愛知大会 研究協議分科会



1.早期教育T(乳幼児)

沖縄県立沖縄ろう学校  真栄城 智子

本分科会では「一人一人の子どもに応じた豊かな発達を促し、望ましい親子関係の支援について考える」というテーマのもと5本の発表がありました。

山形聾学校からは「本校の乳幼児教室おける親子支援」ということで、イメージシートや連絡帳を活用して工夫された親子支援の報告が佐藤和美先生からありました。複数の乳幼児教室担当者がうまく連携し、連絡帳やイメージシートを通し、保護者とやり取りをする中で親子支援を充実させていることがわかりました。イメージシートや連絡帳の活用については、是非本校でも真似をして取り組んでいきたい内容だと思いました。

筑波大学附属聴覚特別支援学校の佐藤幸子先生の「コミュニケーション力を育てる母親支援」〜週の記録を通して〜では、1歳6か月のお子さんの例を取り上げて、前言語段階における指さしや表情は大事なおしゃべりであり、豊かなイメージが言葉の基礎となること、お子さんの心に大人の気持ちを寄せ心の交流をすることでの共感関係について、豊かな教職経験からの母親支援のお話は大変参考になりました。

また、北海道札幌聾学校の取り組み「乳幼児相談室の活動充実を目指して〜二言語環境下での実践〜」(田中瑞穂先生の報告)では、非常に興味深い報告がありました。日本手話による絵本の読み聞かせの取り組みや指文字を取り入れて個別指導をする様子など多くの実践を動画で見ることができました。また、実践結果として、親子で分かり合う機会が増え、安定して親子関係ができていること、日本手話を取り入れることで子供の言語表現が豊かで明確になり指導者や保護者が対応しやすくなっている等、早速成果が報告されていました。今後の課題を含め、これからの札幌聾学校の動向がとても気になります。

昼食をはさみ、後半は2件の発表と南村洋子先生からの指導助言とお話がありました。

筑波大学附属聴覚特別支援学校から2つ目の発表「盲ろう乳幼児の母子支援に関する一事例」(林徳子先生の報告)では、本当に丁寧にお子さんと向き合い、小さな変化を見逃さずにきちんと成長の様子としてとらえられるよう、母親支援をしている実践事例に感銘しました。私自身はこのような盲聾乳幼児に出会ったことがありませんが、今後同様の機会に直面した時への貴重な情報となりました。

最後は地元の愛知県の岡崎聾学校の齋藤洋美先生から「より良い家庭環境を目指した保護者支援について」での発表でした。あひる組で大切にしていることとして個別の保護者支援を強く強調されていて、また、それが家庭力の向上へつながることを訴えていました。早期支援に関わる者としてとても共感する内容でした。現状報告と課題、そして、アンケートを実施したことから見えてきた聴者や聴障者のニーズの違いを分析し、常に支援がどうあるべきか工夫され、新しい取組みも報告されていました。保護者交流の場としての重要性から、いろいろな交流の機会を持つことなど、本校の活動とも重なる部分も多くあり、安心と励みになりました。

南村洋子先生からは各発表校へ助言後、「乳幼児相談で大切にしたいこと」というテーマ

でのお話がありました。早期支援は子供と親の未来を決め、ろう学校の将来を決める重要な場であること。乳幼児教育相談は保護者支援であり、幼稚部の下延長ではなく家庭が中心であるということ。早期支援に関わる者にとって、基本的な部分を再認識でき、力をもらえるお話をたくさん聞くことができました。また、わかりやすいコミュニケーション様式を保護者が持つと同時に日本語の獲得のためには本当に覚悟して取り組まねばならないという話は、日々の実感とも重なり、大変印象に残りました。

今回、台風というアクシデントのなか、無事、早期教育T(乳幼児)に参加でき、充実した時間を過ごすことができました。本分科会に関わったすべての先生方に感謝致します。


2.早期教育U(幼稚部)

新潟県立長岡聾学校  本間 道子

豊かな言葉を身に付け、生き生きと活動するための支援について考える」という主題のもとで、9つの研究発表がありました。

主題設定にもあるようにかかわり合いを楽しむこと、意欲的に活動すること、主体性を発揮していく姿を大切にすることに焦点を当てた様々な取り組みが紹介されました。

筑波大学附属特別支援学校の鎌田ルリ子先生と、葛飾ろう学校の阿部善子先生からは、かかわりの活動を丁寧に記録にとって分析をした試みの紹介がありました。記録分析についてだけではなく、記録の蓄積方法についても質問が寄せられました。筑波大学附属特別支援学校の保護者から記録協力を得ての取り組みや、葛飾ろう学校の日々PC入力していく方法などが紹介されました。

坂戸ろう学園(←筑波技術大学の新井孝昭先生)と、豊橋聾学校の川ア未来先生からは、校内資源における自然環境を生かした主体的な活動を促す取り組みが紹介されました。豊橋聾学校の発表では活動が回数を重ねるごとに少しずつ発展して広がっていく過程がわかりやすく紹介され、生き生きと遊ぶ雰囲気まで伝わってくるようでした。坂戸ろう学園(←筑波技術大学の発表の中では、学校の幼稚部と保護者が協力して作ったDVD教材の『こどものくらし』も取り上げられ、扱い方、今後の展望などの説明も聞く事ができました。DVDの話題の際は、子どもに読ませる字幕は漢字表記とひらがな表記のどちらがよいのか、という点にまで議論が及び、それもまた大変勉強になりました。二つの学校共に、園庭という環境だけでなく、教師という環境のあり方も大切にした取り組みであったと感じました。

