長岡大会 授業研究分科会



幼稚部

兵庫県立こばと聴覚特別支援学校 藤岡 久美

午前前半は,長岡聾学校幼稚部3歳児,4歳児(2クラス),5歳児(2クラス)の保育が公開されました。4歳児クラス5歳児クラスの朝の活動では,楽しい雰囲気の中,子どもたちの思いがことばとしてあふれ出ていました。朝の活動はとかくパターンに陥りがちですが,子どもの意見を取り入れ柔軟に対応しているところに,先生方の指導力の高さを感じました。

5歳児クラスで特に印象的だったのは,子ども同士のやりとりが盛んに行われていたことです。子どもの言語力を高めようとするあまり教師主導の話し合いになり,子どもたちは教師に向かって話をしがちです。しかし長岡聾学校では,話者を見る姿勢や聴く姿勢が育っており,友だちを意識して話をしているのです。話をする子ども,それを受ける子どもも「いいよ」「わかったよ」など返事をし,その子ども同士のやりとりを先生は見守っています。子どもの発達を的確に捉えているからこそ,先生が“待ち”の姿勢を取ることができるのです。掌の上で子どもを泳がせながら,ここぞというところでは教師が介入する,理想の関わり方を見せていただきました。残念ながら3歳児クラスを参観することはできませんでしたが,3歳4歳5歳と丁寧に積み上げておられるのだろうという様子を窺い知ることができました。

午前後半の5歳児全員の指定授業では,『ぴったりゲーム』が展開されました。ゲームをしている間も,同じ意見の友だちと手をたたき合って喜ぶ姿が見られたり,なかなか当たらない友だちに「がんばれ!」と声かけをする姿が見られたりと,ことばだけでなく心も育っていることに感心しました。先生方の心を大事にした日々の取り組みの成果でしょう。「誰が指定授業に当たっても,自信を持って対応できる力をつけた。」という言葉が,強く心に残っています。学ぶところがたくさんある公開授業・指定授業でした。

午後からは,「生き生きと表現し,伝えあう力を育てる授業をめざして」というテーマで,研究協議が行われました。長岡聾学校より指定授業と研究の取り組みについて発表があり,今まで伝えあう喜びの体験が不足していたこと,伝えあう力を育てるためには話し合い(トピックス)が有効であることが報告されました。また我妻先生から,幼稚部の先生方と一緒に作り上げた『言語学習シソーラス&実践事例集』についての説明もありました。

以下に,会場の先生方から出された意見や質問の一部を記します。

『言語学習シソーラス』の活用について,長岡聾学校からは年間3回『言語学習シソーラス』の語彙表を使ってチェックが行われていること,それらの語彙が生活場面で使えることの重要性が述べられました。他校からの『言語学習シソーラス』に対しての要望を受け,保育の実践の中で課題や問題を改善し,さらにより良いものにしていきたいと話をされていました。

会場からは『言語学習シソーラス』と言語指導についての意見があり,「語彙数だけが言語力の核ではない,手持ちのことばをどう使いこなすか,生きた言葉にするには保育の中で言語活動があってこそ。」との指摘がありました。それに対して我妻先生は,「まずは語彙表が独り歩きするくらい徹底して活用してほしい。語彙を増やすことだけが言語指導でないのは分かっている。しかし語彙を増やすことは必要である。」と意見を述べられました。どちらの意見もその通りと思うもので,私たち教員も様々な観点から物事を見ることを問いただされているように思いました。語彙表や指導マニュアルのみに頼ることなく,しかしそれらを有効に活用するためには私たちの指導力の向上が不可欠だと痛感いたしました。この研究会に参加できたからこそ,貴重なご意見を聞くことができました。

最後に,我妻先生,授業を公開して下さった長岡聾学校の先生方,会を運営して下さった先生方に深く感謝いたします。


小学部

山形県立山形聾学校 飯野 明

午前の公開授業では,長岡聾学校小学部の研究テーマどおりの「自分の思いや考えを生き生きと表現し,伝え合う」元気な子ども達の姿を見せていただくことができました。

小学部1・2・3年合同自立活動の授業が行われている教室にお邪魔すると,3人の児童が秋のお楽しみ会のおやつについて熱心に相談していました。主となるコミュニケーション手段が異なり,また,理解力にも随分差がある子ども達であるように感じましたが,どの子も自分がどのおやつを作りたいのかを懸命に仲間に伝えようとしていました。子ども達の発言の途中で,理由を加えて話したり聞き手が自分の方を見ているかどうか確かめながら話すよう,先生方が指導なさっている様子を拝見し,個に合わせた支援を丁寧になさっていることが分かりました。

