全 日 聾 研 会 報

 
全日本聾教育研究会発行   第76号
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第31回全日本聾教育研究大会(京都大会)
 
平成9年10月15日(水)〜17日(金)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【 目 次 】
 
京都大会を終えて 京都大会実行委員長 藤田 陽三 ……… 2
全 理 事 会 議 事 録 ………………………………………………… 4
福岡大会趣意書(案) ………………………………………………… 6
福島大会基本構想 ………………………………………………… 7
授業研究会 ………………………………………………… 9
研究協議分科会 ………………………………………………… 16
第31回全日本聾教育研究大会
(京都大会)を終えて
 
 
第31回全日本聾教育研究大会   
京都大会実行委員会会長  
京都府立聾学校校長  
藤 田 陽 三   
 
 
 錦秋の京都,障害児教育発祥の地京都に,1,250名を越える参加者を迎え10月15日から10月17日までの3日間,京都府立聾学校が主管で第31回全日本聾教育研究大会(京都大会)が開催されました。
 今年は「聴覚障害教育の歴史をふまえ,心豊かに主体的に行動できる力を育てよう」という主題を掲げ,聴覚障害教育の歴史に学び,時代を越えて大切にしなければならないことを再認識するとともに,主体的に生きる心豊かな聴覚障害児を育成するために教育の課題を明確にし,解決する具体的手だてを協議研究したいと考えました。それが間近にせまる21世紀に向けた聴覚障害教育の創造発展の契機となればと教職員一同準備を進めました。何分力量不足で行き届かぬ点多々あり,皆様に御迷惑をおかけしたことと思いますが,文部省はじめ各関係諸機関並びに講師,助言者及び大会関係者の温かい御支援と御協力のお陰を持ちまして晴天無事故で大会を終えることが出来ました。
 大会期間中,公開授業・授業研究会,記念講演,シンポジウム,17分科会による研究発表・研究協議会での交流の場を通じて,大会主題の趣旨が生かされるような活発な意見交換,情報交換が繰り広げられ,今後につながる聴覚障害教育に明るい希望が見えてくる思いの3日間でした。聾学校の現状や社会状況の変化に的確に対応した示唆深い御助言も多々いただきました。記念講演では講師の服部祥子先生,シンポジウムではコーディネータの菅原廣一先生やシンポジストの先生方に大変お世話になりましたが,諸先生の温かいお人柄と人間愛がひしひしと参加者に伝わり,今後の教育実践を進める上で随分勇気づけられるものでした。その勇気と本大会でいただいた貴重な御意見や御助言を糧として,21世紀の聾教育を豊かに実践していきたいものです。
 大会のあり方や運営については,反省すべき点も多々あり御意見も伺っております。全日聾研の運営に係わる財政的負担を軽減し,かつ教育実践力の向上に有効な大会にするために抜本的な検討が必要な時期のように考えられます。大会準備は2年前には大会の骨格が決められ,1年前からは本格的な準備が進められることを考えると4年,5年先を目標に今後の全日聾研の大会について検討が進められるべきではないかと思われます。
 まだまだ課題は多くありますが,本大会で得たことをヒントとして新たな課題解決に向けて実践検証され,次回大会で研究協議に花が咲くことを期待します。
 最後になりましたが,京都大会に賜った皆様方からの多大の御支援と御協力に感謝し,第31回全日本聾教育研究大会(京都大会)のお礼のことばといたします。
(平成9年10月28日)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   全 理 事 会 議 事 録
 
 平成9年10月14日(火),午後1時より,ルビノ京都堀川に於いて,平成9年度第2回全日本聾教育研究会全理事会が催された。下記のような式次第で,会則により会長の風戸伸也が議長として議事を進行した。
 
【式次第】                                《敬称略》
 
1.資 格 確 認 出席者名簿による確認 竹村 茂
 
           会長,副会長3名,常任理事11名(欠席1),理事5名(欠席4)
           他にオブザーバーとして,石橋利治(福岡県立福岡高等聾学校)
           水元栄三(愛媛県立松山聾学校),飯塚和也(福島県立聾学校)
 
2.開 会 の 辞 副会長 馬場 顯
 
3.会 長 挨 拶 会 長 風戸伸也
 
4.主管校校長挨拶 委員長 藤田陽三
 
5.議     事
 
 *.前回議事録の確認(会報第75号による)
 
 (1) 第32回福岡大会について
    九州地区全体で開催に向け活動中。「趣意書」参照
 
 (2) 平成11年度以降の大会について
    平成11年 第33回愛媛大会 基本構想については会報75号に掲載
       日程については,校長会との関連で流動的であるというコメントがあった。
    平成12年 第34回福島大会 「基本構想」参照
    平成13年 第35回福井大会
 
 (3) 各地区研究会の報告
    東海地区……10月30日に研究大会を行う。講師は斉藤佐和教授。
    中国地区……11月13〜14日に中四聾研を開催予定。
    九州地区……宮崎県都城市で研究大会を行う。
    北陸地区……研究大会を実施する。講師は斉藤佐和教授。
    東北地区……来年度研究大会を実施する。
 
 (4) 個人会員の扱いについて
(事務局)会則第2条に「本会は原則として各地区聾教育研究会を単位団体として組織する。」となっている。また事務局は校務の合間に仕事をしているので,個人会員を扱うと事務量が増えて対応できない。
   現状を述べると,たとえば,北海道では難聴学級の先生が会員となっている。各地区の会員の資格等については,各地区で考えていただければそれでよいかと思う。事務局として「こうしてほしい」ということはない。
   また,会員外の全日聾研での発表も,会員より高い参加費を支払っているので,特に問題視していない。
(結 論)全理事会の結論として,「各地区研究会で会員となることをもって,全日聾研の会員となる」という手続きに決定する。
 
 (5) 研究大会のローテーションについて
(事務局)全日聾研のローテーションについて,中国・四国地区を一つのブロックとして扱うかどうかについて,中国・四国地区の校長会で,合同開催するかどうか,つまり1つのブロックとして今後考えていくかどうかを決めていただければよい。
(岡山校校長より)11月12日の中四聾研の実行委員会で検討し,次回の理事会で提案したい。
 
6.連     絡 第6回アジア・太平洋地域聴覚障害問題会議(1998年8月 北京)
          第19回聴覚障害教育国際会議(2000年7月 シドニー)
 
7.閉 会 の 辞 次期開催校校長 池田 精治
 
 
 趣 意 書 (案)
 
第32回全日本聾教育研究大会(福岡大会)
 
 貴台におかれましては,益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 平素より聴覚障害教育につきましては,格別のご理解とご支援を賜り深く感謝いたしております。
 さて,このたび全日本聾教育研究会(全日聾研)では,第32回全国大会を平成10年10月に九州地区の担当で,福岡市において開催することとなりました。
 本研究会は,全国の聾学校等が加入した全国組織であり,聴覚障害教育の振興と各学校の教職員の資質の向上を図るとともに,教育課程・教育内容・指導方法等の研究を行い,以って社会自立及び職業自立できる児童生徒の育成を図っております。
 昭和42年に第1回全国大会を東海地区(愛知県)で開催し,爾来,全国を9地区に分けまして,輪番で大会を担当しており,毎回全国から1,000名を超える教職員が参加して研究発表等を行うという聴覚障害教育に係る唯一の規模の大きい大会であります。この大会を平成10年度は第32回大会として前述のとおり福岡市で開催する運びとなりまた。
 この間,情報化・国際化など社会情勢は大きく変化しました。それに伴っての教育課程の改訂,第16次中央教育審議会答申等がありましたが,本研究会ではその時代,時代に応じた聾学校教育のあり方や学習指導方法の改善・工夫等を重ねてまいりました.
 全国聾学校の教職員の実践力の向上は,必ずや聴覚に障害のある児童生徒の「生きる力」を育成するために多大に寄与するものと確信しております。
 何卒,本研究会の組織並びに活動方針にご理解を頂きまして,格別なるご支援とご厚情を賜りますようお願いする次第であります。
 
 *.福岡大会の日程等については,会報第75号参照。  
第34回全日本聾教育研究大会(福島大会)基本構想
 
1.名  称  第34回全日本聾教育研究大会(福島大会)
 
2.研究主題 「一人ひとりの個性を尊重し,豊かに生きる力をはぐくもう」
 
  設定理由
   国際化,情報化,科学技術の発展等,変化が著しい今日にあって,教育において
  は,個性的,創造的な人材の育成を目指し,ゆとりの中で生きる力をはぐくむこと
  や,一人ひとりの能力や適性に応じた教育が求められている。
   聾学校においては,幼児児童生徒数の減少や障害の重度化,重複化が進む中で,
  聴覚障害の捉え方が多様化し,指導法も様々な試みがなされている。そこで我々の
  課題は,一人ひとりの特性に応じた柔軟でかつ一貫性のある教育実践をどう進める
  かということと考える。
   こうした現状を踏まえ,聴覚障害教育は,これまでの理念や指導技術を継承しな
  がら,社会の中でよりよく生きていくために基礎・基本を身に付け,自らにふさわ
  しい豊かな生き方を見いだす力をはぐくむことにあると考え,本主題を設定した。
 
