「たたかいはいのち果てる日まで」復刻顛末記その2

全国地域生活支援ネットワーク代表理事 
田中正博

 5月の連休中に、スペース96の久保さんが発信した「たたかいはいのち果てる日まで」の復刊を目指すことへの協力呼びかけのメールに即座に反応し、メールを全国ネットの会員向けに発信しました。「復刊を果たした記念に、文章を寄せて欲しい。」と久保さんからリクエストがありましたので、メールを改良した文章をお届けします。
 『全国地域生活支援ネットワークの皆様。こんにちは!代表の田中です。皆さんご存じのスペース96社長の久保さんから「たたかいはいのち果てる日まで」という本の復刊を目指すことへの協力・要請のメールが届きました。皆様にもご協力をお願いいたします。この本には、個人的に相当な思い入れがあります。大昔(1982年9月)に立ち上げたレスパイトの原型の「障害児の一時保護」の事業所を、どのように方向付けしたら良いのか、迷いの日々の時代に、この本に出会いました。
 幼児通園に関わる人たちを中心に、サークル活動のように生まれた事業所は、必要に迫られて立ち上げたものの、海図もコンパスもない(陽水の歌のように、エッ若者は知らない?)どころか、舵すらもない、筏のようなものに乗っての船出でした。事業を立ち上げて3年目にこの本に出会い、中新井先生の生き方と信念に確かな方向性をもらいました。自分としてはバイブルのように大切にしていた本です。今までに、この本を4冊手にしているのですが、3冊までは、知り合いに貸しだすと感動のあまり誰も帰してくれない。と言ういわく因縁のある本です。最後に手にした一冊は、スペース96の久保さんにもらったものです。本人は「明日の記憶」になっていたようで、僕とこの本について会話したことすら覚えていないらしいのですが……。てっ!久保さん。まさかっ。僕が返さないから、今回の復刊・要請になった訳じゃないですよね。!
 いずれにしても、仲間と立ち上げた小さな事業所で、小さな規模のまましこしこと続けるには、一保護で受け止めてきた支援の中身があまりにも重く、必要度が高すぎる。そのため公(おおやけ)に受け止めてもらおうと、仕組みごと公立の施設に移し替えることにしたのです。中新井先生から教わった「専門性は日常の中で生かされてこそ意味を持つ。」と言うことを胸に抱えて、地元の自治体に働きかけ続けました。
 「たたかいはいのち果てる日まで」を読んでから、12年の歳月がかかりましたが、公立の支援センターの事業として、24時間365日いつでも電話一本で利用できるショートステイの仕組みとして機能を移し替えました。先生の理念通りに実現できたかどうかは、今更なのでわかりませんが、公立の事業に立ち上げていく際には、中新井先生の思いをとにかく大切にしたことを、しみじみと思い出します。
(復刊を果たした今、詳しい内容はどうぞ本書でお読み下さい。支援センターの仕組みを構築する上で、予算や機構で縛ろうとする行政と理念を貫ぬく先生との葛藤が僕としては印象深い所です。)
 今いる、国立のぞみの園への転職の際に、迷いが少なかったのも、中新井先生が金剛コロニーで奮闘していたことを、本を通して知っていたからかもしれません。
 今回、スペース96の久保さんからの依頼ではありますが、僕自身からも、(全くの便乗ですが、)皆様に復刊ドットコムへの投票のご協力をお願いします。そして復刊を果たした折には、是非、一読して欲しいと思います。」
そして、見事に復刊となりました。やりましたね、久保さん。帯の文字が素敵です。「障害者の地域における暮らしを支えるシステムはどうあるべきか」この答えを25年間ずっと探し続けてきている僕としては、思わず手にしてしまうキャプションです。アメニティや96では、平積みにして売りましょう。
 問いかけの答を探し続けている立場の僕としては、障害者自立支援法については、賛否、渦ず巻く中、今や少数の推進派(笑い)ですが、暮らしを支えるシステムとして機能するように、理念と現実のギャップにめげずに、前向きにあり方を模索しているだけとも言えます。困難にめげずに前に進む、この姿勢も、中新井先生から教わった事です。
たたかいはいのち果てる日まで、「障害者の地域における暮らしを支えるシステムはどうあるべきか」を考えている方には、是非、一読していただきたい本です。
最後に広告です。
 今年も「アメニティ」、2月の2/3/4日に琵琶湖のほとりの大津プリンスホテルで行います。今年から、全国地域生活支援ネットワーク http://www.shien-net.org/ の主催として、アメニティ・ネットワークフォーラムの名で新装・開店します。参加の皆様に、全国地域生活支援ネットワークで研究した成果を速報版として(といっても150ページ数を超すボリュームです)配布する予定です。奮ってご参加下さい。
「小規模からでも目指せる多機能・多角な経営戦略」の副題を持つこの本は、新しい地域支援システムにおける地域生活支援事業所の新たな展開方法を提案するものです。アメニティに参加できない人でも、春先にはガイドブックとして販売する予定ですので、スペース96を通してお買い上げ下さい。