1.早期教育T(教育相談)

兵庫県立こばと聴覚特別支援学校  中村 智子

「かよいあう体験を通して乳幼児の心豊かな発達を促すための早期教育について考える」のテーマにそってコミュニケーション手段における実践例や関係機関との連携について4校からの発表がありました。26名の参加者の活発な質疑の中で情報交換もでき,研究協議の内容でもある「早期教育での関係機関との連携」の必要性を再確認した分科会でもありました。

札幌聾学校からは,「日本手話の言語環境整備」「日本手話を基盤とした支援・指導」という内容で乳幼児教育相談での取り組まれている日本手話による情報保障や絵本の読み聞かせの報告がありました。日本聾話学校(ライシャワ・クレーマ学園)からは,「絵本を通してのインタラクション」についての実践報告がありました。乳幼児が絵本を楽しむ様子や絵本を通しての親子のやりとりが映像でよくわかりました。

2校の発表を通じて各校の教育方法やコミュニケーション手段においてそれぞれの親子,家族にあった支援や絵本の取り組みにおける親子の関係作りなど日々の支援の積み重ねの大切さを感じました。

酒田特別支援学校からは,関係機関との連携のあり方の見直しなど新しい体制での早期教育相談の現状について報告がありました。三重県立聾学校からは「福祉と教育との連携」として0歳から2歳児の支援における年齢によるSTと教員の役割分担について報告がありました。

2校における地域性や組織の課題はあるものの家庭,家族,保護者をよりよく支援するために相談システムの改善など,尽力を注いでおられることにとても感銘を受けました。

研究協議・情報交換では,「コミュニケーション手段」「絵本の扱いや取り組み」について各校の状況を報告しあい,「あらゆる感覚を活用した多用なコミュニケーションを大切にし,望ましい親子関係を育てるための支援の在り方について」の協議がなされました。

最後に助言者の庄司和史先生からは,発表内容の講評と今後の特別支援教育の動向,乳幼児段階の教育支援について,様々な家庭・家族を支援する乳幼児教育相談の役割,聾学校の組織的な課題についての講話があり,「各校の地域性や学校体制,課題は様々である。しかし,聾学校乳幼児教育相談の地域のセンター的機能の位置づけ,他機関とのネットワークなど顔の見える関係作りは不可欠であること。乳幼児教育相談の役割として親の心情を理解し,よりよい支援を行うために関係機関(医療等)との連携,支援リソースの活用など具体的課題を克服していかなければならないこと。」と分科会の協議をまとめられました。

 早期支援に携わる者として責任の重さを感じると共に明日からの支援への活力になりました。早期教育(教育相談)研究会に参加し充実した時間を過ごすことができましたことを運営ならびに助言者,発表校,参加校の先生方に感謝申し上げます。


2.早期教育U(幼稚部教育)

横浜市立ろう特別支援学校  甲斐 やよい

本分科会では「豊かなコミュニケーションの力を身につけ,ことばを育む幼児教育について考える」という研究テーマをもとに,8件の発表がありました。

前半は,「学級活動でのやりとりを考える〜幼稚部での実践を中心に〜」「“難聴児”と人工内耳装用児の言語的課題とその支援」という子ども同士のかかわりやコミュニケーション手段に関する実践と研究が報告されました。

本校の幼稚部も人工内耳装用児の割合が高くなってきています。音声で流暢に話せているように見えるのですが,語彙を曖昧に覚えていたり,助詞が脱落していたりといった課題を抱えています。理解できたかどうか確認することや指文字表現をした後にもう一度音声で言い直させたりすることの必要性を改めて感じました。また話し手を見ることについて,まだまだ指導が足りていなかったと感じました。「見て」という音声だけでなく手などの視覚情報も併せて提示していき,見る習慣をつけるようにしていきたいと思います。

後半は,保育活動における教員の役割(支援や使用することば等)についての実践と研究が報告されました。

教員と子どもとの信頼関係を築くことの大切さについての発表は,基本的なことでとても重要なことと改めて考えるきっかけになりました。子どもの気持ちをきちんと把握できているのか,自分自身を見つめ直していきたいと思います。

保護者向けのコメントから教員の指導意図を探ったという発表は,全てのことばかけに意図をしっかりもつことや保護者に指導意図を伝えていくことの重要性について感じることができました。本校も保護者が付き添い記録を書いてもらったり話をする時間をとったりしていますが,子どもの様子の話で終わってしまい意図までなかなか伝えていなかったと反省しました。

