9.重複障害教育

大阪府立生野聾学校 大畑 むつみ


 「豊かな心と生きる力を育てていくための個に応じた支援のあり方について考えよう」のテーマのもと、4校の研究発表がありました。それぞれの内容に基づく討議の柱が事前に設定されており観点を絞って論議が進められました。以下、発表内容と、討議の内容を感想を交えて報告します。
@「視覚聴覚二重障害を有する一歳児への取り組み」(愛知県立豊橋聾学校)では今後の盲学校との連携について、聴力測定の判定の困難さ、補聴器装用の必要性をどのように親に説明していくのか、偏食についての指導の難しさ等、活発な意見交換がなされました。教育相談担当である発表者が親の気持ちに添った対応をされているのが印象に残りました。
A「コミュニケーション意欲を育てる〜自立を目指して」(京都府立聾学校)は、二人の中3の生徒が、手話でコミュニケーションをすることによって、どのように変わっていったかという、3年間の自立に向けた援助の在り方についての報告でした。「話したいと思うことを話せる」この「何気ない会話」の経験が「生きる力」へと繋がっていくという発表者のことばは、「ことば」の持つ意味を深く考えさせるものでした。
B「重複障害児K君から教えられたこと〜『性的問題行動』を性教育の視点で問い直す」(川崎市立聾学校)は、高1男子の「抱きつき」を性的問題行動として捉えないで、スキンシップ要求行動として捉えることによって、人間関係を結ぶ力が出てきたという報告でした。聴覚障害を持つ子どもに限らず、多くの知的障害児・者が直面する大きな問題であろうと思いますが、個に対するアプローチの方法に最も丁寧さが求められる問題ではないかという感想を持ちました。
C「個に応じた指導の在り方について〜少人数での作業学習(木工)を通して」(山形県立酒田聾学校)では、分科会参加者の学校での作業学習の実態も紹介されました。その中で、作業に追われてしまってコミュニケーションがおろそかになってしまったという、作業学習の是非に関する問題点等も出され、このことは重複障害児の教育課程の在り方にも繋がっていくと思われました。
 司会者による討議のまとめとして「適性就学」「進路」等に焦点が絞られました。「適性就学」に関しては、指定討論者の「養護学校か聾学校か考える時、学校の持つ一般的なイメージで考えるのではなく、どんな先生が引き受け、どんな環境があるのか、その時その時によって大きく異なるので、個別的に考えるべきである」という趣旨の意見は現実に添っており説得力があるものでした。これからの聾学校は、コミュニケーション指導のノウハウを持つ学校として、きこえの問題に関わらず幼児期からコミュニケーションに困難を抱える子どもを受け入れていく姿勢を求められるだろう、重複障害教育は大きなカギを握っていると考えさせられた三日間でした。