幼稚部研究会

福島県立聾学校平分校  木谷 典子

午前の前半は,高知ろう学校幼稚部相談学級,3歳児学級の保育の公開があり,後半に5歳児学級の指定授業がありました。

午後の授業研究分科会は,「豊かなコミュニケーションをはぐくむために」というテーマで,研究協議が行われました。高知ろう学校より指定授業と研究の取り組みについて,発表がありました。指定授業について,授業者から「子どもたちは,少ない語彙のなかで自分なりに表現しようとしていたこと,一つひとつの言葉をもっときっちりと扱う必要があったこと,言葉を生活の中でつかえるようにしていきたいこと,子ども同士のやりとりを教師が仲介してしまうことが多く,今後の課題であること」などが授業の振り返りとして挙げられました。授業を実際に見ることができなかった私ですが,日々の保育のなかで,感じている課題,難しさが共通するので,自分の保育と指定授業をイメージし,リンクさせながら興味深く聞かせていただきました。

会場からは,活発に意見や質問が出されました。教材の一つである絵本を取り上げた意図や取り扱い方についてや視覚的情報と聴覚的情報についての取り扱い方などを中心に,子どもがわかったと思える授業について議論がなされました。助言者である庄司和史先生からは,「子どもがわかっているかどうかは,かかわりながら評価し,その評価が次につながっていくこと。教師がわからせたいと思っていることを子どもがそうとっているかどうかを常に疑問にもつこと。これらは,みているだけではわからないことで,確かめるためには,子どもにきく,つまりやりとりをしなくてはいけないこと。やりとり,言語活動において教師がさらっと流してしまうところとこだわっているところのそれらの意図を常に説明できるようにすること。」などの助言が述べられました。

また,高知ろう学校の校内研究の概要について,授業の様子を映したビデオを用いながらわかりやすく説明をしていただきました。それについても活発な意見交換,質疑応答が行われ,場面に応じた教師の役割・かかわりの意図・子どものことばや子ども同士のコミュニケーションの扱い方などについて,様々な観点から意見が出されました。

様々な考えに触れることができた指定授業についての研究協議,校内研究の概要についての意見交換などから,一つの事象に対していろいろな視点をもって考えることの大切さを痛切に感じました。やはり自分だけでは,限界や無理があり,いろいろな知識や経験のある先生方,子どもを一番理解している保護者,そして子どもたちの話をきく,みるということを通じて,幅広い考えをもって,子どもにかかわっていきたいと改めて思いました。よい意味で自分に対して常に疑問をもちながら,指導力,専門性の向上に努めていきたいとの思いを強くしました。

授業研究分科会の最後に,庄司和史先生から幼稚部の指導について以下の4点〔@子どもの主体的な遊びの活動の展開A遊びの活動と言語指導の両立B子どもの実態に即した丁寧な指導C保護者との協働,保護者への支援〕についてお話をいただきました。先生には,それぞれの捉え方や問題点などについて教えていただきました。自分のかかわりを振り返りながら丁寧な指導とは何か,楽しい言語指導とは何かを考えさせられる機会になり,たいへん有意義でした。また,どんな手段を使っても課題はあり,「〜だからよい。」ということはないという先生の言葉が強く印象に残っています。

最後に,庄司和史先生,授業を公開して下さった高知ろう学校の先生方,子どもたち,会を運営してくださった先生方に深く感謝いたします。


小学部授業研究分科会

佐賀県立ろう学校  中村 浩子

午前中の公開授業では,4年生(2名)と,6年生(2名)の算数の授業を参観させていただきました。どちらの授業も,自分の考え方を説明する場面を大事にされていました。また,児童が発言するときには,さりげなく話型を示すなど,児童が自分の考えを分かりやすく相手に伝えることができるような細かい配慮が随所になされていました。豊かなコミュニケーション活動を基盤とした学力の定着と向上を目指すという高知ろう学校の先生方の,日頃からの細やかなご指導の様子を,そのような場面からも窺い知ることができました。

指定授業は,2年生(1名)の国語「名前をみてちょうだい」でした。教室内,廊下,モニタールームすべて参観者でびっしりという状態でした。そのような緊張する中でも一生懸命に自分の考えを発表する児童の姿に感心しました。また,授業中の児童の小さながんばりも授業者の先生は一つ一つ丁寧に褒めておられ,児童の意欲につながっていることを感じました。

