兵庫大会 授業研究分科会

神戸聴覚特別支援学校 小学部

(助言者から)

金沢大学 人間社会研究域 学校教育系

武居渡

全日聾研の小学部研究授業を神戸聴覚特別支援学校(以下、神戸聴覚)が引き受けるにあたって、2年前の2012年より神戸聴覚小学部の研究に関わることとなった。最初に神戸聴覚の小学部にお邪魔して感じたことは、若い先生が多いことであった。一方で、経験年数の長いベテランの先生が少なく、中間層がいないというのが最初の印象であった、そして、2年目、3年目になるたびに、多くの先生が異動となり、初任や聴覚障害児を指導するのが初めての先生が赴任してくるという状況の中で、全日聾研を迎えることになった。

私が神戸聴覚小学部の先生方にこれまでお話したことは、決して奇をてらったことではない。経験年数も決して長くなく、経験から子どもの目標を決定し、そこに向けての指導を考えていくことはまだ厳しいが、日々の授業を子どもたちと共に一生懸命作っていらっしゃる若い先生を前に、以下の3点について話をした。

第一に、子どもの何が課題なのかをしっかり把握するために、認知検査や言語検査をして、その結果をもとにケース検討をしようということであった。ベテランの先生であれば、経験から目前の子どもの課題が何なのかが分かり、その手立てを考えることができる。しかし、経験年数が短い先生方にとってはそれがなかなか難しい。そのため、戦略研究で使われた言語評価バッテリーのALADJIN(アラジン)を利用し、個々の子どもの言語習得の現状と授業の中での言語面の課題について、検査結果を複数の先生の目で見て、議論することを行っていただいた。

第二に、11回の授業をそのままにせず、子どもがいつでも振り返ることができるように、掲示物として残すことの大切さを申し上げた。授業が終わり、黒板を消すと、残るのは子どもの頭の中だけである。子どもの頭に残っていなければ、また同じことを次の時間にしなければならなくなる。これまで何を学習してきたのかが分かる教室づくりをすることが大切である。全日聾研で見ていただいた教室に様々な掲示物が貼ってあったのはそのようなことからである。

第三に、日本語を嫌いにさせないための個別の対応をすることである。授業は、家庭教師とは違い、複数の子どもの集団で行うものである。その時、全員が授業の目標に迫れるように、配慮の必要な児童については事前に様々な支援を行うことを具体的に議論した。例えば、教科書本文のみで授業の目標に迫ることが厳しい児童には、事前にその内容を手話に翻訳した手話DVDを渡して家庭で見てもらうことや、日本語力の厳しい児童についてはリライト文を事前に渡しておおよその話の展開を理解させたうえで授業に臨むような配慮を行った。これにより、授業の際、同じスタートラインに立ち、すべての児童が授業に参加できるようにしていこうと話をした。

ろう学校は、指導力の高い1人の教員がいても発展しない。日々の授業や児童の課題、指導について、学部全員で考え、話し合える学校を作っていくことが、結果的に11人の教員の専門性を高めることになる。3年間の中で、教員同士、互いに質問しあう姿がみられ、学部集団としての成長がみられたことは、助言者としても大変うれしかった。全日聾研に向けての研究はひとまず終わったが、今後も学部全体で個々の児童の指導をしていく雰囲気を大切にしてほしい。

(参加者から)

筑波大学附属聴覚特別支援学校 

天神林吉寛

小学部では、「基礎学力を育成する言語活動の充実を目指した授業づくり」というテーマで、午前中8本の公開授業がありました。1年生から6年生まで全て物語文による指導でした。学級によっては教科書教材の代わりに紙芝居を教材に選択する等の配慮がなされており、個々の児童を大切にし、一人一人の実態に見合った教材を選択している事が感じられました。また、どの教室にも、必要に応じてそれまでの学習を振り返ったり、より理解を深めたりできるよう、授業に関連した様々な絵や写真が掲示されていました。児童の発言等も書き加えられ、児童同士の学び合いを大切にするという小学部の取り組みの一端を感じ取る事ができました。また、本時の目標は、

どの学級も、児童がこれから何を考えるのかつかみやすいよう黄色いチョークで大きく板書し、皆で確かめ合う場を大切にしていました。さらに、授業に入ると、教材文を音読し、登場人物の言動が分かる部分にサイドラインを引く、必要によっては人物を区別できるよう色分けする等、児童の理解を促すための細やかな配慮がなされており、今後の指導の参考になりました。人物の言動から気持ちの読み取りへと深める場面では、ワークシートが活用されていました。誰の気持ちを考えるのかをつかみやすくするよう、人物のさし絵が添えられており、その脇の吹き出しに思った事、考えた事等各自が書き込んでいました。その間、教師は机間巡視し、児童が書いた吹き出しを見て、一人一人とやりとりをし、児童の心情理解を、より深め、拡げられるよう細やかな指導をされていました。授業の最後には自分の考えを発表し合い、皆で確かめ合っていました。どの学級にも共通した配慮が見られ、部としての取り組みの統一性を感じました。

指定授業は、4年生の「ごんぎつね」の指導で、ごんが償いに兵十にくりやまつたけを持って行く場面の学習でした。ここでも、公開授業で見られた配慮が随所に見られました。友達の発言を見る態度や意識がよく育っており、様々な意見が活発に出され、生き生きと進められていました。途中で躓いた友達に「○○ちゃん、がんばって。」と声を掛け合う姿からは、授業者の普段からの児童への接し方の一端を感じることができ、印象に残りました。また、事前の教材研究もよく練られていると感じました。

特に、指導者の「なぜ、いわしはだめなの?先生は好きだけどなあ。」という児童を揺さぶる発問の後には、それぞれの児童から様々な発言が次々に出され、指導者の事前の準備の緻密さと同時に、発問の工夫の大切さを改めて感じさせられました。

午後からは、会場を神戸国際会議場に移し授業研究分科会が開かれました。そこではまず、小学部のこれまでの研究の取り組みについて、なぜ物語を扱うことになった

のかという研究の進め方や、授業のねらいを達成するための工夫や配慮などについて具体的な説明がありました。午前中参観して感じたことの背景にあるものがはっきりとつかめるお話でした。最後に、指導助言者の武居渡先生から、これまでにどんな事を大切にし、アドバイスしてきたかという事についてお話があり、沢山の事を学ぶ事ができました。その中で、色々な側面から児童の実態をきちんとつかむ事、そのために客観テストを実施し、そこから見えてくる児童の言語・認知の特性と、日常の様子から見える児童の実態の二つとを絡ませ児童の特性をつかむようにする事、また、現在の単語レベルでの手話の表現を今後、文・文章レベルまで高め、その中で手話と日本語を結びつけ、より豊かなコミュニケーションを目指す事、板書はその場限りにするのではなく、掲示物として残し、児童同士のやりとりのきっかけになるよう心がける事、というお話が印象に残りました。

今回、神戸聾学校小学部の先生方の一丸となった取り組みや研究の成果を拝見する事ができました。また、今後の指導にもつながる具体的な示唆も伺う事ができ、大変有意義な1日となりました。指導助言者の武居渡先生をはじめ関係の先生方、有意義なお話をありがとうございました。

神戸聴覚特別支援学校 中学部

(助言者から)

神戸親和女子大学 

井上正人

語彙の不足が原因と思われるコミュニケーションの少ない生徒の実態をきっかけに、少しでも思考力や言語活用能力を伸ばせないかと実践研究に取り組んだ報告及び授業であった。神戸聴覚特別支援学校(以下神戸校)では、授業場面に限らず学校生活の様々な場面を通じて「つまり?」とまとめさせたり「なぜなら?」と原因を述べさせたりしてきている。その積み重ねが、指定授業の中にも生かされていた。