兵庫教育大学大学院生の王穎氏からは中国の幼稚部の名詞指導、盛岡聴覚支援学校の久保雅利先生からは、医教連携の実践が紹介されました。異なる国や地域の幼稚部での活動、医療との連携のスタイルなどが聞く事ができてよかったです。

筑波大学附属聴覚特別支援学校の杉山砂寿先生からは動画作成を題材にした「父の日のDVD作り」、大塚ろう学校永福分室からはひまわりボードというコミュニケーションボードを活用した「ひまわりタイム」、千種聾学校からはとても楽しそうでまるで本物のような「おみせやさんごっこ」と3つの事例紹介がありました。毎週、または毎年繰り返される行事の活動紹介は、教材のアイディアもとても興味深いものばかりで、自校に持ち帰って参考にさせてもらいたい点が沢山ありました。また質疑の際の話し合いを通して、今後に向けた取組の広がりの可能性を感じることができました。作成したDVD動画を子どもたち自身も見ることで、自分の表現が他者にどう受け止められるかを知ることに発展するだろうという意見などを聞いて、他の活動場面でも生かせる考え方だと思いました。

研究発表のあと、教師の役割や子どもの主体性を大切にすることについての自由な意見交換がなされました。また、人工内耳に関する医療との連携の実情についても情報交換がなされました。

最後に助言者である筑波大学教授の松本 末男先生から、目の前の子どもの発達をどうとらえるかという視点の大切さについてお話がありました。経験を自分のものにするときに、子どもは自分から働きかけたものでないと結局は取り入れていかない。そして何をその子が取り入れるかは、その子が今どういう発達状態にあるか、何を必要としているかにかかわってくるというお話でした。子どもの主体性を考えることは、古くからのテーマでありながら今でも新しい試みが可能であり、これからも取り組み続けるべき課題であると思いました。

多くの意義深い発表や意見を聞くことができた実り多い時間となりました。運営並びに助言者、発表者、参加校の先生方にこのような機会を頂いたことに感謝申し上げます。


3.自立活動T(聴能・発音発語)

茨城県立霞ケ浦聾学校  石塚 恵

本分科会では,「障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識・態度・習慣を育む自立活動について考える」というテーマで,8件の発表がありました。

人工内耳適応の目的が,「より聴覚活用の効果を高めるため」と変化している現状に対応するため,人工内耳と補聴器がより効果的に同時装用できるよう,補聴器調整を行って支援をするという発表が2件(愛知県立岡崎聾学校の壁谷広樹先生、岐阜県立岐阜聾学校の野田ひいず先生と小川征利先生)ありました。協議の中で,装用感については,客観的な評価のみならず,本人の聞きやすさや聞こえ方を主観的に評価することが大切であるという話がありました。その評価方法も発達段階に応じて明確に提示できるようにすることで,より効果的な調整ができるのではないかと思いました。また,補聴器の調整に関しては,対象児の聞こえに関する適切な実態把握や人工内耳及び補聴器に関する専門的な知識が必要であるため,学校と家庭だけではなく,医療機関や関係機関との継続的な連携も不可欠であり,連携ツールに関する検討等も今後必要になってくるのではないかと感じました。

「表計算ソフトを用いた発音明瞭度検査の解析」(筑波大学附属聴覚特別支援学校の木村淳子先生と板橋安人先生)や「小学部児童の母音の発音矯正指導について」(岩手県立盛岡聴覚支援学校の永野哲郎先生)の発表では,発音明瞭度検査の解析や諸検査の結果から息の量の調整や一音の長さ,顎角や舌の位置調整等,支援のポイントを絞った指導を行うことができ,発音明瞭度の向上につながったことが報告されました。個々に応じたきめ細やかな支援の大切さを再確認しました。また,表計算ソフトを用いることで,個人ごとにデータをまとめることができ,指導や評価の経過をすぐに確認することが可能であり,指導の継続性という観点も大変有効であると思いました。

「人工内耳装用児の発音における弾き音の要領の習得について」(筑波大学附属聴覚特別支援学校の板橋安人先生)では,話し言葉としては明瞭であっても,音節レベルではラ行の発音に課題がある児童がいるということでした。人工内耳装用児は,話し言葉が明瞭な児童が多いのですが,学校生活全般を通して話しことばを大切にした支援や活動等,言語環境を整え,日常生活の中では気が付きにくい音節レベルでの発音にも着目し,顎や舌の動きを観察して正しく模倣させる,より丁寧な指導を心掛けていきたいと思いました。

「中等度難聴児への聞き返しの指導に関する事例的研究」(新潟県立新潟聾学校の野住明美先生)では,ステップ1〜6の段階的な指導計画が設定され,指導前後の評価も行われていました。中等度難聴の児童については,聞こえているようでも,正しく綴ったり模倣したりすることが難しいことがあります。日常生活のやりとりの中だけでは気付きにくいからこそ,大切な支援であると感じています。なんとなく聞こえていても,はっきりと自信をもつことができないからこそ,自分の聞こえに関する知識や理解を深めることが大切です。どこがどのように分からないのか言語化し,要点を絞った聞き方ができるよう,日々の実践を積み重ね,今後の支援に役立てていきたいと思いました。

「領域別指導プログラムの作成と活用」(兵庫県立姫路聴覚特別支援学校の桑野恭子先生)は,専門性の継承や系統的な指導が重視される中,学校全体としての指導プログラムを作成・実践していこうというものです。発達段階や個々の実態に応じた指導ができ,そのプログラムをもとに,支援の目標をより明確にすることができるとてもよい実践だと思いました。

