こだま 2005年11月号(第331号)


 視 点

12月3日から9日は、障害者週間であり、最終日9日は、障害者の日である。今回は、障害者福祉のあり方と方向を戦後かつてないほど壊そうとする障害者自立支援法について考えてみたい。
障害者・関係者の強い反対を反映し、前の国会で廃案となった障害者自立支援法は、
衆議院選挙での自民党圧勝のもとで息を吹き返した。当事者の強い反対を押し切って成立した障害者自立支援法は、サービスにかかる
1割負担とサービスの対象を決める障害区分認定によって、ガイドヘルプ・ホームヘルプ、日常生活用具給付などの福祉サービスを私たちから遠ざけようとしている。政府・自公政権・マスコミなどが天まで持ち上げた障害者施策一元化のメリットは、既にかすみ、福祉予算の削減が法の狙いであることが日を追って明らかになっている。来年4月から9月まで半年間ガイドヘルプサービスに1割負担が一律に導入されると言われている。「地域生活支援事業は、費用負担も含めて市町村が決めるはずなのになぜ」との疑問に厚生労働省は、今支援費で実施している事業には、応益負担の原則を適用するとしている。視覚障害者の就業率は、23.9パーセントだといわれる。
四分の3以上が仕事を持たない状況のもとでの費用負担の強行は、福祉サービスへの我慢を押し付けることに他ならない。
 障害区分認定が視覚障害者の障害をきちんと反映し、受けているサービス水準を守るものになるかどうか甚だ疑問だ。食べる・排泄するなど介護保険の認定が機械的に持ち込まれ、視覚障害者の障害を軽く見る仕組みになりかねない。障害区分認定のモデル事業の中でも視覚障害者に関する項目がほとんどないといわれている。
 このように障害者自立支援法は、障害者から福祉サービスを遠ざけ、予算を減らすことを狙っている。しかし、だからと言って私たちから福祉が簡単に取り上げられるものではない。障害者自立支援法が動き出すには、政令や省令などの規則が必要となる。
市町村の受け入れ体制づくりも不可欠だ。
声と生活実態を反映させる運動の意義はここにある。遠ざかろうとする障害者福祉を離してはならない。
 今耐震偽造問題が日本中を駆け巡っている。建築基準法が改悪され、骨抜き住宅がどんどん造られる仕組みになっているという。
土台が揺らぐという意味では、障害者福祉も同じではないだろうか。お金が無ければ生活を支える柱が細くなる。障害を見ない、住民を大切にしない仕組みをこのままにしてはならない。
     (編集委員 山城 完治)

【特集】
「新しい年に向かって」
 ≪福祉を破壊する自立支援法の成立は、
私たちの生活に大きく影響しそうです。
これからも一つ一つの要求を大事に活動しなければなりません。そんな中、暗いことばかりではありませんでした。
今回は、お二人に来年への希望を込めたとてもハッピーなニュースを書いて戴きました。みなさん、お楽しみに。≫

 「新しい職場が決まりました!」
          西部  岩田 利明
 みなさま、こんにちは。今年も不景気、
そして幼い子どもたちが誘拐されたり殺害されたりとよいニュースがあまりありませんが、その中で私にとっての最高によいニュースをひとつ聞いて戴きたく思い、出てまいりました。それは今年の10月20日の木曜日に
なんと、電通コウサンという会社からヘルスキーパーの採用通知が届きました。そこに至るまでには本当に大変な毎日でした。私は一昨年の6月までは杉並区の小さなクリニックで毎日何不自由なく機能訓練の仕事をしていました。
 ところが、ある日を境に適応障害という
病気とお付き合いをしなければならなくなってしまいました。今でこそ、雅子様がこの病気になられたということで少しは知られて
参りましたが、それまではそんな名前を言ってもただ怠けているようにしか取られなかったことも現状でした。
 ひどい睡眠障害と無気力状態に襲われ、
日常生活までも困難になってしまいました。
そこで院長とも相談をした結果しばらく静養をした方がよいでしょうということになり、やむを得ず退職することになりました。
これは本当に口惜しいのとさびしいのが一緒に来たようなものでした。そして今年、病気も9割程度良くなって来ましたので、みなさまのお仲間に入れて戴きました。
 9月のある日、ハローワークに行ってみたところ、電通コウサンという会社から募集が出ていると教えて戴きました。 まあ駄目で
もともとという気持ちで応募したところ、
あれよあれよという間に書類審査、1次面接、2次面接と進んでしまい今の結果に至った
わけです。本当にこれは私にとって最高の喜びでした。十何倍という倍率を突破したのですから最初は夢でも見ているのではないかなどとも思ったものでした。ただ、チーフということですので、責任は重大かとは思いますが、せっかく勝ち取ったものなのでがんばっていきたいと思っております。
 こんな私のお話にお付き合い戴きまして
ありがとうございました。