また,行事ごとに概念シートを作成し,おさえたいことばを保護者と教員間で共通理解したという取り組みや,異年齢のペアでの活動を通して異年齢の関わりが増え関心が広がったという取り組みなど,各校の工夫された実践が発表されました。ことばを身につけるための工夫や,「伝えたい」と子ども自身が思えるような工夫がなされており,とても参考になりました。

さらに,遊びと言語指導のバランスがとれた保育を目指し研究を続けているという学校の発表や,遊びを中心とした生活での教員の役割について研究された学校の発表もありました。「遊びを中心とした生活」と「言語指導」のバランスをどう保っていくのかが課題なのだと思います。子ども自らが知りたい,話したい,感じたいと思えるようになるためには教員としてどのようにしていったらよいのかを考えていきたいと思いました。

最後に助言者の目白大学教授の齋藤佐和先生より,言語指導の大切さについてのお話がありました。その中で特に,「わかる→使う→使い慣れる→新しい言葉を増やすという流れで言葉を覚えていく」ということと,「ことばを習得するには,日々の積み重ねが大事であり特効薬はない」ということ,「教師にとっては勉強でも,子どもにとっては遊び」ということばが印象に残りました。繰り返し丁寧に指導していくことの大切さを改めて感じるとともに,勉強として意識させるのではなく遊びの一環としてとらえられるような指導法の工夫など,自分の力不足だった面を見つめ直すことができました。

本分科会に参加し,たくさんの情報を得ることができました。また自分の指導についても見つめ直すことができました。ここで学んだ多くのことを今後の実践に活かしていきたいと思います。ありがとうございました。


3.寄宿舎教育

鹿児島県立鹿児島聾学校  浜島 嘉江

本分科会では「一人一人の個性に合わせた社会自立や社会参加の力を培い,よりよく生きるための寄宿舎教育について考える。〜集団生活の中で,個性を活かし,自主性を育て,豊かな人間性を培うための寄宿舎教育の在り方について研究する〜」のテーマで2校の実践発表が行われた。

新潟県立長岡聾学校の発表は,子供たちが積極的に意見を言ったり行動したりすることが少ないので,自分に自信を持ち,進んで意見を発表し,行動できるようになるために「自ら発言したり行動したりする姿を目指して」をテーマに生徒会活動や日常生活で成功体験を積み重ねることが大切であると考え,一人一人に役割を持たせ個々に応じた支援の中で実践報告が行われた。

在舎年数4年目の高等部男子生徒は,日常生活では仲間と楽しく過ごせるが,集団の話し合いの場では消極的で,周りの意見に合わせていた。平成22年度の寄宿舎生徒会役員の文化委員長になったことをきっかけに,自主性の育成に取り組む。

1年目は,話し合いの議題や主旨を説明することも難しかったが@事前に議題や内容の進行表を作成してシュミレーションを行い,当日も進行表を使い司会をする事の支援。

A進んで自分の意見を言うことが出来るための支援として,進行表に自分の意見を書く欄を作成して,司会をしながら自分の意見を最初に伝えることを提案する。

活動の予定をいつでも記入し,確認できるように机上に専用カレンダーを置くことや,それを見て生徒へ連絡するための連絡ボードを記入させるための工夫等を行う。

以上の支援により,当日はゆとりある表情で委員会にのぞみ説明も出来たことで満足感や達成感を味わうことができた。

一通りの流れを経験したことで,2年目は自信を持ち予定通りにできるようになった。

日常の場面でも,自主的な行動が広がり,分からないことは職員へ質問するようになり,普段の会話も自分から話しかけてくるようになった。そして一人暮らしの体験の取り組みで,料理作りまで行い卒業できたことは,素晴らしいことであると思った。

筑波大学附属聴覚特別支援学校は「3.11東日本大震災における寄宿舎の対応と防災に対する取り組み」についての発表だった。

毎年,火災や地震に対しての訓練は行っていたが,実際に大震災に遭遇したことで,非常事態への対応,その後の計画停電や休校,今後の防災に対する取り組みについての発表だった。

