北海道大会 授業研究分科会

 


乳幼児相談室研究会

宮崎県立延岡ととろ聴覚支援学校 仲本 裕子

本研究分科会は,助言者に,信州大学准教授の庄司和史先生をお迎えして「親子の愛着関係を育むための子育て支援」をテーマに行われました。

午前中は,「葉っぱであそぼう」という活動名のもと,元気いっぱいの2歳児,7名の親子活動の様子を見せていただきました。どの親子も楽しくかつ意欲的に活動に参加しているだけでなく,子どもの動きや遊びにうまくのっていく母親の姿がとても印象的でした。また,活動の中で,上手く関われていない母親に対しては,母親の考えや行動を否定するのではなく,あくまでもさりげなくかつ具体的に(「ママ,バンザイして」,「いいね,次は前からやってみて」など)指導者がアドバイスされていました。更に,活動内容も,先生の動きを見る,子ども達が葉っぱになりきる,葉っぱを使って遊ぶなど,静と動の組み合わせの上手さや子どもがことばを発するための必然性が随所に設けられていました。このような活動を見せていただき,札幌聾学校の先生方の専門性の高さを感じたと共に,乳幼児教育相談室担当者としての在るべき姿を示していただき,乳幼教育相談担当2年目の私にとって,参考になることばかりでした。

午後からは,札幌コンベンションセンターにて分科会が行われました。はじめに,札幌聾学校から,研究に対しての取り組みや指定授業についての説明がありました。乳幼児教育相談室では「親子の愛着関係」を育んでいくことが重要であり,そのためには,保護者に親子で触れ合うことの楽しさや心が通じ合う喜びを実感してもらいながら,子どもとのよりよい関わり方を支援していく必要があるとのことでした。このような考えに基づき,活動内容を選んだり,展開しているとの説明がありました。モデリングの具体的方法として,「おやこの笑顔が増えたよ」という冊子とDVDを作成し保護者支援に活用しているとの報告もありました。どの親子も生き生きと関われるよう,子どもの気付きや思考を大事にできるようきめ細やかな指導をしていきたいとのことでした。

その後,協議に移りましたが,参加者の中からは,保護者との懇談の在り方,懇談の観点や評価,活動の評価,コミュニケーションモードなど様々な点からの質問や意見が出されました。懇談の内容や方法,活動内容ともに,信頼してもらえるような働きかけをすること,具体的には,保護者の考えを尊重することや今子どもができることをきちんと伝えてあげることが必須条件なのではないかなどの意見が出されました。また,この時期はコミュニケーションモードにこだわるのではなく,あくまでも子どもと関わる手段として考え,子どもの発するもの全てに反応して,受け止め返すことで,話したがる様子を育てることが最優先されるべきではないかとの意見も出されました。この他にも,話題が広がり,活発な意見交換がなされ,時間が足りないほどでした。

最後に,庄司先生から,乳幼教育相談室での活動内容は,課題的なものであってはならない,子どもの水準に合わせたものを展開することが大事だとの助言をいただきました。そして,親の心情に添った支援をすべきであり,総合的な支援を行っていって欲しいとのお話しもいただきました。

札幌聾学校を始め,各地の学校での取り組みや乳幼児教育相談へ熱い思い等をお聞きするなかで,たくさんの刺激を受けました。この経験や出会いを十分に生かし,今後更に充実した支援ができるよう取り組んでいきたいと思います。

庄司先生をはじめ,研究を進め発表して下さった先生方,また参加された先生方に深く感謝申し上げます。


幼稚部研究会

大阪市立聴覚特別支援学校 奥西 美由紀

午前の前半は札幌聾学校幼稚部の保育(秋の自然を題材にしたゲームや話し合いの様子)を参観しました。

3歳児(2クラス)は朝の会や絵合わせ遊びでした。子どもたちは先生と一緒に安心して活動していました。先生は子どもの気付きや思いを待ち,共感しながらことばに置き換えておられました。

4歳児(2クラス)は木の実や木の葉を使ったゲーム遊びでした。一人が黙って葉っぱを取りかえました。子どもたちがその時の出来事について話しました。先生がその気持ちを受けとめ,他の子どもにわかるように伝えさせました。すると本人から「葉っぱをかえたのは失敗だった。」という発言があり,「今度はかえないでね。」と全員で確認して遊びを再開していました。

