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教科指導と読み書き・ICT活用

−中学部における実践事例−

筑波大学 障害科学系 教授 四日市 章

本書は、 筑波大学附属聴覚特別支援学校中学部が、日々の実践を的確かつ具体的にまとめたものである。聴覚に重度の障害のある中学生に対する長い指導経験に基づいて、具体的な事例の紹介の奥に、生徒への教育と指導への深い洞察が見て取れる。

本書の構成は、第T章・聴覚障害における教科指導の中で、教科指導に関する基本的な考え方を押さえた上で、教科指導の実際や配慮事項に関して分かりやすい解説を行っている。第U章では、読み書きの指導に焦点をあて、読みや作文の指導、リテラシーという観点から、指導の実際と課題、また、ICT(情報コミュニケーション技術)の読み書き指導への活用について述べ、最後の第V章では、教科指導や、行事、総合的な活動でのICT活用の実例を豊富に紹介している。さらに、巻末に附録として、中学部段階での様々な課題に対するアドバイスを提供している。

このような構成の中で、中学部のほぼ全ての学習内容について、日々の指導の実例を具体的に引用しながら、指導の観点、指導での配慮事項、評価といった点も含めて、たいへん分かりやすく記述している。しかしながら、単に指導事例を列挙しただけではなく、聴覚障害児が学ぶということ、学んで分かるということ、また、読み書き能力とはどういうものか、それは、学校でのあらゆる学習や生活の中で、どのように習得されていくのかといった、理論的な背景をも裏付けながら記述されている点に特色がある。また、読み書き能力が全ての教科指導の基本にあること、また一方では、教科学習において、生徒が主体的に考え、知識を積極的に求めて行く中で、読み書きの能力も培われていくことなど、本書全体を通して、中学生段階での総合的な能力の発達を促すことの重要性が主張されている。また、ICTの活用についても日頃の教育実践での工夫・努力の成果が述べられている。

電子黒板、スマートボード、パソコンをはじめ、さまざまな教材・教具や機器等を駆使し、種々の映像や字幕を利用して、自由度の高い視覚的な情報を生みだし、それらを、指導で扱う題材の性質に応じて、また、生徒の能力の違いなどに応じて、多様な使い方をしていること、そして、そのような多様な活用が可能であることを具体的に示している。ここでは、新しい便利な機器を単に導入して、生徒の興味をそそると言うことではなく、生徒の「分かる」を引き出すことを基本に、教具を指導の目的に応じて、どのように活用すればよいのかということの重要性が、その根底に主張されている。聴覚障害教育に携わる多くの先生方にぜひご一読頂きたい一冊である。

【著者】筑波大学附属聴覚特別支援学校・中学部

【発売】2010年10月01日

【頒価】1,000円

【発行】聾教育研究会


第T章 聴覚障害教育における教科指導

  1. 中学部における教科指導
  2. 国語における指導の実際
  3. 数学における教材・教具の工夫
  4. 社会科における学社連携の取り組み
  5. 理科の学習における指導の工夫
  6. 英語の学習における指導の工夫

第U章 読み書きに関する指導

  1. 聴覚障害児教育における読み書きの実態と指導
  2. 読み書きリテラシーへの着目
  3. ICTを活用した読み書きに関する指導

第V章 ICTを活用した指導事例

  1. 行事の映像を活用して短文を考える学習
  2. 国語科における映像・字幕・コンピュータの活用
  3. 自作コンテンツを活用した数学の学習
  4. 社会科の学習における映像やコンピュータの活用
  5. 理科におけるデジタルコンテンツの活用
  6. 体育における電子情報ボードの活用
  7. 家庭科における自作教材の活用
  8. 総合的な学習の時間を用いたアニメーションの製作
  9. プレゼンテーションに関する授業

附録 新任者向けQ&A集「教育実践のアイデアと工夫」


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