授業では中学2年「一次関数」を取り上げた。授業のねらいは(式)⇒(表)⇒(グラフ)でかく手順を(式)⇒(グラフ)にしていくことで説明する場を設定した。そうすることで、中学部の取り組みである言語活動に重点が置かれ「~だから~」というフレーズを意識して使うようにしていた。黒板横に説明に用いる言葉のカードが置いてあるので示しやすかった。

また、グラフが移動する様子をパソコンで作成し、各点を色わけすることで、点が斜めではなく真上に平行移動していることを動的にとらえさせる工夫も見られた。

助言の中で述べたことであるが、誌上にて再度振り返ってみたいと思う。

この授業を通して、論理的思考力を発揮させるような場を授業に組み入れることが、聴覚障害のある生徒たちの「考える力」の育成につながり、とても重要な要素になるということを改めて感じた。「子どもたちに『考える』ことの楽しさを味わわせたい」という大会のテーマであったが、神戸校では、生徒たちは「考えない」のではなく、「考えたくても考えられない」のだという立場で研究を進めてきている。したがって「考えよう」といったときに、本時の解決に結びつくアイテムがなければ引っ張り出すことはできない。だから、解決に使えそうなアイテムを授業の中で獲得できるような授業をめざす、という先生方の指導の姿勢は共感できるものとなった。

卒業生のメッセージに「つながる」とあったが、これは数学の観点からも、とても大切なことで、知識はバラバラのまま頭の中に蓄えているだけでは、なかなか使いだせない。ネットワークされた知識が非常に大事とよく言われるが、今日習った知識が前に習った知識とどうつながるか、次の知識・前の知識とネットワーク化されることで使える知識となるということだと考える。

そのための授業づくりでは、今回の授業のように比べる場面を設定することも大切である。過去に学習したことを活用して本時の学習でどのように解決に生かしていくのか、といったことを考えるような授業づくりが大事である。そこでしか使えない知識でなく、以前に習った知識を一般化したものが使えるようになれば、より一層活用範囲の広いアイテムとなるだろう。

ICT教材を用いることについては有効性だけでなく課題も見えてきた。私たちから見ればICTを活用すれば、映し出されたスクリーンのイメージから掴めるものがあると思っているが、授業の反省にもあったように、スクリーンで見ることに加えて実際に書くというような作業も入れることで、より理解が深まり、定着につながると感じている。いずれにしても主張のある提案授業だったと感じた。

(参加者から)

佐賀県立ろう学校 

弘田一恵

神戸聴覚特別支援学校中学部、数学の指定授業を参観させていただきました。本学習グループは中学部2年生の3名で「一次関数のグラフ」の単元でした。3名の実態を細かく把握されていて、表の板書、ICT活用でも座標の色を変えるなど、わかりやすく注目を集めるような工夫をされていました。グラフを比較しやすかったことで生徒の気づきが発言へと結びついているのではないかと感じました。また、生徒がノートに写す時間を十分確保されていたこと、演習でも一人一人に丁寧に関わられていたことが印象に残りました。

午後は、授業研究分科会に参加させていただきました。「充実した言語活動を通して、学力をのばし、豊かな心を育む授業づくり」をテーマに研究の概要を述べられました。言語力の実態把握で見えた厳しい状況を何とか改善できないか、ということでふくしま国語塾の福嶋隆史先生の実践を参考にされ、「言いかえる力(同等関係)」「くらべる力(対比関係)」「たどる力(因果関係)」の3つの力から成る論理的思考力の向上を図られていました。この3つの力には「つまり、たとえば」「それに対して、一方、しかし、でも」「だから、なぜなら」というようなキーワードがあり、これらを授業や日常生活で使っていくことで定着させ、思考力、言語力の向上を目指されていました。これらの言葉を用いるためには「考える」という行為が必要になり、そうした経験を積み重ねることで「考える」機会がふえ、思考力、言語力の向上につながるということでした。多くのことに広げず、3つの思考の型に精選したことで、学部全体で共通理解し、日常生活や各教科ごとの実践につながっていると感じました。いろいろな場面で生徒が考える場を設定することで自分の考えをより一層深めることができるのではないだろうかと思いました。

授業をされた押部俊治先生は、聴覚障害教育に精通されたベテランの先生で授業にも余裕を感じました。神戸聴覚特別支援学校の数学科の目指すところとして(1)生活の中で生かせる数学の力(2)社会生活や職場で対応できる力(3)大学進学に対応する力をあげられました。指定授業の生徒3名は、保護者の協力もあって、宿題をきちんと提出する、説明をきちんと聞く、問題を繰り返し解くことが定着しているとのことでした。授業では座標を読む練習をされ、y=2x、y=2x+3を式??グラフの形に変えることで「平行である」ということを引き出されました。考え 

ている道筋や結論を生徒自身に言語化させながら、言葉を引き出されていたことに驚きました。押部先生は眠気覚ましに足し算を入れたり、パワーポイントの座標を動かしたりしていると言われていました。生徒を楽しませながら授業をされていて、生徒たちも楽しそうに笑顔で、それでも一生懸命考えている姿が心に残りました。

質疑では地域の学校から中学部に入ってくる生徒は、自信を無くした生徒がいるが、自信を持てるようになるのかという質問が出されました。いろいろな形で生徒が発表する機会を多く持たせ、日々確認をとったりしていると話されました。私は寄宿舎に勤務していますが、この確認がまだまだ足らないのではないかと改めて感じました。「言葉で言うとどうなるか?」という問いかけが今まで足らなかったと気づかされました。授業づくりの意識調査アンケートの中に「思いやりとユーモア(多面的で柔軟な物の見方)を持ってコミュニケーションしていきたい」「考えることの楽しさを味わわせたい」とありました。楽しさを感じた「考え」は自信につながるのではないかと思いました。聴覚障害教育の楽しさ、難しさ、深さを少しではありますが、知ることができました。ありがとうございました

神戸聴覚特別支援学校 高等部

(助言者から)

国立特別支援教育総合研究所 

上席総括研究員

藤本裕人

高等部の研究テーマは「豊かな社会生活を送るための言語力を高める指導」である。まず、神戸聴覚特別支援学校の吉岡美恵子先生より、高等部の研究発表が行われた。言語力を高める研究のきっかけになったのは、携帯電話(スマートフォン)に関するトラブルがあり、その原因は文章によるやりとりの誤解から生じていたこと、そこから語彙力と言語理解の課題が見え、研究に取り組んだとの説明があった。平成25年度の全日聾研愛知大会から継続しての発表である。言語力を「学校教育すべての科目において、自己表現、他者理解、共同生活の能力を助長することを目的として、狭い意味での国語力にとどまらないコミュニケーション能力を指す用語」として研究に取り組まれた。グループ学習での指導の重点は、「文章理解と情報の読み取り」「体験したことを文章で表現する」である。また、生活での様々な場面で使用される用語を整理した「朝チエック」(国語・数学・一般常識等、全13分野)を高等部の全教職員で作成し、社会常識の育成を行いつつ「朝チエック」の問題を使って、基本的な一般常識問題の確認を毎日行ったという報告が行われた。