5歳児(2クラス)は秋の自然(収穫)についての話し合いでした。「(さつまいもは)いつ掘るの?」「大きくなっているかな?」という問いかけや絵本を用いた説明に,子どもたちは「先生おしえて!」「まだ小さいと思う。」と積極的に発言していました。

午前の後半は指定授業(5歳児:お店やさんごっこをしよう)を参観しました。自分が興味を持っているお店について話す子どもたちの表情はいきいきしていました。ごっこ遊びで役割になりきって遊びに必要なものをそろえたり,先生の「何屋さんになりたい?」の問いかけに「ぼくは(私は)○○をしたい!」と発言したりするなど,それぞれに具体的なイメージを持っているようでした。お互いの希望が相違しました。お店の内容やお店カードの色で意見が対立していました。その時の子どもたちのまなざしは真剣そのもの。友だち同士でイメージや考えを伝え合い共有することの難しさと同時に,思いを伝え合う活動の躍動感を改めて感じました。その後,「私が○○屋さんにかわる。」「○○色のお店になってもいいよ。」という意見や「幼稚部みんなに来てもらおう。」との提案がありました。今後他クラスとかかわりながらお店やさんごっこが展開していくようで楽しみです。

午後の授業研究分科会は「子どもの考える力を育む授業づくり」というテーマで話し合いました。

主な内容について以下にまとめてみました。

<ごっこ遊びの取り扱い>

遊びや経験の積み重ねによる継続的な取り組みであるが,本授業で子どもたちの経験やイメージの度合いのばらつきが見られた。どのような側面に重点をおくかの検討が必要である。

<考えさせるとは>

本授業の思いや考えをぶつけ合う場面で子どもが考える様子が顕著に見られた。子どもが"何かに興味を持ってしっかり見る,きく,わかろうとする","相手の気持ち(怒りや悲しみなどの理由)や主張の理由について知る,考える"ような働きかけが大切である。

<概念の把握>

本授業で子ども相互のイメージや経験が合っていない場面があった。子どもの"わかる言語環境"や"わかろうとする(見る,聞く)力"が保障されるように,子ども一人一人の実態(関心や概念)や子ども同士の理解度の把握に努める必要がある。

<求められる指導力>

子どもの「考える力」は,お互いの考えを述べ合うのではなく,ぶつけ合って気持ちが揺さぶられるような活動でこそ育まれる。話し合いを支える指導者には,活動の意義を十分に検討し展開させていく力が求められている。子どもが本来持っている力を信じて待つこと,理解を促すような働きかけができることも必要である。

指定授業をもとに「考える力を育む 授業づくり」についての観点や留意点についての活発な意見交換が行われました。これまで"考えさせる"という視点が足りなかったと反省し,早速明日からの授業にいかしていこうと思います。

有意義な研究会でした。授業者の的場先生はじめ運営していただいた先生方,ご助言いただきました松本先生,そしてご意見をいただきました先生方,本当にありがとうございました


小学部低学年研究会

福岡県立直方聾学校 木村 光代

私は,教員生活30年目の今年の4月に,初めて聾学校に赴任することになりました。聾教育に関する知識も手話の技術もまだまだ不十分ですので,視点が外れていることも多々あると思いますが,感想を交えながら分科会の様子を報告させていただきたいと思います。

本分科会は,「小学部低学年における確かな学力の向上を目指した授業作り」をテーマに行われました。本校でも,本年度7月の九州地区聴覚障害教育研究会直方大会において「分かる・考える授業のための発問と視覚的支援の在り方」をテーマに学部発表をしましたので,興味深く参加させていただきました。

午前中は,札幌聾学校小学部で,公開授業と指定授業が行われました。幼稚部,中学部の公開授業もできるだけたくさん参観しようとしたため,教室の出入りで子ども達に迷惑をかけたのではと反省しております。本校と比べて違うと思ったことは,音環境に配慮され校舎内の壁に木を使ってあるので暖かい雰囲気が伝わってくること,各教室が中庭を取り囲むように配置されているので明るく,教室の廊下側に窓がないので,子ども達は集中して授業に取り組めるだろうということです。また,本人と保護者の希望により,日本手話学級と聴覚口話学級に分かれており,教室の配置も徹底していることが印象的でした。