建物の被害は,飛散防止シートを貼っていたのでガラスは割れなかった。防火扉が閉まり本棚から本が崩れ落ち,廊下の一部にひび割れができた。一人の女子舎生が帰宅途中であり,携帯電話のメールがつながらず夜中にようやく連絡が取れた。すぐに,職員の宿直体制を見直し1名増やし,舎生の外出制限,計画停電による日課の変更,舎生の不安を取り除くための対応に重点が置かれていた。そして震災を教訓に避難マニュアルの再確認,防災備品や非常食の備蓄,帰省途中の舎生の例も踏まえ,舎生の安全の確保,震災が起きた時の情報収集,周りを見て判断し行動することなど,防災に対する意識付けを常々心得させる。以上のような盛りだくさんの発表だった。単独帰省中の舎生と連絡が取れなかった時の心配はどれだけだったことだろう。そして,無事が確認できた時は,本当に安堵したことと考えた。

また,被災時に通学生が,舎に泊まることになったとき,舎生が自分のベッドを譲り当人は,床に寝ていた等の話が聞けたことは心温まる思いだった。非常事態時の緊迫感の中で,何気ない子どもたちの行いは心安らぐ一場面だったことと思いながら,地震・津波の災害は他人事ではないと,改めて感じ入る研修だった。またフリートークでの,子どもたちが寝入った後の夜中の訓練,抜き打ち訓練の必要性も実感した。


4.自立活動T(聴能・補償工学・発音発語)

越教育大学  加藤 哲則

本分科会では,発音・聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder:以下APDとする)・補聴器・人工内耳の4本の演題発表がありました。

発音の演題は,人工内耳装用児と補聴器装用児への発音指導をもとに,教材の扱いや指導の比較・検討した報告でした。演者の板橋先生の長年にわたる発音指導の経験に裏打ちされた視点での報告は,聴き応えのある内容でした。特に人工内耳装用児への発音指導の特徴を捉えた報告は,人工内耳装用児が増加する現状を鑑みれば,今後の発音指導の参考になると思います。

APDの演題は,聾教育(聾学校)の分野では馴染みの薄い内容だと思われます。しかし,聴覚障害教育としての専門性を,聴力閾値の低下のみに向けるのではなく『きこえに困難を抱える子ども』の教育の専門性とするのであれば,今後,この教育が取り組んでいくべき分野であると思います。議論の中で,APDへの支援の方略が,補聴器や人工内耳装用児への支援方略が適用できるとの指摘や,聴覚過敏との関連も指摘された点について,興味深く拝聴しました。

補聴器の演題では,Fittingへの児童の積極参加を見据えた聴覚活用・聴覚学習のプログラムについての報告がありました。補聴器のプログラムセレクト機能を児童が操作することで,調整プログラムの違いによる出力特性の違いへの気づきを促すという内容でした。現在流通している補聴器は,調整プログラムを複数搭載できる器種や周波数圧縮変換機能が搭載された器種などがあります。その多くの場合は装用児(者)が操作するのではなく補聴器が周囲の音環境を解析して出力特性を自動可変する。便利になった反面,装用児(者)が能動的に自身のきこえに関与する姿勢が育ちにくい状況が作られてしまったとも考えられます。こうしたハード面の状況の変化に対応して,装用指導・内容も変わっていかなければならないと感じました。

人工内耳と補聴器の両耳聴の演題では,反対側に装用する補聴器の調整について,詳細な事例報告がなされました。6名の補聴器Fittingの経過を詳細に分析してまとめられた結果は,参考になる内容だと思いました。人工内耳埋め込み術の適応が90dBよりも軽い聴力のケースが増える状況にあることから,反対側(補聴器装用側)の聴覚活用が当たり前,補聴器活用の要求レベルが上がることが予想されます。こうした状況を踏まえた聾学校聴能担当者の一層の研鑽が必要だと感じました。

発表後の情報交換では,専門性の継承と学校体制などの各校の状況や人工内耳の両耳装用など,今後の方向性についての議論がなされました。各校の置かれた状況は,地域差・学校差があるとはいえ,全国的に年々『厳しい』という状況だけは変わらないことが推察されました。また人工内耳の両耳装用への対応については,聾学校が後手に回っている印象を強く感じました。医療など関連する分野の学会や研究会等に積極的に参加し,最新の動向の把握が必要だと思います。