「特別支援学校における学校健康診断時の聴力検査」(上越教育大学の加藤哲則先生)では,他の障害領域の学校の専門性を共有することで,障害の重複化に対応したり,特別支援学校間の連携を深めたりすることができ,今後,障害の重度重複化の対応にも必要な観点であると感じました。

様々な観点からの事例検討や実践例を聞くことができ,とても参考になりました。今回学んだことを生かし,個々のニーズに応じたきめ細やかな支援の実践を目指し,努力していきたいと思います。


4.自立活動U(聴能・障害認識・コミュニケーション)

富山県立富山聴覚総合支援学校  三輪 弘恵

本分科会では、「言語力やコミュニケーション能力の向上を図ったり、自己肯定感を高めたりする指導方法の在り方について考える」をテーマに7件の発表がありました。

手話の導入が始まってかなりの時間が過ぎました。これまでの研究で明らかになってきた、手話を用いて指導を行うことのメリットや課題を意識した上で、それぞれの研究テーマに向き合ってこられたことがそれぞれの発表から感じられました。そして先生方の確固たる信念と自分たちが行っている指導への自信が感じられました。研究実践は、数年かけて取り組んでこられた報告が多く、大変聞き応えのあるものばかりでした。

発表内容としては、助詞の間違い、動詞の活用などの文法指導に関する内容が目立ちました。「文法の指導には決定的な方法はなく、子どもや学校の実情に併せて工夫していく必要がある。」との助言者の我妻先生の言葉通り、各校それぞれに工夫を凝らした指導方法の紹介があり、多くのアイデアをいただくことができました。

宮城県立聴覚支援学校の遠藤良博先生から紹介のあった、カテゴリー別に分けられた助詞について、イラストや動画を多用して場面やイメージと結びつけやすく工夫された自作の学習ソフトは大変興味深いものでした。現在、本校の小学部では、パソコンやiPadなどの情報機器を学習場面で有効に活用するための検討会、授業実践を行っているので、この発表は具体的な取り組みの例として大変参考になりました。助言者の我妻敏博先生から、「生徒が自分で学習できるという視点が必要である。教師が全てを教えることは不可能であるから、学習にふさわしい環境を作り後押しすることが大切である。」と講評がありました。このようなICT教材の活用によって、子どもたちが楽しみながら学習に取り組み、自らの力で正しい文法を獲得していく主体的な姿を想像し、今後の研修への意欲が高まりました。

我妻先生は講評の所々に「子どもにとってフェアな指導」という言葉を使われました。今までにあえて考えることのなかった視点に新鮮さを感じました。「早期教育では知らないことが前提であり、知らないから教えるという姿勢なのに対し、学齢期では文法や助詞などを間違えていると私たちは捉えがちである。しかし、間違えたから正しい答えを教えると考えるのではなく、知らなかったから教えると考えることが大切である。教わる側の言語経験が少ないという入力の問題を抱えている子どもの立場に立って考え、未学習として捉えると、どうやって学習させたらいいかという発想になる。」と教えていただきました。子どもの姿を否定的に捉えていては、指導の内容は、世の中で正しいとされていることを押しつけるという傲慢なものになってしまうでしょう。そうなれば、子どもは反発して心を閉ざしてしまうかもしれません。短期間で習得させたいと焦って近道を探し、押しつけてばかりいたのではないかと自分のこれまでの指導を振り返りました。子どもを学びの主体者として捉え、子どもが安心してのびのびと活動に参加し、フェアな学習活動に臨めるよう努めたいと思いました。

私は子どもと自然なやりとりを交わしながら意図的に言語学習の場を設定することが大好きです。子どもたちのまっすぐで真剣なまなざしやかわいらしい笑顔にいつも励まされてきました。しかし、継続的で系統的な指導という要素は弱かったように感じます。言語面で大きな問題を抱える児童に、文法指導を行うことはとても根気とエネルギーのいることです。系統的に行うことは時間がかかりそうに思いがちですが、じつは着実で効率的なのだと知ることができました。そして、どちらもうまくリンクさせていくことの大切さを改めて考えさせられました。ここで学んだことを明日の実践に生かしていこうと思います。


5.教科教育T(文系)

東京都立中央ろう学校  小林 舞

研究主題「確かな学力の定着を図る教科指導について考える」のもとで、8校からの発表が行われました。発表内容を4つに分類し、それぞれ勉強になったことを述べさせて頂きます。

まず、「小学部段階の読み書き指導、読解指導」では、大阪府立堺聴覚支援学校の洲脇志麻子先生・生駒明子先生と、福岡県立久留米聴覚特別支援学校の野村健二先生の、児童一人一人の適切な実態把握の様子や躓きに対しての丁寧な手立てに感銘を受けました。指導中、児童のわからない語彙や文法が出た際、それらを図式化する等の視覚的支援や、児童自身の経験との結びつきや既知の語彙を用いながらの発問、児童同士の推論の展開等、様々な手立てによって言葉の力はもちろん、自主性も育つと思いました。高等部に所属する私にとって、現在の生徒たちの言葉の力は当然のことと思い込んでいましたが、常に学びの環境を整えている小学部段階のご指導のおかげで、高等部の生徒たちの現在があるのだと感じました。

「多様な英語教育実践」については、香川県立

聾学校の藤井亜紀先生、兵庫県神戸聴覚特別支援学校の中川芳美先生より発表がありました。アメリカ手話やiPadを用いて、生徒が主体的に楽しく英語を学ぶ工夫をされていらっしゃいました。生徒にとって、言語を学ぶことは大変さを感じることばかりだと思います。しかし、アメリカ手話によって自信を持って発音を発表したり、iPadによって楽しく語彙や文法を学ぶ様子が見られました。授業を充実させるための手立ては、未知数だと思います。新しい取り組みを進んで導入し、実践する先生方の姿によい刺激を頂きました。

