寄 宿 舎 教 育

宮城県立ろう学校 池田 紀子

 午前中は寄宿舎公開がありゆっくりと見学させていただきました。色々なところに物の名前を書いたカードが貼ってあるのが印象的でした。福井ろう学校の先生方には私たちの多くの質問に丁寧に答えていただきました。長時間ありがとうございました。
 午後は会場を福井大学に移して「社会自立に向けて、自主的に活動できる力と豊かな心を育てよう」という主題で舎研究会が行なわれました。
 初めにあいさつについての話し合いがされました。各学校とも同じような様子で、生徒と話し合いを持ったり、卒業生を呼んで話してもらったりと工夫して指導されていました。鹿児島聾学校の辻校長先生のお話にあったように、あいさつには特効薬があるわけではなく、またすればいいというものでもありません。子どもたちの近くにいる私たちが手本となり毎日繰り返し取り組むこと、子どもたちが声を出しやすい雰囲気や環境を作ることが大切であるという意見でまとまったように思います。他に社会的マナーについて寄宿舎でどのようなことに取り組んでいるのかの意見交換もされました。
 国立特殊教育総合研究所の小田先生からは、健聴者にとってあいさつは言葉でされているが子どもたちにとって声を出してのあいさつにどんな意味があるのか、なぜあいさつが必要なのかを理解させることも大事である。マナーについては、なぜ食事の時に音を立ててはいけないのか、どのくらいの音ならいいのかを話さなければいけない。これらをろう者はどのような段階を経て獲得するのか、さらに使い分けるにはどうしたらよいのか考えなくてはならない。獲得の方法が健聴者と異なっても最終的に社会で生活できるかどうかが大事であるとの話がありました。
 寄宿舎は家庭的な面を持つと同時に教育の場でもあり、安らいで生活してほしいと思う反面もっと色々なことを教えたいとも思っている。毎日の生活を大事に考えながらできる範囲で多くの経験を積んでほしいと思っています。この会に参加して、私たちが子どもたちとよりよい関係を築くことが大切であると改めて感じました。「子どもたちの視点に立って考えていくことも必要である」という司会の言葉で閉会になりました。
 最後に、各学校の様子を聞くいい機会であったし、多くの参加者がありながら活発な意見交換とは言えなかったのが少々残念だったように思います。これからもよりよい寄宿舎作りのために、話し合いの場を多く持つことができるといいと思っています。
 中学部では、開催校の全校的な研究概要の説明、中学部の取り組み、指定授業の授業研究、「社会性をつけるために」という討議の柱にそっての研究協議が行われた。
 中学部教室前の廊下には、特殊教育諸学校とチャットやメールを使って計画したことを交換し合う様子が詳しく掲示されていた。生徒たちがパソコンを使って自主的に交流を進めようとする意欲がよく伺えた。
 公開授業の美術・理科・数学を見学したが、特に美術の授業は、「心の中の風景」ということで、作家の作品を見せて感想を発表させていたが、自由に伸び伸びと感想の発表がなされていて参観する者も授業に引き込まれるような気分になった。
 指定授業は、中学部全員による自立活動「特殊教育諸学校との交流」であった。7人の生徒に2人の教員が入っての授業で、たくさんのギャラリーに囲まれても物おじすることなく普段通りの授業が行われていたようだった。授業内容は、交流相手校が工夫していることや頑張っていることなどについて、交流の内容や感想を、2班(盲学校、養護学校)に分かれて発表し合うものだった。また、相手校の生徒たちが障害とどう向き合っているか知ることができることや、それを自分の障害を見つめるきっかけとすることができるなどの目標のもとに授業が進められていた。
授業者の自評は、生徒の態度について、「普段と変わらない様子で、相手の間違いを非難したり、はらはらさせる場面があった」、「自分からあまり発言しない生徒への配慮が欠けていた」、「前半の発表場面では全員よく活躍していたが、後半の話し合いの時間に、一部の者しか発表の機会が与えられなかった」などの反省や、T・Tのあり方についての言及があった。参観していて、授業者の手話はとても美しくわかりやすく、教員の役割分担もうまくいっていたと感じた。生徒たちも紙に書いたものを見ながら、手話も適切に使って発表していたので感心した。
質疑では、集団補聴器の活用方法について、手話の指導方法について、研究発表形式について、交流の相手校について、障害認識について、「行動チェックリスト」における指導者と生徒の意識のずれについてなど、様々な視点から感想や意見が出た。
特に障害認識については、「指導案の中にある自分の障害を見つめ向き合っていくということは、先生方としては、どういうことを想定しているのか」、とか「授業の最後は障害に負けないで頑張っていこうというまとめで終わったが、これは生徒の方から出てきて欲しかった。」などという質問や意見が出された。この問題は、すぐに答えが出る問題ではなく、長い年月をかけて障害認識がなされていくものであると痛感した。
最後に、事前に行われた各校へのアンケートを基に、「社会性を育成するために」ということを主題として、5つの討議の柱にそった研究協議があった。ここでは、(1)「コミュ二ケーション能力をつけるために」と(2)「進路に向けて」について討議が行われ、他の3点については、紙面による情報交換となった。進路については、中学部でも現場実習を行う学校もあるので驚いた。自分の学校でも今後の課題としていきたい。
 とにかく、中学教育研究に割り当てられた2時間の大半が福井校の中学部の取り組みや授業研究の時間にさかれ、討議の柱については、十分な協議を深められなかったのは残念であった。