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たんの吸引等第三号研修(特定の者)テキスト
―たんの吸引、経管栄養注入の知識と技術―

NPO法人医療的ケアネット 編
 

A5判 245ページ

本体価格2,400円+税

クリエイツかもがわ
 特別支援学校では、平成元年頃から医療的ケアを必要とする児童生徒が増え、全国的な課題となりました。平成10年から文部科学省によるモデル事業が立ち上がり、厚生労働省との協議が進められ、「実質的違法性阻却論」という法律的な解釈により、介護職員等による医療的ケアの実施が認められました。その後、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度のあり方に関する検討会」での議論を踏まえて、平成24年に社会福祉士及び介護福祉士法の改正が行われ、介護職員等による医療的ケアが法制化されました。
第三号研修とは
 前述の法改正で、介護職員等は、一定の研修を終了した後、都道府県知事が認定し、登録事業所に所属することで喀痰吸引や経管栄養等の実施が可能となりました。すなわち、特別支援学校の教員は一定の研修の後、都道府県知事により認定され、登録事業所に登録している特別支援学校で、たんの吸引等を実施することができます。
 本書は、特別支援学校の教員が行う、特定の者を対象とする第三号研修のテキストです。なお、第一号・第二号研修は、不特定多数の者を対象とする研修です。
講義Ⅰ 重度障害児者等の地域生活に関する講義 
 講義Ⅰは、たんの吸引等の研修の概要や障害者の権利に関する条約、たんの吸引等の実施に関わる制度、障害福祉サービスなどです。重度障害児者が地域で生活するための支援や、医療・福祉との連携についても知ることができます。また、脳性まひや二分脊椎症など、医療的ケアが必要になる病気についても取り上げています。
講義Ⅱ たんの吸引等を必要とする重度障害児者等の障害および支援、緊急時の対応および危険防止に関する講義
 講義Ⅱは、健康状態の把握や呼吸についての解説と、たんの吸引や経管栄養、胃ろう、薬液注入の手順の解説です。バイタルサインやポジショニング、物品などの基本的な内容も学びます。
講義Ⅲ たんの吸引・経管栄養に関する演習
 講義Ⅲでは、たんの吸引と経管栄養の準備から手順までを、注意事項と共に解説しています。全体的に図や写真が多く、とても見やすくなっています。
 講義内容の他にも、資料として、実地研修で活用する評価票・評価判定基準や制度についてのQ&Aなども、掲載されています。あわせて、関連コラムでは、医療的ケアに関係する内容を広く学べます。

 本書は、子供から大人までの「利用者」を対象とした内容となっており、執筆者は、医療的ケアに長年携わり第一線で支援を続けている方々です。医療的ケアに関わる方々の参考書として、ぜひ手元に置いてほしいと思います。また、制度についての説明も充実しているため、管理職や指導主事などにも役立つ一冊となっています

(千葉県立市川特別支援学校 松浦 雅子)