午後から行われた高知会館での授業研究分科会では,筑波大学附属聴覚特別支援学校小学部主事の江口朋子先生を助言者にお迎えして,熱心な協議が行われました。

まず「個を活かし,学ぶ力を育てる授業つくり」をテーマに取り組まれた,校内研究について概要の説明がありました。児童の言語活動を充実させるための日々の取り組みなどについて,詳しく報告がありました。日常の生活の中で,児童が出会う一つ一つの言葉を大切に扱い,教えていらっしゃる小学部の先生方の丁寧なご指導の様子を知ることができて,大変参考になりました。また,児童の実態把握のために実施された各種検査や朝自習の内容,振り返りシートの活用状況などについて,質問が出されました。

続いて行われた指定授業についての協議では,まずは自評で1対1という授業形態の中でも,児童が少しでも自分とは違う物の見方・考え方に触れることができるよう,努力されているという報告がありました。高知ろう学校の小学部の児童数は5名。佐賀県立ろう学校小学部の児童数と同じで,私自身日々同じことで悩んでいます。他の意見にも触れさせたいとの考えから,私も自分の考えを児童に伝えることがあるのですが,児童にとってみれば大人の意見であり,どうしてもその答えに影響されてしまうこともあります。高知ろう学校の先生方,そして授業研究会に集まられた全国の先生方からの,ペープサートやワークシート,話し方(伝聞形式)など,他の考えの提示の仕方を工夫されているというたくさんの意見は,たいへん参考になりました。また,児童の読みを深めさせるための,動作化や事前の難解語句の指導,板書の工夫などについてもたくさんの意見が出ました。その中には,すぐにでも実践したいと思うアイデアも多く,私は早く学校に戻って授業がしたくなりました。本当に充実した研究会でした。

江口朋子先生からのご助言では,言語指導について,長く続けられる取り組みは貴重であることや,児童が書いた物に対する周囲の人のリアクションや共感の態度が,児童の思考力を育てることにもつながっていくこと。そのためには,日常生活における子どもと指導者とのやりとりが非常に大切であり,指導者は,その中で児童に思考を促す一石を投じる細かいやりとり(思考を揺さぶるやりとり)を心がけておくこと。そのかかわり方も児童の年齢に合わせて変えていくこと。さらに,教材研究の大切さとその1時間の授業だけですべてを理解させるのではなく,語句も文章の読み取りも,その後の生活場面で再度出たときに,タイミングを逃さず指導していくことが大切であることなどについて,細かく教えていただきました。江口朋子先生が最後におっしゃった,「授業だけではなく,日々子ども達とどう向き合い,どう刺激を与えるかを指導者が意識しておく」という言葉には,日頃の自分の子どもへの接し方について改めて考えさせられました。

この授業研究会で学んだことをもとに,これから佐賀ろう学校でも試行錯誤しながら取り組んでいき,また,全国の先生方と意見交換を是非させていただきたいと思います。助言者の江口朋子先生,高知ろう学校の先生方,研究会を運営していただいた先生方,そして参加された先生方みなさんに感謝いたします。


中学部授業研究分科会

島根県立松江ろう学校  中島 巌

1時間目は6つの授業が公開され,いきいきと学ぶ生徒たちの姿を見ることができました。

3年の社会科は生徒2名で,経済についての内容でした。先生の発問に対し,生徒は単語ではなくきちんとした文章で答えていました。新出用語の「消費」「生産」「経済活動」など重要な言葉はマグネットで黒板に貼ってあり,生徒は答えに迷うとその言葉を使って答えるので,発言に間違いがほとんどありません。自信を持って発言できるからか,明るく意欲的な雰囲気で授業がすすんでいきました。

2年の国語科は段落についての内容でした。拡大印刷された本文,先生の口話,手話の位置がとても見やすく配慮が行き届いていました。また先生の気持ちのこもった範読を生徒は鏡のように真似し,生徒2名と先生の声がシンクロしておりびっくりしました。指導者が手本を示すことの効果の大きさを改めて感じました。

1年の社会科は生徒2名で,アマゾン川流域の家屋が高床になっている理由を考えていました。川が増水し,家屋が浸水する様子を先生はペットボトルと水を使った自作教材で再現し,工夫して説明されていました。あっという間に1時間目が終わってしまったので授業が終わった後の様子を見ていますと,先生と生徒が片づけながら授業内容を振り返って楽しげに話しておられました。普段からの温かい人間関係を垣間見ることができました。

時間切れのため,あと二つの授業は見ることができませんでしたが,校内に展示された素晴らしい美術作品などから,どの授業でも優れた実践を重ねていらっしゃることがうかがえました。

