こだま 2003年2月号(第297号)


   視 点
 「鉄道利用の安全は利用者が自分で守るもの」は、ブレーキのかけ忘れによる車椅子使 用者のあわや転落の恐怖が過失と認定される時代に変わった。この30年間にである。上 野裁判の一審判決は、視覚障害者の歩行に伴う点字ブロックやホーム要員配置の転落防止 対策の必要性を認めた。また二審和解で国鉄(当時)は、視覚障害者の安全対策に努力す ることを約束した。上野裁判の闘いは、視覚障害者の安全な鉄道利用と権利を交通バリア フリー法を引き寄せる大きな運動といえよう。上野孝司さんの事故から30年のこの機会 に、上野裁判を支援し国鉄利用者の命と安全を守る会(「守る会」)の幹事として運動の 先頭に立った若宮康宏さんと小林行雄さんの話をもとに、闘いの意味を考えてみた。
 大宮・熊谷・秋葉原で、上野さんの事故から1975年の提訴までにも視覚障害者のホ ーム転落死亡事故が起きていた。「守る会」の運動は、視覚障害者の駅ホーム転落事故体 験調査(2回)によって、転落事故が自身の注意だけでは防げないことを明らかにした。 事故当時既に点字ブロックが開発されていたこと、高田馬場駅の安全対策を東視協などが 要望していたことをもとに、国鉄が視覚障害者の転落防止対策を怠っていたことを立証し た。
 「守る会」の運動は、点字ブロック敷設と事故防止のためのホーム要員不足を訴え、東 視協・全視協と国労(国鉄労働組合)の要求による統一と団結で闘われた。一審勝利以降、 点字ブロック敷設は全国にひろがり、視覚障害者の社会参加の象徴ともなった。
 上野裁判は、このように私達の安全歩行に大きな一歩となった。しかし、この闘いの願 い ー 落ちない駅ホームの実現には至っていない。視覚障害者の駅ホームの転落事故はあ とを絶たない。 1994年暮れからの8年間に、私達の知る限り、12人の視覚障害者が転落死亡してい る。東視協の調査(1994年)では、全盲者の3人に二人がホームから落ちた経験をも っているからだ。
 転落事故は防げる。南北線のホームドアや三田線の可動柵では、転落事故は起きない。
 2000年から私達は、上野さんの事故の日、2月1日を「駅ホーム転落事故ゼロの日」として、落ちない駅ホームの実現をアピールしている。いま私達は、建設の始まった地下鉄13号線への可動柵設置を求める運動に取り組んでいる。これが実のれば、同線につな がる西部池袋線・東部東上線・東急東横線への可動柵設置も夢ではなくなる。
 「落ちない駅ホーム1日も早く」、上野裁判から受け継いだこのバトンをしっかり繋が なければならない。ホームドア・可動柵設置を社会の課題に押し上げたい。環境破壊の大 型公共事業ではなく、安全を守る可動柵設置に切り替えたい。バリアフリー法を改正し、 ホームドア・可動柵を常識にする運動を進めようではないか。            
      (編集委員会)

  「新年の集い」に49名参加!2003年東視協としての初仕事
 「新年の集い」が1月12日(日)、都立障害者福祉会館で行われました。今年は南部 ブロックの担当で、「沖縄旅行」にちなんでテーブルを沖縄の四つの島(石垣・沖縄・久 米島・宮古)に見立て、楽しい一時を過ごしました。
 集いは、加藤弘之さんと東視協アンサンブルの「お正月」の曲で始まり、鈴木会長の挨 拶、東京の社会保障推進協議会・日本共産党東京都議団・障都連の各来賓の連帯の挨拶が ありました。来賓の皆さんの挨拶に共通したことは、今年は4月の都知事選・区市町村議 会議員選挙の年で、社会保障を守るための重要な年であり、何としても石原都政を倒し革 新都政を作ろう、またアメリカのイラク攻撃を止めさせ世界の平和を作ろう、と熱のこも ったお話でした。
 このあと、参加者の自己紹介・クイズ・リズム遊びなど、集いは段々盛り上がっていき ました。お酒の差し入れが例年になく多く集まり、お酒の好きな東視協会員は何ともいえ ないひと時でした。
 ここで初参加者の声を紹介します。
 「この4月から特養に就職することになり、頑張りたい。東視協のおかげです。沢山の 人に会えてとても嬉しい」         (風間巳津弘)
 「こんなに苦しい時なのに東視協の皆さんは元気で明るい。共に頑張りたい」                           (栗山健)
 最後に東視協アンサンブルの演奏をバックに「たんぽぽ」の全員合唱で集いは終わりま した。