3.会  期 平成12年(2000年)10月18日(水)〜20日(金) 3日間
 
4.会  場 (1)開会式,閉会式,記念講演,シンポジウム  郡山市西部体育館
       (2)授業公開,研究協議分科会         福島県立聾学校
 
5.主  催 全日本聾教育研究会,東北聾教育研究会
 
6.主 管 校 福島県立聾学校,福島県立聾学校福島分校,福島県立聾学校会津分校
       福島県立聾学校平分校
 
7.協 力 校 東北各聾学校  
 
8.後  援 文部省,福島県教育委員会,郡山市教育委員会,福島市教育委員会,会津
       若松市教育委員会,いわき市教育委員会,全国特殊学校長会,全国聾学校
  (予定) 長会,東北地区聾学校長会,全国聾学校教頭会,東北地区聾学校教頭会,
       福島県特殊教育諸学校長会,全国聾学校PTA連合会,東北地区聾学校P
       TA連合会,全国公立学校難聴・言語教育研究協議会,財団法人聴覚障害
       者教育福祉協会,その他
 
9.大会内容 (l)公開授業
       (2)指定授業
       (3)開会式(アトラクションを含む)
       (4)記念講演
       (5)研究協議分科会
       (6)シンポジウム
       (7)閉会式
 
10.大会日程 前 日 17日(火)午後 全日聾研理事会,大会運営委員会
                  助言者・司会者・記録者打ち合わせ
       第1日 18日(水)午前 公開授業,指定授業,授業研究会(福島県立聾学校)
               午後 開会式,記念講演  (郡山市西部体育館)
       第2日 19日(木)終日 研究協議分科会   (福島県立聾学校)
       第3日 20日(金)午前 シンポジウム,閉会式(郡山市西部体育館)
 
11.開設分科会 (l)基本問題1(聾教育の基本的課題) (8)重複障害教育
        (2)基本問題2(コミュニケーション) (9)国語
        (3)早期教育(3歳未満)       (10)算数
        (4)早期教育(幼稚部)         (11)理科,社会
        (5)養訓(言語)            (12)芸術教育
        (6)養訓(聴能,補償工学)       (13)寄宿舎教育
        (7)進路指導              (14)保護者の会
 
12.大会参加費 (1)参加費 会員 4,000円  会員外 5,500円
  研究集録費 (2)集録費 一部    円(事後集録・送料を含む)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

授  業  研  究  会

 
 幼稚部「4歳児」授業研究会
 
香川県立聾学校 
谷本 真理子 
 
 
 聾教育に携わって5年,幼稚部へ配属されて4年目の私にとって,今回の大会に参加させていただいたことは,これまで得た知識や経験を整理し,またこれからの課題を考える良い機会となりました。
 大会参加前の私の中でのイメージは「聾教育発祥の地である京都のやり方は,きっと昔ながらの伝統を守りぬいたものなのであろう。」というものでした。しかし,実際に授業を目の当りにすると,新鮮な驚きの連続でした。まず公開授業では,3歳児クラスを一番に参観しました。現在,私が担任しているクラスに比べると“にぎやか”という印象を感じました。それは,単に人数が多いから…ということではなく,言語力の違いだなあと痛感しました。
 先生が使われていたことばも,私からすれば少し難しいような気がしましたが,それこそが言語力を伸ばすカギなのかもしれないと思いました。キューサインや口形記号などは本校でも使用しているので,その効果的な活用の様子をもっと詳しく見せていただきたかったのですが,時間の関係上残念ながら見ることができませんでした。
 4歳児クラスになると,ますます言語力のすばらしい伸びを痛感せずにはいられませんでした。子どもたちからの活発なはたらきかけを見ていると,言語力プラス話し合いをする姿勢が4歳児にしてすでに築かれていることを感じました。
 研究協議のテーマである「自分の思ったこと,感じたこと,考えたこと,気がついたこと,知っていること,経験したことを人に伝えたり,知りたいことをたずねたりする力を身につける為には…」を,実現できているように思いました。そこに至るまでの細かい指導ステップをぜひ教えていただきたかったです。
 4歳児クラスの指定授業で私が何よりも魅かれたのは,先生の洗練されたことばかけと温かい雰囲気でした。しつこいような言い回しではなく,あくまで自然に…かといってポイントはしっかり押さえた無駄のないことばかけは,見ている私たちに心地よさを与えてくれました。おそらく,子どもたちにとっても,それは同様でしょう。
 また,規制や指示が多くなりがちな(私の)保育とは違って,とても自由でゆったりとした雰囲気が,ますます子どもの力を引き出しているように思いました。まるでイソップ物語の「北風と太陽」にでてくる太陽のようでした。さしずめ私は,北風といったところでしょうか。
 反省点と今後の課題は山積みですが,「こんなふうになりたい…」という目標ができ,明日からの活力になりそうです。
 最後になりましたが,本大会にあたりましてご尽力くださった方々に,心から感謝いたします。大変貴重な機会を与えていただき,本当にありがとうございました。   
 幼稚部「5歳児」授業研究会
 
福島県立聾学校福島分校 
野地 巳奈 
 
 
 京都府立聾学校の幼稚部5歳クラスには,5名の子どもたちが在籍しています。その5名とも他の保育園と並行通園をしていて週に2,3回登校しているそうです。保育園では,少しずつ他の友達とのやりとりができ始めているということでした。
 教室に入ると先生と子どもたちが和やかな雰囲気で話をしていました。授業のテーマは,「くらしのはなし」で,先生の質問に対して子どもたちが答えるという形で進められていきました。「くらし」や「やくにたつ」など,そのときは理解できないことばも生活の中で使っていくうちに概念化させていくため,この時間では,それぞれ「絵日記」「いる(ほしい)」に置き換えて考えさせていました。毎日の生活の中で経験していることを具体的に発表するので,とても活発に発言していました。
 また,友達の話もよく聞いていて,声が小さいと「聞こえないよ。」といった声掛けもありました。45分間ほとんど着席した状態でのことばのやりとりでしたが,先生の話をよく聞いて次々と思いついたことを発表し合うことができる様子に,たいへん驚きました。
 授業研究会では,「これまで身につけた力を基に多くの人とのコミュニケーションを通して,自らことばを獲得していく力をつけさせるために」というテーマで話し合いが進められました。
 今回の授業は話し合い活動でしたが,教師と子どものやりとりが主だったので,もう少し子ども同士のやりとりがあってもよかったのではないかという意見がありました。本時では,先生とのやりとりの中で新しいことばのおおよその意味をとらえさせたいという意図があり,あえてそのような形をとられたそうです。友達と話し合うという活動は,幼稚部に限らず小学部でも大切にしていかなければならないことだと思います。
 それを受け,幼児教育の中身はどうあるべきかということにも目が向けられ,毎日の活動を自由遊びを中心に行っているという実践例が発表されました。子どものあそびの中には,人とかかわりあわなければならない機会が多く,子どもにとって必要なことばのやりとりを経験することができます。しかし,そこにはお互いにかかわり合いたい,お話がしたいという気持ちが高まるような環境づくりが必要で,環境をどうつくっていくかが課題になっていくものと思います。
 次に並行通園,交流保育についての話し合いがありました。インテグレートのことも含め,今後の見通しをどうもつのか考えていかなければなりません。そして,全体を通し,子どもとかかわる家族や教師がみんなで,どんな子どもを育てていきたいのかもう一度考えていかなければならないということで,授業研究会を閉じました。
 今回の研究会で,日々の授業をもう一度反省し,よりよい授業づくりに努力したいと思います。
 ありがとうございました。  
 小学部「重複障害」授業研究会
 
愛知県立豊橋聾学校 
天野 利子 
 
 
 京都聾学校の小学部棟に入ると,まず,子どもたちが遊ぶことのできるオープンスペースがありました。三輪車やフラフープ,ベンチなどが目に入りました。その前にたんぽぽグループの教室があり,子どもたちがいつでも教室とオープンスペースを行き来して遊ぶことができる環境でした。壁面に掲示された子どもたちの作品と写真による学習活動の紹介が参加者の目を引いたと思います。
 たんぽぽグループの指定授業では,劇遊びの「大きなかぶ」の授業が行われました。授業を参観されている方々の中から時折笑い声がこぼれるなど,なごやかな雰囲気が感じられました。たんぽぽグループの児童は,2年2名,3年2名,5年2名の計6名で,個々の実態や課題は様々だということでした。4名のどの先生方も子どもたちのことをよく理解されていることが,授業をすすめる中で子どもたちの思いを常に受け入れ,柔軟に対応されていることからうかがい知ることができました。子どもたちとのコミュニケーションについては,身振りや手話などを用いた集団へのアプローチ,個別には身振り的手話,キュー・サインなどを用いて子どもたち一人一人の実態に合わせた方法を取られていました。
 授業では,「種蒔きをやりたい」とすすんで手をあげる子,「うんとこしょ,どっこいしょ」の掛け声とともに大きなかぶをひっぱり劇を楽しむ子と,子どもたちは見通しをもって活動に取り組んでいました。大きなかぶの劇を自分なりに楽しんでいる様子が感じら
 