2時間目の指定授業は国語科で,生徒は3年生2名でした。論説文の「正しい′セ葉は信じられるか」が教材です。

・A紙 護岸工事で洪水の心配は少なくなったが,自然環境が破壊された。

・B紙 護岸工事で自然環境が破壊されたが,洪水の心配が少なくなった。

2つの新聞記事を読み比べ,情報の順番が変わることで読み手の印象が変わることを学習しました。1時間の中で何を学ぶのかが明確に示され,発問の工夫により生徒が理解を深めていきました。資料の提示の仕方も効果的で,考え抜かれた展開と合わせて示唆に富んだ授業でした。

午後からは会場を高知共済会館に移して授業研究分科会が行われました。まず中学部のこれまでの研究について「認め合い,高めあい,主体的に学びあうための授業づくり」をテーマに取り組んできた内容の説明がありました。

授業についての協議は,生徒の授業中の変容に着目して行われました。授業のはじめと終わりで生徒はどのように変わっていったのか,それはどんなきっかけだったのか,個人差はどのようにあったのかなどについて話し合いが行われました。

指導助言者の長南浩人先生のお話で特に印象に残ったのは,授業の前半の段階で自分の考えを単語で答える場合は要注意,ということです。答えた単語が合っているからとそのままにしておくと,後半に論理的にまとめることができなくなるので,補助発問やTeacher Think-Aloudが有効であるというお話でした。

高知ろう学校の素晴らしい研究の成果を拝見し,個々の生徒の理解度を自分はもっと敏感に感じ取らなければならないと痛感しました。考える力の育成の具体的な方法についても勉強することができ,大変有意義な1日となりました。


高等部授業研究分科会

愛知県立名古屋聾学校  稲垣 牧子

高等部授業研究分科会では,「自ら学びとり,考え,判断する力を育てる授業づくり」をテ―マに研究協議が行われました。

午前中は,公開授業として高等部において保健,生物T,数学,現代文の授業が,専攻科においてはビジネスマナーの授業が,また指定授業として数学Aの授業が行われました。

保健体育科では,実生活と関連づけて授業が展開されており,実際の場面をイメージすることで,理解が深まり確実な定着につながることを感じました。現代文では生徒の理解度を確認しながら授業が進められている印象を受けました。更に,ビジネスマナーでは,業務説明やアドバイスを受けたときの対応として,メモ帳の活用等について学ぶ内容でした。必要事項を判断して記入することや,以後に役立つようにまとめること等,実際の就労現場を想定した学習でした。生徒の活動に対して,客観的な受け止め方を示して視野の拡大を図ったり,具体例とその根拠となる説明を加えたりすることが内容を深めることにつながると思いました。生徒の真剣な姿に専攻科生であることを改めて感じる授業でした。

指定授業は,二項定理とパスカルの三角形に関する内容で,限られた時間の中で生徒が意欲的に考えることを促すよう配慮されていることがよく分かりました。

参観した授業では,生徒数の少ない授業が複数あり,生徒個人の実態に応じた授業展開が可能である反面,生徒間の関わりや他の生徒の発表,様子を知る場面設定が難しいことを感じました。また,各授業で教科の特色を活かした研究テーマとの関わり,言語活動の充実のための指導についての取組が示されていることから,共通意識をもった取組の様子が伝わってきました。

午後の授業研究分科会では,はじめに学校全体の研究及び高等部研究についての発表がありました。高等部は,各生徒が自らの希望進路を実現するために,視野を広げ他者の視点に立った判断力や行動が必要であるとの考えを基に,授業のあり方を再考する研究が進められていました。グループ研究と学部研究を軸にして研究を進め,全職員が公開授業を実施しているとのことでした。実践をとおして,生徒にとって必要な支援や課題を共有したうえで授業に臨むことが大切であることが強調されていました。そして,今後は,@適切な実態把握に基づいた明確な学習課題A聞く力B学び方C気付きを持つD学習を自ら発展させるE広い視野を身につける,という内容について継続研究を行うとのことでした。続く研究協議では,参観者から,学習内容と生徒が考える時間とのバランスに関する事柄をはじめとした意見や感想が出されました。