  都立中央図書館視覚障害者サービスへの登録をお願いします。
                         副会長 田中章治
 先月号でお知らせ致しましたように、石原都政の下で、都立中央図書館の視覚障害者サ ービスの切り捨てが強行されています。そんな中、「登録者が少ない」「利用が少ない」 との当局側からの削減理由もささやかれています。
 そこでいま、同サービスを守るために、とりあえず登録者を増やしたいと考えています。 サービス継続のためにも、まだ登録していない方には、利用登録をぜひお願い致します。
 同サービスは、東視協も参加した視覚障害者の読書権保証運動によって制度化されたも のです。都立中央図書館の特徴である専門書の豊富を活かした対面朗読・点字・録音図書 の貸し出し製作リクエストなどのサービスを行っています。 視覚障害者職員のいるニーズのわかる、図書館サービスが売りです。サービスを利用され なくても、登録された方には、新刊などの情報が送られます。登録は、制度利用です。制 度は使ってこそ制度の価値が高まります。重ねて利用登録をお願い致します。
 なお、「利用案内」を同封させて頂きました。参考にして頂ければ幸いです。

  平和と人権を考える沖縄の旅大成功!(2)
 ☆:先月に引き続き、沖縄に行かれた皆さんの感想を掲載します。皆さん、強烈な思い で帰ってきた様子がよく表れています。
  (伊藤常雄)  雨の中、太平洋戦争の地上戦で最も凄惨な集団自決があった洞窟を訪ねた。 入り口から数メーター入っただけで、蒸すようなよどんだ空気に包まれ、洞窟というもの が持つ奇妙な不安感にさいなまれた。以前映像で見た光景がオーバーラップしてきた。戦 争に対する恐怖と怒りが増幅され、胸が締め付けられた。幾多の場所を見学して、同様の 思いにさいなまれた。歴史の現場に立ち、実際にこの目で目の当たりにすることによって、 物事の認識が鮮明になるのだということを再認識させられた。  楽しい思い出も沢山持って帰ってきた。沖縄の未来が決して絶望に満ちたものではない 場面にも幾つか遭遇した。今回は、その部分は割愛した。
  (川井由美)  ガイドをして下さった村上先生とかかずさんの分かりやすい説明により、沖縄の文化・ 歴史・そしてあの沖縄戦の様子が手に取るようにわかりました。歴代政府とマスコミが無 責任、無反省な態度をとり続けているなと痛感させられました。  この企画を組んだ実行委員の皆様そして渡嘉敷さん、ガイドのお二人、ボランティアの 沼田さん・宮久保さん本当に有り難うございました。  最後に、のっけから待ち合わせ時間に遅れ、計画を大幅に遅らせてしまい、 すみません。
  (黒岩瀧一)  天皇制政府の侵略戦争によってアジアだけでなく、日本国民とりわけ沖縄県民に苛酷な 犠牲を強いたことに改めて怒りを感じます。  今なお、自民党政府は侵略戦争と認めないだけでなく、膨大な米軍基地を認め、沖縄県 民の平和・暮らし・人権まで踏みにじっていることに怒りを感じます。  私も1945年防空壕に入った覚えがあるが、沖縄の「壕」は暗く蒸し暑く、さぞや苦 しい思いをされ、敵の攻撃に耐えていたであろうことが想像され、沖縄県民の戦争犠牲者 に哀悼の意を表さずにいられなかった。今回の旅は私にとってすばらしい旅行でした。
