日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.236

授業で生かす教材・教具

  本号が届くころには、夏季休業も間近。長期休業を利用して、教材・教具(以下、教材)づくりに励もうと計画している先生方も多いことでしょう。本特集号は、そのような先生方に教材製作や活用のヒントを提供することを目指して編集しました。実践報告では、算数・数学や理科などの教科指導だけではなく、訪問教育を含めた障害の重い児童生徒の指導における教材の活用の様子をご紹介いただきました。
 その一方で、子供に合った教材の必要性を感じつつも教材製作にしり込みをしている先生方のことも、応援しています。扱いやすい道具で簡単に作れる教材を多く紹介しています。発達の視点で子供を観察することで、必要な教材を創造でき、その教材で子供の力を引き出す。この夏、そのような教師を目指して行動してみませんか。なお、本号は「講座Q&A」「ちょっといい話 私の工夫」でも、教材関連の情報を掲載しました。特集ページと合わせて、ご活用ください。

(保坂美智子)

 

・写真
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・巻頭言
道具としての教材・教具の開発と工夫
吉瀬 正則
障害児基礎教育研究会代表

・論説
一人一人の子供の発達に応じた教材・教具の活用
立松 英子
東京福祉大学大学院社会福祉学研究科教授

教材を作って分かる肢体不自由教育
杉浦  徹
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 情報支援部総括研究員

・実践報告
簡単に作って授業に役立った算数・数学の教材・教具とその使い方
荻野 和美
山梨県立甲府支援学校教諭

理科の指導を支え広げる教材・教具の工夫
茂原 伸也
千葉県立桜が丘特別支援学校教諭

子供とその家族の願いの実現を目指す教育実践
―必要な教材・教具の選定過程と活用の成果―
采女 靖彦
静岡県立富士特別支援学校教諭
(前静岡県立中央特別支援学校教諭)

訪問学級の指導を支える教材・教具の工夫
正木 芳子
和歌山県立和歌山さくら支援学校教諭



・連載講座
算数・数学につながる数の指導(2)
 数概念の形成、教えることを中心に
川間健之介
筑波大学人間系教授
・講座Q&A
木工室での教材・教具の製作

・小児リハビリテーションの基礎知識 2
粗大運動発達の基礎知識
西方 浩一
文京学院大学保健医療技術学部准教授
・ちょっといい話 私の工夫
調理実習における教材・教具の工夫
杉村 貴子
京都市立呉竹総合支援学校教諭
・特別支援教育の動向
新特別支援学校高等部学習指導要領の改訂の方向性と平成30年度特別支援教育関係予算の概要
菅野 和彦
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
特別支援教育調査官
 
・読者の声
 
子供について語り合う
寺澤 麻紀
福井県立福井特別支援学校教諭


 本校は、小・中・高等部合わせて、61名の児童生徒が在籍する、福井県内唯一の肢体不自由教育の単独校です。赴任した5年前のときは、私にとって初めての肢体不自由教育で、摂食指導や姿勢のこと、コミュニケーションの取り方など分からないことばかりで、本誌を何度も開いては悩みながらの毎日でした。
 その後、自立活動の指導目標の設定について学ぶ機会があり、その学びを生かし、昨年度から校内研究や研修で取り組んでいます。自立活動の目標は、子供の実態から導き出されることもあり、どうやって目標を立てればよいのか難しいという声など、がありました。
 そこで、課題関連図を用いた指導目標の設定を校内研修で行い、教育課程別に小グループで1人の子供について検討しました。実態把握や課題の抽出では、模造紙を囲んで付箋を貼ったり、課題間の関連を考えて矢印を付けたりと、試行錯誤しました。「課題を見付けることができた」「色々な人の考えや意見が参考になり、視覚化されて分かりやすかった」などの感想があり、話し合いで得られたことが多かったようです。
 話し合うこと、考えることの大切さを改めて感じ、子供について共通理解する大事な機会になりました。今後は、自立活動の指導目標について授業の中でどのように指導したか、子供たちの変容などを授業研究会で検討し、語り合うことを大切にしながら、授業改善につなげていきたいと思います。


肢体不自由教育部門での学びを知的障害教育部門で生かす

山田 知未
神奈川県立小田原養護学校教諭


 本校は知肢併設の特別支援学校です。前任の特別支援学校では肢体不自由教育部門の学級担任でしたが、今年度は心機一転、知的障害教育部門の学級担任となり、多くの不安や戸惑いがある中でのスタートでした。しかし、先生方のサポートや児童生徒と関わる中で、大切なことに気づきました。児童生徒本人の良いところを生かした活動設定をすることや、成功体験を積むことのできる仕掛け作りなどの視点は、肢体不自由教育も知的障害教育も同じであるということです。
 また、障害の捉え方の基本であるICFの概念から、「困り感」の高いことを環境因子や個人因子との関連から捉えて、環境を整えることで、その軽減や解消が図れることを、昨年度の派遣研修で学びました。このことは、私の現在の教育活動を支えています。
 新学期が始まり、しばらく経ちました。現在は、肢体不自由教育部門での学びやICFの視点を念頭に置き、チームの教職員と共に児童生徒1人1人の実態を捉え、支援の手立てや環境設定、支援の提供のタイミングを模索、実践しているところです。日々の活動を振り返りながら、児童生徒やチームの教職員とのより良い関係の構築を目指して、児童生徒の自立と社会参加に向けた取組を実践していきたいと思います。
 そして、すべての児童生徒が自分らしく過ごすことのできる居心地の良い場所づくりを行い、能力を発揮して生き生きと社会で生きていくことのできるよう、児童生徒の成長に携わっていきたいと考えています。私自身もたくさんのことを吸収し、今後もより良い支援や指導、授業について考え続けていきたいと思っています。


・図書紹介
・お知らせ
平成29年度事業・会計報告
■次号予告
■編集後記