みなさんは呼ばないでください「おばあちゃん」と−
        南部  大落 スミヨ
 今日か明日には産まれそうという11月2日に、私は女子医大に駆けつけました。
「来なくとも良かったのに」などと、初めは憎まれ口をきいていた娘も午後の4時ごろから様子が変わりました。誰もが通る道とはいえ、腰をさすってやりながら祈る思いでした。
 夜の面会時間が過ぎると、無情にも娘から引き離されてしまいました。時々娘の様子を看護婦さんに尋ねて待ちましたが、10時を過ぎると産まれるのは明日の朝になるから
帰るように言われてしまいました。
 3日の午前3時半に、帝王切開で母子共に無事と連絡をもらった時の気持ちは本当に
言葉には言い表せません。大役を果たした娘と初孫に面会し、安心したその足で福島に
帰って来たのですが、私としたことが飯坂線のホームから転落するという、とんでもないオマケがついてしまいました。電車に轢かれなかったことが何よりでした。その時に痛めた足もなんのその、一週間後おばあちゃんは張り切って、退院する二人のために上京したのです。
 ところが驚きました。そこにはひ弱で泣き虫だった娘ではなく、母性に目覚め、わが息子を守ろうとする母親の姿があったのです。
 孫はといえば、泣くか眠るかブリブリと
ウンチをするだけです。孫ほどかわいいものはないという先輩たちのような感情が、早く芽生えて欲しいものです。ともかく今は、
よかったよかったと何度でも叫びたい気持ちです。

 新年の集いにご参加を!
          西部 小板橋 靖彦
 今年も残すところ3週間となりました。
みなさんは、悔いのない1年を過ごされましたか。悔いのある人も悔いのない人も新しい
年はやってきます。新しい年に向かい、新たな気持ちでがんばるために東視協の活動始め、「新年の集い」にみなさんぜひ参加してみませんか。
 今年は西部ブロック担当で、歌あり、小噺あり、利き酒会ありとおもしろい企画を用意してみなさんをお待ちしています。仲間を
お誘い合わせの上、奮ってご参加ください。

       −記−
日時:2006年1月8日(日)
    午後1時半〜3時半。
会場:障害者福祉会館A1・2。
内容:各グループごとの自己紹介、小噺、
   しりとり歌合戦、利き酒会。
参加費:3千5百円。

☆ビールとソフトドリンクは若干用意しますが、例年通りみなさんからのお酒のご寄付をよろしくお願い致します。日本酒・焼酎・
ウイスキー何でも大歓迎です。
参加申込み・締切り:
12月25日までに、各ブロック長がまとめ小板橋までお申込みください。

 今年も歌声喫茶で盛りあがろう!
ステッキーズ  田中 禎一
 東視協歌声サークルステッキーズと港ピースサンデー実行委員会との共催による年末の歌声喫茶も今年で6回目となりました。
(6月に一度やったことがあるので実際には7回目です)。
 戦後60年目の今年は憲法改悪の動きなど、平和が脅かされることを強く感じた年でした。そこで今回は「憲法第9条を守ろう」ということで平和を願う歌をたくさん歌いたいと
思います。もちろんその他の懐かしい歌も
歌います。伴奏には最近あまり活躍できていない東視協アンサンブルのメンバーも参加
して久しぶりで盛り上げたいと張りきって
います。
       −記−
日時:2005年12月23日(祝日)
   午後3時から6時。
場所:障害者福祉会館2階
B1・2集会室。
会費:5百円(飲み物と簡単な食べ物が
つきます。ビールおよびサンドイッチは
別に実費で販売します。)

