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『聴覚障害』誌2005年3月号掲載

*APCD2006に向けて(3)

国際会議の歴史(III)

−第16回聴覚障害児教育国際会議マンチェスクー大会(1985)−

元筑波技術短期大学

小畑修一

1985年(昭和60年)8月5日から9日までの5日間マンチェスクー大学と英国聾学校教職員協会の主催(組織委員長T.G.テイラー教授)で,第16回聴覚障害児教育国際会議マンチェスター大会はマンチェスタ一大学を主会場として盛大に開催された。

1.特色・意義

この大会は,日本からの要請と主催者の配慮により英語に加えて日本語が公用語に採用されたために日本から106名の参加者があったこと,加えて展示会場に日本ルームが設置されて日本の聴覚障害教育の紹介が行なわれたことが大きな特色であった。

また全体会の討議において「嫡牛殻への電極の移植」について英国及び米国の医師団より提案があり,今後のこの教育における新しい展望を招く大会となったことに意義があった。

国 名 登録者 発表 国 名 登録者 発表 国 名 登録者 発表
イ ギ リ ス 494 134 イ   ン  ド 6 5 ギ リ シ ャ 1 0
ア メ リ カ 160 148 台     湾 6 4 ジャマイカ 1 0
日    本 81 43 マーレーシア 6 2 ジェラレオネ 1 0
オ ラ ン ダ 50 17 イスラエル 5 11 マダガスカル 1 0
西 ド イ ツ 31 12 ス  イ  ス 4 2 モーリ シャス 1 0
南ア フリ カ 30 3 バ ハ マ 4 0 ド ミ ニ カ 1 0
カ  ナ  ダ 27 18 ブ ラ ジ ル 3 6 インドネシア 1 0
スエーデン 23 8 ジンバブェ 3 3 ア ラ ブ連邦 1 0
ベルギー 22 9 ト  ル   コ 3 2 イ   ラ   ン 1 0
アイルランド 18 2 マ  ル  タ 3 0 オーストラリア 0 9
香     港 13 2 パキスタン 2 2 イ タ リ ア 0 1
デンマーク 11 5 ヨ ル ダ ン 2 1 ニュージーランド 0 1
ス ペ イ ン 10 4 ペ ル ー 2 0 メ キ シ コ 0 1
フ ラ  ン ス 10 3 スリランカ 2 0 ユーゴー 0 1
ノ ル ウ ェ ー 10 0 エチオピア 2 0 ポーランド 0 1
フィンランド 6 2 ザ ン ビ ア 1 2 バングラデシュ 0 1
ケ  ニ  ア 6 7 フィリピン 1 1 タ      イ 0 1
ガ ー ナ 6 5 イ  ラ  ク 1 1 アルゼンチン 0 1
ナイジェリア 6 5 ボ ツ ワ ナ 1 1 マ ラ ウ イ 0 1

総計:52ケ国,1,091名,491件

3.全体会

基調講演:組織委員長T.G.テイラー教授

全体講演:国際会議委員長 S.R.シルバーマン博士

討  議:「蛸牛殻への電極の移植」

司会:ピアス氏

提案:英国3名,米国2名

4.分科会(分科会名と発表件数)


1.スピーチと言語(75)

2.教育(64)

3.技術的発展(56)

4.メインストリーミング(50)

5.コミュニケーション方法(34)

6.第3世界の諸問題(31)

7.重複障害(24)

8.心理学(22)

9.教師教育(19)

10.継続教育(18)

11.雇用(18)

12.スクリーニングとアセスメント(17)

13.医学的側面(13)

14.少数民族(4)

15.親の役割(3)

16.その他(11)


※ 日本からの発表(順不同)