今回は発表が4本“しか”ありませんでした。初めて私が参加・発表した20年程前の大会では,発表件数が多くて日が暮れても終わらないという分科会もありました。そのときの当分科会の助言者も今回の助言者も,愛媛大学の高橋信雄先生でした。高橋先生のソフトな語り口で,聴能に関する難しい内容を噛み砕きご教示いただくことこそが専門性の継承の一つだと思いました。最後に,聾学校の先生方へお願いです。聴能は,聾教育にしかない分野です。日々,聾学校で行われている先生方の実践を,是非,この分科会で報告してください。それが全国規模で考える『専門性の継承』につながるのだと思います。


5.自立活動U(言語・コミュニケーション)

山口県立山口南総合支援学校  松木 理世

本分科会では,「これからの聾学校におけるコミュニケーションと生きる力につなげる日本語の指導について考える」をテーマに5件の発表がありました。

千葉県立千葉聾学校の宮下恵子先生からの「言語力育成をめざした小学部自立活動の取り組み」では,連絡板や朝黒板を使っての実践や,ドリル学習(朝自立)などの取り組みの発表がありました。朝自立では,個に合わせた学習により,語や文をまとまりで覚えていくように意識した構文の獲得や定着を図り,連絡板や朝黒板では,集団の力を利用して深め合うなど,文章を読み取る力だけではなく,友達と読み合う力,読んだことを話題にする力をつけ,自ら情報を得ようという気持ちを育てる取り組みなどの具体的な実践をお聞きすることができました。

筑波大学附属聴覚特別支援学校の谷口洋子先生からの「ことばの力を育てるために〜小学部低学年における実践〜」では,学力につながる正しい日本語を理解し,豊かに表現するための教科外の時間の効果的な指導や支援の在り方についての発表がありました。感じたことや体験したことを言葉で表現する力を育てるために,子どもたちと言葉のやりとりをしながら自分で考えさせることや,文作りノートや言葉遊びなどをとおして,言葉を増やし,構文力をつけさせた実践など,教師と子どもたちとの楽しいやりとりが目に浮かぶような発表をお聞きすることができました。また,文章を書き写す学習や,保護者の協力を得ながらの日記指導,意図的につくった雑学を増やす時間の設定,季節や行事,生活指導などに関連した本の読み聞かせなど,すぐに実践につながるお話を聞くことができ,参考になりました。

日本聾話学校の齋藤紀子先生からの「小学部における卒業式での歌の取り組み〜聴くことを通して歌を楽しむ子どもたち〜」では,5年生を中心として,卒業式の歌を小学部全員で歌うという取り組みの発表がありました。小学部全員で歌うという過程を見るだけではなく,教師の目から見た,子どもたちの気持ちや取り組む姿勢の変化に着目した実践の発表で,いつも歌が身近にあるのだということを感じることができました。

兵庫県立姫路聴覚特別支援学校の小西智晶先生からの「書記日本語の力を育てる言語指導の取り組み〜『みんなの国語』で育てる書き言葉の力〜」では,全児童を書記言語のレベルに応じてグループ分けし,動詞の活用に焦点を当てた,継続的・系統的な指導の取り組みの発表がありました。意識的に多くの言葉に触れるようにしたり,言葉のルールをわかりやすく気づかせるようにしたりなどを常に意識した指導に取り組んでいる実践をお聞きすることができました。

東京都立大塚ろう学校の井出真澄先生,山口佳恵先生からの「児童の実態に応じた語彙力・文法力を高める日本語指導〜自立活動の学習をもとにした教科・領域の実践事例を交えて〜」では,文の構造を視覚化して提示することや,「書きたい」「知りたい」などの言葉への気持ちを高めるために,体験を通したアプローチの実践の発表がありました。実際の授業の様子では,見える文の構造と教師とのやりとりから,いきいきした子どもたちの様子も見せていただきました。

どの実践も参考となるすばらしいものでしたが,発表される先生方が表情豊かで,ゆったりとした優しい語り口調だったのが印象的でした。そして,その先生方の日々の取り組みが,子どもたちを育てているのだなとあらためて感じることができました。