なお物品の販売などを希望される方は
予め実行委員会に連絡してください。
販売のテーブルを設けたいと思います。
座席を回って売り歩くことはご遠慮ください。
 参加ご希望の方は当日直接会場においでください。
連絡先:田中 禎一
   (090−5572−4585)

「温泉と雪の散歩道を
     楽しみませんか」
           南部  野島 潔
 来年の3月4日5日の東視協旅行の見どころ、食べどころを紹介します。みなさん一緒に楽しみましょう。
今回訪ねる群馬県は、日本列島のほぼ中央に位置し、大空に羽ばたく鶴の姿に似た地形で、関東を代表する湯けむり天国です。
その始めの土曜日は、伊香保グリーン牧場に行きますが、ウサギやヤギ、羊、ポニーとふれあえたり、遊園地や、乗馬など1870年代のアメリカ西部を再現したウェスタンタウン、シープドックショーや牛の乳搾り教室、動物にえさをあげることができる所で、お昼はバーベキューを味わって戴けたらと思っています。
つぎに宿泊場所の草津温泉は、「草津よいとこ一度はおいで」でお馴染みですが、土のいたるところに温泉が湧き、昔ながらの風習である湯もみの見学ができる「熱の湯」をはじめ、18の共同浴場があります。
そして日曜日は、かんぽの宿「草津」からほど近い天狗山で、本旅行のメインイベントのスノーシュー(雪に潜らない大きい靴)をはいて、雪の中の散歩道を楽しんで戴けたらと思っています。
ちょっとでも「行ってみたいな」と思われましたら、企画の参考にしたいと思いますので、12月中に、石原(3755−4635)
または、野島(3762−8421 職場)までご連絡ください。

 アクロスまつりでマッサージ
荒川支部 内田 邦子
 12月3日(土)、荒川区障害者福祉会館
「アクロスあらかわ」で毎年恒例のマッサージコーナーが行われました。今年で5回目、土曜日で施術者がいなくて探すのに苦労をしましたが、北部の小林由美子、井出政美さんに応援に来てもらって、延べ53人を施術しました。
 患者さんからは「気持ちがいい」、「いつもどこでやってるの」などの声にやっぱりやってよかったなと思いました。
 初参加の小林由美子さんも、「よい勉強になりました」との声。どこかみんなでやれる
場所があったらいいなと率直に思いました。
 また、施術者ではなかったけれど、板垣敦子さんもカレンダーを5本売ったり、呼び込みにと大活躍してくれました。

障都連の年末募金のお願い!
副会長  西原 清松
 いつも障都連活動にご協力戴きありがとうございます。
 障都連は、みなさまの多大なご協力により、新宿に「日本障害者センター」を設立し、
2年が経ちました。障害者運動の合同事務所として活用するとともに、情報提供や相談の
センターとしても活用されています。
 障都連の財政は、加盟団体の会費や事業
活動などを収入としていますが、要請行動に向けての印刷費、専従職員の年末一時金を
保証するため厳しい財政が続いています。
そこで、今年もみなさまに年末募金をお願いしたいと思います。
 いつも勝手なお願いで恐縮ですが、障害者運動を前進させ、障害者と家族の生活と権利を守るために障都連年末募金へのご協力を
お願い申し上げます。
 ご協力いただける方は、東視協事務局
または障都連に直接お電話をして振替用紙を請求してください。
 以上、よろしくお願いいたします。