 
 
 
 
 
 
 
れました。
 授業研究会では,京都聾学校の小学部の実態の説明があり,続いて授業の反省と質疑が行われました。子どもたちの実態に合わせて,帯での時間割の編成や様々な学習形態をとられているそうで,16名の子どもに対して,13名の教師が指導にあたっているという状況に,参加者の中からは恵まれているなあというつぶやきがちらほら聞こえました。
 コミュニケーションについては,子どもたちが将来どのようなコミュニケーションをもち,どのような言語を活用していくのか見据える必要があるという考えのもと,集団への提示の方法と個への配慮の仕方を工夫されているという話がありました。
 参加された方々は,歴史ある京都聾学校の小学部の状況や子どもたちにどのような支援をされているか,が一番の関心のところだったと感じました。子どもの障害の多様化に伴い,教師支援の在り方やその手立ての方法など各校の違いがあると思いますが,今回のような情報交換や意見交換の場がこれからも活発にもたれることを期待したいと思います。
 
 
 小学部「算数」授業研究会
 
筑波大学附属聾学校 
佐渡 雅人 
 
 
 京都校では算数の文章題の指導について研究が行われており,本授業はその取り組みのまとめとして行われた。児童は男女各1名の計2名である。大勢の参観者がいたにもかかわらず落ち着いて授業に集中して活動しており,授業者であり担任の坂本先生の日頃のきめ細かい指導と信頼関係の表れであろうと思われた。授業については常に視覚的な教材が準備されているらしく,児童は教材を突然目の前に出されても動揺したり驚いたりせず自然にそれらを使って活動場面に移っていった事が印象に残った。
 授業研究会では,司会者から議論の中心にと指定された文章題の指導のあり方について多くの意見質問が出され,活発な研究会であったといえるだろう。ただ,参観者の小倉校の藤野先生が言われたとおり,京都校の研究の目的が「文章題をとおして言葉を豊かに育てる」ということであれば,「文章題」に書かれている言葉の意味を先ず考えさせ,そのうえで具体物なり動作なりを利用して確認し考え方を説明してより理解を深めてから,再度文章題を読ませるべきで,そうでないと,「今何を考えなければならないか」考えるために重要なヒントもないところで児童は考えねばならない,文章に接する機会が減る,等の問題をかかえてしまうことになってしまう。そのことを中心に据えてから,指導のあり方について参観者から意見が多く出された。予想・話し合い活動・具体物の使い方・立式の方法を児童に考えさせるべきである,という国語の読みの指導にも通じるせっかく
 
 
 
 
 
 
 
 
 
の問題提起が十分に討議されなかったことは授業者・参観者にとって残念なことであった。
 個人的な感想としては,児童の活動の様子の中で,1名については授業者の思惑をよく理解し,また,文章題の内容の理解も十分であるように見受けられたが,常にこの児童が中心に活動してしまい,もう1名の児童の考える機会が奪われてしまっているのではないかということが気になった。理解している児童の活動をとおして,もう一方のなかなか理解できにくい児童に理解の方法を意識させようという狙いにも受けとることができたが,残念ながら見ているかぎりではこの児童は考えようとする意識を途中でなくしているように見え,ただ自分が理解できると自信を持っているらしい計算の時だけ意識を向けていたように思える。本児が,何故こういう状祝になっているのかはわからないが,指導者の配慮で活動させれば意識を向けさせる場面はあったように思われる。
 聾学校小学部に在籍する児童の実態がますます重度化している現在,一斉授業の中での文章題・ことばなどの指導を,一般論だけでなく,一人一人の児童の理解や言語力の実態に合わせた指導のあり方にスポットがあてられなければならないのではないだろうかという自らの反省も強く求められたように感じられた。  
 中学部「養護・訓練」授業研究会
 
茨城県立水戸聾学校 
鴨志田 典子 
 
 
 古都・京都で晴天にも恵まれ,全日本聾教育研究大会・京都大会に無事参加することができた。
 4月から聾学校勤務ということもあり,聾学校における養護・訓練の位置付けさえ分からなく,試行錯誤の連続だった。そのような中で,京都府立聾学枚の中学部の養護・訓練を参観させていただいた。授業では「盲字校中学部との交流」を題材にしており,盲という障害はどのようにカバーしているのかという問いかけを生徒になげかけていた。
 聾学校生徒は,基本的な語彙力や読解力がかけているだけでなく,日常生活における常識を把握していないことが多いように見受けられる。また,ともすると肢体不自由児や精神薄弱児より,在日の日常生活の中で,障害によって他の健常者に依存しなくてはならないようなせっぱつまった状況に出会うことはなく,自分の障害をきちんと受け止め,なおかつ,自分自身をみつめていないようにも見受けられる。
 こうしたことを踏まえて,盲学校の生徒と交流をし,盲学校の生徒は見えないという障害をもち,それをどのように自分で受け止めているのか,そうした状況を目のあたりにして,生徒たちは自分の持っている力を精一杯いかし,自信をもって行動しているかということを問いかけさせているものといえる。
 生徒は,盲学校の生徒たちが,どのような方法で見えないということに立ち向かっているのかについて素直な感想を書いていた。また,それに対し聾学校ではどうなのかという
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ことを真剣に考えている様子が伝わってきた。
 また,ほかの生徒の意見や考えを把握し全体の授業にいかす,そして,他の指導者の援助をする目的でO・H・Pを操作する等サブ指導者の役割についての難しさも感じた。
 京都府立聾学校の先生方の中学部の生徒たちに対する「自分に自信をもって頑張って欲しい」という思いが伝わってくるような授業だった。
 授業研究会では,なぜ盲学校なのか,地域の学枚との交流はないのか,重複の生徒はどのように関わっているのか,目的も別なのか,集団補聴器の設置状況や管理面について,養護・訓練の年間指導計画,インテグレーションの有無についての活発な意見がだされた。
 思春期−自立−将来を念頭におき,現在の生徒にみられがちな自己防衛的な生き方や不信感から自己主張ができにくい点,経験不足から型通りのことしかできない点を見つめ,自分に自信をもって,なおかつ相手のことも受け入れ,自分の持っている力を精一杯いかして欲しいという生徒像をもち,取り組んでいる姿勢に感銘を受けた。
 基本的な言語指導という内容の養護・訓練のほかに,聾学校における養護・訓練とはどのような展開をしていけばよいのか示唆していただいた。ありがとうごぎいました。
 
 
 高等部「国語」授業研究会
 
筑波大学附属聾学校 
鈴木 牧子 
 
 
 大会初日の指定授業は,高等部2年の国語が3グループ同時展開されるということでしたので,とても楽しみにしていました。それも題材がすべて「春はあけぼの(枕草子)」。学習指導案に習熟度別学習の説明が載っていましたので,生徒の実態に応じて展開がどう変わってくるのか見せていただきたいと思い,三つの授業を少しずつ参観いたしました。
 まず,野村先生の授業の導入から拝見させていただきました。「春はあけぼの」の音読の部分でしたが,生徒にしっかり声を出させ,古文のもつ独特のリズムに慣れ親しませようと配慮なさっている様子がよくわかりました。
 次に拝見させていただいたのは,赤松先生の授業です。私が教室に入ったときは,「春はあけぼの」の学習のまとめで書いた「私の四季」という作文を,一人ひとり手話で表現する発表をしているところでした。OHPに示された生徒の文章を読ませてもらうと,認識力が高く,感性も鋭いという印象を受けました。それぞれの生徒の手話表現や身振りは,個性的でいろいろ工夫されたものでした。生徒は全員,多くの参観者がいても臆することなく,自信を持って表現していました。おそらく普段の授業の中で,お互いの存在を認め合い,表現して良かった,面白かったという経験を積み重ねてきた結果であろうと思われます。
 吉原先生の授業は最後の10分ぐらいを拝見しました。ちょうど古文(原文のまま)を手話で表現している場面でした。ここでも生徒
 
 
 
 
 
 
 
 
は教師のカードによる指示に従って,堂々と表現していました。学習の継続によって身につけた,生徒の自信のようなものが強く感じらました。
 今回の全日聾研の授業で,「手話による表現を発表する」ということを知った生徒の授業の取り組み方は,それまでと大きく変わったのではないでしょうか。手話で日本語を表現するためには,その文章をよく読みこなし,文意やイメージをより正確に,そしてより豊かにとらえなくてはいけません。生徒の「わかりたい」という気持ちは強くなり,より主体的に文章を読もうという姿が見られたのだろうと思います。指定授業の一つで,そのような読解の指導過程を展開していただけるとありがたかったと思います。
 「手話表現」の指導については,国語科の指導の中に含んでいくべきなのか,どう関連づけていくのか等について,今後よく考え,議論していくべきではないかと思いました。
 授業研究会では,京都校の先生方から,生徒の実態と習熟度別学習,指導の内容や授業の様子等,生徒とのやりとりを交えながら,具体的にお話ししていただきました。3人の先生方が生徒の実態をしっかり把握し,コミュニケーションを大切にしながら,丁寧に指導を重ねていることがよく伝わってきました。生徒の実態に合わせて作成した学習プリント等,参考にさせていただくことがたくさんあり,実りのある授業研究会でした。  
 高等部「養護・訓練」授業研究会
 