「教科指導内外における言語教育」では、富山県立富山聴覚総合支援学校の上田綾子先生、東京都立立川ろう学校の加世田和明先生より、言語力・思考力を育成するための言語活動について発表がありました。一つの目的に向かって話し合うためには、言葉の力はもちろんですが、自分の中で論理的に思考し、相手に分かりやすく表現する力も要します。そこで、生徒の思考過程を適切に捉えて発問を工夫したり、自己と他者の考えを共有する話し合い活動を様々な場面で取り入れる等の手立てをしていらっしゃいました。また、話し合いは相手からの評価や指摘があるため、自己の考えを振り返るよい機会になり、その経験も言語力や思考力の向上につながるのだと大変参考になりました。

「教科教育実践」では、筑波大学附属聴覚特別支援学校の柴崎功士先生・藻利國恵先生より大学と連携した地域の歴史学習について発表がありました。一人一人がテーマを決めて調べ学習を行い、大学側と質疑応答を行う過程で、情報の取捨選択のスキルが身につくと共に、最後に調べた内容をプレゼンすることで自信も感じられると思いました。生徒が自ら学び、他者に伝えるという経験を積ませることで、技術だけでなく、学ぶ意欲も向上するのだと教えて頂きました。

最後に、助言者の筑波技術大学 長南浩人先生より、学力向上のため、聾学校に「勉強する文化」を作ること・児童生徒に「勉強の仕方」を教えることの必要性についてご助言を頂きました。聾学校と一般校を比べると、聾児の勉強時間は少なく、「学力の高い人はどのように文章を読んでいるのか。得た知識をどのように活用しているのか」を児童生徒に経験させることが大切とのことでした。

今回発表頂いた諸先生方のように様々な手立てを講じ、児童生徒が「学ぶ」経験を通して、「主体的な姿勢」が育ち、「学ぶ喜び」を感じることで、聾学校全体の学力がより向上するとよいと思いました。

他校の取り組みを拝聴し、学ぶことが多かった分科会でした。ありがとうございました。


6.教科教育U(理系)

石川県立ろう学校  坂上 明香

本分科会では、「論理的な思考力を育み、確かな学力が育つための授業改善について考える」というテーマにそって、数学・理科の授業での実践例などについて8校からの発表がありました。25名の参加者の活発な質疑の中で情報交換もでき、非常に勉強になった分科会でした。

愛知県立千種聾学校の高山美代子先生からは、「論理的な思考を育み確かな学力が育つための授業改善について考える〜量の概念を育てる授業づくり〜」という内容で、小学部の算数の授業での「量」の学習における実践と研究が報告されました。本校でも量、特に単位については苦手としている生徒が多いため、本校の生徒を想起しながら聞いていく中で、知識として学習するだけではなく、イメージやからだの感覚を結びつけることや、学習したことを生活と結びつけて何度も繰り返し使うことが大切であると改めて感じました。

また、生徒が量にかかわる活動に取り組めるような環境づくりとして、「1m選手権」など、簡単にできて、かつ、生徒がやる気を出して楽しく学べるようなアイデアもあり、参考になった発表でした。

愛知県立一宮聾学校の横山匡義先生からは、「論理的思考を養うための指導の工夫」という内容で、中高の数学において、「筋道を立てて考える力の育成」に焦点を当てた授業実践と研究が報告されました。中学部では、いろいろな方法での発表の場面を授業で多く取り入れ、自分の考えを説明したり、他者の反応を確認し、意見交換をしていく中で、生徒が「他者に分かりやすく伝える工夫」や、「考えの流れの整理」、「要点をまとめたり、関連する事項を見やすく配置したりする方法」を自ら考え、表現方法に変化が見られ、高等部では類似問題を繰り返したり、授業終了前の5分間のまとめの時間を設定するなどすることで、手がかりを基に、筋道を立てて考える力が備わったなど、実りのある研究の報告でした。どの取り組みに対しても、生徒がやる気をもって取り組んでいる様子がうかがえ、説明が上手くいったことや、問題が解けたことが成功体験となり、生徒が自ら工夫や改善点を考えたり、次に挑戦する力となっている様子がうかがえました。論理的思考を育むためには、生徒のやる気を引き出すことも、大きなポイントとなると感じました。自分が担当している教科は数学ではなく理科ですが、この研究発表を参考にして、本校でも自分の考えをしっかりと伝える場面を設けることで、考えを整理し、表現する方法や、論理的思考が高められるよう、授業改善に取り組んでいきたいです。

北海道高等聾学校の新谷洋介先生からの「タブレットを利用した体験的に数式を理解できる教材の開発と実践」では、ICT教材を活用し体験することで、生徒の気づきを促し、学

習内容の理解を深めるという内容でした。実際に見せていただいた教材は生徒が自分で数字を動かすことで数式の変化が見え、生徒が考えている様子を写した映像では、生徒がその数式を理解し、タブレットで体験したイメージを基に、問題を解いている様子がうかがえました。言葉の説明や例を示しただけではイメージしにくく、捉えにくい数式を実際に自分で操作して変化をみて、気付いたことで理解を深めていたことが、非常に印象深かったです。

最後に助言者の鈴木茂樹先生からは「見える化」ということや「5W1H(なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、どのように)」という考え方が大切だということ、研究を進める際にはPDCAサイクルが重要だということを挙げられていました。また、一教科だけでは論理的思考は定着するのは難しいため、学校全体の研究テーマにするなど、教科だけで取り組むのではなく、学校全体で取り組むことが大事だと分科会の協議をまとめられました。教科教育U(理数教育)研究会に参加し、充実した時間を過ごすことができましたことを運営並びに助言者、発表校、参加校の先生方に感謝申し上げます。