次に、高等部(国語)の指定授業の研究協議である。指定授業は国語総合(三省堂)の「働く喜び 技もつ体で」である。高等部2年の5名の生徒での指定授業である。教室には、教科書の拡大表示と、生徒の考えを書き込むためのホワイトボード(八つ切り半分の画用紙をパウチしたもの)が用意されていた。授業では、生徒が考えたことを発表するときに、ホワイトボードに書き言葉でまとめる活動があり、その書き言葉を生徒がお互いに確認することで、生徒同士の積極的な話し合い活動が行われていた。授業を行った服部泰子先生からは、単元を選んだ理由は、生徒が職場体験で得た経験を活かせる背景を踏まえたこと、また、学習活動として、高校生年代として①発問に対して自分なりに答えをだす、②考えを言葉にするうえで、他者が分かる言葉で表現する、③他者の意見を理解して自分の考えを分かりやすく伝えるという、一連の活動を大切にして授業に取り組まれた説明が行われた。授業研究会の参加者からは、指導者の発問「現代社会で働く喜びを見出すには」に対して、「他者の意見を聞いて自分の意見を述べるところは、仲間同士で共感できることである。高校生活の中の経験で得られた達成感等を発表すれば、他の生徒も共感するのではないか。」とか、「前段階の発問や教材文に立ち戻れば、発問の焦点が絞られた話ができるのではないか。今回の質問の仕方では、なんでも答えていいように感じられた。」など、発問の持ち方に関する授業改善の提案が多く出され、授業者は「再度、授業で取り組みたい。」とまとめられた。

指導助言では、高校生年齢として、国語を適切に表現し的確に理解する能力を養うこと、自己の思考力や心情を豊かにすることを踏まえた授業であり、また、書く活動に生徒が意欲的に取り組んでいるところは評価できることを話した。研究協議参加者と指定授業者が一体となって、積極的に授業改善の提案と協議が行われ、活気ある分科会となった。

(参加者から)

秋田県立聾学校 

黒澤貴之

高等部2年の国語総合の授業を参観させていただきました。単元は「働く喜び 技もつ体で」で本時がまとめの1時間となります。教室に入るとすぐに大型のディスプレイが目に付きました。また、教室後方には授業に関連した数々の資料が掲示されており、視覚情報を大切にして授業を進める教師の基本姿勢を強く感じました。授業が始まり、まずは前時の確認です。参観者が多く緊張する場にもかかわらず、教師の発問に自分の考えを堂々と述べる生徒たちを見て、日頃の積み重ねがきちんと行われているからこそ、こうした場でも普段通りに学習できるということを改めて学ばせていただきました。さらに教室前方にある大型ディスプレイには教師の発問や本時の目標を効果的に映し出し視覚優位な生徒たちにも分かりやすかったと思いますし、黒板との併用の仕方も十分考慮されていてとても参考になりました。

先生の暖かな表情と読み取りしやすい話し方、また、自作の教材提示など本当に自分にとってはどれも勉強になる授業でした。中でも生徒たちが活発に意見交換を行っていたことがとても印象的でした。自分の意見を主張するだけでなく、他人の考えを参考に自分の意見を練り直し、分かりやすく話す生徒、困っている生徒に手助けする生徒など一人一人が持ち味を十分発揮し、集団として学び合いが達成できている授業に改めて感激しました。授業は話し合い活動が活発に行われた分、まとめに十分時間をかけることができなかったのですが、それでも本時の目標は達成できたのではないかと思われます。授業に対しての教師の基本姿勢及び聴覚障害教育の専門性、普段の学習の積み重ねと全てにおいてすばらしかったです。

午後から行われた研究協議では学部の研究テーマやそれに基づいた実践、及び本時の授業との関連性など丁寧に説明がされました。特に自作の教材では、書くことで自分の考えが整理され、それを掲示することで思考の流れが示される。また、お互いの意見を比較したり次時に確認ができたりなど、教師の工夫によりいろいろな機能を持たせることができるものを紹介していただき、ぜひ自分の授業でも活用していきたいと思いました。その後の質疑応答では「友達とのやりとりを通じて自分の気づきにつなげること」「普段の経験を授業で活用していくこと」「焦点化された話し合いができるために工夫した発問が必要である」「結論を踏まえた発問の仕方はどうあるべきか」「コミュニケーションモードの違う生徒たちが発表の際は、できるだけ手話を用いるように普段から心がけている」というように国語や聴覚障害教育の専門性という観点から質問や意見が飛び交いました。参加者全員によりよい授業を目指していく意気込みを強く感じることができました。また、自分自身も授業を展開する際の発問については常に悩んできたところなので、とても参考になりました。

最後に藤本先生からの助言はとても具体的で分かりやすかったです。中でも「考えるときの根拠を子どもたちに強く意識させる」「教師が安易に発問を噛み砕かない」「子どもの発言を予想し更に発問を工夫する。それが子どもの言語概念を育てる」といったことがとても心に残り、授業にすぐ活用できると思いました。自分が担当している教科は数学ですが、聾学校の教科指導として大事にしていかなければならないことをいろいろ学ばせていただきました。

姫路聴覚特別支援学校 小学部

(助言者から)

大阪教育大学

教育学部特別支援教育講座 

井坂行男

姫路聴覚特別支援学校小学部は「『みんなの国語』で育てる確かなことばの力」という研究主題で、児童の実態を踏まえた実証的な実践研究に取り組んだ成果を発表した。

育てたい児童像(授業が分かって楽しい。聞こえにくい自分を好きになる。愛し愛される)に基づいて、多様な児童の実態に応じた授業作り、自己肯定感の向上、コミュニケーションモードの共有を目指した実践に取り組んだ。具体的には、学校の中では話が全部分かるためのコミュニケーションモードの共有を目指す・手話に親しむために絵本の手話による読み聞かせを行う・読んで理解するための経験を重ねるために「姫聴こどもニュース」を作成する・書きことばの力を育てるために「さわやかタイム」や「みんなの国語」の時間を設定して実践した。特に、「さわやかタイム」は学級ごとに、語彙の拡充・動詞の活用や基礎的な文法力の向上のための実践であり、「みんなの国語」は書きことばの実態に応じ、さらにコミュニケーションモードの近い児童たちを縦割り8グループ編成にして、児童相互の話し合い活動の充実に基づく書きことばの向上のための実践であった。これらの実践の結果は年度ごとに文法テストや作文テスト、適応型言語能力検査などを実施して、一定の成果を検証した。また、現在は「みんなの国語」の各グループのテーマを共通にして、系統的な指導にも取り組み、月ごとに共通のテーマと学びたいことばを設定したり、児童の学びの成果を「みんなの国語掲示板」にまとめたり、グループごとに「おぼえたよプリント」として学習した内容を掲示したりして、児童相互に学習の足跡を確認できるように配慮している。

週1時間の「みんなの国語」は言語力の実態が近く、コミュニケーションモードが同じ児童たちのグループ学習であることから、児童一人一人の自己肯定感が育つとともに、各教科領域の学習の基礎作りにもなっていると思われる。

指定授業の5年生の「大造じいさんとがん」の実践は読解を主とした国語科の授業を展開するために、家庭学習や上記の「さわやかタイム」での学習を、具体的に授業展開と結びつけながら、児童の主体的な読みの活動を促進するための授業実践であった。

具体的な取組として、実践されたことは教材の工夫(リライト教材の作成や音読譜等)と言語知識を補充する取組(家庭でのリライト教材の音読・課題を与えての一人読み・キーワードの調べ読み・「さわやかタイム」での基本文の暗唱・自立活動での慣用句や擬音語などの言語指導・手話表現の工夫等)であった。さらに、論理的な思考を促すための取組として、文章構造の図式化・目当てを決めた読み・叙述を手がかりとした読み・文章の特徴や作者の意図の理解等を行った。

国語科の授業外の学習は児童たちに宿題や課題を読ませっぱなし、書かせっぱなしにするのではなく、児童の取組を丁寧に評価することで、日々成長する児童の姿をアセスメントすることになり、その結果は次時の授業やその展開にも適切に反映されていた。また、具体的な取組で示したように、基礎的な言語事項等を他の教科領域等の活動と関連づけて学習することで、児童は学んだことを国語科の授業の中で活用する喜びを実感した。