  (小林行雄)  沖縄旅行は、泣いたり笑ったりの思い出に残る旅でした。特にひめゆり部隊やちびちり がまでの住民86人の集団自決の話では思わず涙が出てしまいました。戦争のむごたらし さ、平和の尊さを改めて実感しました。実行委員や参加された皆さんには、大変お世話に なり有り難うございました。  最後に、今年の干支「未」を頭に一句。「ひ」めゆりに「つ」いとう込めて「じ」酒飲 む。
  (菅井茂子)  戦中の沖縄というとひめゆり部隊のことはよく聞きますが、あれほど沢山の住民が悲惨 な思いをしていったとは・・・。 今度沖縄に行く機会があったら、離島巡りをしたいも のです。
 (菅井孝雄)  かつて「燃ゆる島」と謳われた沖縄を心躍る思いで訪ねましたが、平和ガイドの話が進 む毎に今は「さめた島」と化している沖縄を見る思いがした。  それもその筈、占領から抜け出したとはいえ。即安保適用で基地はそのまま、費用は国 負担となっただけなのだ。  諸悪の根元「安保条約」を肌で感じた旅でもあった。  渡嘉敷さん有り難う!
 (大楽スミヨ)  一言で語り尽くせない四日間の旅でした。もう東視協を辞めたいなどと、いいません。 皆さんと一緒に戦争のない平和な社会のために活動していきます。  密度ある企画を役員の皆さん有り難う。 (中丸忠次)  沖縄の戦跡・基地を実際に見て、本土の人間として何か加害者のような気がして心が痛 みまた、いたわしく思った。  喜納盛吉のライブカウントダウンは良かった。いま私は、首里城で買ったぐい飲みで泡 盛を飲み、喜納盛吉のCDを聞いています。

    教養講座 騙されなかったのは誰?
                          東部 滝 修
 10数年前にこんなことがありましたよね。
 試験を民間に:80年代の終わり頃になって、それまで国の責任で行っていた按摩マッ サージ指圧師・鍼師・灸師(以下「あはき」と略)国家試験を民間委託すると厚生省が言 い出した。そしてその事務を行うための財団を業団体をたきつけて作らせようとした。  踊らされた業団体:厚生省の口車に乗せられた全鍼師会や全病理などの業団体は、「試 験制度が変わるので、資格取得も改めて講習会を受ける必要がある」、「講習会を受講す るためには財団設立の資金集めに協力しなければならない」などの誤った情報を流して会 員から設立資金を集めようとした。
 でも私達は:それに対して東視協・全視協は、「制度が変わっても既に資格を持ってい る人はこれまで通り仕事を続けられる」と誤りを正し続け、「そもそも試験は国の責任で 行うべき」と主張し続けた。
 残念ながら財団は設立され、試験事務と免許登録事務は民間委託された。
 ところが今:しかし、最近になって厚生労働省は、「国民の健康に直接関わるような資 格制度は国の責任で行うべき」というようになりました。担当者は、「国の考え方が変わ った」と語ったそうです。
 「誰にも受けられる鍼灸マッサージのために」というテーマで全視協総務局長でもある 東郷進さんを講師に今日のあはきを取り巻く動きと今後の運動の進め方について学んだ1 月の教養講座の中で印象的だったエピソードの一つです。
 教訓!!:権力(国や行政)のいうことを信じ、迎合するのではなく、国民の立場に立 って進められるのが運動のあるべき姿である。