7.寄宿舎教育

千葉県立千葉聾学校  倉持 優美子

本分科会では「生きる力と豊かな心を育てるための寄宿舎教育について考える」という研究テーマのもと、助言者として大泉溥先生をお迎えして会が開かれました。

研究協議では、筑波校、一宮校、豊橋校からそれぞれ発表がありました。

筑波校の木村美津子先生からは「あらゆる場面に応じた力を身に付けるために〜卒業後一人で生活することを想定して〜」というテーマのもと、携帯電話の使用マナー、一人暮らしを始めるに当たっての音のマナー、帰省方法、通院方法など、実生活に沿った形で、具体的に段階を踏んだ支援、指導の計画が立てられており、また、集団と個別を、それぞれ活かした内容で取り組まれていることがわかりました。

ここでは、携帯電話の使用マナーについて話題になりました。特に最近では、LINE(無料通話アプリ)でのやりとりが、トラブルに発展するケースが増えていて、各校の寄宿舎でも、対策に頭を悩ませているという声がありました。原因の多くは、ちょっとした言葉の行き違いによる誤解で、文字だけでは伝わりにくいニュアンスや気持ちの汲み取りが不足していたり、個々の語彙力の違いから生じてしまうことだったりと、コミュニケーション面での課題が浮かび上がり、様々な意見交換が行われました。

続いて、一宮校の原田尚子先生からは「身の回りの清潔を保つ力を身に付ける支援〜チェックシートによる実態把握を通して〜」というテーマで、チェックシートから得られた、子どもたちの実態から、強化していく部分をはっきりさせて、より具体的な支援、指導にあたるためのものとして有効活用されていることがわかりました。また、学習教材に自作ビデオを取り入れ、映像によって子どもたちの興味関心を引き出し、楽しみながら学べる工夫がされていました。ここでは、入浴場でのマナーが話題になりました。プライベートな場か、パブリックの場か…という部分では、寄宿舎は家庭的な面を持つ場でもある反面、個で生活をしているのではなく、やはり、集団生活の場であることを念頭に置きながら、寄宿舎ならではの良い距離感で支援、指導にあたっていくことが必要だと感じました。時には背中を流し合って、心も裸になって話し合えるような、そんな裸の付き合いができるのも、寄宿舎の良さだという声があったのも印象的でした。

最後に豊橋校の宮川その子先生からは「自由時間を活用した“開舎の集い”の取り組み〜行事を通して豊かな心を育てる〜」というテーマで、発表がありました。在籍生のほとんどが高等部生という現状から、自由時間を行事や親睦を深めるだけのものとせず、社会自立を考えるきっかけとなる取り組みにできないかと、職員間はもちろん、子どもたちとも沢山の検討を重ねてきたそうです。その取り組みは、アミューズメントパーク利用や卒業生の就労先訪問、工場見学など、とてもバラエティーに富んでいました。これが、子どもたちの真剣な眼差しや、生き生きとした表情、様々な感想を引き出せた理由だと感じました。

ここでは、余暇時間の使い方について話題になりました。昨今では、規制も厳しくなり調理一つにおいても書類、散歩するにも起案、許可を得て…という世の中になり、様々な葛藤の中で子どもたちとの日々を送っているという話を聞き、どこの寄宿舎も皆同じ思いや悩みの中、運営していることがわかりました。

最後に大泉溥先生からの言葉で特に印象に残ったものがありました。「結果だけを見るのではなく、それまでにやってきたことの中身が大事」という言葉です。日頃、できた・できないに囚われがちになり、子どもたちの評価をしていましたが、それは同時に、自分自身に対する評価であることに気が付きました。そこに至るまでの様々な取り組みを深めていくことで、沢山の可能性を広げ、子どもたちの力が伸ばせたなら、それは自分の力にも繋がっていくと考え、この学びを忘れず今後の教育活動に生かしていきたいと思います。


8.重複障害児教育

山形県立酒田特別支援学校  堀 恵美

本分科会では、「一人一人の特性や教育的ニーズに応じ、生きる力を育むための授業改善について考える。」というテーマのもとに、話し合いを行いました。参加者は25名で、7つの学校の発表がありました。

聴覚障害のほか、併せ持つ障がいが様々で、どの学校でもいろいろなやり方を模索しながら、工夫して取り組んでいると感じました。7つの発表それぞれ活発に質疑がなされました。自校の悩みなども話しながら、他の学校ではどうしているのかを聞いて、帰ってから少しでも日ごろの実践に役立てようとしている先生方が多かったように感じました。

研究協議では、コミュニケーション(伝える)力と、かかわり、社会性、連携ということが共通して話題となりました。

愛知県立一宮聾学校の長瀬宗敏先生の発表では、「生きる力」を「かかわる力」「生活する力」「働く力」「楽しむ力」の4つの力に分け、指導内容段階表を作成し活用していました。生徒に合わせて段階を考えて実践を行う上で、誰が見ても分かるこの段階表はとても参考になりました。一人一人の今の力と、これからつけていきたい力を整理し、それをもとに担当者間で共通理解を深めることもできる、とても有効な手段であると思いました。

