすればよいのかという悩みから「思い出カード」作りが誕生したというお話でした。思い出を明確にしようと始めたカード作りでしたが、「言葉が増えた」「手仕事(切ったり、貼ったり)が上達した」「身振りができた」など他の面での成長や変化が多く見られたということでした。繰り返しの活動の中で見通しをもてるようになることが他の面での成長につながった、という報告は日々生徒と接する際に大切にしなければならないことだと感じました。

愛知県立豊橋聾学校からは、生活の基盤となる力をつけるために、多面的・総合的な発達を目指した自立活動を通しての実践報告がなされました。実際に授業で使用されている教材教具の提示もしていただきました。印象に残ったのは、保護者や関係医療機関との連携のあり方についての報告でした。子どもを取り巻く複数の教師、保護者、医療機関従事者が共通理解し、共通の目標を持って子どもに接することの大切さを感じました。埼玉県立坂戸聾学校からは、思春期に入り自閉的なこだわりが強くなった生徒への取り組みの実際を報告いただきました。「こだわり」を成長過程ととらえ、見守る姿勢をとってきた結果、自分の要求を手話で表現できるようになるまでの経過報告に心を打たれました。

研究協議では子どもに対する教師間の共通理解の方法、個別の指導計画、保護者・関係機関との連携などに焦点を絞って行われました。最後に佐藤先生から「子どもが自己決定し、自己実現することは大切である。教師としてはそれを支援できるような環境を整備していくことが大切である。『何がしたいか』を選択できて初めて自己決定ができるのであり、常に自己選択できるような場を設定することが必要である。」とのまとめをいただきました。個別の指導計画を考える際にも大切なことであると感じました。本分科会で学んだことを参考に今後の実践活動に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。