6.教科指導

長野県立長野ろう学校  丸山 秀樹

「意欲的に学び,考え,表現する力を育てる教科指導について考える」という主題に基づいた11件の実践事例が発表されました。そのうち4校ほどの学校から「ICTの活用」に関わる発表がありました。本校でも「電子黒板」の有効活用について実践,検討しているところでしたので,大変興味深く,また,具体的な取り組みを知ることができました。数学や理科での動機づけや学習意欲の向上,また社会科におけるイメージの共有化など,まさに「児童生徒が意欲的に学ぶ姿」の実践でした。そして,助言者の長南浩人先生が,それぞれの事例について丁寧にまとめて下さったことで,具体的取り組みへの「考察する視点」「ねらい」を明確にすることができました。中でも,私が強く感じたのは,「物を見る→ことばで説明できる」ということ,そして「できる<わかる」という聾教育での目標です。写真や映像で「見た」こと(見せたこと),ワークシート等で「回答が書けた」こと(答えがあっていたので○をあげたこと)で満足してしまわないよう注意が必要であると実感しました。「何を見たのか」「どう見たのか」「見たことで何がわかったのか」…。これをいつも意識していくことが,聾学校でICTを上手に活用していく一歩だと感じました。目標は「今日はこれがわかった!」と子どもたちが言語化できること。方法が「ICTの活用」であること,これを大事にした取り組みを本校でも行なっていきたいと思いました。

その他,音楽での「拍感を育てる取り組み」や,体育での「考える力と日本語力の向上」の授業実践,また指導法として「追試」による教師の発問を考える分析や,グループ別による「日本語文法指導」の事例などが発表されました。こうした事例を通して,「教科」や「指導」は,子どもたちが成長していく中での一部であること,子どもたちの成長は連続であることに気づかされました。幼児期からのリズム遊びや運動遊び,日頃の雑談や会話の中で,子どもたちは多くの言語活動をし,教科に関わる知識や技能を身につけている。

「今どうするか」が教科における重要課題であると同時に,教科における「具体的な方策・実践」を通して,「部を越えた学校全体の連携」が見えてくることが実感できました。具体的に動くこと,そして見えてきたことから,学校みんなで話し合うこと。各校の事例から,大きなエネルギーをいただいた思いです。

最後に長南浩人先生から,「学力向上と自己対話力」というキーワードをいただきました。

日頃の自分の授業を振り返り,子どもにわからせようとするあまり,教師がしゃべりすぎてしまう授業,気づいてみたら子どもたちは「うん」しか言っていなかった授業,そんな実践を省みながら,「子どもたちの見える世界を広げる=写真や文字を見てたくさんのことばが浮かび,次々と考えが広がる」そんな授業をしていきたいと思いました。授業の中で培っている物は,教科の知識であると同時に「自分の中で対話する力」,そこに生まれる「考え方,感じ方,一人ひとりの生き方」ではないかと感じました。

教科指導における豊富なアイディアや新しい技術,そしてそこに流れる変わらない願いやねらい。こうしたことを本校でも確認し,明日の実践に生かしていきたいと思います。


7.地域支援・センター的機能

大阪府立堺聴覚支援学校  松川 雅一

本分科会では,「地域に学ぶ子どもたちのコミュニティーの場としての聾学校と地域の専門機関としての開かれた聾学校の役割について考える」を主題として,研究発表3件とそれをもとに,情報交換が行われた。

徳島県立聾学校の樋口恵子先生からの「徳島県立聾学校の担う聴覚障害児支援」では,県内唯一の聴覚障害教育の専門機関として,教育や医療,福祉,行政機関と連携しながら行っている聴覚障害支援体制の報告でした。

20年以上続けられている1歳半検診の聴覚スクリーニングは,耳鼻科校医の診療所と市町村の保健師との協力でおこない,精密検査が必要な幼児を発見して,医療機関に紹介し,診断後に聾学校へ紹介されるという流れでした。そうした活動を通して,各機関とスムーズな連携を生み,お互いの信頼関係をはぐくんでいることがわかりました。

地域の学校に在籍する小・中・高校生を対象にした夏季補聴相談では,毎年聾学校から連絡をとり,補聴相談に来てもらっているとのことでした。地域の学校に在籍している難聴児にとっては,同障の友達とあう機会の場として,また聾学校とつながる場になっていることを紹介されました。

聾学校に在籍していない難聴児に積極的に支援をすることで,地域に聾学校の存在と役割を理解してもらう必要性を感じました。

京都府立聾学校の舞鶴分校芦田雅哉先生からの「広げる,つなぐ,支え合う」では,京都北部の唯一の聴覚障害教育の専門機関として,地域へ積極的な支援を行っていたが,そのことを通して,地域の中に聴覚障害児を支援できる組織が生まれ,地域による支援が行われるようになったことの報告がありました。

