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障害の重い子どもの授業づくり Part7
−絵本を活用した魅力ある授業づくり−

飯野 順子 授業づくり研究T&M 編著
 

A4判、189ページ

本体2,200円+税

ジアース教育新社
 障害の重い子供たちの授業で、絵本を活用した経験のある読者は少なくないと思います。しかし、どういった基準で題材となる絵本を選び、どのように授業に活用するか、絵本の持ち味を活かしつつ、どう授業を展開すれば子供の学びに結びつくのか、授業づくりに悩む読者もまた少なくないと思います。本書には、このような悩みへの回答がたくさん詰まっています。
「絵本調査」にみる絵本の力
 第1章、理論編では、編者である飯野氏が行った、「絵本を題材(教材)とした授業に関する調査」が取り上げられ、「絵本を教材として使用する意義や効用(効果)」についての自由記述が、6ページにわたって分類され示されています。読者が、絵本の力を再認識し、絵本のどのような点を活かして授業を作っていけばよいのかを、整理する手がかりを与えてくれます。
 また第1章の後半では、金森克浩氏が、絵本活用に加えたICTの活用の授業づくりについて解説しています。ICTの活用は、様々な可能性を秘めていることに、改めて気付かされる内容です。
絵本を活用した授業づくり
 第2章では、絵本を活用した授業づくりの実践例が紹介され、七名の執筆者によって、絵本を用いた授業づくりの過程が示されています。これらに共通しているのは、絵本を活用した授業の中で、子供を中心に据えた様々な工夫が施されていること、飯野氏が示す、授業づくりの基本「シンプル」「スリム」「ストレート」を具現化する手続きをとっていることです。
 飯野氏は、これらを「一文一文、うなずきながら編集してきました」と紹介していますが、日々障害の重い子供たちの授業づくりに励む読者のみなさんもまた、本書で示される授業づくりの過程に、自分の担当する子供の姿や授業を重ねて読むことができるのでは、と思います。
 第3章は、絵本の活用紹介です。絵本1冊ずつが具体的に取り上げられ、様々な目的のもとで活用されています。題材に悩んだ時に読めば、指導したいことにぴったりの絵本が見つかるかもしれません。
授業を支える図書館での活動
 第4章では、図書館での活動を充実させる取組が紹介されています。紹介される2校の取組からは、子供の読書活動を推進させるために、図書館での活動の充実が有効であることが分かります。読者が学校の図書館での活動を充実させたいと思うとき、多くのヒントを与えてくれることでしょう。
 本書は、絵本を取り上げていることもあり、カラー刷りになっています。読者は、実際の絵本を思い浮かべ、自らも絵本を手に取ってみたくなるような気持にさせられるでしょう。絵本の魅力を再認識するとともに、明日の授業を考えることが楽しくなるのではと思います。ぜひご一読ください。

(東京都立水元小合学園 武部 綾子)