東京都立立川ろう学校 
田畑 恵理子 
 
 
 ろう学校高等部の聴覚障害教育に携わり始めて,ようやく4年の歳月が過ぎようとしている今,様々な課題や問題点が少しずつ見えてくるようになりました。特に,本校における養護・訓練では,これまで2,3年の研究を経て,ようやく年間カリキュラムを立てるまでになりました。そのため,今回の全日聾研では,聴覚障害教育発祥の地である京都府立聾学校に伺うことができることを楽しみにしていました。
 第1校時の公開授業を終え,15分間の休憩時間に,廊下に掲示されている新聞記事に目を通しながら指定の養護・訓練の授業の教室に向かう時,あまりに多い参観者に圧倒されました。3,4重の参観者の人垣で,最後部より背伸びしながら参観させて頂きました。
 授業単元は,「手話通訳」でした。本時は,合計13時間中の5時間目で,手話の成立,歴史,現代の手話等を学習してきた後の時間でした。今後は,コミュニケーションの各場面設定の指導が展開されてまとめられるようでした。生徒への「手話通訳」についての認識が一段と深まり,理解達成がえられるものと感じました。
 授業展開は,生徒9名に対し教員3名によるチームティーチングでした。通訳士の資格をもつ竹内先生の指導は説得力と迫力がありました。また,「通訳派遣制度がない昔の時代」を,九鬼,柴野先生を加えて,それぞれ医者,聴覚障害を持つ患者,とその母親役にて演じられた寸劇は,それまで少し緊張気味
 
 
 
 
 
 
 
 
だった生徒も思わず笑っていたようです。教室の雰囲気も少しずつほぐされてきたような気がしました。その後,九鬼先生が「制度の上手な利用方法」を解説され,さらに少人数に分かれての個別指導で確実な定着を図っていたのも印象的でした。OHPの使用や,カードの提示等も,効果的に使用されていました。
 その後,隣接する仁和寺御室会館での研究会では,床の間に掛け軸のある数十畳の和室における,座布団に座してのもので,趣を感じました。
 手話の教育と人間教育,教員の手話研修,導入の時期,など主に手話に関しての質問が多かったようでしたが,どれも私も日頃から感じていた問題であり,非常に参考になりました。
 ありがとうございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  

研 究 協 議 分 科 会

 
 @ 基 本 問 題
 
福岡県立久留米聾学校 
中城 悟 
 
 聾教育発祥の地「京都」で初めてこの研究大会に参加でき,多くの情報をお土産にする事ができました。
 この分科会には,19のレポート発表があり,1本のレポートに付き10分の発表と3分の質疑応答でした。せっかくの素晴らしい実践が,数分間で早口の報告となり大変もったいない感じがしました。当日配付された資料を含め,再度ゆっくり学習していきたいと思います。
 この分科会は,障害の認識についての実践交流で,「交流教育」「福祉」「障害認識の授業」の三つが大きな柱となっていました。
 「交流教育」では,地域,保護者の協力を含めた豊橋校の取り組み。その中では,交流相手校の子どもたちが,キューサインを使ってトトロの歌を大合唱してしているビデオは感動的でした。教員が相手校の授業に積極的に入っていく岐阜校の取り組み。交流を通して,聾学校の役割を考えさせられた一宮校のレポート。
 「福祉」を考えるという点からは,施設や老人ホームなどへの直接体験を取り入れ,福祉について考えていく岡崎校のレポート。校外での養・訓やボランティア活動の体験を通し「自分たちの学習は自分たちでやる。」という姿勢を示した秋田校の取り組み。アクションプランをもとに,勤労体験を取り組む岡崎校の実践。
 「障害認識の授業」では,幼児の内面活動にも目を向けていく沼津校のレポート。年間カリキュラムを作成し取り組んでいる堺校の実践。舞鶴校からは,思いが出せる子どもにと作文を重視していることや,成人聴覚障害者からの話を聞く取り組み。「敬老の日には,聴覚障害の老人からの話を聞く取り組みも。」と提起されたことも成るほどと思いました。「教師自身が聴覚障害をどのようにとらえているか。」の発言が印象的だった豊橋校のレポート。
 また,「聾教育は,明治以降どのように伸びてきたのか。そして,これからどの方向に進もうとしているのか。今,何が大切なのか。」という,千種校からの問題提起は,興味深く聞きました。ぜひ,情報交換をしていきたいものです。
 分科会で報告されたどのレポートも内容が深く,ゆっくりと分析していきたいと思う実践でした。
 最後に,10分間という駆け足の助言でしたが,佐藤先生の話「障害者の前に一人の人間であること」,都築先生からの「今後の聾教育の方向性」の助言など,大変参考になりました。
 以上,簡単な報告になってしまいましが,発表された先生方ご苦労さまでした。発表の続きは,福岡で聞かせていただけることを楽しみにしております。ありがとうございました。
  
  A早期教育(3歳未満)
 
石川県立ろう学校 
濱中 和美 
 
 
 今年4月から教育相談を担当してますが,まだまだ暗中模索の日々を過ごしている私は,他校の発表を聞き今後の実践に参考にしたいと思い参加しました。
 この分科会では「望ましい早期教育のあり方について研究しよう」をテーマに8本の研究発表がありました。
 久留米ろう学校から教育相談保護者教室で,交流幼稚園保護者との合同学習会を行なったとの発表がありました。その学習会では『聴覚障害者の願い』という演題で卒業生の話を聞いた後,意見交換をし,最後に皆で小1の聴覚障害者の母親を講師にして手話実技をしたということでした。交流幼稚園の園児はもちろん保護者にも聴覚障害について理解してもらうことは,親同志の繋がりを深め,ひいては,それが子ども同志の交流が深められることになると思いました。
 他の学校の保護者教室での取り組みも発表され,その中で父親も子育てに参加して母親の支えになってもらうためにどのような手立てをとっているか情報交換をしました。先輩お父さんの話を聞いたり,幼稚部の集いに混じり父子ゲームに参加してもらったり,合宿に家族で参加してもらったりして父親同志の交流を深め,母親の頑張っている姿を見てもらう機会をそれぞれの学校で設けているとのことでした。このような取り組みはとても大切で,父親に学校へ足を運んでもらうように行事等を工夫する必要があると感じました。
 母子自由あそびの様子をビデオや写真に撮
 
 
 
 
 
 
 
 
 
り,それを母と担当者で共に見,子どもの良い所を見つけ母親を励ましながら適切なアドバイスをすることで親子の信頼関係がつくられていくことを再確認しました。
 また,記録及び連絡帳が各校それぞれ工夫してあり,そこに記録されている子どもの成長の様子,親の思い,担当者のアドバイス等を見ると母親と担当者が共に子どもに向き合い,豊かな心を育て,ことばを育てるために日々努力している様子が分かりこの仕事の重要性を改めて感じました。
 最後に今西茂子先生(筑波大学附属聾学校),伊藤泉先生(健康福祉センターみやこ園)からは示唆に富んだ助言をいただきました。その中で心に残った『家族の中でどんなスタンスでお母さんが子育てをしているか捉えようと努力し,その実像に近づいていき,私達がプロとしてもっている知識を知らせる必要がある。』を忘れずに子どもと母親に接していきたいと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  B 幼 稚 部 教 育
 
日 本 聾 話 学 校 
佐々木 勝 
 
 幼稚部分科会は,子供の発達をどうとらえるか・教育環境・両親援助・遊びについて・文字を使っての実践・行事の扱い方・個別指導の実践といった内容の発表が15ありました。
 その中の一つ,豊橋聾学校菰田先生の“健康な生活リズムを身につけるために”と言う発表は,とても印象的な内容でした。野菜嫌いな子供達をどうやって好きにさせようかと,畑にピーマンを植えて育てていくお話でしたが,ピーマンを取り上げた経緯や取り組みの苦労,使われた教材,後日談を伺うことができ大変参考になりました。子供達と先生が共有した経験をとおして,生きた言葉の会話が展開していた事や,ピーマンという一つ題材を子供達と一緒に丁寧に扱われていたことがとても良かったと思いました。先生のお話を伺っているうちに会場全体が和やかな雰囲気に包まれ,私も聞いていてクラスの子供達と一緒に野菜を育ててみたくなりました。きっと,野菜が好きになるのではないかなと思います。
 さらに,分科会の中で興味深く,現場に帰り実践したい内容に両親援助がありました。母親と先生が共同して,毎週子供の目標と反省を記録した取り組みや親が聴覚障害があるときの援助のあり方など,同じ様な悩みや問題を抱えている者として共感し,これらの具体的な報告に大変励まされる思いがしました。一人一人の親と信頼関係をしっかり築くこと,親との対話の時間をできるだけ多く持ち,親の思いを聴いて丁寧に対応していくことなど,学校に帰ってすぐにでも始めたいと
 