聾学校として,軽度・一側性難聴を含む聴覚障害児の発見と聴能教育相談を行うだけでなく,軽度・一側性難聴児や発達障害を含む「きこえの支援」の必要性を地域の学校や関係機関に啓発すことで,聞こえの支援がいる子どもが地域の機関から発見されるサイクルができていました。また,聴覚言語障害センターやNPOなどの地域の支援組織を活用して,学習支援ボランティアや放課後等のデイサービスを提供してもらい,「地域からの支援」の体制を作られていました。

聾学校がすべてを担うのではなく,地域の中に聴覚障害児を支援できる組織を育てていくことで,支援の範囲をひろげながらも,個々のニーズにあった支援をできるネットワーク作りの大切さを感じました。

青森県立弘前聾学校の照井智幸先生の「青森県における聾学校のセンター的機能の方向」では,発達障害のある幼児児童生徒にも積極的に支援を行うことになり,センター的機能の拡大することになった現状の報告でした。

発達障害児への支援を担うことで,聴覚障害児への支援に比べ,発達障害児への支援に対する役割が大きくなったこと,「きこえ」「ことば」に関係しない発達障害に対して支援するためには,今までとは異なる専門性が求められている。その一方,多くの相談が来ることになり,地域の幼稚園・保育園,小学校,中学校,高校との連携をする機会が増え,聾学校を知ってもらう機会が増えたことは,興味深かったです。聴覚障害教育に関する専門性を維持しながら,他の障害に支援ができるように,センター的機能の多様性を求められることは大変ですが,マイナス面ばかりではないことに気づかされました。

助言者の東京学芸大学の澤隆史先生から,全国の聾学校における地域支援の現状に関する報告とともに,まとめについての話がありました。各学校のセンター的機能は,学校規模,地域性のため,人員配置や役割が様々であることが紹介されました。「広く浅くのジェネラルの支援が求められる中,聾学校としてのスペシャル(専門)の支援を維持し,発揮していくことが,聾学校の存在をアピールすることになるのではないか」との話にまとめられました。

現在,本校でも,聴覚支援センターの設立に向けて話し合いを行っています。各校の実践報告を参考に,本校のセンター的機能の方向性を考えたいと思います。


8.進路・キャリア・生涯教育

福岡県立福岡聴覚特別支援学校  秋月 典子

本分科会では,「積極的な社会参加について考える」をテーマに5件の研究発表がありました。愛知県立豊橋聾学校の山内登志先生からの「道徳に関連したキャリア教育の取組」では学校の中で自分たちのために働いてくれる人にインタビューし,インタビューの結果をまとめ,発表するという実践発表がありました。道徳教育とキャリア教育を関連付けることで豊かな心を育むと同時に,職業観を育てることにもつながる中学部の取り組みは,同じ中学部の職員として大変参考になるものでした。

愛知県立名古屋聾学校の伊藤悟先生からの「発達段階に応じた職場体験学習の充実を目ざして」では,本年度から始まった高等部本科の職場体験学習と中学部から高等部本科・専攻科までの職場体験学習を体系化する取り組みについて発表されました。まず,ほとんどの生徒が専攻科まで進学し,専攻科から就職していくという実態に驚きました。都市と地方の地域での就職状況の違いを感じました。また,高等部では職場見学・職場体験だけでなく,大学における学生支援説明会を実施していると聞き,進学への支援も大事にされているのだなと思いました。発表全体を通じ中学部から高等部本科専攻科まで一貫したキャリア教育が推進されていると感じました。

筑波大学附属聴覚特別支援学校の福田靖江先生の「歯科技工科における情報保障の実践と課題〜卒後支援を通して〜」では,歯科技工専門用語の手話表現の統一と音声認識ソフトウエアを利用した文字表示での卒業生への支援について報告されました。学術講演会での情報保障支援は当初は手話通訳だけだったものが,先生方の働きかけでスライドのレジュメ提供など専門的な内容が確実に伝わるような情報保障環境に改善されたと聞き,改めて働きかけが必要であると再認識しました。また,インターネット通信の利用により関係者全員が会場に出向くことなく文字情報保障が可能になったことに驚くとともに,これからの情報保障支援のあり方として大変参考になりました。

山口県立山口南総合支援学校の西野直人先生からの「資格取得に向けた取り組みを通して」では,高等部産業情報化2年生に「危険物取扱者資格」の取得に取り組ませた実践が報告されました。この取り組みを通じて,生徒が試行錯誤しながら自分の力・自分に適した学び方・仲間と学ぶことの意義を知り,目的を持って学習し続けていく姿が印象的でした。その時々に応じた生徒への学習支援や心理支援を続けていく先生の熱い思いも伝わる報告でした。

