第9回アジア太平洋地域聴覚障害問題会議、東京、日本10月9日〜12日、2006年

宣言:アジア太平洋地域の聴覚障害教育の専門性の継承・革新・共有

 聴覚障害児の健全な発達とその後の社会自立を促すには、教育理念・教育原理が堅持されるとともに、その教育に関わる者の専門性が要求される。この意味において本大会は当を得た会議となった。

 継承:先人の実践から築きあげられた聴覚障害教育の内容、方法、技術、知見はアジア太平洋の地域においても次の世代へ伝えることが困難な状況になりつつあり、その意味で聴覚障害教育の専門性の「継承」は欠かせない。

 革新:近年の科学の進歩と社会の変化の中で、補聴器・人工内耳による聴覚補償やITを駆使した情報保障、あるいは手話の言語学的研究など、新しい聴覚障害教育に向けての「革新」が求められている。

 共有:私たちアジア太平洋地域の専門家が、それぞれの国や地域で継承され、革新された教育的財産を国情や文化の違いを互いに理解した上で、適切に「共有」していくことは重要なことである。

 日本で開催された第9回アジア太平洋地域聴覚障害問題会議 (東京、日本10月9日〜12日、2006年開催) では、特に聴覚障害児の発達を促すには次の事項が重要であることを宣言する。

  • 新生児聴覚スクリーニングの体制を整えて、聴覚障害の早期発見を行うこと。

  • 聴覚障害児の社会的、言語的、認知的発達を保障するために、早期療育と教育プログラムを整えること。

  • 聴覚障害児の親達が、子女の教育や発達に十分に関与または貢献ができる機会を提供すること。

  • 教育方法が個々の児童の教育的ニーズにマッチするように、多様な言語・コミュニケーションシステム、文化と言語との関連性、聴覚補償技術を聴覚障害児の親達に適時に公平に提供すること。

  • 聴覚障害児・者に適切な補聴器や人工内耳の選択、供給、適用がなされるように効果的なオーディオロジーサービスを提供すること。

  • 早期から手話言語にふれることや地域の聾のコミュニティと交流が必要な家族にはその機会を提供すること。

  • いずれの学年においても適切な言語力とコミュニケーションスキルを身につけ、それらのスキルを駆使して聴覚障害児が通常の教育課程でも学べるような効果的な教育プログラムを提供すること。

  • 聴覚に加えて障害を併せ持つ重複障害児の社会、言語、認知的発達を保障するために重複障害児に特別に策定された教育を準備すること。

  • 聴覚障害学生が大学を含む高等教育機関に障壁なく参加できるように選択可能な教育プログラムや支援サービスを提供すること。

  • 聴覚障害者が広く開かれた職種や就業へアクセスできるように、適切な教育的かつ関連する支援サービスを提供すること。

  • 聴覚障害児の学校や関連したサービスに携わる指導者の養成を専門の大学にて行うこと。

  • 聴覚障害者が等しく情報にアクセスできるように、手話通訳やテレビの字幕放送サービスのようなさまざまな言語・コミュニケーションシステムを提供すること。

 第9回アジア太平洋地域会議(APCD)は、重要なサービスの各領域の発展を追求しつつ、これらの情報や専門的知識を当該地域の専門家達が共有しつづけるための体制を探求するものである。そして本会議は、これらをアジア太平洋地域の人々の福祉を保障するために最優先されるべき重要な事項であると宣言し、当地域の各国政府に提言する。

 今大会は第40回全日本聾教育研究大会と合わせて開催し、特に教育に関する課題に焦点を当てたが、医療、福祉等に関わる重要な問題についても引き続き検討されなければならないことは当然である。