 
 
 
 
 
 
 
 
思いました。
 この分科会全体を通して,教師主導から子供主導に各校の取り組みがなされているのを感じました。しかし,本当の意味での子供主導とは,どういうことなのだろうかと改めて考えさせられました。助言者の先生方から,子供の遊びから大人とは異なる子供の世界が見えてくる事や子供達の日常生活の視点を大切にした教育的関わりについて伺い,これらはまさに子供の側に立ったものであると思いました。また,その関わり中で教師は,「教える意識をすて,会話を楽しむ」事であると言われたましが,その会話を楽しむにはいったいどうしたらよいのでしょう。
 「言葉は教えるもの,教えられるもの」と言う考えに縛られていては楽しめるものではありません。子供の気持ちに沿って会話を楽しむ事ができたらこんな素晴らしいことはないのですが,時によって子供に,何も言ってこないこともあります。そんな時,私は,子供の内側の力を信じて,子供からの働き掛けを待ってみたいと思います。この「待つ」事が,子供主導の鍵となるのではないでしょうか。教える側に立つものとして,“待つ身は辛い”事かも知れませんが,子供からの発信が必ずあることを信じられるなら,恐れることはありません。私も学校に帰り,「待つ」を子供を生かすキーワードとして,子供達一人一人と毎日楽しい会話を繰り返したいと願っています。   
  C養護・訓練(言語)
 
北海道札幌聾学校 
石川 英仁 
 
 
1.はじめに
 18本の研究レポートがあり,発表者にとっては十分な発表時間が保障されていたわけではありませんが,どの先生も要領よく聞き手に内容を伝え,その話しぶりには研究に対する自信と気迫が感じられました。また,この様に発表本数が多いわけでしたが,司会者の先生の要を得た進行で質疑応答の時間も確保されていきました。
 
2.研究発表
 言語力を育てるための各校の発表から,そのアプローチが様々であることを再認識させられました。実態把握のための先行研究や資料をもとに学校独自のチェック表を作成し全員の先生で取り組んでいる実践,全国的調査に基づいて行われた早期教育や中学部での言語指導のあり方を探求した発表,ニュースを発行し親子の対話へと言語環境を作りあげた実践,教科指導を進める上での言葉の力を育てる工夫や意欲的で主体的な授業をめざして発問・発言を分析した発表などこれからの指導に大いに参考になりました。
 また,各校とも一人一人の実態に即した取り組みが伝わってくる中で,個人に焦点を当てた3本の報告がありました。助言者の先生から,話し言葉の成立する条件や実態に合わせて系統的に指導することが大切である等の話がありました。
 発音に関する5本の発表では,小学部児童から青年期までの発音指導の取り組みが具体的に理解できました。従来の方法に子供の実
 
 
 
 
 
 
 
 
 
態をふまえて,きめ細かいステップを組み立て,効果を上げた実践,自分が発音している場面をビデオに収録し,それを視聴させて自ら癖を直させたり,また社会へ出る準備として学年のニーズに合わせて単音節明瞭度を向上させた取り組みなど,資料やビデオを使って報告されました。
 助言者の先生からは聾教育は「温故知新」であるとも話されました。私はこの分科会に参加し,これまで聾教育を支えてこられた諸先生の教えを習得し,実態を深く探って,新たな方法も吟味しながら指導に当たることが大切であると思いました。
 
3.終わりに
 分科会に参加し,聾教育を全国の実践から学ぶことができたことは,これからの指導に大きな財産となりました。また,言語指導,発音指導を始めこれまでの聾学校が歩んできた道を「聾教育の不易と流行」から,ますます前向きにかかわらなければならないと考え帰路につきました。
 
  D聴能・教育工学
 
和歌山県立和歌山ろう学校 
西出 雅美 
 
 
 今回,初めて全日聾研に参加させて頂きました。自分が今,担当している聴能の教育実践の中に役立てられる話が聞けることを期待して,この分科会を選びました。
 全部で17本もあるレポートを,以下のように5つのテーマに分けて,発表,質疑応答,その後,助言を頂くという形ですすめられました。
 
・パソコンを利用した情報教育
・移動体通信,インターネット,情報提示 
 装置の活用
・集団補聴システム(ループ,赤外線)
・補聴効果の評価
・その他 人工内耳のリハビリ 等
 
 時間に追われるように,数多くのレポートをこなしていくので,発表される先生方はまだ言い足りなさそうだし,聞いている私は,消化不良になりそうでしたが,助言者の中川辰雄先生(横浜国立大),立入哉先生(愛媛大)の適切な,時には,手厳しいご批判は非常に興味深いものでした。
 以上の発表をふまえて,話題を3本「集団補聴システム,補聴効果の評価,人工内耳」に絞り討議しようということになりました。
 「集団補聴システム」については,ループの問題点を解決するために,これからは赤外線が主流になるだろうとのことですが,よりよい音を聞かせようとする先生方の努力されている姿がうかがえるとともに,自分のところでは最適な調整ができているか,と反省させられました。
 「補聴効果の評価」では,数校の先生方から語音検査や個人カルテについての報告がありました。
 相互理解のために,オージオグラムの統一を,という提案もありましたが,各先生方がそれぞれの意見を持たれており最も良い形へと話を詰めるまでには至りませんでした。
 時間が足りなくて,人工内耳についてまでは論議できませんでした。これについては,今非常に関心の高いテーマだと思うのですが,もう一本あったレポートが他の分科会になっており,その発表を聞けなかったのも残念でした。できれば,同じ分科会で討議してほしかったです。
 最後に,現在,教育周辺機器の開発はめざましいものがあるけれども,そういったものに目を向けるとともに,子どもたちが社会生活の中でどのように効果的に活用していけるのか,もっと子どもの目線に立った実践を,という助言が印象に残りました。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  E重複障害教育
 
東京都立江東ろう学校 
伊藤 昭子 
 
 
 ろう教育3年目・重複学級担任3年目で,やっと少し右左がわかってきたところです。(教員生活は,長いのですが…)「え!京都。3日間も…」と思いながらの参加でした。
 分科会では,「障害の実態に即し,一人一人がより豊かに発達する指導のあり方について研究しよう。」というテーマで,6つの研究発表がありました。
 発表の中で共通していることが,いくつかありました。
 ひとつは,児童・生徒の詳細な実態把握から,指導が始まっていることです。障害は,個々によって実に様々で,時には捕えどころがなく,指導者を翻弄することもあります。(私が担当している学級でも,同じダウン症でありながら,全く対照的な反応を示します。)発表者は,例外なく児童・生徒を実に細かく観察し,課題を見つけ出していました。
 二つめは,実際の体験の中から,育てていくことを重要視していた点です。言葉の指導,手話の獲得,買い物学習,バス通学など,常に身近なこと,実際に体験したことをもとに,学習を計画し無理なく指導していました。
 三つめは,指導に長い時間をかけていたことです。1年あるいは,2年・3年もの期間をかけ学習に取り組んでいました。それだけ,重複障害を持つ子ども達は,長い期間の地道な努力が必要であるということだと思います。しかし,身につけたことは確実に,生活に結びついて広がり,日々の生活に生かされていくことがわかりました。
 日々の指導に悩み,これでいいのかと不安
 
 
 
 
 
 
 
 
になることが多い私ですが,今すぐ何かやらなくては,という衝動に駆られるような発表を聞くことができました。それとともに,2つ印象に残った言葉があります。
 それは,「やりやりやり取り」です。発表者の先生が,「私たちは,言葉のやり取りといっても,多くは,一方的に言葉を発するだけになってしまい,やりやりやり取りになってしまう。」とおしゃっていたことです。本当にその通り。思い返せばどんなに発する言葉の多いこと。いましめの言葉として心に刻んでおくことにしておきました。
 それから,助言者の先生の言葉です。「重複障害者は,毎年増加の傾向にある。ろう学校以外にも,聴覚障害者はいる。…やがては,もっと障害の重い児童・生徒も受け入れなければならないだろうし,受け入れて欲しい。…ろう学校の先生は,補聴器の必要性を認める貴重な存在なのだから…」というお話が心に残りました。
 帰りの新幹線の中で,ろう学校の教師であることを誇りに思い,また,明日からがんばろうと考えながら帰宅しました。  
  F 生 徒 指 導
 