    情報アラカルト
 (1)労音情報
 2/28:羽田健太郎・室内楽トリオコンサート」、紀尾井ホール、午後7時 開演、 S席5500円,A席4500円
 3/1:「ふじこヘミング・ピアノ・リサイタル」芸術劇場、午後2時開演、 S席8000円,A席7000円
 3/27:「ビリーバンバン・コンサート」江東区文化センター、午後7時開演全席指 定3900円
 お問い合わせとチケットの申し込みは東京労音(рR204ー9933)までお願いし ます。
 (2)手作りヨーグルトはいかがですか!
 今ひそかなブームとなっている「カスピ海ヨーグルト」を知っていますか。 常温(20〜30度)で菌がどんどん増えて、出来上がったヨーグルトは酸味が少なくと ても食べやすいし、独特の粘りけもある。  種菌は凍結乾燥させ、粉のような状態にして清潔・安心・安全な形で送られてきます。 それを熱湯消毒ができて、菌の繁殖がしない素材の広口容器に入れて、500ml牛乳を そそぎ、ゆっくりかき混ぜて軽く蓋をする。そして上記の室温なら早くて6時間、室温が 低ければ16時間から1日でプリン状になったヨーグルトの出来上がり。しっかり蓋をし て、冷蔵庫に冷やして食べて下さい。出来上がったヨーグルトの真ん中の部分を取り出し、 同じ様な手順で美味しいヨーグルトを作ることができる。
 種菌の注文は、〒650−0023 神戸市中央区栄町通り4−2−18近畿ビル6階「食の安全と健康をネットワーク」まで、 80円切手を貼って住所・氏名・電話番号を書いた返信用封筒を入れて注文して下さい。 費用は1セット1千円(1回の注文は1セットのみ)。代金の支払いは振込用紙でお願い します。電話での問い合わせは、番号案内に登録がないためできません。興味のある方は 情報提供者の小林行雄さんに体験談をお聞き下さい。

    川柳コーナー
 「子羊の」折り込み都々逸
「こ」 こぶしあげよ 「ひ」 貧困・いくさ 「つ」 作ろう平和な 「じ」 自由都市               (山城完治)

   ありがとうコーナー(省略)

    事務局だより
 1.昨年暮れ鈴木会長名で東京都議会に提出した第4種・第3種郵便制度の現行制度継 続を国などに求める陳情が1月31日の厚生委員会で趣旨採択されました。国は、点字・ 録音物などの無料と、第3種郵便の現行料金を維持するよう、郵政公社に答申する見通し とのことです。
 2.東視協も参加している特養マッサージ師の仕事と身分を守る会が提出した特養マッ サージ師への都の補助金継続などを求める陳情は、上記の都議会厚生委員会で審査され、 保留となりました。質疑をしたのは、日本共産党の大山もと子氏と吉田信夫氏だけで、あ との議員は一言も発言せず、ただ保留を主張しただけでした。保留とはなりましたが、東 京都は、視覚障害按摩マッサージ師への補助金制度は継続することを言明しました。これ は運動の成果です。
 3.東視協の第37回総会準備のための役員研修会を、3月1日・2日に行います。会 の活動に対する意見・要望などをブロック長又は役員までお寄せ下さい。
 4.活字読み取り装置「読めまっせ」が雑草の会に3月4日まで展示されているそうで す。本やビラなど活字文書を読み取り、音声で知らせてくれる器械です。興味のある方は 雑草の会(рR810−1241)の内田さんまでお電話をして下さい。見せて頂けるそ うです。購入される方がいましたら、全視協(3207ー5871)の阿部さんまでご相 談下さい。
 5.東視協事務所のパソコンがADSL接続されました。インターネットや、Eメール などに興味のある人、やってみたいという人は、ぜひ見にきて下さい。東視協会員の3分 の1近くの人がEメールアドレスを持っています。色々な情報を入手することが容易にな ります。パソコンをこれからやりたいという人はぜひ事務所に来て触ってみて下さい。

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