 11月の教養講座に参加して
           南部 下奥 重望
 今月は「留学生から見た日本の視覚障害者の様子」というテーマで、汪徳慧さんに講演いただきました。汪さんは、1974年中国内モンゴル生まれ。98年、国際視覚障害者援護協会を通じて、石川県立盲学校理療科に入学。その後、理療科教員養成課程を卒業され、現在は、都立八王子盲学校の理療科教員として勤務しています。
 日本人に自己紹介する際、「内モンゴル
出身」というと、朝青龍や旭鷲山と同じ国の生まれかとよく聞かれますが、彼らはモンゴルという国で私は中国の「内モンゴル地方」の生まれであると強調していました。
内モンゴルは北緯54度に位置し、真冬には零下3、4度まで下がる厳しい気候です。
北京から列車を乗り継いで40時間以上かかるといいますから、国土の広さを感じたと
ともに、非常に不便な場所だと思いました。
 人口は12億人と統計上は発表されていますが、一人っ子政策が浸透していない農村部では、2人目以降は戸籍に登録しない(これを「黒人(くろいひと))といいます)ので、実際の数字はわからないとのことでした。
 障害者人口は6千万人で、うち視覚障害者は900万人(内モンゴル地域にはだいたい5、60万人はいる)いるそうです。就学率はわずか7%で地方都市では1%に満たない状況です。盲学校は非常に少なく、特に高等部の課程がある学校は、国内でたった4ヶ所しかないため、汪さんは中学校を卒業後、
1年間独学で勉強し、長春大学へ入学されました。
 主な就職先は、あんまマッサージ指圧師になる人が多く、それ以外は、IT関係や盲学校の先生、福祉施設に就職する人もいるそうです。しかし、これらの職種に就ける人は、教育を受けることができた人であり、教育を受けられない人は、農業や占い師として働くそうです。さらに、重度重複障害者の場合は、親や兄弟が面倒を見るのがほとんどで、福祉施設へ入所するケースもあるとのことでした。
日本の福祉予算や障害者に対するサービスは年々厳しさを増していますが、中国と比べますと、格段に恵まれているのだなあと感じられた次第です。
 最後に、日本に来て感じた面については,@教科書・参考書の点字版やカセットテープ版が非常に充実しているので、勉強しようと思えばいくらでもできる環境が整っている。
A点訳・音訳のボランティアが多く、個人のニーズに対応してくれる。B日本の盲学校の規則は細かく、生活していく上でもルールが非常に多いが、それをこなしているのに驚いた、などについて語っていました。「門限」という言葉も日本ではじめて聞いたそうです。
 この他、生活習慣の違いや、食習慣に関する質問などがたくさん出され、参加者の中国に対する関心の高さを物語っておりました。私も機会があれば、一度海外に出かけ、外から日本の様子について考えてみたいと思いながら、楽しく拝聴させて戴きました。