愛知県立豊橋聾学校の中野拓希子先生の発表は、生活単元学習の年間計画を基に、各教科の内容と密接に関連させながら取り組んでいる実践でした。日常生活に結び付いた言葉を学ぶ上でも、各教科や領域を関連させることで、様々なシチュエーションで繰り返し学ぶこととなり、効果的だと思います。本校でも各教科の先生方と生徒の課題や指導内容について共通理解を図りながら取り組んでいますが、それぞれの教科単独での実践になりがちです。担任として、もっと積極的に発信して、各教科の枠をこえて総合的に学ぶことができる状況を整えようと思いました。

愛知教育大学の岩田吉生先生はご助言の中で、子どもと会ったときに大切なことは、そ

の子の興味関心のあることを含めた子どもの姿をとらえることが大切であるとおっしゃっていました。「この障害だから」ではなくその子と向かい合うことからスタートする大切さを思い出させていただきました。また、卒業後を意識した取り組みについてのご助言も、中学部の担任の私には、とても参考になりました。卒業後の自立した生活をイメージすることが大切だと学ばせていただきました。中でも、コミュニケーションスキルの指導につ

いて、以下のポイントを挙げていらっしゃいました。@周囲の状況や相手と自分の立場を理解する力、A相手の話を聞く力、B相手の考えや気持ちを理解する力、C自分の考えや気持ちを伝える力、D質問する力などのスキルを段階やシチュエーションを細かく考えて、取り組む必要があるということでした。一人一人、現在がどの段階なのかをていねいに見取り、将来の姿を考えながら、必要なことを整理し、かかわる教員間で共通理解しながら日々取り組んでいかなければならないと改めて思いました。

多くの方の話を聞くことができ、充実した時間を過ごすことができました。いろいろと再確認することができ、今後の指導に生かしていきたいと思います。発表してくださった先生方、助言者の岩田吉生先生、参加校の先生方、運営してくださった先生方に感謝申し上げます。ありがとうございました。


9.進路・キャリア教育

広島県立広島南特別支援学校  上野 由加里

「一人一人の将来の安心と夢の実現について考える」という研究主題で、5校のレポート発表がありました。

午前の愛知県立岡崎聾学校の大西英夫先生、三重県立聾学校の松田珠美先生、愛知県立一宮聾学校の安藤孔祐先生の発表は、校内における進路指導体制や連携のあり方、幼・小・中・高等部の段階的なキャリア教育の実践、実態把握と自己評価についてでした。教員はこれまでの「高等部から始まる進路指導」ではなく、「キャリア教育は幼稚部から始まる」という意識変革と共通理解が不可欠であることや、幼稚部・小学部段階で取り組むべきキャリア教育の内容も具体的に述べられました。

兵庫県立神戸聴覚特別支援学校の吉岡美恵子先生の発表では、すぐに使える手作り教材の紹介や職場で必要とされる作業力、指示の理解、メールなどによるトラブルやマナーについての具体的な指導事例が発表され、本校の日々の取り組みと重なる点も多く、指導のヒントが得られました。

助言者の藤本裕人先生からは、「言語的に伝わりにくいところをワークシートで確実に伝える工夫や本質的な言語力、就労機会の拡大のための取り組みがしっかりと行われています」と、ユニークな具体例を挙げながら言語力の充実についての助言がありました。また「教師が考える仕事の厳しさと生徒の意識に差があり、自己評価チェックリストに表れていますね。チェックリストは就労・勤労をこのリストによってだれもが納得できるものでなければならず、科学されるものでなければなりません。ただし、教師の評価と生徒の自己評価に差異はあっても、『できない』という意識のままで卒業させてはなりません。『できない』ことをどのようにして『できる』にするかが課題です」と述べられました。

午後の愛知県立豊橋聾学校の藤原立司先生、愛知県立名古屋聾学校の伊藤悟先生の発表では、生徒の仕事に対する意識、自己管理、報告書提出の際に必要な文章力など、インターンシップから浮き彫りになる「つまずき」や課題に対してどのように指導しているか、実践報告がありました。

東京都立葛飾ろう学校専攻科産業システム類食物系の柏倉克哉先生の発表では職場で実際に働いているような緊張感が伝わってくるような発表でした。職場ではコミュニケーション力、協調性、作業力が必要とされることに加え、実際に食品を販売するためには徹底した安全・衛生・自己管理力が求められます。そのことを生徒は理解して調理し、接客によって達成感を味わっていて、私自身もワクワクしながら発表を聞きました。

明晴学園の狩野桂子先生の発表ではろう者であることを手話という言語をもったマイノリティとして捉え、ろう児が自然に獲得できる日本手話と書記日本語による学習環境を整えることにより、学力をつけ、積極的に進路を選択していくことができるという発表でした。進路決定の道のりでは生徒は真剣に悩むけれども自己肯定感を育てることが進路を切り開く力として根底に築かれており、それを支援し、見守る教職員の熱意が伝わる迫力ある発表でした。

最後に筑波大学附属聴覚特別支援学校専攻科の武林靖浩先生の発表では、生徒会活動で「空飛ぶ車いす」支援事業の取り組みについての発表がありました。生徒の自主性を引出し、ボランティア活動への参加をとおして、自己理解と他者理解にもつながり、コミュニケーションの壁を前向きに乗り越えようとする姿勢が出てきているというものでした。

今回私は本分科会に出席する機会を得て、進路指導・キャリア教育は生徒の卒業後の職決め、居場所探しだけではなく、自己実現と社会人としてのあり方を学ぶものであり、もし問題が起こっても、学校で学んだことを思い出し、再び自分の足で立ち上がって歩いていこうとする力強さを大事に育てていかなければならないということを改めて学び直すことができました。