徳島県立聾学校の平野雅巳・辻孝先生の「自立と社会参加に向けた職業教育の充実」では,卒業生Tに焦点をあてながら理容科の実習に意欲のなかったT生徒が,上級生の存在や専門学校との交流,技術大会への参加等を通して理容技術に自信を持ち,国家試験に合格した経過が報告されました。先生方の細かい配慮に感心しました。また,生徒数が少ない時には,上級生・OBの支え・存在が必要であることを痛感しました。

最後に国立特別支援教育総合研究所の原田公人先生から助言がありました。キャリア教育を進めていく上では,校内の連携,関係機関との連携,保護者支援,キャリア教育の位置づけが課題であるというアドバイスをいただきました。

中学部,高等部普通科,高等部産業情報科,歯科技工科,理容科といった様々な立場からの報告がありましたが,どの発表も生徒が自立するための力をつけるためにはどう支援したらよいのかを常に考え,努力されていて大変参考になるものでした。これからの指導に生かしていきたいと思います。


9.総合的諸問題

青森県立青森聾学校  相馬 純子

「聴覚障害教育に関する諸課題を明らかにし,一人一人の子どもたちの生きる力を育てるための具体的な指導について研究する。また,障害観の変化に対応した自己肯定感を高める教育について研究する。」をテーマに4つの群に分けて13件の研究発表がありました。

T群は「聴覚障害教育におけるICTの活用と課題」をテーマに,3件の発表がありました。体育科の教材の研究では,「周囲を見る」力の育成を幼児から高等部生徒まで系統立てて実践していました。子どもが自ら情報をつかみとる力に繋がる工夫だと感じました。タブレット型PC活用の発表を聞き,全国のろう学校で活用できれば,学力の向上やコミュニケーションへの意欲を喚起しその幅を広げられるのではないかと感じました。すべての子どもたちが活用できるよう環境の整備を願うばかりです。避難訓練に関する調査では数値に表れない心情面に関する調査が望まれます。

U群は「聴覚障害と発達障害がある生徒への指導と課題」をテーマに,3件の発表がありました。発達障害のある聴覚障害児に関する全国調査では,ほとんどの項目でポイントが増加していました。単に,発達障害であるというラベリングで終わらずに支援方法等を模索していくことこそが,私たちの本業であることを忘れないようにしたいと感じました。また,支援を組織的に行っていくことの重要性も再認識しました。学習のサイクル化を目指した授業ノートの活用は,生涯学習に繋がるものだと実感しました。自学自習の喜びは生涯を通じて生きがいを育む基礎になる力だと思います。

V群は「教科指導および教科領域を合わせた指導の実践と課題」について,3件の発表がありました。総合的な学習の時間における「谷和原村を助けようプロジェクト」や名聾バンドの地域活動は,地域での活動をとおして主体性を育成すると共に子どもたちの自己肯定感を高めることに寄与する興味深い実践でした。子どもたち自身の手で地域に根ざした活動を継続させるためには,長期にわたる地道な取り組みが土台にあることを認識させられました。また,障害特性に即した音楽の指導の発表は,個々の教師の専門性がいかに子どもたちの活動意欲を引き出すかを実感させられる発表で身が引き締まる思いでした。

 W群は「自立活動領域に関する指導の実践と課題」をテーマに,4件の発表がありました。主に障害認識に関する発表がなされ,自分の障害を周囲に伝える力を育成することの必要性を強く感じました。どの発表も,その力を支えているのは,知・徳・体のバランスと自己肯定感であるという考えに基づいた発表でした。障害認識の指導における教材の工夫や聞こえないことから生じる不安感や疎外感を体験してもらうことを目的にした難聴擬似体験など興味深い内容の発表でした。

最後に,助言者の宍戸和成先生から「ねらいを明確にして伝えること」「130年の歴史を持つ聾教育の過去と現在と未来のつながりを大切にしてほしい」というお話しを伺いました。たくさんの諸先輩方の心血を注いだ実践の取り組みが詰まっている「全日聾研の集録」と「月刊誌聴覚障害」を紐解きながら,温故知新を心の根とし目の前の子どもたちが生涯心豊かに過ごせるよう尽力したいと,心を新たにした研究協議会でした。ありがとうございました。