【連載23】
「発泡インク点字印刷が開発の目玉(1)」
         北部  長谷川 貞夫
 大蔵省など、官僚による幾多の行政における失敗が問題になっている。通産省の障害者福祉機器開発においても、同様の問題があった。
正式な開発名称は別として、「点字複製装置」、「盲人歩行用超音波眼鏡」、「盲人用読書機」の開発などがその例である。いずれも
実用にはならず、盲人用読書機については、
「千五百万円なら売れます」などと無神経なことを、平気で言っていた。いったい誰が使うのだろうか。
 その後、まもなく、パソコンがあればスキャナーとソフトを合わせて10数万円という盲人用読書装置が零細な民間企業から発売された。いかに行政が無能で税金が無駄に使われているかがわかる。
 ここに私がたまたま関係した「点字複製装置開発」をその一例として述べてみよう。
 昭和50年の初めに、ある会社のM氏が
附属盲学校へ私を訪ねて来た。どうしてM氏が私の所へ来たかというと、附属盲学校卒業生のY君の親戚が、M氏であった。そのM氏の会社が開発している点字印刷法については、私に意見を聞くのがよいと言ったとのことであった。M氏が私に見せた点字印刷の資料は、スクリーン印刷という墨字印刷の方法で、インクを少し厚く盛り上がらせて印刷した点字印刷物であった。しかし、それは、点字の点としては、まだ低すぎて実用的には使えないものであった。
 インクによる点字印刷法については、昭和47年に私が「自動点字翻訳の原理」(『言語生活』筑摩書房、1972年9月号)に
おいて、将来のコンピューターによるインクジェットプリンターで点字印刷できる可能性があるとふれている。まだパソコンもない
時代でインクジェットという印刷方式そのものが開発中であった。それでインクによる
印刷法が、点字印刷に応用できるのではないかと関心があった。
 昭和47年当時、私はインクジェット印刷で、点字の点をいかにして厚く盛り上げるかということと、その厚く盛り上げた点字を、どのようにして高速に乾燥させるかが問題であると思っていた。
高速乾燥については解決策がなかったが、
点字を厚く盛り上げる方法については、インクに発泡剤を入れ、印刷後これを加熱・発泡させて、膨らませればよいというアイデアに落ち着いた。発泡させればインクは2、3倍の高さになるからである。
 そこでM氏に対して、その見せてくれた
インクによる点字の点を発泡させればよいと、アイデアを提供した。
それが縁で、後になって私が通産省の福祉
機器開発に係わったのである。
 それから数ヶ月して昭和50年9月号の
印刷技術専門誌に、「新しい点字の印刷法」という表題で、発泡インクによる点字印刷法が発表された。
 発泡インクは特殊なインクではあるが、
印刷材料としては以前からあり、印刷業の方には知られていた。
 これは、文字や模様を浮き上がらせて、
凸型に表現するための印刷材料である。
だがそれを点字印刷に応用することは、私に会って低い点字を発泡させるというアイデアを聞き、通常の高さの点字印刷が可能になって、初めて発表できたはずである。
 昭和51年の8月に、通産省の外郭団体である「技術開発組合医療福祉機器研究所」が発足した。そしてさっそく、初の研究・開発計画として、医療関係4テーマと福祉関係
4テーマが発表された。その福祉テーマの
中に、点字複製装置の開発に関するものが
あった。開発期間は、昭和54年3月までの2年半余であった。
 この研究所は、通産省から多額の研究開発費を受け、テーマに沿って研究・開発を進める企業の集合による組合組織である。
1テーマが何年にもわたる開発で、テーマごとの開発費は、数億円から何十億円である。点字複製装置については、当初は凸版印刷
株式会社と松下技研株式会社とで開発組合を作る予定であったが、その後岡崎氏のいる
日本タイプライター株式会社も参加するようになった。私が自動代筆など、点字についての研究を行っていたせいか、私も点字使用者として、開発委員会委員のひとりになった。
 点字複製装置とは、紙に書かれた点字を
光で読み取り、同じ点字印刷物を何部も作るという装置である。つまり、この連載の中で紹介した、「点字カセットシステム開発研究会」の内容と同じであった。ただ点字の印刷を発泡インクで行うところに重点が置かれていた。
 まことに皮肉なことであるが、私は、かつてインクを発泡させることによる点字印刷のアイデアを、訪ねて来たM氏に提供したが、委員会ではその発泡インクによる印刷法に
反対せざるを得ない立場になってしまった。
 凸版印刷の工場で、点字を発泡インクで
印刷するところを見学する機会があった。
私が見たのは、点字用紙と同じ大きさの
シートに点字の形に穴を開ける。つぎにそのシートを網のスクリーンに乗せて、発泡インクを点字の形の穴から下の紙にインクを写す。その紙はインクがすぐに乾かないので、3センチ間隔ぐらいで何十段もある金網製の棚で1枚ずつ乾かす。インクが乾いてから熱ローラーという、ちょうど点字亜鉛印刷のローラーが百度前後に熱せられた装置に通す。この熱でインクが膨れて、初めて点字が形成されるというものであった。
 私は、この発泡インクによる点字印刷工程を見て、いくつもの問題点がわかった。
それは、厚く盛られたインクを乾燥させる
ために相当に時間がかかり、また乾いていないインクが付いてしまうので、紙を重ねられないため、数十段にも及ぶ棚が必要である
などであった。
 実はこれに先立ち、私は初期の開発委員会において、点字印刷部分は発泡インク式で
なく、点字用紙を用いた打点式点字ライン
プリンター方式にすべきであると提案したが、まったく無視された。発泡インクによる点字印刷が、この開発プロジェクトの「目玉」だったためである。すでに発泡インクによる
開発方法と、そのための予算が決まっていて変更できないということであった。
それは企業中心の開発であり、障害者不在の開発と言わざるを得ない。その証拠に、前に挙げた3種類の盲人用開発テーマで実用的に使われているものはほとんど無い。1年間につき、いったい何億円ずつを無駄にしたのだろうか。