10.総合的諸問題

奈良県立ろう学校  北門 英美

「特別支援学校における聴覚障害教育の諸問題について総合的に考える」というテーマで6分野の報告がありました。

青森県立青森聾学校の木村禎子先生からは「聴覚障害教育における『歌唱指導』の試み」として、音楽の基礎的な力を「聞く・模倣する」活動をパターンとする指導により、文化祭の演奏や卒業式の式歌などで発表できるようになった内容についての報告がありました。

言葉やリズムを視覚化し理解しやすく工夫された教材や歌詞をすべて覚えた後に手話をつけるといった配慮など、児童の達成感や充実感を大切にした指導方法に感心しました。また、カラオケ店が億劫だった児童が店に行けるようになり保護者も児童の歌に感動し涙したといった話には心が温まりました。

次の筑波大学附属聴覚特別支援学校の渡邊明志先生からは「聴覚障害児の社会自立・参加につながる体育・スポーツを目指して」として、関東聾学校中学部体育連盟設立から現在に至る経過と組織改革についての報告がありました。

組織づくりのために存在意義の明確化、協力体制の構築、総合的かつ中長期的な視点で組織を捉えて地道に活動を重ねてこられたことが、改革後の組織の現状から知ることができました。さらに、教育活動を支える組織が社会自立・参加の一翼を担う大切な存在となっていることも再確認できました。

続いての国立特別支援教育総合研究所による「特別支援学校(聴覚障害)におけるコミュニケーション手段と教材活動に関する現状調査(2)」(庄司美千代先生)では、アンケート調査で把握できた興味深い内容ついての研究報告があり、各教科の教材活用や工夫の傾向、同教科での学部間での特徴、数多くの教材が加工や自作されていることなどがわかりました。そして、各自がもっている様々な教材が聴覚障害教育のベースアップになるように、何らかの方法で共有化できないかと感じました。

学習活動「ダンボ」在籍者の「LDとADHDを併せ持つ人工内耳装用児への継続的支援と保護者ニーズの変容」(東京学芸大学の大鹿綾先生)では、隔週土曜、個別活動45分間を利用した小学3〜6年生の4年間の継続的な活動についての報告がありました。

児童を多面的視点で把握し課題と目標を明確化することが変容促進になることがよく理解できました。また、聴覚障害教育の専門性に加え他の障害にも対応できる力量向上の必要性も知り、自分自身を見つめ直したいとも思いました。

三重県立聾学校からは「字幕・要約筆記など文字情報の活用とその効果」(藤谷弘晃先生)として、校内の情報保障の取り組みについての報告がありました。学校祭での手話劇、人権講演会などにおける字幕・要約筆記が聴覚障害の生徒だけでなく周囲の人たちの情報保障にもなっていることがわかりました。今後は、聾学校内での聴覚補償に加え情報保障の整備と拡充に努め、聾学校外の様々な場においても字幕・要約筆記が整えられることを望みます。また、情報保障を聴覚障害の側の権利というだけではなく、情報を伝える側の権利かつ義務として訴えたいと思いました。

最後の愛知県立名古屋聾学校からは「良好な対人関係の形成を目指して」(青山信夫先生)として、生徒の人間関係の構築のための環境整備に関する報告がありました。

中でも、人間関係の構築のために作成された「マナーブック」は、学校生活場面、面接や実習時、社会人という3つのStepで必要なマナーなどが紹介させており、是非とも全国レベルで使用可能な冊子として承認してもらいたい内容のものでした。

以上6分野の報告後は、すべての参加者が質問や感想・意見などを述べる時間が設けられ活発なやりとりを行うことができました。

助言者である国立特別支援教育総合研究所の原田公人先生からは、各報告後に経験を踏まえた的確な助言があり、また全体を通しては、聴覚障害教育を取り巻く状況、コミュニケーション方法の相互理解、言葉の意味などについての指導をしていただきました。

この分科会に参加し、日頃、意識しないような課題に触れ、広い視点で聴覚障害教育を学ぶことができ、大変充実した時間を過ごすことができました。今、分科会に関係されましたすべての先生方に心より感謝申し上げます。


11.センター的機能

愛媛県立松山聾学校  河村 義和

本分科会では「聾学校が担うセンター的機能の役割と実践について考える」というテーマのもと7件の研究発表がありました。それぞれの発表に対して質疑や情報交換が活発に行われました。分科会後半では、「センター的機能を進める上での課題と方策」について参会者で研究協議や情報交換を行いました。

千葉聾学校の田原佳子先生からは、千葉県における聴覚障害教育のネットワーク作りについて実践報告がありました。千葉県全域の市町教育委員会や医療機関を巻き込んだ広域でのネットワークシステムや参加者主体の会議の運営について、聴覚障害教育のセンターとして千葉聾学校が貢献している報告でした。田原先生のパワフルできめ細やかな実践は、学ぶことの多い内容でした。

岐阜聾学校の小林裕子先生の発表では、通常学校における難聴理解啓発に関する学習について、教師や子どもたちの正確なニーズの把握や支援後の評価についての研究報告がありました。地域で学ぶ聴覚障害のある子どもたちが正しく理解され、必要な支援や学習環境の整備がなされていくために、我々聾学校が果たす役割と支援の際の配慮事項を学ぶことができました。堺聴覚支援学校の松川雅一先生からは、聴覚支援センターの設立と地域支援の実践について報告がありました。聴覚支援センターの新設に関する校内体制の整備や広報活動等、センター長として活躍される松川先生の取組は大変興味深い内容でした。

名古屋聾学校の鈴木亮介先生からは、通級による指導および巡回相談における生徒理解と指導の充実について研究報告がありました。支援の連携を深めていくための進路指導パンフレットや巡回指導・通級指導での資料作成について、重要性や効果等について学ぶことができました。