学部研究、指定授業、公開授業「みんなの国語」において示された成果は、小学部の先生方が一丸となって、常に専門性を高める研修を重ね、指定及び公開授業についても話し合いを重ねて、取り組んできた成果そのものであったと思う。

(参加者から)

前筑波大学附属聴覚特別支援学校

板橋安人

公開と指定の授業は、国語に統一され、大会主題にある「言語活動の充実を図る指導実践」との関連で小学部の取り組みが伝わる活動であったと受けとめました。

公開授業は、部全体で行ったかまど体験を題材に、学年を取り払い、児童の言語技能とコミュニケーションモードを配慮し、個の教育的ニーズに応じて8つの同質な学習群に分けた学習活動が展開されていました。授業の教科・領域は「みんなの国語」、題材名は「書いてみよう わくわく!どきどき!かまど体験」で、共通でしたが、同じ体験学習をいかなる言語で切り取っていくかという扱いには大きなちがいが出てくることが参観していてよく伝わってきました。例えば、身振りや手話でかまど体験を表現し、それを名詞や動詞を中心に書記言語化する群、蒸しパンについてわかったことを覚えたことばで三語文程度で書く群、「かまどにまきをくべる」「かまどでパンを蒸す」などの表現で体験を 言語化する群、火吹き竹の体験を擬態語でイメージ化する群など…。同じ題材でも対象児に応じてきめの細かい扱いが求められます。「こういう子いるよね、こうすればいいのか」と授業のヒントを見出すことができました。

指定授業は、人工内耳装用児一人を含む五年生4名を対象に、「大造じいさんとがん」の読解作業の後に続く物語を味わい、主題を考える場面でした。教室には、本時に至るまでの学習内容が整理された大きな模造紙が貼ってあり、これが物語と自分との関わりをつくる上で大きな手がかりになると思いました。私は、二台の大型ディスプレイ(教室の前方と後方からの二画面)を通してモニター室から授業を参観しました。これは、担当者と児童の表情を同時に見ることができ、とても良いと思いました。一参加者として気づいた点をいくつか述べます。

一斉音読の工夫がありました。音読譜による音読は、よく声が出ていて日本語らしい読みとして声がそろっていたのが印象的でした。読みのタイミングを自分で調整する力を養う方法かなと受け止めました。

児童の発言への指示が的確に行われていました。単語レベルの発言には、その場で「それはどういうこと」「くわしく言うと」などと発言を拡張する手立てがとられていました。ここで、もう少し具体的に「それはどこに書いてある」という発問を投げてもいいのかなと思いました。

児童の発言意図は手話を通して受け取ることはできますが、その意図をその場で本来使う適切な日本語の表現で支えられているのかどうかを確認する手立てを追求していくと言語活動が深まるのではと思いました。例えば、大造じいさんは「がんばる人」、「やさしい人」、「いい人」、「あきらめない人」などの意見が出ていましたが、本対象児なら、ここは、模造紙に整理した結果、黒板のまとめ、本文の記述にていねいに戻って、「がんながらあっぱれな姿に感心した」とか、「あいつとは再度対決してみたいという決意を感じた」など、この物語に沿って考えられる日本語表現を持ち込んでいく展開もあるのではないかと思いました。

 「みんなの国語」から教科としての国語へという言語活動の流れに関するとらえ方の基本を部全体で共有して、さらなる一歩を踏み出していけるのではないでしょうか。対象児が多様である以上、これだという唯一の教育方法に固執するのではなく、個に応じたきめ細かい教育方法を常に求めていくのが現場の真骨頂であると思いました。

物語を読みとるための基礎となる児童の言語生活の質にかかわる日本語の語用論の扱いをどうとらえていくかという課題もあるのかもしれません。

以上、個人的な私見を述べましたが、今回の指定授業は、一つの授業スタイルを提示し得たのではないでしょうか。なぜなら、4名の対象児の喜々とした取り組みの姿がそれを裏打ちしていたからです。興味深い授業のご提示、どうもありがとうございました。授業研究分科会では、庄司美千代先生(国立特別支援教育総合研究所)が幅広い見地から適切なご助言をされていたことを付言しておきます。

姫路聴覚特別支援学校 中学部

(助言者から)

筑波技術大学

障害者高等教育研究支援センター 

長南浩人

姫路校で行われた中学部の研究協議分科会では、高浜由美教諭が行った国語科の授業検討会と藤田美奈子教諭による学部研究の取り組みに関する発表が行われた。

1.授業検討会

授業検討会では高浜教諭より、まずクラスの実態について説明があり、他人の意見を踏まえて自己の考えをまとめることが難しい学習者で構成されているとの話があった。高浜教諭は、この課題に対して、詩という解釈が多様化する読みものを用いて他者の意見に触れ、自己の読み方を考えさせる指導を行った。具体的には、詩の題名や音読の方法を考えさせ、特に読む活動においては、群読を取り入れていた。

高浜教諭からは、授業について生徒に思考させる方法や群読の方法に関して授業参観者の意見を求める場面があり、フロアからは建設的な意見が出された。

本授業では、詩を「早く読みたい。」と授業中に言っていた生徒がいたことが印象的であった。生徒に、そのような気持ちを沸かせたことは、詩を意味の理解だけでなく、詩の持つリズムやイントネーションをしっかりと味わわせてきた高浜教諭の指導の賜物と思われる。姫路校の中学部の実践のように、聴覚障害児に音声の表現を工夫する楽しさを味わわせ、教材の作品がもつ深い世界に生徒を誘う工夫は、姫路校の教師が聴覚障害児の可能性を「天」に見すえていることの現れの一つであり、他校にとって大いに刺激と参考になったものと思われる。

2.中学部研究発表

テーマは、「自ら考え、評価し、表現する力を伸ばすための支援の工夫~「言語技術」を取り入れた授業づくり~」であった。取り組みの具体は、以下の3点であった。

(1)言語技術を取り入れた授業実践

『トゥールミンモデル』を基に、考えることを習慣化させ、各教室に掲示し、意見には必ず理由をつけて発表させる習慣をつけた。掲示することで、教師側も常に意識できた。研究授業にはトゥールミンモデルを必ず取り入れ、考える力をつけるようにし、教師側が常に意識できるようになった。意図的に考えること、理由づけで苦労させることを大事にしてきた。

(2)今週のニュースの取り組み

『今週のニュース』を中学部職員が輪番で作成し、週の始まりに集会で行っている。自立活動として毎日、朝学習を10分間している。月曜日は集会で発音発語練習の後、ニュースを話し、火曜日はその内容で問題プリントに取り組む。水木金は国数英のプリント学習を行っている。ニュースは様式が決まっていて、作成マニュアルに沿って作成(写真、語句など)し、問題も作成者が同じ形式で作る。採点コメントをした後、廊下に掲示している。

(3)縦割りグループによる文法指導

毎年2月にテストを行うと、2層、3層に分かれる。内容読解が苦手で、差が大きいので、学年関係なく、縦割りグループで授業をしている。段階表を作り、グループの力や課題を明確にし、文法項目だけでなく、力のあるグループには長文要約に取り組ませている。

以上の取り組みは、授業時間のみならず、学校生活の時間全体を使って行われている点が印象的であった。また聾教育が大事にしてきた日常会話における文法指導や発音発語指導の継続が中学部段階でもされている点は、全国の中学部担当者にとって参考となる取り組みである。

以上のように姫路校中学部は、教師一人ひとりが、聴覚障害児の言語や思考、社会性など育ちのあらゆる面に目を配り、粘り強く生徒に指導を施しており、「人は、カリキュラムなり。」の言葉の意味を改めて考えさせられる実践であった。