指定授業では,学校間交流の相手校である長岡市立中島小学校の5年生との体育交流の授業を見せていただきました。体を動かす活動が主となる体育の授業において,作戦を練ったり活動を振り返ったりする場を設定し,集団の中で伝え合う場を意図的に作っておられました。また,支援ツールとしてホワイトボードや学習カードを用意し,子ども達は,それらのツールを使って円滑に伝え合いをすることができていました。大勢の子ども達の中でも,長岡聾学校の2名の6年生がしっかりと伝え合いをしたりプレーしたりしている様子に大変感銘を受けました。

私が勤務している山形聾学校でも学校間交流を行っており,各教科の学習交流の外,クラブ活動や行事等の交流を行っています。しかし,長岡聾学校のように一つの単元全てにおいて交流学習を行うような取組はしていないので,今回見せていただいた実践は大変参考になりました。

午後は,会場をハイブ長岡に移して分科会が行われました。小学部の分科会には,金沢大学人間社会研究域学校教育系准教授の武居渡先生をお迎えしてご助言いただきました。

はじめに,長岡聾学校の校内研究について概要説明と質疑応答が行われました。実態把握にかけた期間や授業改善のためのチェックシートについて質問が出されました。

次に,指定授業について協議が行われました。自評では,伝え合う力をつけたいが,児童数が激減して苦慮していることをお聞きし,一つの単元全てにおいて交流学習を組む必然性がよく分かりました。協議では,健聴児が圧倒的に多い集団の中では聾学校の児童が萎縮してしまうのではないかということや,聾学校の児童が交流したくないという気持ちにならないよう配慮していく必要性などについて意見が出されました。交流及び共同学習で効果を上げていくいためには,このような児童の心の状態にも配慮していく必要があることが分かりました。

後半の協議では,「伝え合う力を高める支援のあり方」について各校での取組が次々と紹介され,どの学校においても伝え合う力を高めることに重点を置いて指導を行っていることがよく分かりました。

武居渡先生からのご助言では,コミュニケーションとしてのことばを育てていくためには,相手がいないとどうにもならないこと。そのために集団の確保をどうしていくかが課題であること。相手に自分のことを説明する力をつけるためには,自分が相手の説明を聞いて分かったという経験を積み上げていくことが必要であること。このような経験を積み重ねて自己肯定感が育っていくことなど教えていただきました。

示唆に富んだ授業提案や研究成果を発表していただいた長岡聾学校の先生方とこれからの聾教育に向けてたくさんのご教示をいただいた武居先生に心より感謝いたします。


中学部

岩手県立盛岡聴覚支援学校 永野 哲郎

中学部の授業研究会は,長岡聾学校の各教室において,公開授業(理科,国語,家庭科)が行われ,指定授業(英語)が行われ,その後,ハイブ長岡に移動,助言者に筑波技術大学の長南浩人先生をお迎えして研究会が行われました。

指定授業では工夫を凝らされたカード等の教材を使いテンポの良い進め方と,生徒が授業に向かう態度と真剣な眼差しが印象的でした。教室の中が「学ばせたい」,「学びたい」という一体感がある授業であったように感じました。

研究会では,はじめに「生き生きと学びよく考える授業をめざして」という研究テーマのもとに,学校全体で取り組まれた校内研究の概要の説明がありました。田中保成氏の「使える学力 使えない学力」の7つの考える習慣から研究の方法(研究計画),「基本となる授業展開図の作成と活用」(実践),「チェックシートの活用」による課題の把握(点検・反省)という手続きで進められていました。また,授業の留意点や指導技術の共有を目指した独自の資料「授業ガイドライン」が作成され活用されていました。次に中学部の研究(テーマ「よく考え,自ら判断する力を高める授業を目指して」)についての説明がありました。中学部の研究の取り組みは,他の実践(北聾研の研究成果・課題等)を活用し「本校では…」と学部に合うようにアレンジし進められていることに特徴がありました。これは,研究の進め方としての手本になる実践であると感じました。研究テーマの「よく考え…」の部分を「考える力」の育成を「わかりやすい授業」と「授業中での考える場面を設定する」ことで課題を解決しようと各教科で取り組まれたとのことでした。こういった具体的な研究の取り組みが,先ほど述べた「教室の中が「学ばせたい」,「学びたい」という一体感」に現れているのではないかと思いました。