指定授業は,2年B組の国語「お手紙」でした。私は,体育館のモニターで参観させていただきました。日本手話を日本語に通訳してくださったので,大変助かりました。3名の児童は,公開授業の「手話っちミニ」の時,表現力の豊かな子ども達だなと思っていたので,とても楽しみでした。二の場面の拡大本文や挿絵を手がかりに,かえるくんの気持ちを想像することが目標の授業で,子ども達は,多くの参観者に囲まれながらも一生懸命に発表していました。特に,文章に書かれていないかえるくんの動作(書いたけど納得できない手紙をくしゃくしゃにして投げる)までも表現する姿には驚きました。まさに,行間を読むというのか,自分がかえるくんになったつもりで工夫して表現していました。一朝一夕にはできない,普段からの積み上げによる表現の豊かさを感じました。

午後からは,札幌コンベンションセンターで,分科会が行われました。初めに日本手話グループの研究の取り組みについて,報告がありました。自立活動の時間に,合同で行われているのが「手話っち」,少人数で行われているのが「手話っちミニ」ということでした。内容は,ろう教師による絵本の読み聞かせ,児童による体験発表,聴教師による日本手話の音韻ゲームや日本GOクイズなど,もっと詳しく話を聞きたい位,大変魅力的でした。本校でも1学期にゲストティーチャーを招いての読み聞かせ会があり,その時の子ども達の生き生きとした表情がオーバーラップしました。日本手話の世界にたっぷり浸ることで,絵を分析する力が向上したという成果をお聞きし,視覚的な情報を取り込むことが得意な本校の児童にも絵本の読み聞かせを通して,表現する楽しさ,伝えることの喜びを感じてほしいと思いました。また,指定授業の最後の方で使用されていた,国語科教材の手話DVDは,是非,全国的な普及を望みます。

授業者の反省の後は,質問や意見交換が活発に行われました。その中で,大きな課題となったのは,別の言語である日本手話と日本語をどう結びつけるかということです。具体的な方法としては,日本語に表現させる活動の保障,手話を通して意味を理解させ日本語につなげる,日本手話と日本語の文法の違いに気付かせる等があげられました。他に,教室にろう教師と聴教師が両方いるのが理想である,板書をビジュアル的に工夫する等のご意見には同感でした。また,日本語と日本手話の切り替え(コードスイッチ)ができる大人に育てることが大切とのご意見には感銘を受けました。ろう教育の経験が15年以上の先生方が数多く参加されていましたので,ご意見を聞くだけでも大変勉強になる分科会でした。

金沢大学の武居先生からは,「公立学校の国語では,日本語で書かれた教科書をどう読み取るかが目標である。手話の力も日本語の力も不十分な子どもたちに,国語の時間に手話を使って日本語の力をつけていかなければならない。だから,子どもの手話(コミュニケーション言語)の発達段階を見極めてから授業のあり方を考える必要がある。」という助言を頂きました。

最後に,今回の授業参観,分科会を通して,札幌聾学校の子ども達の笑顔に出会えたこと,日々の実践の積み重ねによる研究の取り組みに多くのことを学ばせていただいたことに深く感謝いたします。


小学部高学年研究会

東京都立大塚ろう学校 神谷 瑠美

本分科会は「小学部高学年における確かな学力の向上を目指した授業づくり」をテーマに行われました。

午前中は札幌聾学校で指定授業である小学部5年国語「わらぐつの中の神様」を参観しました。児童は5年生16名中,聴覚口話グループの6名でした。授業開始後,まず行われたことは,この時間に何をするのかを板書で示し児童に確認させ,見通しをもって学習できるようにすることでした。音読の場面では,他児が読んでいる間も,指で本文を追いながら,全員がしっかりと教材文を読んでいました。授業は,教材文や前時までの学習から,登場人物二人の人柄を考え,その後,二人の人柄についての自分の意見を述べるという流れで進められました。5年生の物語文では,その場面の行動を読み取るだけではなく,背景や人柄を読み取る力が求められるということで,今まで触れる機会の無かった「人柄」というについて,児童が理解し思考できるよう,事前学習で友達の「人柄」について考える活動が行われており,教室掲示されていました。この事前学習の成果か,児童からは様々な意見が出され,「良し悪しが分かる人」「謙虚な人」などの的確な表現を用いたり,「強い気持ちのある人」「勇気のある人」などの自分自身の言葉で発言したりと,活発な意見交換ができていました。