あなたのまわりの身近な差別
         北部  織田 津友子
 11月7日月曜日、私はいつものように
自宅を出て出勤した。山手線も通常通り走っていた。私の職場は渋谷にあり、「また1週間がんばろう」と思っていた。ところが原宿駅で発車時間になってもドアが閉まらない。
そのうち「緊急停止装置が作動したので少々停車します」とアナウンス。
乗客はすぐに動き出すだろうと静かに待っていた。しかしアナウンスの内容が「東京駅で送電線の故障が見つかり、復旧の見通しが
立っていません」と言われて乗客はどんどん降りてしまった。
 私はどうしようかと考えた結果、JR職員の案内制度を利用して渋谷まで行こうと考えた。まずは原宿駅の窓口に行って「外回り
電車で新宿まで行くので新宿駅に連絡してくれるよう」に頼んだ。ところが駅職員は他の乗客の対応が忙しいから少し待ってくださいと言う。確かに振替輸送の切符を出したり、問い合わせに応じたりしてたいへんなのは
私にも理解できた。散々待たされて何とか
新宿駅まで移動したのにまた、乗客であふれて危ないからと言いながらぐるぐる回って
埼京線で渋谷へ移動。渋谷駅新南口から職場までの道のりがわからないため、いつもの
ルートの改札まで案内してもらって、2時間30分かかって職場に到着した。
 今回のことで私が差別ではないかと感じたのは次のようなことである。
原宿駅でも新宿駅でも障害者への対応は後回しにされる。突然の事故発生であっても、
健常者に対しては丁寧に対応している。
大混乱状態もよくわかる。でも障害者に対しても他の乗客と同じように対応して欲しい。「ちょっと待ってください」では差別としか思えない。 私はあと1駅のところにいたのに結局2時間以上かかったのはこの辺にも原因があると思う。職場に到着した時はほっと
するとともに何だか口惜しさも感じた。
 ちょっとだけうれしいこともあった。
それは新宿駅で渋谷駅に連絡を取った職員が「30代の若い女性先頭車両に乗車」と
言われて、腹立たしい気分が少し和らいだ
私でした。

  情報アラカルト
 いよいよ今年もあとわずか、みなさんの
2005年はどんな1年だったでしょうか。インフルエンザに罹らないよう手洗いやうがいをしっかりやって元気に過ごしましょう。

1.インフルエンザ撃退マスク
 「7ブロックウイルスカットマスク」は
バイオ抗体フィルターを内蔵したマスクです。このフィルター内の抗体がインフルエンザ
ウィルスと結合反応し、1分以内に感染力を奪ってウィルスの体内への侵入を防ぎます。
また感染者がマスクをすることで咳やくしゃみによるウィルスの拡散も防止できます。
使い捨てタイプで一日1枚の使用が目安です。7枚入りで1365円、 調剤薬局で購入
できます。お問い合わせはエフティー資生堂 
0120−81−4710まで。
2. 手あれ予防
 空気が乾燥する冬場は手あれが気になる
時期です。手あれには早めのケアをしましょう。日常生活での手あれ予防法としては
@手を洗ったらタオルで水気をきちんと拭き取り少し時間をおいてからハンドクリームを塗ること。A手の血行を良くするマッサージをする。ハンドクリームを掌にのせて手の甲から指の間、指の関節へと丁寧に広げる。
最後に指先のつめの付根のあたりをぎゅっと押してよくマッサージをする。手あれがかなりひどくなったらハンドクリームを塗った
後に食品用のラップと蒸しタオルで手をくるむ即席パックをやるとハンドクリームが皮膚に浸透しやすくなり保湿効果が高まります。