(参加者から)

日本聾話学校 

飛田貴基

9時からの1時間目では、5つの授業が公開されていました。普段と違う雰囲気の中にも関わらず、生徒達は緊張をする様子もなく、どのクラスでも活き活きと活動している姿を見ることができました。

その中で、まず初めに見た「沖縄県の自然環境と暮らし」の内容を扱う中学2年生の社会で、生徒達が非常に積極的に発言し、且つ素晴らしい意見交換の場を作っている様子を目の当たりにしました。前に立つ先生は、視覚教材として主となるパワーポイントだけでなく、状況に応じて紙媒体の写真や文字カードも使い分けながら、生徒達がわかりやすく学べるよう提示されていたのが印象的でした。

3年生の家庭科では、「子どもへの関わり方を考えよう」という内容で、1枚の赤ちゃんの写真を元に、なぜ泣いているのかを考えていました。1枚に対して、生徒達が10以上の意見を次から次へと出している姿に驚きと感動を覚えたのと同時に、先生は一人の生徒から出た「不快」という言葉を拾い、皆で意味を考えており、言葉の意味の押さえを大切にしている様子を見ることができました。

指定授業の国語では、中学2年国語「木とともに 人とともに」の詩を皆で読み、詩の中に込められている想いを考えながら読み深め、楽しみながら音読していました。表面的なことばだけで終わらせるのではなく、理由をしっかり添えさせる求めをされていました。記号で音読の速さや抑揚を指導していたのが印象的で、「読む」ことを日々大切にして授業を進められているのだということが伝わってくる雰囲気でした。途中で意味を皆で考えている時に「早く読みたいな-」という生徒の声がきこえてくるほど、生徒達は、声を出して「読む」ことが大好きなのだと感じました。普段から、大切な軸となる部分をしっかり持たれて指導にあたられているということ、そして生徒の意見の流れに応じて、これからの方向性を瞬時に判断する柔軟性ある対応が、生徒達の積極性や安心感を生みだしているようでした。

さて、授業見学後に行われた授業研究分科会では、姫路校中学部の先生方が一丸となって取り組んできた「自ら考え、評価し、表現する力を伸ばすための支援の工夫」の報告をきくことが出来ました。

(1)言語技術を取り入れた授業実践(2)今週のニュースの取り組み(3)縦割りグループによる文法指導という3つの柱で、“学校生活全体”を生徒の能力向上に活用しているということでした。

授業見学をさせていただく中で感じた感動と印象深い内容、また大切にしている軸は、どれもこれらの活動から来ているのだとわかり、納得しました。中でも今週のニュースへの取り組みは興味深く、担当職員が代わる代わる今週のニュースを伝え、その後クイズ形式にして生徒達と内容を再確認することで、生徒達が世の中で起きていることに興味関心を広げていき様々な価値観に出会い、それが多くの授業で見られた柔軟な発想力に繋がっているのだと感じました。

助言者の長南先生のお話の中でも、「聴覚障害を持つ生徒の思考の堅さや概念崩しの難しさ」ということがありましたが、先生方が一体となって生徒の「表現する力を伸ばす」という目標の下で、こだわり、繰り返し、時にはお手本となって見せていくことで、生徒はとても良い成長をしていっているのだと思いました。

最後に見させていただいた、「わたぼうし音楽祭 作詞の部」で入選された生徒の詩はとても感動的で、姫路聴覚特別支援学校の取り組んできた活動によって生徒が素晴らしい感性を伸ばしていったのだと確信できました。

生徒の表現力を伸ばすための具体的な方法について、たくさんの勉強をさせていただき、大変有意義な一日になりました

 

姫路聴覚特別支援学校 高等部

(助言者から)

筑波技術大学

障害者高等教育研究支援センター 

石原保志 

1 研究協議概要

(1)授業研究

高等部2年生3名を対象に数学Ⅱ「指数関数と対数関数」の授業を行った。生徒3名のキャリア発達的観点からみた課題と目標、それを克服するための手立てを以下に述べる。

  コミュニケーション能力

(課題)

人の意見を聞く経験が少なく、聞き方を知らない。自分の気持ちを相手にうまく伝えられない。

(目標)

相手にわかりやすく伝える工夫ができる。

(手立て)

自分の意見を発表する場を設ける。その際には手話や口話はもちろん、ホワイトボードを用いるなど表現方法は多様に与え、相手にわかりやすく伝えるための手段を考えさせる。

  選択能力・課題解決能力 

(課題)

理由や根拠が曖昧になり、論理性に欠ける解答が多い。

(目標)

自分で教科書を読み解き、自学自習の定着。頭の中で自分の考えを整理できる。

(手立て)

題意の読み取りの際、どの数値を選択するか、また、その数値を何のために使うのかを確認する。類題から解法を選択させ、人の意見を聞いて自分の考えを考え直したり、訂正したりできるような場面を設ける。解答を発表する際には、必ず理由を問うようにする。計算過程においては、できるだけ暗算を促す。 

(授業者の反省点)

板書をして生徒自身でまとめさせることができなかった。生徒Bの思考のつまずきを確認できなかった。予想していたより時間がかかってしまい、生徒の理解度を確認することができなかった。

板書にどう残すかが課題である。

(指導助言)

キャリア発達は総合的な力である。合理的に考えて筋道を立てて説明をする力を育てる教科としては、数学科はそれにふさわしい。今回は、生徒自身に課題解決の過程を説明させることを行った。説明する技術まで至らずとも、合理的に考えることができていた。

(2)高等部校内研究協議概要

以下の四つの方法で研究を進めた。

①キャリア発達の支援を俯瞰するキャリアシートの作成

  授業におけるキャリア教育の観点の導入

③キャリア教育を目的とした授業及び指導

④キャリア発達支援を促す直接体験・間接体験の場の設定

(指導助言)

1)姫路校へのこれまでの助言

キャリア教育は「トップダウン的視点」で幼児・児童・生徒の将来像をイメージし、指導支援を行おうとする教師の意識が重要である。キャリア教育は幅広い概念であり、これを指導実践に反映するため、国立教育政策研究所による4領域について整理し指導する方法を助言した。

2)聾学校におけるキャリア教育 ~一般校と聾学校のキャリア教育の違い~

聾学校の生徒は、聞こえに起因する発達的課題と、聾学校という環境的要因の特殊性からの課題がある。障害があるが故に、障害説明能力(セルフアドボカシー能力)という課題がある。

障害種別に見ると、聴覚障害者の就職率は高いが、離職、転職が課題とされている。転職の理由として自分のキャリアや将来性をあげる者が多い。会社でのコミュニケーション力としては社会的文脈すなわち状況を理解できなければならない。これは体験を通してはじめて理解できる。直接的と間接的体験があるが、一番大切なのは体験を通して自ら考えようとする習慣を身につけることである。

3)マトリックスシートを作る意義

トップダウンの視点を教師が意識できるという効果がある。これに沿ってカリキュラムを作ることも重要。日常の授業におけるキャリア教育の観点は、自ら考える姿勢の育成。考えさせる授業の展開では、発問に対して応答がない場合、回答を待つという方法もある。

授業における認知活動でコミュニケーション方法や情報伝達の工夫だけでは学習者は授業内容を理解することはできない。学習者は授業内容の理解に必要な認知活動を行い、教師は生徒の認知能力の特性や既存知識の状態を把握し、それに応じた指導と評価を行うことが必要である。

2 質疑応答

(1)指定授業について

(質問:参加者)数学の思考を説明するためのフォーマットのように、言葉を決めて説明されていた。論理的にものを考えるための思考の手順を丁寧にされていた。授業のときはできても、時間が経過したときにどうなるかが私の悩みである。