その後@学習集団の生徒数A進路指導B教員間の連携について各校の状況に関する情報交換が行われました。

最後に助言者の原田公人先生からは,高等部においては,インテグレーション等により生徒の継続した指導が見えにくくなっている現状を踏まえ,学力のみでなく心の育ちに目を向けること,情報の取り方,発信の方法を含めて様々な教育活動の中で生徒をどのように把握するかが重要であり,従前より言われている言語指導と職業教育は今も変わらぬ課題であるとの助言をいただきました。また,研究を進めるうえで情報の共有,考え方をシェアすることが大切であるとも話されました。授業に関しては,伝わったことが考えることへと発展する必要があること,発問計画の重要性,待つ時間は考える時間であること等を学びました。また,書くことの大切さを強調され,メモにおいても@分かっていることA聞けば分かることB調べることに整理する等,有効なメモの取り方を示されました。他にも,授業力向上につながる貴重な助言をいただきました。今回得たことを自校の研究に活かしたいと思います。原田公人先生を始め関係の先生方,有意義なお話をありがとうございました。


寄宿舎研究会

香川県立聾学校  江原 恵

寄宿舎の授業研究分科会では,「目的をもった生活を通して社会で自立する力を育てるために」というテーマのもと,高知県立ろう学校の寄宿舎概要説明と実践報告が行われました。卒業後,自立した社会生活を営むことをめざして,時間的なゆとりがない中で,学校と連携をとりながら,自治会活動,舎外活動,調理活動などさまざまなことに取り組んでおり,指導員の先生方の「生きる力を育てたい」という思いが感じられる三つの実践が報告されました。

一つ目は,自治会活動の一つ「朝の会」の3年間の取り組みの報告で,私自身も今年度自治会活動に携わっている者として,非常に興味深い内容でした。まず「聞く」「話す」機会を増やすことから始まり,係活動等で自分の考えを表現できるようにしたり,日常生活に必要なことばを増やす活動をしたりと,年度毎に成果と課題をまとめ,徐々にステップアップしていく様子が報告されました。指導助言の長戸英明先生からは,『「話す」こと「聞く」ことが苦手な舎生が多いので,内容や要点を絞り,5Wを考えた内容を作るのが望ましい』という助言もありました。自治会組織の中で役割を担うことにより,責任感や協調性が培われたり,また,相手に分かりやすく伝える力や,聞き取る力をつけることができる。また,自らの生活を振り返る時間をもつことで,生活の向上と仲間との信頼関係の構築につながっているという報告を聞き,自治会活動の中で経験できることの大きさを実感することができました。質疑応答の中では,舎生たちが発表したことに対して,周囲からの言葉による反応があまりないという課題も挙げられ,もっとよりよい方法はないかと試行している様子も報告されました。私自身も,舎生会活動においては試行錯誤の連続で,よりよい方法をめざしていく取り組みは見習っていかなければならないと思いました。

二つ目は,舎外活動の取り組みの報告で,社会的自立に向けて,外部の方とのコミュニケーションを図る取り組みが有効であるということが強く印象に残りました。寄宿舎では,活動範囲が限定され,年齢相応の経験が乏しいという現状があります。また舎外活動の時間がとりづらく,実施自体が難しいという報告もありました。しかし,大分聾学校では郵便局で通帳を作ったり,市役所で住民票を発行してもらったり,筑波大学附属聴覚特別支援学校では,自分の病状を書いて通院する際に持参したりといった指導も行っていると聞き,卒業を控えた高等部生には,大切な指導であると考えさせられました。外部の人とコミュニケーションをとるためには,メモ用紙などを準備するとともに,自らが聴覚障害者であることを伝え,顔を見てゆっくり話してもらうよう伝えることも必要になってくるというお話もあり,社会自立の意味でも外出経験の有効性を改めて感じました。

三つ目は卒業後の自立生活に直結した調理実習の報告で,栄養士の先生に協力していただくなど,事前指導にも力を入れており,子ども達も見通しをもって活動でき,興味をもって取り組んでいる様子がうかがえました。朝,自分で作ったお弁当をクラブ活動の昼食に持って行くなど,より実生活に近い取り組みもされており,さらなる意欲喚起につながる活動であると感心しました。また,寄宿舎で調理を経験したことにより,家族の食事を作ったり,母親の代わりに調理をしたりと,家族との関係も深まったという報告もあり,寄宿舎で学んだことがすぐ活かされているということを大変うらやましく感じました。

自治会活動,舎外活動,調理活動と活動の内容は異なりますが,卒業後の生活を見据え,必要な力を身につけるためのきめ細かな取り組みは,大変勉強になりました。この研究会で学んだことを自分の学校に持ち帰り,よりよい寄宿舎を目指していきたいと思います。ありがとうございました。