授業研究会では,カード,ワークシートの使い方,視聴覚教材の評価,英語の学ばせ方,ガイドライン等について,助言者の長南先生からの助言の時間が短くなるほどの大変熱心な研究会が行われました。

長南先生からは次の助言をいただきました。英語の授業では@英語を実際に使用させること(英語らしく学ばさせるためには音韻的な要素を用いる等,覚えやすく提示すること)。A英語のルールを学ぶこと(応用力をつけるために抽象化して理解すること,理屈を伴う理解)そのためには生徒の返答(行動)からの評価が重要。

授業全般では,@「使える学力 使えない学力」の考える習慣(加えて「統合する力」)の思考を支える言語がついているかAコミュニケーション指導,言語指導,思考指導が重要という助言をいただきました。

この研究会で学んだことを,自分の学校や学部に持ち帰りたいと思います。助言者の長南浩人先生,長岡聾学校中学部の皆さん,運営に携わった先生方,参加された先生方に感謝いたします。


高等部

愛知県立名古屋聾学校 寺ア 妙子

本研究部会は,「自らの興味・関心に気づき,意欲的に学び考える授業をめざして」というテーマで進められ,助言者には筑波技術大学の石原保志先生(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター障害者支援研究部教授)をお迎えしました。

 先のテーマを受けて,午前中は長岡聾学校での授業参観を行いました。校内はとても明るく,風通しが良く,清潔感があり,様々な視聴覚設備が整っていました。

私は,高等部3年生の国語表現Tの授業を参観しました。長岡聾学校高等部の「生き生きと学び,よく考える授業をめざして」という研究テーマに基づいて授業されていました。地元の新潟日報という新聞の投書欄を題材にして,今までに集めた投書のテーマの分析をしたり,自分が書きたい投書のテーマを構想したりする活動を見ることができました。生徒にとって,学校生活で関わる仲間以外の同年代の人たちの興味・関心や社会に対しての意見,将来についての考え方などを知ることは,刺激になり,視野を広げるきかっけになると思いました。また,様々なテーマについて,自分だったら何について書きたいかという発問に対して,生徒は自分の友達が何について興味・関心を持っているのかを熱心に聞こうとしている姿が印象的でした。生徒同士の関わりを大切にしている様子が伝わってきました。

午後の分科会では,長岡聾学校の校内研究発表が行われました。高等部は,キャリア教育に力を入れていて,キャリア発達に関わる諸能力(人間関係形成能力,情報活用能力,将来設計能力,意志決定能力,障害認識能力)を授業内で高めることができるような取組がされていました。高等部三年間を通した継続的な取組のため,生徒の成長はもちろんですが,課題について適切な支援ができていると感じました。

石原先生の助言では,キャリア教育の基盤は家庭にあり,それを踏まえた上であらゆる教育場面や生活の中で意識され,児童以前からの取組が必要であるとありました。その際,子どもたちの将来像をイメージした支援をすることが大切だとお話されました。キャリア教育の具体的な展開としては,直接的体験と間接的体験を日常的に取り入れると良いとのことでした。直接的体験では家庭における情報伝達や買い物など,間接的体験では卒業生などによる講話や個人的体験の共有,尊敬する人の体験記を読むことがあり,これらの体験は肯定的な自己認識につながっていくと紹介していただきました。しかし,心理面の弱さや障害認識が不十分な点についての課題が残されているということも教えていただきました。

また,現在の聾学校の生徒のタイプとして,次の3点を挙げられました。@指示待ちの生徒,A行動力はあるが計画性がない生徒,B周りの状況を考えない,周りの状況を見ることができない生徒,ということでした。本校にも当てはまる生徒がいます。周りの状況を見て考えて自分から動くことができるような支援をするために,石原先生の助言を参考にしたいと思いました。