また,児童の教員や他児に注目する姿や,ノートをよく活用しながら真剣に思考し発表する態度が大変素晴らしく,学習ルールが徹底されているからこそ,活発な授業が成り立っているのだと感じました。

午後の研究会では,まず,札幌聾学校(聴覚口話・手話付きスピーチグループ)からの研究報告がありました。「気づき」を大切にし,促し,育て,さらには学習や生活の中で生かすことで自ら学び,自ら考える力を育むことを目指し,研究が進められていました。2年次である今年度は,「気づき」を大切にした指導のあり方を探り,教師の働きかけに視点を当てた授業づくりを行うことに加え,日常場面での「気づき」についても視点を当てているとのことでした。

その後,高橋秀樹先生の自評をもとに研究協議を行いました。難解な長文を教材にした授業の進め方や,事前学習の扱い方について意見交換が行われました。また「気づき」を促す手段を教員が事前に練っておくこと,経験や知識はあるがその使い方を知らない児童に対して,それらを活性化させ使えるようにする方法を教員が沢山もっている必要がある等の意見が出されました。

最後に助言者の大塚雅彦先生から,学習の流れを子どもたちに伝えることの重要性や,教材文には書かれていない部分を読み取る力や自分の経験にないことを思考する力といった,小高ならでは課題についてご助言いただきました。小高になると「嬉しい」「悲しい」で割り切れない感情についても思考しなければならず,それを言葉で表現させるためには,教材文についての十分なイメージをもたせ,これまで使ってきた言葉を支えに子どもに口から説明させていくことが大切であり,そこには,教員の適切な働きかけが不可欠とのことでした。

今回の研究会で得られたことを,今後の実践に生かし,子どもたちに還元していきたいと思います。


中学部研究会

富山県立高岡聴覚総合支援学校 河合 利志子

本分科会は,「中学部における確かな学力の向上を目指した授業づくり」をテーマに行われました。

公開授業を見せていただいて特に印象に残ったことが2つあります。1つは日本手話で行われていた授業です。書記言語との関係を考えると日本語対応手話(手話付きスピーチ)で行うのがよいと考えている私は,どのような感じの授業なのか興味深く見せていただきました。札幌聾学校は平成20年度からコミュニケーション手段によってグループ分けをしていて,中学部1年生は,日本手話・聴覚口話・日本語対応手話の3つのクラスに編成されていました。日本手話で行われた1年A組の社会科の授業は,聴覚に障害のある先生が担当しておられました。廊下から教室に入ると「声」は一切なく静かなのですが,とても活気がありました。4人の生徒との活発なやりとりや手話を介して授業内容が深まっていく様子に,改めて「手話は言語」と感じました。ただ,日本手話の堪能な先生がどれくらいおられるのか,生徒会活動などではどのようなコミュニケーション手段を用いているのか,2年生からの学力・進度によるグループ分けの際の問題点など,今になって聞きたいと思っています。

もう1つは,電子黒板を用いた授業です。各クラスに電子黒板が備えられていて,今回は社会と理科の授業で使用されていました。社会(歴史)の授業で,中心人物の肖像画や歴史マンガの1コマなどが大きく映し出されると,一斉に画面に視線が集まりました。「資料集○ページの……」という授業では得られない光景です。先生の説明も電子黒板近くでされるので,手元の教科書・資料集へ,説明される先生へと視線を動かす授業とは違って,生徒の集中が途切れない,効率のよい授業になっていました。紙媒体の資料集とIT機器それぞれの長所を考え,教科の特性に合わせて活用できる力が求められていると思いました。個人の苦手意識でIT機器を遠ざけていては「分かる授業」につながらないと,心のスイッチに指を伸ばした授業でした。