青森県立青森聾学校 
福士 明子 
 
 
 高等部に所属し,まさに思春期にある生徒たちと毎日かかわる中で,年齢相応の生徒指導面での問題に直面することも多く,「適切な援助とは」,「信頼関係を築くには」ということが,自分にとっての課題のひとつと感じていました。今回,全日聾研に参加するにあたって,そのテーマに強く興味を抱き,生徒指導分科会に参加させていただくことにしました。他の学校での取り組みの中に,何か答えがあるのではないか,という気持ちでいっぱいでした。
 本分科会は,参加者が23名で,計16の分科会の中で最も少人数の分科会のひとつでした。これは,参加者のほとんど全員が,何らかの形で発言する機会を持つことができ,むしろ恵まれていたと思います。そして,「心のふれあいに基づき,児童生徒の内面を理解できる生徒指導のあり方について」というテーマのもと,7人の先生方の研究実践発表がありました。小学部の交流や児童会活動から,
中・高部における問題行動に対する取り組みまで,幅広い内容でしたが,先生方の熱意が伝わってくるものばかりでした。
 姫路聾学校中学部では,不登校の生徒に積極的に働きかけ,成果を得たとのことです。家族や関係機関との連携を図り,問題行動の裏側にある,心的要因をケアすることの大切さを改めて感じました。
 聾学校生徒・教員・父母・普通高校生の,校則に関する意識調査の実践もありました。校則などの規則は,生徒にとっては,とかく教員側から押しつけられている感があるよう
 
 
 
 
 
 
 
 
 
で,なぜ必要か,生徒・教師・親が共通理解できなければ,自主的に守ろうという意識は育たないと思います。それには,福岡校・姫路校のような,生徒との関わりを大切にし,生徒に主体的に考える機会を与え,単に縛り付けるのではない,良さを伸ばす指導は大変参考になりました。
 そして,霞ヶ浦校から,小学部生徒が集会で生き生きと活動する様子が,宮城校からは,交流の実践の様子が報告され,自主性の芽はこのような活動を通して育てられていくのだと実感しました。
 また,酒田校からは,学級ノートの活用について報告されました。その中にもあるように,担任が明確な意図を持って行い,担任と生徒の関係が良いものであれば,生徒の内面を理解する一つの有効な手段であると思いました。
 全体を通しての助言者の先生方からの,問題行動は少し人生の寄り道を楽しんでいるのだ,また,信頼関係を築くには,普段から魅力ある授業を展開することが大切であるとの言葉が印象的でした。
 実践報告のひとつひとつに刺激され,助言者の先生方には,前向きに考え自分を向上させなければという自覚を促していただき,非常に有意義な分科会であったと思います。本当にありがとうございました。
 
  G 進 路 指 導
 
島根県立松江ろう学校 
久保田 和代 
 
 
 「生徒の個性・特性を伸ばし,より豊かな進路選択ができうる教育体制,進路指導のあり方を研究討議しよう」という分科会の主題を受けて,二十数名が集い,4本の発表が行われました。今年は,本来の分科会の形態に戻り,進路指導に焦点を絞った協議ができました。
 指導助言者の高橋勉先生は,長年聴覚障害の方とのかかわりが深く,現在は,日本障害者雇用促進協会大阪事業所に勤務しておられ,また,福田憲一郎先生は,進路指導のキャリアが長く,現在は姫路聾学校長をしておられ,それぞれの発表について,豊富な経験と社会情勢をにらんだ適切な助言をいただきました。参加者は,東京都心身障害者福祉センターの聴覚障害者担当の方々,聾学校の幼稚部から高等部の担当者と幅広く,社会参加を目指した幼小中高の一貫教育に向けて情報交換や具体性のある話し合いがなされました。 
 障害者福祉センターの方の発表では,就労が困難な場合の教師・本人の問題点を具体的に提示いただき,「なるほど」と頷く点が多々ありました。また,諸検査を受けるにあたり,卒業までに手話でも筆談でも良いので,コミュニケーションの手段を確立しておいて欲しいとのことでした。学校では,よく「わかった?」と尋ねるが,「わかった・わからない」ではなく,わかったことを自分の言葉で言う習慣をお願いしたいということでした。助言者の方から,「あれもだめ,これもだめ」ではなく,「これだったら,できるね」という自信をつけさせる進路指導をして欲しいと話され,(−)思考ではなく,(+)思考でいくことを再認識いたしました。
 生野ろう学校幼稚部の発表では,インテグレートしていった子ども達の保護者の方へのアフターケアや一般校の先生達との研究会の取り組みについて話され,インテグレーションの問題を全員に問題提起していただきました。インテグレートした子ども達が帰りたい時に,帰りやすい状況を作っておくこと。聾学校に暗いイメージがあるので,魅力ある聾学校にするためには,教師一人一人の努力が必要である。9才の壁を越えられる生徒には,インテグレーションも良いが,そうでない場合は,適応が難しい。
 以上のような話し合いがなされ,幼稚部を修了する時の進路の選択は,保護者の方がされるケースが多いと思いますが,適切なアドバイスができるよう日頃から研鑽を重ねる必要があり,また,聾学校が地域のセンター的な存在になるのが望ましいと感じました。
 福岡聾学校の発表では,高等聾学校の先駆者としての取り組みが報告され,大宮聾学校からは,幼小中学部の時から卒業後のことを見据えた進路指導について報告がありました。進路決定を早く行うのは本人の自覚を促す意味で良いが,生徒が進路のことをよく理解しないままに事が運ぶこともあるということ。社会の受け皿が変わってきているので高等部の職業教育は,わかる授業を進めながら科目を厳しく限定しないでいろいろな科目を流動的に取り込むのがベターであるということ。いろいろな意味で自己啓発をやっていかないと一つの職場で続けることが難しい等,話し合いました。
 大変有意義な分科会でした。
 
  H 職 業 教 育
 
長崎県立ろう学校 
樽 成人 
 
 
 今回,秋の京都を堪能しようと思って大会に参加しましたが,まだ木の葉は色づいておらず残念でなりませんでした。しかしながら,大会そのものは盛況で,特に私が参加した職業教育部分科会は素晴らしいものでした。
 分科会の様子は,参加者は30人程とさほど多くなく,席も円単式になっており,質問等も気軽にしやすい雰囲気でした。
 レポート発表は8本(紙上発表1本を含む)あり,前半が「日頃の教育実践」,後半が「学科改編の動き」でした。
 
 前半は生徒のニーズ,社会のニーズを実際の教育課程でどのように融合させ,具現化したかを各先生方が述べられており,各学校大変な努力をしておられているよう感じました。
 
1.CAD(パソコンソフト)を使った製図  作成
2.キー入力練習ソフトを足がかりにワープ  ロ検定合格の実績をあげた過程
3.デジタル印刷設備の導入と今後の展開
 
 後半は,私個人非常に関心が高かったのですが,現在ろう学校を取り巻く環境の厳しさ,新しい試みを待ったなしに迫られていることなどがレポートされました。
 
4.和歌山聾学校と和晩山南業高校との
  連携授業におけるの成果と課題
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
5.大宮ろう学校の専攻科設置に向けた
  取り組み
6.大田ろう学校の新職業科試案作成の
  経緯と都立ろう学校再編の動き
7.滋賀聾話学校の学科改編に至る過程と
  今後
 
 以上を主なテーマとして話が進み,質疑応答の時間も司会者のソフトな口調にうまくリードされて様々な意見が飛び交いました。
 わかりやすい教材の追求し,それを活用する考え方,やや困難でもその困難さを味わせながら体得させる考え方などを強調されていたのが私の印象に深く残っております。
 また,各都道府県の学科改編の動向が少しなりとも掴めたような気がします。
 なかなか自分の気持ちをうまくまとめきれないのですが,『就職難にもかかわらず,なかなか危機感が持てない子どもたちに卒業までに社会人としての自覚と自信を身につけさせた。』そんな想いがを参加者全員から感じられ,とても感動しましことを付け加え終わりにしたいと思います。
 
 
  I 健 康 教 育
 
長野県立長野ろう学校 
太田 敏子 
 
 
 「健康教育」の分科会は,毎年の開催ではないとのことで,本年度分科会が開設されてましたので,学校祭前々日の忙しい日になってしまいましたが,参加させていただきました。
 前日の記念講演において,服部先生より「自立して生きる」というお話をお聞きしました。全人的なとらえの中で,特に思春期の性について,障害児であっても思春期は避けられるものではなく,それゆえにいかに乗り越え成長の糧にしていくかというお話でしたが,健康教育の分科会とも重なるところの多い内容でした。
 テーマは,「健康な生活を実践する力を育てる健康教育のあり方」でしたが,7本のレポートのうち5本が性に関するものでした。15校の参加でしたが,幼稚部から高等部までの一貫した性教育カリキュラムができている学校は少なく,全校の指導計画は大変参考になります。小学部の指導で,用いる図によって受け取り方がちがってしまった例なども発表されました。短大生がエイズについてどの程度理解しているかという報告もありましたが,小・中・高での性教育の結果がよく出ていました。いずれにせよ,性の問題は避けて通れない問題であり,それだけに誤った理解ではなく,正しい知識をきちんと身につけさせる必要性を再認識しました。
 性を含めた健康教育全般についての取り組みについては,幼稚部から発表がありました。基本的生活習慣をしっかり身につけることと,健康な生活に向かう保健指導,さらに安
 
 
 
 
 
 
 
 
 