①積み上げ・定着が苦手な生徒に対しての工夫はあるか。

②生徒Aに板書をさせた意図は何か。

③手話表現(真数・対数など専門用語)は、教科の教師間で共通理解をされているのか。

(回答:姫路聴覚特別支援学校)

①姫路の生徒も定着はむずかしい。京都聾の脇中先生の方法を参考にした。細かい内容をゆっくり説明するのではなく、大まかな説明を最後まで行い、また初めに戻って学習するように繰り返しの指導方法を採っている。まずは、解法を身につけさせる。そのうえで定理の証明を行う。テスト前に振り返りを行う。何度も繰り返す指導を行っている。

  前時の学習で指数の内容で今回と同じ例題を板書していた。また、彼は思いつきで発言をすることが多く、人に順序立てて説明をすることを苦手としているので、説明させる経験を積ませるため板書をさせた。

③真数と実数の手話は同じ。真数とは正の数なので手話の表現を作った。

(2)高等部校内研究について

(質問:姫路聴覚特別支援学校(司会者))

キャリア教育発達段階表を作成している学校はあるか。

(回答:参加者)鳥取聾学校では作成している。

自己管理能力と自己理解能力(補聴器等管理、基本的生活習慣、卒業後に福祉制度を知り利用できるなど)を身につけさせることを目標に定め、自立活動において実施している。

個別の目標を設定し自立活動で実施している。

他の領域を体系的に取り組んでいくことが今後の課題である。

(参加者から)

平塚ろう学校 

渋谷通子

今回、初めて本大会へ参加しました。

授業研究分科会は、姫路聴覚特別支援学校の高等部に参加しました。自分は寄宿舎指導員であり教科指導には携わっておりませんが、授業研究分科会には寄宿舎の枠がなかったため、専門外であることを承知の上で本分科会に参加させて頂きました。その中で、キャリア教育という観点からさまざまなお話を伺い、授業以外の形(寄宿舎における指導)にも有用であると思える内容もあり、勉強になりました。

午前中の高等部の指定授業内では教員が生徒たちに式の解を答えさせるだけでなく、それに至った流れも含めて「説明」をさせていたことが印象的でした。概念を理解していても言葉や文章にして説明することが苦手な生徒にとっては、良い練習となるのではと思います。研究分科会でも、数学を指定授業とした理由として「考えて説明をすることのできる教科であること」とのお話でした。聾教育においては、言葉・日本語の獲得が大きな課題となるかと思いますが、それに加えて「考える力」を養うために数学を位置づけるということは、新鮮な思いでした。

研究テーマは「卒業後の社会自立をめざし、生きる力を伸ばす授業の工夫」とのことで、キャリア教育の実践報告をいただきました。幼稚部から高等部まで全学部を通してキャリア教育発達段階表を作成し、「人間関係形成能力」等、5つの領域について目標設定・実践・評価を行っているそうですが、その中で「障害啓発能力」を5領域の1つに設定していることが印象的でした。自分に必要な支援は何かを理解し伝えられるようにする、ということは、まず自己理解をした上で、受けられる支援はどんな方法があるのかを知る、更には自分に合った支援方法を選ぶという複数の過程を必要とするため、高等部段階で獲得できることは非常に有意義なことと感じます。

文系グループ、重複グループ、職業系グループそれぞれに取り組みがあるそうですが、キャリア発達支援を促す直接体験・間接体験の場の設定をするために、キャリアプランニングマトリクスシートを作成し、その中で能力獲得のための活動・教材を明確化し実践していました。また各種行事についてもそれぞれの行事における目標項目が設定されており、指導の方向性の共有に役立つと感じました。

これをベースとして、職業科では地域の職業自立センターからの指導も織り交ぜ、「マニュアルに沿って作業をする」ことや、「指示をメモに取り、メモを見ながら作業する」等、実際の職業のように作業をする(直接体験)ことに加え、様々な状況・環境を想定した実践指導(間接体験)を行っており、体験によって実際の社会生活(仕事)を学べる体制を構築していました。

助言者の石原先生からは時間の都合上要約した内容のご提案を頂きましたが、その中で特に強調されていたのは、「キャリア教育とは、あらゆる教育場面・生活環境の中で意識されるべきことであり、児童期以前の年齢段階から開始されるべき教育である、授業の中にも『自ら考える』姿勢の育成という観点を導入すべきである」ということでした。

生活の場(家庭に準ずる息抜きの場)でもある寄宿舎において、将来を意識した支援をどこまでやるのか、線引きは難しいところですが、「考える姿勢の育成」という観点は日常の関わりの中でも導入していけることと思いました。

冒頭にも記しましたとおり、寄宿舎の枠がなかったための高等部への参加でした。授業をベースとした分科会ですので当然といえば当然ではありますが、我々寄宿舎指導員のように、教科指導以外でも聾教育に携わる者もおります。例えば寄宿舎指導についての枠も設けていただく、あるいは今回のような形であれば「キャリア教育」「生活指導」等のキーワードを各分科会のご案内に入れ込んでいただけると、より参加しやすかったかと思いますので、ご検討いただけますと幸いです。

こばと聴覚特別支援学校保育相談部

(助言者から)

信州大学

全学教育機構教職教育部 

庄司和史 

まず、公開保育、指定保育にご協力いただいた子供たち、保護者、ご家族の皆さんにお礼申し上げます。また、こばと聴覚特別支援学校、保育相談部の先生方、本当にお疲れ様でした。

3年前、初めてこばと校を参観させていただいたとき、まず「展開がかたいなあ」「親指導が強いなあ」と感じました。それが第一印象です。今でも「少々凝り過ぎかな?」とも思うのですが、私も何回か通っているうちに徐々にそれはそれで面白いのかもしれないとも思えるようになってきました。これは、私自身の変化です。

さて、本日の活動についてですが、第一に、計画した展開にこだわらず、子供がその場で楽しんでいるものを取り上げて繰り返しても良かったのではないかと思います。大人が一生懸命考えて準備したものには、子供は案外楽しまないのかもしれないということです。また、次から次へと休む間もなく活動が展開されており、子供も親も、あるいはリードしている先生にとっても、ホッとする時間がなかったように感じました。また、話しかけ方についてですが、最後の絵本を見る場面で、椅子から立ち上がって絵本のそばまで何度も来ていた子がいて、先生は何度か「すわって」と声をかけていました。座らせたいという意図は理解できますが、この段階では、立つという子供の行動も表現の一つだととらえ、「なあに?」と応答したり「みせて」と気持ちを代弁したりすることが必要だったのではないかと感じました。

2歳児は、自発語彙が多く出ていても言葉だけで生活しない段階です。例えば、「一人で!」と主張しても一人でやりたがっているとは限りません。家でできることでも学校ではできなかったり、家でできないことでも学校でできたりするのです。ですから、言葉も日常のいろいろな体験と一緒に自分の中に意味として溜め込んでいく時期だと言えます。自分の思いを言葉だけではなく様々な方法で表現し、それをきちんと受け止めてもらう時期です。このような理解が必要です。

また、2歳児段階でのグループ活動では、同じ活動に参加し同じものを見ていたとしてもイメージは一人一人異なっていると考えておく必要があります。したがって、全体ではなく、親子など小さい単位でイメージを共有していくことをまずねらい、それを積み重ねていくということを考えます。これを繰り返していくと、そのイメージがときどき、子供たち同士で共有できる場面が自然に発生してきます。このような「共有」は、シンプルな活動ほど見えてくるものでもあり、また、同じパターンで繰り返していくほど見えてくるものです。