指定授業は,2年A組で国語の授業が行われました。語句の意味調べは各自で終えて授業に臨むという4人のクラスでした。氏家先生が取り上げられた菊池寛の作品『形』から,思春期の生徒たちは「形」と「中身」の関係をどのように読み取っていくのか,楽しみでした。「形」へのこだわり,「形」にこだわったせいで「中身」を見失った経験を発表する場面では,いろいろなとらえ方が出てきて先生の意図されていた方向からは少しずれたようでしたが,互いに友だちの発表を関心をもって聞く姿に,先生の日ごろから話し合い活動を大切にしておられる姿勢が伺えました。また,ご自身の聴覚障害者としての経験談,「中身」を知るには「相手をよく知ること=コミュニケーション」というまとめは,人生の先輩としての後輩たちへの熱いメッセージに思えました。先生の授業や姿を通して,生徒たちは聴覚障害者としての生き方を考え,将来像を作り上げていくのだろうと思いました。

協議の一部始終を見ておられた林 茂和先生(元都立葛飾ろう学校長)の助言は,示唆に富んだものでした。どんな生徒になって欲しいか,そのためにはどんな指導が大切か,授業改善にはまずこの2点が欠かせないとのお話に,目から鱗が落ちるようでした。学力,情緒面,社会性など,生徒一人一人について伸ばしたい力を具体的に話し合い,指導の方向性を共通理解することが現状打破につながると強く思いました。「中身」のある北海道大会土産になりました。ありがとうございました。


高等部・専攻科研究会

筑波大学附属聴覚特別支援学校 青柳 泰生

本分科会では「自立や社会参加に向けた授業づくり」をテーマに発表,討議が行われました。はじめに,北海道高等聾学校の研究推進の概要について説明がありました。「主体的に行動する力を身につけ,社会性を育む指導法の研究」を学校全体の研究主題とし,先生方の研究が進められています。学科や教科等のグループ化された研究実践により,具体的な課題を教員間で共有できる点が素晴らしいと感じました。その後,発表と午前中の指定授業の研究会が行われました。1つ目の本科国語科の授業では,広島の原爆投下直後の壁に残された伝言を題材とした授業が行われていました。伝言を残した人々の気持ちを想像しながら読み取ることで,当事者の意識をもつこと,また,文章を理解する力や「伝える」ことをねらいとしていました。生徒同士の意見交換も活発に行われ,生き生きとした表情で学習に取り組んでいました。

2つ目に産業技術科の製図の授業では,「ものづくりを通して自ら考え行動をする力を身に付ける指導法の研究」として,図面を正確に表すトレースの授業が行われていました。この授業では専門の技術者の意図を読み取り,具体的な線や寸法に正しく書きおこすことが学習のポイントとなっています。製品の全体像を把握し,図面に置き換える学習が,物事の概要を読み取って理解し,説明する力へと通じるものがあり,重要な要素であると考えさせられました。

3つ目の情報デザイン科情報技術Uの授業では情報を整理する力を高める実践として,Webコンテンツ作成におけるオブジェクトの概念理解をはかる授業が行われていました。私自身は全くの専門外のため,初めて耳にする専門用語に,内心戸惑いながら拝見させていただきましたが,コンピュータ上の目に見えない事柄を言葉によって体系化し互いに関連付ける学習が,生徒の抽象的な概念を獲得する力につながっていく旨の丁寧なご説明を受け,なるほどと理解することができました。

また,授業の説明の中で,概念をモデル化した視覚教材(「オブジェクトモデル」)を用いておられましたが,私自身も指導の中で実習の流れを説明する写真や自作の教材などを用いるため,提示の仕方の工夫などにおいて多くの参考点を見出すことができました。授業者の先生のコメントで「視覚教材には利点と同時に目に見える部分だけの理解にとどまる欠点もある」とお聞きして,丁寧に準備をすればそれに比例して生徒の理解は良くなるだろうという日頃からの思いこみに気が付き,反省する良いきっかけを頂くことが出来ました。

各校の情報交換では,大学進学や就職など卒業後の社会参加を見据えた確かな学力づくり,基礎的な文章理解と文章表現,漢字習得の工夫の他,生徒数の減少により,一定の生徒集団が構成できない問題についての対応方法など,生徒の「自立や社会参加」を考えていく上で,取り組むべき課題の多さをあらためて実感しました。