全・給食・性,そして障害については幼稚部から強調するのではなく少しずつ理解させていくとのことでした。資料として,先生方が実際に演じたビデオを見せるとのことでそれを見せていただきましたが,ほんとうに身近な場面なので子どもたちも受け入れやすいと感じました。
 最後に,学級担任と養護教諭の協力,またろう学校において養護教諭はどのような活動をしたらよいかというレポートが出されました。私自身,養護教諭としてろう学校での経験年数も浅いので,とまどいも多いのですが,同じように感じている先生方がおられることもわかり,心を強くして頑張ろうという気持ちになりました。
 コミュニケーションの問題については,どこの分科会にも含まれる問題だと思いますが,今回この分科会では取り上げることができませんでした。しかし,体のことや病気・けがの訴え方等々,健康に関しても非常にたくさんのことがあり,正しい知識や対処の仕方など学習することもたくさんありますので,時々に応じて伝えていきたいと思います。
 忙しい研修でしたが,少しでも他校の様子に触れさせていただくことができ,有意義な会にすることができました。このような機会を与えて下さった先生方に感謝申し上げます。ありがとうございました。
 
  J 寄 宿 舎 教 育
 
鹿児島県立鹿児島聾学校 
上假屋 恵 
 
 
 聾学校に赴任して七年目。小学部生だった子が高等部生になるほどの長い年月が流れたはずなのに,その成長を見守ってきた「寮母」としての私は,今だにわからないことだらけです。
 毎日の生活の中で絶えず揺れる舎生一人ひとりの心情に,どれだけ気づき,支えてあげられるか。また。舎生が次々となげかけてくる疑問にどう答えたらよいか。今自分は,この子にどう手を貸すべきか。このきまりは必要か否か,など,自分の中の葛藤は,問えば問うほど切りがなく,自分の器の小ささを感じる時も少なくありません。
 そんな私の自問自答に,この大会は,大きな解決の糸口を見いだしてくれました。
 特に,二日目の寄宿舎教育の分科会では,具体的に身近な問題として実態をとらえ,共感できる事柄も多く,身を乗り出すような思いで臨みました。
 ビデオの活用と模擬体験をもりこんだ学習会や,外出・外食等の経験拡大による社会性の習得。3ヶ年にわたり計画実施されている性教育。テレコミュニケーションの実態と今後の課題。舎生の自主性を尊重した日課の見直し。舞台発表の取り組み。体験入舎の取り組みなど,13校での実践報告をきき,各学校がそれぞれに異なる環境の中で,研究や努力を重ねられ,すばらしい成果をあげていらっしゃることに感心させられました。
 そして,それに基づく討議や情報交換の場では,「食事中にテレビを見せてよいか。」「正しい男女交際とは?」「FAXやポケットベ
 
 
 
 
 
 
 
 
ル等の使用による新たな問題とは?」「ゆとりのある,かつめりはりのある日課とは?」などについて様々な意見や事例などが,述べられました。どの学校も舎生の言動や要望には共通点があり,それに対して職員は,様々な意見を話し合いにより統一し,共通理解をはかり,その状況に適した対応策を編み出していく。日々に行われるこの作業こそが,寄宿舎教育には欠かせないものである。当然のことながら,私は改めてそう感じました。
 また,大泉先生の「食事が単なるえさになってはいけない。入浴が洗体になってはいけない。ゆとりある文化的な楽しい寄宿舎生活にしよう。」「失敗しても挫折してもふんばる力を育てよう。」「困った時にどうしたらよいか,辿り着く術を教えよう。」「いろんな事があっても,やっぱり仲間と思える人間関係でありたい。」などの言葉も感慨深いものでした。
 近年,舎生数の減少が問題化される中で,魅力ある寄宿舎をどのように創造していくか。数々の課題を胸に,京都を離れ帰鹿する私の心は,感動と使命感と,この大会に参加できたことへの感謝の気持ちでいっぱいでした。
 
 
 
 
 
                   
  K 国 語
 
山口県立聾学校 
井上 昭子 
 
 
 本分科会では主題を「国語の基礎的な力を伸ばし,生活の中で生かせる国語力を高めるための指導内容・方法について研究しよう」に定め,六つの研究発表をもとに会が進められました。
 まず最初に愛知県立千種聾学校の上田先生がその発表の中で「授業の主体者はあくまでも子供達であり,教師は支援者でなければならない」ということを言われました。子供達の実態把握,そしてそれに基づいた教材の精選と教材研究の必要性。子供達にとってまさに「分かる」という実感,喜びこそが次の学習への意欲に結びつくものであると改めて感じました。
 その他研究発表は読むことの指導,書くことの指導に関するもの,教師の発言から見た授業分析など内容豊かなもので,先生方の地道な日々の取り組みが垣間見られるものばかりでした。また授業風景のビデオや自作教材の実物なども見せていただき,興味深く発表を聞くことができました。
 そして国語の指導に対する参加者の熱意は,その後の活発な質疑応答・意見交換にもよく表れていました。
 印象深かったのは,読むことの指導に関する協議の中で,教材として取り上げた作品の一語一語の重みについて教科の特性という観点から討議がなされたことです。そしてそれは自作教材制作の如何に深く関わることであるだけに重要かつ難しい問題であると思われました。このことについては,文を変えることによって起こる作者の本意とのずれを懸念
 
 
 
 
 
 
 
 
する意見や子供達の言語力に応じた語句の書き直し,段落の省略は必要だとする意見など様々でした。
 書くことの指導に関する協議の中では,主に子供達の「書いてみよう」という意欲を引き出すための指導の工夫について話し合いました。子供達の書いたものを受け入れ認めてやることの大切さが繰り返し強調されながら5W1Hを用いた創作文テストや絵の表現の言葉への置き換え,また字数と題材を設定した小論文の指導など各校の取り組みが紹介されました。
 助言者である久米先生,井原先生からも的確なアドバイスをいただき,子供達の心を育てることこそ国語教育に欠くことのできないことだと痛切に感じました。
 聾学校に勤務し始めて二年余りが過ぎ,日を追うごとに聾教育の難しさを感じ始めている私ですが,この分科会に参加して多くの先生方のあらゆる実践,お考えに触れることができてとてもうれしく思っています。私もこれから子供達にとって良き支援者となり得ることができるように努力していきたいと思います。  
  L 社 会
 
川崎市立聾学校 
白井 義徳 
 
 「生きる力に結びつくわかる授業」のテーマのもと,5名の先生方の発表とその合間に質疑応答と助言の先生方のまとめが入り,討議が進んでいきました。その様子を小学部の実践と中学部以上の実践に分けて報告をさせていただきます。
 豊橋聾の天野先生は,生活科で校外学習を単元にし話し合い,調べ学習,疑似体験をもとに体験する中で「児童が自信を持ち,助け合い協力し合う結果,相手を認めることが出きるようになった」
 神戸聾の大山先生は,地図学習を児童が持って来た新聞切り抜きをきっかけに展開し「社会の出来事に興味を示し,生活の中から情報を得る意欲を育てられた」
 生野聾の前田先生は,児童がTV・映画・本・マンガなどから得た情報を年表に分類させ,人々の生活がどのように変化していったかを楽しく学習していった。
 体験することにより,日常生活や社会の出来事に関心を示し,子ども自身が学習に結びつけ主体的に進められ,具体的に児童の変容も見られた報告で,体験学習の重要性を再認識したとともに,先生方の新鮮な発想や取り組みに驚きと納得の連続でした。
 また,助言の先生からは,「子どもに情報を与えていくことの重要性」「空間認識をどう育てるか?」「子どもの実態に合わせた指導計画の組み替えの必然性」「言葉の言い替えをするときの注意」「当時の人の生き方を聞こえない人の生活に立って考えさせる」などの指導上の重要なポイント・適切なアドバイスをいただきました。
 
 
 
 
 
 
 
生野聾の徳永先生は,「九州遺跡めぐりの旅」で自らの目で確かめ,触れることで「暗記することが多い教科」のイメージを覆すダイナミックな実践で,生徒も歴史に関心興味を持ちはじめている活動の様子を「生徒自身の血肉に残る実践」と助言者の関先生がまとめられました。
 名古屋聾の鬼頭先生は,専攻科の実践の中で進路選択に必要な「企業の知識」「国民の権利・義務」や「障害者の権利・福祉」など,自らが生活していく中で必要なことを学習展開されていました。
 その中で,「情報が入りにくい生徒たちにいかに情報提供していくか?」「障害を認識して聴覚障害者としてどう生きていくか?」また,「社会科だけで行うのには限界があるのでは・・・」「中学部・高等部の養護・訓練で体系的に進めていく取り組みを試みていく必要があるのではないか?」など助言者の西垣先生が聴覚障害者の立場から提案されました。
 討議の中で「小学部時代にどのような学習を積み上げておけば,中学部・高等部で学力をつけることができるか?」と小学部の先生から質問があり,子どもが小学部時代に「5W1H」を把握することが出来ていれば「読む」「調べる」「まとめる」力が育っていくのではないか?と助言されていたことが,印象に残りました。
 私自身の日頃の指導を見直す機会をいただきました。研究会開催に御尽力いただきました関係者の皆様方に御礼申しあげます。 
  M算数・数学
 