香川聾学校の玉野比早代先生からは、地域の聴覚障害のある幼児との集団活動について研究報告がありました。聾学校での定期的な交流活動を通して、在籍児や交流児双方によい効果がもたらされていることや保護者にとっても就学を考えていく上でのよい機会となっていることを学びました。

玉野先生のすばらしい実践力を感じる報告でした、松本ろう学校の小林優子先生からは、既存のネットワークを活用した地域支援の推進についての研究発表でした。聾学校のネットワークを活用した取り組みとして、難聴学級生徒と通級生徒との交流会を開催し、3年間の実践の中で得られた生徒の変容や難聴学級間の連携構築についての報告を興味深く拝聴しました。

三重県立聾学校の藤井孝先生からは、小学部における交流教育及び通級指導の現状と課題について研究報告がありました。21年目を迎えた地域の小学校との交流教育の実践報告から、これからの共生社会を構築していく子どもたちの学びの在り方や交流教育の効果について学ばせていただきました。また、医療・福祉・教育三者合同会議の取組から、より質の高い支援を提供していくための連携システム構築の重要性について知ることができました。

研究協議や情報交換では、各校でセンター的機能を中心に担う先生方から多くの情報を得ることができました。各地域の特性や実情に合わせた支援や課題への取り組みをとおして、それぞれの地域の聴覚障害教育のセンターとして聾学校が認知され、支援を必要とする多くの方々や機関から聾学校が選ばれていくことが大切であると改めて感じました。

最後に助言者の澤隆史先生からは、全国調査の結果を交えながらセンター的機能を充実・発展させていくために求められる力やキーポイントについて教えていただきました。聾学校教員は、聴覚障害教育に関する専門的な知識・技能の形成に努めていくと共に、情報収集力・発信力、連携力、推進する力、説明する力を人との関係の中で身につけていくことが大切であることを学びました。


12.国際教育・国際交流

福岡県立久留米聴覚特別支援学校 
 前田 丈人

本分科会では、ろう教育における比較・国際教育学から、海外との学校間交流や留学生教育にいたるまで、多岐の分野にわたって発表が行われました。

青森県立青森聾学校の奈良岡守先生からは、JICAを通じたタイのセサティアン聾学校との文通をきっかけに、学校紹介のDVD作成へと発展していく内容についての報告がありました。生徒自身が「調べてみたい」という意欲を掻き立て、「整理し、分析し、考え、表現する」というステップを踏むことで、海外に目を向けるよい機会へとつながることがわかりました。

熊本大学の古田弘子先生からは、ALT(外国語指導助手)本人調査の結果をもとにした聴覚特別支援学校におけるALTの活用についての報告がありました。聾学校の生徒は普段から様々なコミュニケーションに関わる努力をしているので、ALTともスムーズに交流していく姿が見られます。そのことに聾学校の生徒だからこその異文化接触の可能性があると感じました。

愛媛大学の立入哉先生からは、韓国との特別支援教育に関する教員と学生の相互交流プログラムについての報告がありました。単発に止まることなく、それぞれの大学で通訳できる学生を活用するなどの留学者の経験を活かした交流を実践していくことが、事業の継続に結びついていくということがよくわかりました。

福井県立ろう学校の菱川千鶴子校長先生からは、県在住の青年海外協力隊員の依頼に始まって、ルワンダのブタレ聾学校とのIP(Internet Protocol)電話を利用した共同ダンスを交流するに至るまでの取り組みについて報告がありました。中でも、「熱意を持ってやるキーパーソンがいる」「相互にメリットがないと長続きしない」などが大切な課題であると思いました。

筑波大学附属聴覚特別支援学校の横山知弘先生からは、パリ国立聾学校を視察した園芸・歯科技工・縫製・美容・配管工・グラフィックデザイナーなど、職業に就くために行われている様々な授業について報告がありました。生徒一人一人がその職のスペシャリストとしてやっていきたいという意欲と誇りをもって取り組んでいることに感銘を受けました。

愛知県立豊橋聾学校の世本淳先生からは、姉妹校提携しているカナダのマニトバ聾学校へ、高等部の生徒と教員が、授業参観や体験学習、スポーツ交流をしたことなどについて報告がありました。「アメリカの手話をもっと勉強したい」「これからも新しい経験をしたい」といった生徒の感想などから、かけがえのない10日間となったことがよくわかりました。

中部学院大学の加藤和彦先生からは、国立ソウル聾学校及び私立韓国口話学校の訪問を踏まえて、韓国の聴覚障害児教育の現状についての報告がありました。児童減少の位相に入り、統合教育の流れの中で、施設設備の充実はもとより、言葉の教育を指導してもらえることから、ある意味での英才教育として人気があるとのことでした。まさに制度を牽引する実践が進んでおり、とても参考になりました。

熊本大学の古田弘子先生からは、インドとスリランカに焦点をあてて、南アジアの聴覚障害教育の過去・現在・未来についての報告がありました。障害児教育の統合教員の専門性を高める養成教育が困難であるという課題が提起され、とりわけ聴覚障害教育においては、民間企業のサポートによる手話通訳の配置を推奨するといった国の支援制度の必要性を痛感しました。

最後に助言者の筑波技術大学前学長の大沼直紀先生からは、国際化や国際研究に関わる聴覚障害者のための高等教育機関の変遷をたどっていただき、さらには事務局やネットワーク、調査事業といった本分科会の組織や運営について示唆を与えていただきました。

今回、第一回目となる本分科会の発表は、いずれも国際化時代にふさわしい新しい試みに満ちていました。