親子関係についてですが、まず愛着の形成をきちんと見守ることが重要です。愛着の形成は、共同注意の発達と関連が深いので、親子で目線がどう共有しているかというところを確認することも必要です。また、障害があることで保護者はある種の育てにくさを感じている場合が多くありますので、教師は、子供の「かわいい」姿をたくさん言葉にして示していくことが必要です。さらに母親以外の家族にも気にかけ、学校のいろいろな活動に巻き込んでいくことも大切です。それから、教師が直接支援することだけではなく、保護者同士のピア・サポートの体制を作っていくことにも配慮することが必要です。「親子関係は山あり谷あり」が当然の姿です。そのことを念頭におき、初期の段階が過ぎても丁寧な支援を継続していくことが重要だと思います。

(参加者から)

大塚ろう学校 

江川麻貴

私は全日本聾教育研究大会に参加したのは今回が初めてでした。1日目は、午前中に兵庫県立こばと聴覚特別支援学校保育相談部の公開保育を参観し、午後から保育相談部の授業研究分科会に参加しました。

こばと聴覚特別支援学校は、保育相談部と幼稚部までの学校です。1歳児から学級として扱われていることや、学級として扱われているため教員配置もあり、1~2名の担当者で教育相談を行っている学校と比較するとたくさんの教員がいるというのが率直な驚きでした。

研究分科会では、まず最初に保育相談部(1歳児・2歳児学級)の教育について紹介がありました。保育の形態は集団保育週1~2回、個別保育週1回で実施されているそうです。保育相談部で取り組んできた研究に関する報告もありました。「ビデオを活用した母親への具体的な支援の検討」ということで、親子の遊びの様子をビデオ撮りし、保護者とともに見返すことで、保護者がかかわりの改善点について気が付き親子のかかわりが変化していくという内容でした。普段は見ることができない自分のかかわりについてビデオ撮りをすることで、保護者が客観的に振り返ることができとても良い取り組みだと思いました。

次に午前中の公開保育を振り返って活発な意見交換が行われました。

公開保育ではおいもを題材に、子どもがお面をつけておいもになり蔓に見立てた紐を保護者と引っ張りあったり、大きなおいもをみんなで引っ張ったり、そして絵本読みと活動がたくさん展開されていました。教材は先生方の工夫にあふれたものでした。参加されていた保護者は遊びの場面で丁寧に我が子と向きあっている様子がみられました。

意見交換では、教員間の共通理解をどのように工夫しているのかという質問や親子関係を作ることができていたなどの意見が出ました。また活動内容について本時の活動で使用していた大きなおいものイメージ作りはどのようにしていたのかという質問もありました。また全体を通して活動が多すぎたのではという意見も出ました。遊びは楽しめば楽しむほどイメージが広がるのではという意見もありました。

保育を担当されていた先生が、今日の活動を振り返って教師が活動をひっぱり過ぎてしまう面があったとお話されていましたが、確かに活動をたくさん入れてしまうことよりも、一つ一つゆっくり活動が流れる中で、保護者が我が子と向き合い、どんな風に親子でかかわるのかを保護者が掴み、親子で楽しい体験活動ができることが大切なのだろうと思いました。教師が思い描く道に子どもを乗せようとすることが、結局は保護者のあせりや、だめという否定の言葉につながってしまったり、子どもの主体性をなくしてしまったりすることになりかねないのだろうと思いました。

保育研究会では教育相談という性質上、グループ支援の内容を実際に参観することはできないことが多い中で、今回のように保育を参観させていただけたことはとても勉強になりました。また保育を参観し、保護者が安心して学校に通われている様子もみることができました。それは日頃から先生方が丁寧な支援を積み重ねていることで、保護者が学校を信頼している証だろうと思いました。

東京では乳幼児教育相談は、1名から2名の教員が担当しています。学部の先生方と比較すると担当者が少ないため、日々の保育について様々な視点から振り返ったり、必要な親子支援について情報交換や意見交換をする機会を持つことがなかなかできません。そのため、午後の研究協議会で全国の様々な先生方と研究協議できたことは非常に有意義でした。学んだ内容をまた、日々の活動に生かしていきたいと思います。

こばと聴覚特別支援学校幼稚部

(助言者から)

筑波大学

松本末男 

指定授業(5歳児学級)授業研究

(1)授業者より:こばと校 中村 智子

主題「おばけやしき」を選んだのは、本校取り組みの一環として、毎年経験している行事であり、非現実的ではあるが子ども達が身近に感じワクワクドキドキできる内容であると考えたためである。ねらいの一つである「相手を意識し、相手の気持ちを考えて話し合う」は、子ども達は自分の考えだけでなく友だちや年少児・年中児の気持ちを配慮する考えを発表する場面が見られた。指導者として「子ども達をしっかり褒め、子ども達の意見を待つ、自分自身も楽しむ」を意識して設定し保育を行った。 

(2)質疑応答

(質問) 

発達課題別の話し合い活動は、いつの段階から行っているのか。理解することが増えてきたらグループの再編成はあるのか。他のグループとどのように話し合っているのか。

(応答) 

3歳から発達課題別のグループに分かれて話し合い活動を行っている。発達に合わせてグループの変更も行う。グループを合体して行うこともある。

(質問)

こばとを卒業してインテグレートした子ども達の情報をどのように収集し、フォロ―アップしているのか。

(応答) 

小学校の担任との研修や懇談を通して情報交換をしている。中・高校生になったら、情報があまり入ってこない現状がある。小学生に対しては年3回、保護者が学校に集まる機会を設定して懇談している。また、少数ではあるが、教育相談の補聴器相談を中・高校生が利用している。

(意見)

〈話し合いの中で子ども達は〉ちょっとしたずれがあっても、気づかず喋ってしまう。そのずれを幼児なりに考えるようになってほしい。

(応答) 

本校は言葉に偏った指導になりがちだったが、幼児教育を見直し、自主的に活動できる機会を設けるなど、様々な活動をバランスよく取り入れている。その中で、子ども達の思考も促していきたいと思っている。

(質問)

①朝の活動の時、子ども同士のコミュニケーションが少ないように感じた。日頃から教師とのコミュニケーションが多く、子ども同士は少ないのか。②音声言語だけの保育だと、100%わかっていないのでは?子ども達にストレスがあるのではないか?その時の指導者のフォローの仕方、もしくは手立てがあれば教えてほしい。

(応答) 

  5歳児になると「集団であそびたい」、

「集団で活動したい」という気持ちが育ってくる。大人の方が「通じやすい」と思っている子どもが多いが、年長のこの時期になって、子ども達は友だちと関わりたい気持ちが高まってきた。給食の時など「静かにしてほしい」と思うくらいに子ども同士のお喋りが活発になってきた。本校は子ども同士でお喋りを楽しめるようになることを目標に1歳から教育に取り組んできた。3歳児段階では子ども同士のコミュニケーションが難しいので、教師や保護者が介入して伝え方を示し、丁寧に関わることを積み上げてきた。その結果、5歳児では子ども同士で会話するようになってきたところである。②子ども達が音声だけでやりとりする際、友だちの意見を確認したり、分かっているかどうかを確かめるために、質問することも多い。普段は子どもの意見をまとめて板書し、情報を共有できるようにしている。今回は子ども達の話が中断してしまうので、あえて言語指導をしたり、板書をすることはしなかった。

(質問) 

幼稚部の学級の定数を教えてほしい。重複障害の幼児の入学はどのようになっているのか。

(応答)

定数は7人。学年ごとではなく、学部をまとめて数が決まる。原則単一障害の幼児のみの入学となっているが、できる限り他の障害を併せ持つ子どもも受け入れたいという思いはある。

(質問) 

保護者とのやりとりの仕方を教えてほしい。

(応答) 