まとめとして助言者の佐藤正幸先生から3つの授業についてのお話がありました。私が印象に残ったのは,製図の授業についてのお話で,元の情報を図面という形で整理し,依頼者の要求にこたえていく大切さに触れられていました。この点については,以前,進路指導の際に企業の担当の方からの言葉で,「依頼された仕事について,行間の読み取りが出来るか否かが重要」というご指摘を思い出していました。また,情報技術Uついては,論理的な思考を順序立てていくためには視覚教材のような実物の提示が必要であるというお考えを述べられておりました。この点についても,生徒の言葉の理解力だけに期待するのではなく,考え方の補足に必要な方法を常に工夫していく姿勢が大切だと感じました。

分科会を通じて,各教科の日々の実践が生徒の自立につながることをあらためて認識することができました。このような機会を得ましたことを心より深く感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 


寄宿舎研究会

大分県立聾学校 鈴木 敏夫

午前中の寄宿舎の一般公開と発表では,北海道札幌聾学校寄宿舎の概要と実際の指導内容など多目的ホールでパワーポイントによるプレゼンテ−ションがあり,概要は舎生数は,生徒84名中6人が寄宿舎に入っている。実際の指導内容はポプラ祭りに行う和太鼓の指導や文化祭的な行事,保育園などとの交流など寄宿舎独自の行事を行っていることで視野を広げ,助け合いや協力する心を育て,自発的に取り組む様子が見られるようになったこと。また校外外出や交流で自ら考える力を指導し,社会体験を通して交通ルールなどで安全教育を行っている点など興味深かった。その他,人工内耳をつけている子どもがいて,学校・寄宿舎とも手話と口話を交えた指導,授業をしていることも参考になった。

課題とまとめのところでは通学する生徒・児童が多くなり,舎生が少なくなっており,集団生活の良さでである子ども同士が育ち合うという場面が少なくなったので,行事等活動も,現状に合わせ方法を変え少人数で楽しめる内容を検討していく。学習面は少しずつ大人の手を離れて自主学習ができるよう努力させている。また,いろいろな生活体験を積み,自ら考えて行動できる様な「生きる力」の獲得をめざしている。

この後に,寄宿舎の公開があり,舎室や風呂場,学習室,宿直室,多目的ホールなどで,現在,空部屋が4部屋ほどあるとのことだった。

午後からは,「生きる力を育てる寄宿舎の指導」を研究テーマとして札幌高等聾学校の発表があった。はじめに高等聾学校の説明等があり,現在,聾学校8校中1校だけが高等部が設置されており,遠隔地からも入舎してくるので,男女合わせて78名という大所帯であり,集団生活の大変な様子が見られた。その他の進学は筑波大附属聾学校や私学に進学しているとのこと。また施設・設備関係は4階建ての建物で二段ベッドや,身障者用トイレ,車いす用の舎室など設備は整っていた。また,各階ごとに非常口があり,避難訓練も実施しているという。次に「よつば会」という自治会の説明があり,生活部,保体部,文化部,よつば会役員部の4つの部会と室会(室長)から成り,役員は選挙によって選出され,また総会では各部の活動発表をしたり,副会長が行事での予算案や収支を決算する。また寄宿舎のお祭りである「どんどこ祭」の企画・運営に携わり模擬店,和太鼓,ゲーム大会,音楽バンドの演奏など生徒が主体的に取り組んでいることがあげられた。また,さまざまなレクレーション活動や行事にも積極的に取り組む様子が見られた。課題として,質疑の中で思春期の問題行動について,学習の問題,携帯電話の使用についての問題などがあげられたが,ルールやマナーを生徒間どうしで問題を共有し,チェックし合うことで解決する指導をしているとの回答があった。このことは各学校に共通する課題でもあると思います。

最後は助言者の北海道旭川聾学校の山根昭治先生からは,仕事をするうえで社会的なルール・マナーの大切さの話があり,あいさつがきちんとできること,モラルを守ることなど社会性を身につけることが「生きる力」であり,聾者で,現在働いている仕事でさまざまな種類の職業(医者,タレント,プロゴルファー)があることを紹介した。児童・生徒たちに「将来の夢」や「希望」を持たせる指導・支援してゆかなければならないことが必要であると指導助言をいただいた。最後に「生きる力を育てるための寄宿舎教育について考える」というテーマで行われた今回の分科会で学んだ事象を今後に生かし,自らも実践し,指導・支援していきたいと思う。

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