岩手県  浦波 夏純  13歳  視覚障害

平成22年7月5日

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自分のイメージで「山」を書くことができました。弱視で右足がまひしているので、歩くことも困難ですが、半紙なので座って書くことができました。

【寸評】
力強い作品で生命力に溢れています。たっぷりの墨量がイメージ通りの作品になったと思います。重厚で厳しく、また優しさに満ちた山になりました。
八月の声をきくころ
岩手県 臼井 宰規  59歳  視覚障害

平成22年7月5日

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弱視なので文字を拡大しないと見えません。拡大読書器という機械に手本と用紙をのせて書いているので、1枚書くのに1時間ぐらいかかります。何枚も何枚も練習しました。

【寸評】
障害を感じさせない統一感のある精神力は見事です。ゆったりとした運筆が柔らかな動きとなり、丁寧な書きぶりに深さを与えています。
海岸線
山形県  髙橋 浩之 29歳  知的障害

平成22年9月23日

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山形市の東邦書道会小学部を勉強中です。集中力、持続力、忍耐力の強化に取り入れました。作業所の仕事は根気強くやれるようになりました。性格が明るくなりました。

【寸評】
丁寧な運筆でしっかりとした章法で目を見張らせます。落ち着きのある作品が線に深さが感じられ、送筆の明るさが楽しげです。
雪かき
神奈川県  早野 正晃  32歳

平成22年9月28日

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2010年2月に書きました。2月は季節としたら冬なので、習字の本の冬の季語から雪かきを選びました。雪かきの3文字とも自分で見て上手に書けたので出そうと決めました。

【寸評】
大きな送筆の動きが作品を大きく力強く見せています。特に平仮名の字内空間の大きさが目に飛び込んで来ます。開放感に溢れた作と言えるでしょう。

新潟県  河井 善人  60歳  肢体不自由

平成22年9月1日

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今回も一文字にしました。心と云う字は簡単そうで実は本当に難しかったです。その時々の心理状態が出たり、体調をあらわしたり、書きながら心を見られている様な気がしました。たぶん、満足できる心はまだまだ先のことと思いました。

【寸評】
単純な形は表現するに非常に苦労しますが、この「心」には自分の内面を描写するに合致した様子が窺えます。素直で誠実さを感じさせる作品です。
初夏の山
山梨県  山本 和美  30歳  知的障害

平成22年8月20日

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2ヶ月間、指導者が宿直の夜、2時間の練習、自室で1人の練習、「夏」のバランスがとれず苦労しました。

【寸評】
しっかりと運筆され、線に迷いが見えません。運筆に余分な力が入らずすっきりとした爽やかな風を感じます。特に「の」は見事です。

岐阜県  犬飼 優太郎  15歳

平成21年12月17日

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お手本を見て、上手に書けるようになりました。毎回10文字を書くようにしています。1回目は自分一人で書く、2回目はお手本をなぞる、3回目はお手本そのものの上をなぞると決め、本人のペースで書いています。

【寸評】
母とは優しく温かい、しかし厳しさもある。この字は慈母のイメージがよく表現されています。最終画に母の顔が浮かんでしっかりと止めました。
秋の「月」
滋賀県  告中 美乃梨  14歳  知的障害

平成22年10月14日

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秋かぜによりくもがながれ、お月さまにかかりました。

【寸評】
月に懸かった雲を想わせるイメージが斬新です。雲を飄々と遊ばせ月の丸味が雲の直線によく合致して想像力をかきたてる作です。
研究
大分県  柴田 理紗  12歳  聴覚障害

平成22年8月20日

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夏休みの間、毎日練習しました。

【寸評】
一点一画もおろそかにせず、すっきりとした運筆が表した世界は広い。線の高度さは運腕の大きさと余分な力の抜けた賜物で見事な作品です。
和歌
福岡市  小田 隆  76歳  肢体不自由

平成22年8月19日

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不随意筋運動による之、偏の終画が紙から飛びだしたり、三づくりが四づくりになったりしましたが、練習の成果でしょう。それもなくなり、毎日楽しく筆をにぎっています。

【寸評】
障害に負けずに伸びやかな線と転折の鋭い仮名特有の流れが見事で障害を感じさせない努力が窺われます。散布も美しく日々の習練の賜物です。