鳥取県立鳥取聾学校 
竹中 友張 
 
 
 私にとって,ろう学校勤務の初年度に,この大会に参加させていただく事ができたのは,感謝な事でしたし,それに加えて算数・数学の分科会では実に多岐にわたるテーマの発表を聴く事ができ,今後の授業を進めるにあたって数々のヒントをいただきました。
 特に「2進法の指導」のお話は,「キャンディー取りゲーム」「暗号ゲーム」等,数学的内容の充実度と楽しさとイメージしやすさの三つの要素が盛り込まれた,すばらしい実践報告だと思いました。
 また,「手話表現の工夫」のお話では算数・数学の文章題において生徒に問題の意味を理解してもらうだけでも本当に難しい事だと,私はろう学校に勤務し始めてから,常々感じておりましたので,参考になる事が数多くありました。授業中の手話の用い方の工夫について指針を示していただいたように思います。
 次に,「グラフィングツールの利用」のお話についての感想を述べます。この発表は,手描きではグラフを表すのがかなり難しい関数をグラフ電卓を用いて描いていく実践についてでしたが,数学的思考との両立をはかりつつ最新機器を用いて視覚的に生徒に迫っていく様子がとても興味深かったです。私の個人的な見解を述べると,グラフを描く際に,数学的思考によるアプローチも極力大切にした方が望ましいと思います。
 その他,基礎学力検定,「計算問題集」を用いた計算力定着の指導も,ろう学校における授業ではスモールステップを本当に大切に
 
 
 
 
 
 
 
 
しなければならないと感じていた頃だったので,具体的な指導法を呈示されてありがたかったです。
 また,分科会全体の進行を振り返ってみると,質疑応答の時間も十分にとっていただき,さまざまなやり取りができたのは研究を深めるために,行き届いた配慮がなされていたと思います。私個人の見解を述べると,もう少し,発表の本数を絞って,さらに一つ一つの研究に対して思索を深める余裕があればいいなあ,と感じました。
 今回,この分科会に参加させていただくことで,授業の進め方のレベルアップをはかりたいと考えていましたが,私自身の研究,研修の進め方の方向性を立てる事ができました。それは「視覚的な手法をいかに充実させていくか」という事と「スモールステップに対する工夫」と「反復練習による定着」という三つの柱にまとめられます。この三つの柱についてこれから私なりに研鑽を積んでいきたいと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                 
  N 理 科
 
大阪府立生野聾学校 
中川 克彦 
 
 参加人数の最も少ない分科会のひとつでありましたが,ひざを交えての討議ができたと思います。
 今回,発表者7名のひとりとして参加した分科会のようすなどを紹介させていただきます。テーマとして「科学的な見方,考え方を育てるための学習のあり方を研究しよう。」が掲げられ,各発表者が自分の実践やグループでの取り組みを発表されました。そこでのレポートを極簡略に紹介します。(発表順)
@理科用語の定着度調査から(大阪市立聾)
 一般校と比較し,今後の指導に生かす。
A実験を通して科学的思考を育てる(生野聾)
 失敗した経験にも,新しい発見が多くある。
B理科2分野における到達目標(堺聾)
 学習の系統性をより高め,理科学習の向上 を図る。
C理科の面白さを伝える工夫(生野高等聾)
 理科見学会などを通して,興味を高める。
D電池実験に関する考察(和歌山聾)
 (イオンの学習を楽しくするために)
 備長炭や10円玉と1円玉を使って電池をつ
 くる。
E物理(電気を中心に)(堺聾)
 実験の工夫や家電製品の原理を通して電気 に親しむ。
F理科におけるCBLの活用(筑波技術短大)
  (Walking is Graphing)コンピュータと  自分の運動を連結させグラフをつくる。
 これらのレポートは,重複する部分も少なく活発な意見交換や新しい発見・発想さらに今後の実践へのアドバイスがありました。これからの聾学校の理科教育の進め方の大きな柱が示されたと感じました。各発表は,20分間という限られた時間で行われたため,点や線の部分であり今後各自これらを結びつけてひとつの流れ(系統性)を工夫してつくり出さなければなりません。この努力が,一般に良く言われている「理科離れ・理科嫌い」を防ぎ,逆の方向へ導くことになると確信しました。
 このためにも,実験・観察に十分な時間をかけ,生徒の中に理科はなかなかおもしろいものだという気持ちを芽生えさせる取り組みや,(どんなに小さくても)記憶に残る驚きや発見,さらに私たちの生活の中に役立っているものと結びつける教材を工夫する必要に迫られています。
 聴覚障害を持つ生徒にも,情報化の波は訪れていて,「酸性雨」「オゾン層の破壊」など表面的な部分は,よく知っています。これに対しての疑問なども持っているので,一歩深めた対応も必要であり,これに対して「理科だより」を出している授業以外での取り組みも知りました。
 私個人的なことではありますが,酸性雨による森林破壊のメカニズムは,濃度と酸・アルカリの授業の総合的なものとして取り上げています。はじめに降る酸性雨の濃度では,木に対して被害はでません。しかし,雨がやみ太陽がでると木についた酸性雨の濃度は,水の蒸発とともに濃くなり,森林が枯れていく被害が生じてくると説明しています。学年の進行によってまた内容も異なると思いますが,一応筋の通った話なので納得していると思っています。
 このようなトピックスなどを取り入れたものを授業又は授業外の方法で少しでもわかりやすいものに変え,生徒に伝えなければならないと改めて痛感しました。
 最後に,この分科会開催にかかわってこられた関係者の皆様に御礼申し上げます。 
  Oコミュニケーション
 
東京都立綾瀬ろう学校 
守屋 昌彦 
 
 
 今年の2月に長野ろう学校において,関地研主催の研究会に参加し,「養護・訓練の在り方」についての考え方を具体的に知る機会があり,更に,養護・訓練の内容について深めたいと思っている時,全日聾研の養護・訓練の指定授業,コミュニケーションコミュニケ−ション分科会が目に飛び込み参加した。 
 分科会は,「聴覚障害児(者)の現場におけるコミュニケーションのあり方とその指導計画について研究しよう」のテーマのもと,10本のレポートが提出された。参加者も60数名を越えており,分科会としては比較的大人数になった。これは,ろう学校においてコミュニケーションが重要視されているが,どのようにすすめたらよいのかわからない状況に各学校におかれているのではないのか。
 また,各教科に関しては具体的な目標,指導法,教材等が様々に研究・開発されていて,資料等も多くあるが,コミュニケーションに関しての指導は抽象的であるためどのように取り組めば良いのか,大切なだけに早急に解決しなければならないために,関心が高く参加者が多かったのではないかと思う。
 各校からのレポートは,具体的な指導計画,コミュニケーションをテーマに指導をする上での指針となる内容が多く,また,研究をすすめていくための基礎となる理論等の基礎資料の提示や紹介もあった。
 印象的であったのは,司会者が「手話がうまくても,下手でも使って発表や意見を言って下さい」という提言の後は,レポーター,
 
 
 
 
 
 
 
 
 
質問者,助言者も手話を使ってすすめたことである。
 ここにコミュニケーションの基本があるのではないかと思った。通じ合うことが大切であり,そのためにはどうするのかが問われているのである。
 コミュニケーションの手段として,手話は有効的であり教育現場でその指導をしていくためには研究を積む必要があるのではないかと思った。 
 助言者より,本分科会のテーマに基づく討議の柱として,ろう教育における「不易」は,「意思伝達ができるようにしてほしい」等,「流行」は,「障害の認識」等といった提言をされた。また,現場において聴覚に障害のある先生とない先生が共に歩むための条件として,「お互いに自由に,誠実に話し会える」「信頼しあえる」「ろうの存在」等についても提言された。
 この後,活発な討論が行われ,予定していた時間をかなり過ぎてしまった。
 まとめとして,助言者が「言葉は,コミュニケーションの中で育つ」「コミュニケーションは楽しい中で行う」ということを確認し,障害の認識は,人との関係の理解からおこるのではないかということで結ばれた。
 
 
 来年は福岡です!
(福岡県立福岡高等聾学校長 池田 精治)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  あ と が き  
▲第31回全日本聾教育研究大会は,錦秋の京都で,主管校のご努力により盛会裡に終わりました。実行委員会をはじめ,会員各位のご協力のたまものと深く感謝いたします。
▲授業研究会,研究協議分科会の参加者に『「事後集録」と 重ならないよう』とお願いして会報76号が完成いたしました。執筆者のみなさまには,12月発行のために,お忙しい中,原稿をお寄せいただきありがとうございました。 「事後集録」とはまた違った観点で,第30回研究大会を振り返っていただければ幸いです。            
▲全日聾研の会報のバックナンバーが事務局にございます。過去の大会のようすを知ることができますので,ご希望の方は,何年度のものか明記して下記のファックスで事務局宛ご請求下さい。       
                  tel/fax 047−372−2672 (事務局)
 
 
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