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実行委員長よりご挨拶

 
(財)鉄道弘済会が経営する弘済学園という知的障害・自閉症児者施設の園長の三島が委員長を命ぜられ、研究大会の基本的なコンセプトを何にすべきかについて考えました。三島の依拠する基盤は福祉であり、福祉の究極の目標は共生社会の実現です。
 そこで、大会の総合タイトルを「共生社会を創る」としました。「発達障害者」と「健常者」がともに共生する社会を目ざすということです。この「共生」とは単に物理的に併存するということではなく、「発達障害者」と「健常者」とが、互いに無いものを与えあう、互いになくてはならない意味深い存在として、共に生きることだと、福祉の先達である糸賀一雄や中村健二は終生求めつづけました。
 こうした先達の理想は近年の「国連の障害者権利条約」に包括的に結実しました。地域で分け隔てなく共に暮らす共生社会を創りあげることがその理念であり、その方法論は放置すれば生じるに違いない健常者と障害者の摩擦について、合理的配慮という概念を導入することが決定的であり、その具体的な形態を創りあげることに帰着します。
 そこでどのシンポジウムでも、それぞれの場にあった合理的配慮をどのように作り上げていくか、が本質となりました。具体的には、児童期、青年期、成人期、壮年期、高齢期、等々のライフステージそれぞれの局面で合理的な配慮をどう創りあげるかを検討することに致しました。
 シンポジウムは、ライフステージの初期から始めました。まず「初等・中等教育の場での共生」は隔離でなく地域でどのように公教育を展開すれば良いのかを検討します。従来あまり課題とされなかった「大学など高等教育の場での共生」についても合理的配慮とは何かを見つけ、高等教育の場に共生社会をいかに創るかを検討することとしました。また施設については「入所施設と地域の場での共生」があり入所施設の役割を検討します。地域に住む場合に欠かせない心身の健康維持についても「地域医療の場での共生」を保障する機能として取り上げてみました。さらに地域での自立を保障するものとして「就労の場での共生」があり、それはまさしく職場での合理的配慮を検討することになります。一般社会参加か福祉対応かの単純な二分法ではない第三の道が合理的配慮をともない紹介されます。地域社会との連携も不可欠であり「地域や家庭での共生」を取り上げました。また地域での生活が一般的になれば、発達障害者が犯罪の被害者や加害者にもなりうる、またホームレスにもなりうると言う視点から「虞犯や触法問題と共生」を新たなテーマに取り上げました。さらに共生社会を創りあげるには今日マスコミの影響力は圧倒的であり「マスメディアと発達障害者支援」という視点を新たに設けてみました。
 次に、教育講演にはまず、本大会の思想的な柱として、措置制度を乗り越え、人権の視点からソーシャルインクルージョン「新しい共生社会」を提唱し、新しい日本の福祉の骨格を作ったとも言える炭谷茂さんにお願いしました。
 また区分認定5.6など障害の重い自閉症の人が地域に暮らすことを実現した、はるにれの里の木村昭一さんにその先駆的な実践を紹介してもらいます。自閉症の最先端の研究者であり優れた業績を持ちつつ自らの場を地域臨床に置いている「むさしの発達クリニック」の川崎葉子さんには医療と地域支援についての講話をもらいます。作家の田口ランディさんには、人が障害のある人たちと一緒に生きていくということの意味について語ってもらいます。美交工業専務の福田久美子さんには、意図せずに知的障害者を雇用した結果、実際にビジネスモデルとして成功しているソーシャルファームとしての実践を語ってもらいます。
なお今回は、特別企画として発達障害者のアートを設けました。発達障害者と「健常者」の共生の根拠の一つに「心の世界の対等性」があります。アートとはまさしく心の世界の表現です。心の世界は、健常・障害を問いません。「障害者のアート」ではなくて、アートのなかに、健常者・障害者が結果的に含まれるのです。アートの世界に示される多様な心の世界こそが人類の財産であります。今回は、宮永岳彦記念美術館という秦野市立の美術館のなかに、健常・障害の垣根をなくした特別な催しとして設けさせてもらいました。その分室として東海大学の会場にも展示コーナーを設けました。
 その他、共生をうたう大会であればこそ、当事者である発達障害者の参加をさまざまに含めた企画といたしました。
 第45回大会実行委員長       
     弘済学園 三島 卓穂





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