全クラスで母が記録用紙を書いていて、保育の内容やできたところ、課題と思ったところを記入し、担任がそれに対しての返事を書いている。また保育の後にも、個別にそれぞれの課題を伝えている。保護者には、クラスの保育、家でのやりとり、(担任の)個別、子どもデー(母親が参観しない保育)、発音(個別指導)などについて記録を書いてもらっている。

(質問)

(会話の)テンポの良い3人(の保育)だった。板書の必要性があったかどうか。子ども同士、意見を言うタイミングが重なっていたこともあったので、話し合いのルールはどのように作っているのか。子ども達が関西弁で話していた。小学校に行くために、敬体の言い方にも慣れていたほうがいい。(保育中の)「怖い顔ってどんな顔?」「怖いなって顔」の(話題の)後、どのように指導するつもりだったのか。

(応答) 

余裕がなく今日は板書ができなかった。

友達の意見を聞いてから、自分の意見を伝えることが苦手な子どももいる。その時は止めて介入することもある。話し合いのルール作りを狙いつつも、ルール作りに重きを置くと、活発な話し合いが途切れてしまうという面もある。卒業までに、(子ども達が)手を挙げて発表できるようにしていきたい。また相手に合わせて、丁寧な言葉を使うことや関西弁でなく他の言い方で伝えられるようにもしていきたい。さらに、子ども達の言葉を拡張していけるようにできたらと思っている。

(3)指導助言

こばとには平成24年度から指導を見せてもらってきた。親の指導や専門性の維持等、どこも抱えている課題があった。親との葛藤があったり、子ども達が伸びきらず困っていたりする中で、親に寄り添うことの大事さを確認したり、指導の中で、先生方は、子どもとのやり取りを子ども中心にする努力をしてきたし、教材を細かく研究し、議論を重ねて授業作りをしていた。今回は、その努力を感じた。

質問に出た課題別の指導は、賛否両論の意見はあると思うが、親の要求に応え、子ども一人ひとりの成長を支援するという観点で、一つの方法だと思う。

これまで、幼稚部の先生たちには、様々な注文をつけた。介入型の先生には、基本は、子どもが何を感じて考えているかが、大事であること。その中で、教師が話題を選定するのか、もっと子どもの話につきあうのか、今話されていることを友達に知らせるのか等の話し合いの中の処理の仕方、子ども達同士が話し合いの内容が分かっているか、子ども達の中で子どもがどのように受け取ったかの確認が必要であることなどを議論してきた。今回の授業でも意見があったように、5歳児のやり取りの活動なので、子どもたちの話し合いがずれている場合などに、先生の方から子どもに指摘があって、子ども自身がそのずれを修正できるような流れは常に必要だと思う。子どもは、話せばいいのではなく、かみ合って話し合うことが大事だと指摘したい。とにかく思いついたことをすぐに喋ってしまう子どももいるが、5歳児としては、相手を意識して伝わるように、「考えてから喋って」「まとめて喋って」と伝えていくことも大切である。また、教師が話を整理し、話が噛み合うように修正することも必要である。

今日の授業の中の「怖そうな顔」の話題のところで、「何でそんなこと言うの?」と先生が投げかけたのは子どもに考えさせる上で良かった。また「そんなのでばら組(3歳児学級の子ども達)は(お化け屋敷に)来ると思うの?」という先生の投げかけも、子ども達が考えるきっかけになった。具体的にこの中身でどんなお化け屋敷にするのか、子どもの意見を整理していく。「お母さんと一緒に(お化け屋敷に)入っていく」という意見と「(お化け屋敷は子どもが)1人で行ったほうがいい」という意見があったが、このような子どもの揺れ動きを教師が取り上げ、子ども同士で対決させて話し合わせると面白い。要所要所で子どもを話し合いの醍醐味に触れさせたい。

また、「もしお母さんが用事で、(お化け屋敷の日に)来れなかったらどうするの?」と投げかけると、子ども達はより考えられたかもしれない。今日は授業者が話し合いに介入しすぎず、じっと待つことができていたので、そこは評価したい。

今日は子ども達がとても頑張っていた。これからもこばと(聴覚特別支援学校)の姿勢を貫いてほしい。話し合い活動だけでなく、子どもと自由に遊んでいる保育もとても自然で、日常の保育がこばとらしいので、そこも皆さんに見てほしいと思う。

(参加者から)

静岡聴覚特別支援学校

青島夕美子

こばと聴覚特別支援学校は、1歳児から5歳児までの幼児の早期教育の場として、昭和50年に全国に先駆けて設立された、保育相談部と幼稚部のみで構成される全国唯一の学校ということで、保育環境にも大変興味を持って伺いました。

学校の施設、設備は幼児にあったもので、特に園庭は適当な広さで芝生が張られ、遊具の大きさや配置等、安全に配慮してあると感じました。校舎内も全体的に明るく、教室の廊下側の窓も低く、良い意味で開放的な感じがしました。ホームページに書かれている玄関の壁面も可愛らしいと思いました。

現在保育相談部18名、幼稚部23名が在籍しているそうで、私の勤務している学校に比べると、在籍数が多くにぎやかでした。分科会で助言者の松本先生からは、核家族や働く母親が増えた保護者支援の在り方、教員の入れ替わりが多いことなど、こばと聴覚特別支援学校は全国の聾学校の困っていることの縮図であるとのお話もありました。障害の多様化、重度化が進む中で、15年ほど前から聴覚口話法を主体としながら、視覚情報の一つとして手話と指文字を取り入れ、現在はそれぞれの子どもに実態に合わせて、音声言語と視覚情報(絵、文字、手話、指文字等)の提示の仕方やタイミングを考えながら教育を進めている、人工内耳装用児が在籍児のほぼ半数を占めている、進路はほとんどの幼児が難聴学級に進学等の実情を伺い、様々な面で共通の悩みや課題があると感じました。分科会でも、お母さんに授業記録をとってもらったり、授業について説明する時間を設けたりしていることについて質疑応答があり、保護者支援は多くの学校で課題となっていると感じました。以前から聾学校の幼稚部で行って来たていねいな支援は、これからも大切にしていく必要があると感じました。

研修テーマは「自ら考える力を育てる話し合い活動」を目指して~授業分析を通して~

聴力の厳しい子ども、人工内耳で速やかに言語獲得しているように見える子ども、思考や会話が深まりにくい子ども、それぞれの課題に適した対応を工夫しながら、「じっくり考えることのできる子どもを育てたい。」という願いから設定されていました。それを受けての指定授業は、5歳児 話し合い活動「おばけ屋敷」ステップ3 男児3名(音声言語主体のグループ)でした。11月に5歳児主催の「おばけ屋敷」を毎年実施。また、お泊り保育では肝試しを経験。そのような経験を踏まえ、自分達が主催する「おばけ屋敷」について話し合いが行われました。子どもたちはおばけの話やおばけ屋敷の話等、意欲的に自分の考えや気持ちをたくさん話していました。先生は聞き手になって話しやすい雰囲気を作っていました。研究協議では5歳児なので自分の気持ちを話すだけではなく、子ども同士が分かりあっているか?そのための話し合いのルールはできているか?等について意見交換がされました。

また、素晴らしいと思ったのは、ステップ1~3までの発達別グループ毎、話し合い活動の進め方についてまとめ、単元毎の教材や内容をデータ化する等、研修がきちんと積み重ねられ、残されていることです。本校でも行事等を系統的、段階的に指導していくための具体的な方法について考えていきたいと思っているので、参考になりました.

全体を通して松本先生がおっしゃっていた「こばと聴覚特別支援学校は子どもを大切にしている。」ことが感じられ、勉強になると共に暖かな気持ちになり、がんばろうと思える研究会でした。ありがとうございました。