大嶋  功:「日本の聴覚障害児教育一過去,現在,未来−」

今井 秀雄:「補聴器のデータベースとコンピュータを用いた最適補聴器の選択」

小畑 修一:「コンビュ丁夕の聾教育への適用」

畑 喜代子:「聾学校と幼稚園との共同保育」

廣田 栄子:「早期聴能訓練の発達に及ぼす効果」

星名 信昭:「聴覚障害児のスピーチにおけるセンソリーフイ「ドバックの役割」

飯島 玲子:「カセットテープレコーダによるアカウペディックアプローチの活用」

田中 美郷:「大学病院における幼児期の聴覚障害の診断・判別と指導」

金山千代子:「ヒヤリングクリニックにおける聴覚障害児とその母親への援助」

徳光 裕子:「本センターの就学前教育を修了した聴覚障害児のフォローアップ」

浅川 英雄:「情報技術に関する教育の現状」

畑  昭夫:「聴覚障害児教育における演劇活動」

石井 武士:「日本における聴覚障害児教育対等」

舞園 共子:「小学校の聴覚障害児の読書力」

百瀬 桂子:「杉並聾学校における陶芸教育」

名古屋聾学校:「職業科の教育計画」

根本 匡文:「寄宿舎における望ましい教育活動」

小川美佐子:「日本における英語の授業」

安川  宏:「聴覚障害児の音楽リズムの受容」

草薙 進郎:「聴覚障害学生に対する援助サービス」

小見山幸雄:「短時間に多くの情報をもたらす特殊な視覚教材」

松木 澄憲:「補聴器の選択とコンピュータ利用」

三宅  良:「相互通話方式の聴能訓練機の開発と応用に関する研究」

中川 辰雄:「残存聴力の評価と補聴器装用の関連」

小野  博:「アニメーションテレビ電話システム」

高橋 信雄:「FM補聴器の適用」

大西酉喜子:「共同保育を通じてのコミュニケーションの実践」

中岡 治清:「健聴の学校に学ぶ聴覚障害児について考慮すべき面」

佐々木 順:「聾学校と健聴の学校との交流実践」

山内 宏裕:「山地におけるメインストリーミング」

今西 孝雄:「聴覚障害者教育福祉協会の活動」

土佐林 一:「重複障害児の心理療法」

川口  博:「聴覚障害青年の職業生活」

若槻  馨:「日韓及び日米の国際交流」

手塚 正枝「親の役割」

5.日本ルームにおけるデモンストレーション

@ 相互通話方式補聴システム(リオンKK)

A ビデオによるデモンストレーション

・日本の聴覚障害児教育(聴覚障害者教育福祉協会)

・相互通話方式補聴システムの効果(附属聾学校)

・字幕挿入システム(筑波大学)

・Loveis Echo(富士見台教室)

B 生徒作品展示(附属聾学校)

C 学校紹介(附属聾学校,千種聾学校)

D パンフレット「指示法」(千種聾学校)

6.参加者から寄せられた印象

大嶋功氏の報告によれば,マンチェスター大会での新しい動向として,次の4点が挙げられている。

@ コンピュータ技術の聾学校への導入の本格化

A 教育的関心のインテグレーションからトータルコミュニケーションへの移行

B 蛸牛殻への電極の埋め込みの開始

C 聴覚障害者の参加の増加

根本匡文氏の報告によれば,次の2つの講演が印象的であったと指摘されている。

@ アメリカの聾工科大学のクラーク氏の「聾者の雇用を容易にする道具」

A 英国聾学校教職員協会会長のピアス氏の

「中等教育段階の聴覚障害生徒の教育目的と目標」

松木澄憲氏は日本ルームの展示を通して見られた聴覚活用についての見学者の反応を次のように報告された。

「英国人は他の国々の人々に比べて,イ聴覚活用についての専門的知識は一部を除いて必ずしも高いとは言えませんが,聴覚障害者自身やその親は聴覚補償について真剣で積極的である。他の国々の見学者の多くは補聴器に対する関心はあるが,補聴システムという捉え方はしていないように思われた。」

松藤みどり氏はレセプションにおけるT.G.テイラー教授のエピソードを次のように報告されている。

「テイラー博士に聴覚障害者である大原先生の色紙をお土産に差しあげるとす・ぐにご覧になって書かれている詩の意味を尋ねられ,メモをお渡しすると“色紙と共に飾っておぐ,と言われた。また,“日本語の同時通訳に満足しているか?”との質問があり,“今回のイヤホンは片手で持たねばならないので手話通訳するときは少々不自由です’’と答えると,“早速ヘッドフォンを用意させましょう”と答えられた。翌日分科会へ出かけたところイヤフォンは全てヘッドフfオンになっていた。早速博士にお礼に参りました。」

参考文献

・小畑修一:「聴覚障害児教育国際会議マンチェスタ一大会報告」参加推進委員会資料.

・大嶋 功:「東京大会からマンチェスタ一大会まで」聴覚障害第40巻10号p.30〜32,1985.

・根本匡文:「分科会雑感」聴覚障害第40巻10号p.19,1985.

・松木澄憲:「マンチェスタ一国際会議でみた聴覚活用」聴覚障害第40巻10号p.15,1985.

・松藤みどり:「マンチェスタ一国際会議に参加して」聴覚障害第40巻10号p.21,1985.