公開授業や分科会などは参加者だけでなくライブ映像や動画として流すことで,より多くの聾学校関係者に参加してもらうことができると良いと思います。研究大会がもっと開かれたものになると,聾学校での教育もより深まると思います。

私は今回の研究大会でたくさんの刺激を受けました。この経験や出会いを十分に生かし,今後更に充実した支援ができるよう取り組んでいきます。

石原先生を始め,研究を進め発表してくださった先生方,また参加された先生方に深く感謝申し上げます。


寄宿舎

野県長野ろう学校 中沢 澄子

私は今年度転勤してきましたが10年前にも長野ろう学校で勤務させていただいておりましたので,2度目の聾学校勤務となります。

研究会の中でも助言者の佐藤先生が指摘されていたように,全国的に舎生の減少,障害の重複化,またある県によっては盲学校や他障害の特別支援学校との寄宿舎統廃合が進んでいるという現状を見ても,これからの寄宿舎が社会や保護者のニーズにどう応えていくか大きな岐路に立たされていると思います。

そうした課題多い中で今回の全日聾研究会に参加させていただくことが出来,全国の情勢を知るという意味でも,本当に勉強になりました。

本分科会では,主幹校の長岡聾学校寄宿舎による,自治活動を通して「主体的に生きる力と社会性を身につけるための支援をめざして」の研究発表を基に,「主体的に生きる力と社会性を身につけるためにはどのような支援が必要か」が協議されました。

長岡聾学校でも最近は舎生数が減少し,現在は幼稚部から専攻科までの12名ということです。少ない舎生と年齢差がある自治活動の中で,社会に出てから求められるコミュニケーシヨン力や社会性を育てようと日夜奮闘されている様子がレポートからうかがえました。

まず「自分の考えを言えるようになること」「自分の仕事に対して責任を持って取り組むこと」を寄宿舎全体の指導目標として取り組んだ3年間の様子が報告されました。

自治活動への取り組み方を「事前・当日・事後」どう支援するか手だてが具体的に書かれた「支援リスト」と,実態を「a b c d」で評価する「実態チェックリスト」を作成し,生徒と一緒に1年間の様子と成長を振り返っていました。生徒自身が寄宿舎生活の中での自分の生活目標を自覚するという意味でも参考にしたい取り組みだと思いました。

後半の研究協議として「個別の指導計画の活用」がどのようになされているか,各校から報告されました。資料として事前に参加校からの個別の指導計画の作成日程や指導計画の様式,記入例がまとめられていました。

普段は知る機会が少ない全国の聾学校寄宿舎の指導計画をみさせていただくことにより作成にあたって工夫されていることや,苦労されていること等を具体的に聞かせていただく良い機会でした。

作成にあたって学・舎・保護者の連携について質問が出されていましたが,大分聾学校や鳥取盲学校では,学校としてお互いに協力して作成しているということで,年間計画にも作成日程が組まれていました。

子供をより多面的にとらえ,将来を見据えた目標の設定や,手だてを考えた時,学・舎・保護者との連携は欠かすことができませんが,教室は教室,寄宿舎は寄宿舎となりがちな作成環境を振り返り,お互いにこの子をどう育てたいのか保護者の願いや姿,教室での姿,舎での姿を共通理解し合い,一緒に個別の指導計画の作成をし,評価し合える体制づくりも,これからの寄宿舎の課題だと思います。

助言者の佐藤先生は以前も長岡聾学校に勤務されていたとの事で,70人ぐらいの舎生が活発にさまざまな行事を行っていた様子を懐かしそうに話されていました。

本校は現在全面改築の真最中です。見慣れたプールが壊され,憩いの場であった庭の木々もなくなり寂しさも感じますが,新しくなった校舎にはまた新しい歴史が刻まれていくと思います。その時にも寄宿舎で育つ子どもたちの笑顔があふれていて欲しいと願っています。

いろいろな課題を抱えている寄宿舎ですが,今回の分科会で学んだことをこれからの実践に生かしていきたいと思います。