  ありがとうコーナー(省略)

  事務局だより
1. 練馬区富士見女子高そばの千川通りから
貫井図書館までの狭い歩道に点字ブロックが敷設されることになりました。
長谷川貞雄さんの要求が2年越しの運動で
実りました。練馬区土木課は、歩道が狭く
点字ブロック上を歩いたための事故も予想
されるので敷設は困難だとしていましたが、
土木課との2度の要請や区議会陳情などが
困難を変えました。
2. 06年東視協新年の集いの参加締切りは、
12月25日です。参加されるかたは、
ブロック長まで連絡してください。
また、ブロック長は、集約して今回の企画を担当する西部ブロック長の小板橋靖彦
さんまで報告してください。
3. 障害者自立支援法施行の準備が急ピッチ
です。ガイドヘルプ制度に1割の利用負担
を課すかどうかを厚生労働省が検討されて
います。このように障害者自立支援法が動き出すには、政令や省令が必要となります。ホームヘルプ事業や日常生活用具・補装具の給付など制度の実態と私たちの暮らしを話し合ったり考えたりすることが大切です。
 ブロック会議などの場を活用しましょう。

日程情報
12/12(月):
   「手をつなごうすべての視覚障害者
全国集会」要請および学習会
12/14(水):障館相談(担当・山城完治)
12/15(木):こだま12月号活字版発行、
   事務局作業
12/17(土):
歩車道段差ブロックモニター(予定)
 同:事務局作業
 同:「ステッキーズ」レッスン
12/18(日):東視協役員会
 同:教養講座「ヘレンケラーを育てたアンサリバンに今教育が学ぶこと」、講師
  西村章次(白梅学園大学教授)氏
 同:南部ブロック忘年会
12/21(水):障館相談(担当・鈴木彰)
12/22(木):事務局作業
 同:まちづくり委員会
12/23(金):歌声喫茶
(ステッキーズなど主催)
12/24(土):事務局作業
  同:女性部忘年会
12/25(日):
   新年の集い参加申込み締切り
12/30(金):年賀状発送
1/4(水):
北部ブロック巣鴨駅頭署名行動(予定)
1/5(木):事務局作業
  同:こだま編集委員会
1/6(金):雇用を進める会
1/7(土):事務局作業
  同:「ステッキーズ」レッスン
  同:東部ブロック会(予定)
1/8(日):東視協新年の集い
1/11(水):障館相談(担当・山城完治)
1/12(木):事務局作業
1/14(土):こだま1月号点字版発行
1/15(日):東視協役員会(予定)
1/18(水):障館相談(担当・鈴木彰)
  同:こだま1月号テープ版発行(予定)
1/19(木):こだま1月号活字版発行、
事務局作業
1/21(土):事務局作業
  同:「ステッキーズ」レッスン
1/22(日):
教養講座「あんま鍼灸の文化史」、
講師・長尾栄一氏
1/23(月):南部ブロック会(予定)
1/25(水):障館相談(担当・織田洋)
1/26(木):事務局作業
  同:まちづくり委員会

編集後記
 早いものです、今年も残すところ3週間となりました。2005年は、みなさんにとってどんな年だったでしょうか。障害者福祉や私たちの暮らしにとって手放しで喜べることが少なかったように思われます。
でも、そんな中で、東視協の内田邦子さんが提起してみんなで闘った重度障害者職場介助者制度の適用が5年延長されたことは画期的です。来年もこのようなうれしいニュースを作りたいですね。そのために力を合わせましょう。そして、一緒に心まで、心まで温まるお酒(お茶)を飲みましょう。