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『聴覚障害』誌2004年10月号掲載

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  国際会議の歴史

−参加の動向と第1回〜第13回における会議の内容−

元筑波技術短期大学
小畑修一

 2006年(平成18)10月9日〜12日に東京を中心に第9回アジア太平洋地域聴覚障害問題会議(アジア会議)が開催される見通しである。1975年(昭和50)8月25日〜29日に帝国ホテルで開催された第14回聴覚障害児教育国際会議(世界会議)以来31年ぶりの国際会議である。そこで,この2種類の国際会議の歴史についてシリーズで紹介する。

 初回の今月は国際会議への参加の動向の紹介に加えて,聴覚障害児教育国際会議の第1回大会(1878年)から第13回大会(1970年)までの期間における会議の内容を報告する。

1.聴覚障害児教育国際会議への参加者の動向

西暦 開催国 開催都市 参加国 参加者 日本の参加者
1 1878 フランス パリ 6 28 0
2 1880 イタリア ミラノ 8 164 0
3 1883 ベルギー ブリュッセル 0
4 1893 アメリカ シカゴ 5 211 0
5 1900 フランス パリ 16 18b 0
6 1905 ベルギー リエージェ 19 250 0
7 1907 イギリス エジンバラ 12 220 0
8 1925 イギリス ロンドン 21 500 0
9 1933 アメリカ トレントン 8 790 1
10 1950 オランダ グローニンゲン 23 200 0
11 1958 イギリス マンチェスター 41 1,000 1
12 1963 アメリカ ワシントン 50 1,700 2
13 1970 スウェーデン ストックホルム 0.5 1,000 20
14 1975 日本 東京 38 2,389 1,953
15 1980 ドイツ ハンブルグ 58 1,173 70
16 1985 イギリス マンチェスター 57 1,405 81
17 1990 アメリカ ロチェスター 64 1,373 145
18 1995 イスラエル テルアビブ 59 928 42
19 2000 オーストラリア シドニー 63 969 61
20 2005 オランダ マーストリヒト      

第1回大会はヨ丁ロッパの国々のみによる会議であったが,第2回以降アメリカが加わり欧米会議となった。世界大会の様相を示すようになったのは第11回大会からで,参加国が41か国になり,参加者も1,000名に達した(日本からの参加者は第9回の川本字之介(東京聾唖学校),第11回の大嶋功(日本聾話学校),第12回の吉村光雄(京都府立聾学校)他1名で,本格的な参加は帝京大会を控えた第13回大会以降になる。

2.アジア太平洋地域聴覚障害問題会議への参加の動向

この国際会議は1985年の第16回大会の折に大嶋功を中心としたアジアの聴覚障害児教育のリーダーが相談し,5年に1回の国際会議だけではアジア地域の聴覚障害児教育を推進することが困難であるので,国際会議の中間年若しくは2年間隔でアジア地域大会を開催することを決定したことで始まった。

西 暦 開催国 開催都市 参加国 参加者 日本の参加者
1 1986 香港 香港 27 573 40
2 1989 インドネシア ジャカルタ 22 359 59
3 1992 タイ パタヤ 32 600 58
4 1994 フィリピン マニラ 25 700 34
5 1996 韓国 ソウル 19 454 63
6 1998 中国 北京 43
7 2000 オーストラリア シドニー 63 969 61
8 2002 台湾 台北 18 700 38
9 2006 日本 東京      

※第6回大会は参加者名簿が作成されず,参加国及び参加者の数は不明。

※第7回大会は第19回聴覚障害児教育国際会議と共催。

3.聴覚障害児教育国際会議の第1回大会から第13回大会までの全会議の内容の分布

内容\回 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
1 言語手段       10
2 教育課程         9
3 早期教育         9
4 職業準備         9
5 教員養成           8
6 高等教育           8
7 成人聾           8
8 発音・読話           8
9 重複障害             7
10 診断・評価               6
11 聴能               6
12 教育実践                 5
13 医学                 5
14 心理学                     3
  1 4 4 8 6 5 7 11 11 11 8 13 12 101

1)言語手段

・第1回「聾者の社会復帰のために発音と読話を手話や指文字に優先させる決議」

・第2回「口話法を全面的に支持する決議」

・第12回「手話の分科会を設ける決議」

・第13回「トータルコミュニケーションに関心が移行したこと」

2)教育課程(各国の実状報告)

 第4回=4か国  第10回=4か国

 第5回=6か国  第11回=6か国

 第7回=7か国  第12回=8か国

 第8回=8か国  第13回=18か国

 第9回=7か国

3)早期教育(義務教育年齢を含む)

・第2回「就学年齢は8歳〜10歳を最適とし,教育期間は7年〜8年を理想とする」

・第4回「幼稚部を併設した聾学校が紹介され,入学年齢は3歳〜4歳とする決議」

・第5回「8歳を入学年齢とする義務教育制を決議」

・第11回「ジョン・トレーンー・クリニックの紹介」

・第13回「早期教育の重要性を決議」

4)職業準備

・第3回「聾学校の卒業に近い学年の生徒に職業訓練を実施することを決議」

・第5回「全ての生徒に職業訓練を受けさせて求職者を援助することを決議」

・第7回「ギャローデット大学卒業生の就職状況の報告」「イタリアは靴の製造,服の仕立て,大工。デンマークは靴の製造,戸棚製作,木彫を職業教育とする旨の報告」

・第8回「イギリス,アメリカ,チェコの実状報告」

・第13回「ナショナル聾工科大学の技術教育の報告」

5)教員養成

・第3回「フランス,イタリア,ベルギーは聾学校教員養成を政府の管理下で行なうこと」

・第4回「ギャローデット大学の聾学校教員養成プログラム開設の報告」

・第9回「チェコより聾学校教師の前提に小学校教師2年の経験が必要である旨の提言」

・第10回「イギリスのマンチェスタ一大学の教員養成プログラムの紹介」

6)高等教育

・第2回「アメリカよりヨーロッパに国立の聾大学の創設の要請がなされたが,初等教育充実のために見送りとなった」

・第8回「ギャローデット大学紹介」

・第9回「ギャローデット大学の予科入学生のレベルは1929年は9.2学年,1932年は10.0学年」

・第10回「アメリカで一般大学で学士号を得た聾者が270名に到達した旨の報告」

・第11回「全米聾工科大学の紹介」

7)成人聾

・第3回「窮乏した高齢の聾者の収容施設の設置と作業所や農業園の設立を決議」

・第4回「聾者の聾学校教員採用を支持する決議」

・第5回「自活できない聾者の収容施設設立を決議」

・第6回「手話通訳と弁護士のセンター設置を決議」

8)発音・読話

 「発音指導にオシログラフとシンセサイザーの利用」

9)重複障害

・第6回「聾を伴なう重複障害児の特別プログラムの討議と国際的調査委員会の設置を決議」

・第7回「イタリア,フランス,デンマークの状況の報告」

10)診断・評価

 「オージオメーターによる聴力測定及び知能検査法と乳児の聴能評価法の開発の必要性確認」

11)聴 能

 「アコースティック法の紹介及び両耳装用と聴覚管理の重要性の確認」

12)教育実践

 「研究授業のデモンストレーションと討議」

13)医 学

 「風邪等による聴力低下その他」

14)心理学

 「知能と性格の検査法の開発」

  参考文献

・小畑修一「聴覚障害教育の国際的動向」

  筑波技術短期大学 平成7年7月.