日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.213

「個別の指導計画」を考える

 
 「個別の指導計画」は、日々の教育活動で十分に生かされているでしょうか。
  前回の「個別の指導計画」の特集号である平成21年発行の191号の目次には、このように書かれています。それから4年が経ちましたが、その作成や活用について不安な思いを抱えながら日々の指導に携わっている先生方は少なくないように思います。一方で、平成21年に告示された学習指導要領では、各教科等についても「個別の指導計画」を作成することとされ、「個別の指導計画」は特別支援教育の個に応じた指導に欠かせないものになりました。
  今回の特集は、「個別の指導計画」の作成手順や授業への活用について、今一度考えてみようという着想から始まりました。「個別の指導計画」の活用についての実践報告では、日々の授業に「個別の指導計画」を生かすためのヒントがたくさんありました。
  本号が、各学校の「個別の指導計画」のあり方について考えるきっかけとなれば幸いです。

(松浦 雅子)

 

・写真
写生


・巻頭言
子供を見る目
今別府 敏
前千葉県立袖ケ浦特別支援学校長・
千葉大学非常勤講師・淑徳大学兼務嘱託教育職員

・論説
あらためて「個別の指導計画」について考える
―「個別の教育支援計画」との関連において―
徳永亜希雄
国立特別支援教育総合研究所 主任研究員

「個別の指導計画」をめぐる教育現場での課題
吉川 知夫
十文字学園女子大学特別支援教育センター准教授


・実践報告
障害種別に対応した「個別の指導計画」の作成とその活用
―授業づくりに生きる「個別の指導計画」とは―
荒川 喜博
京都府立宇治支援学校教諭


アセスメントに基づいた教育課程と「個別の指導計画」
―アセスメントから指導する内容の選択へ―
西村 美貴
田中 博子
青森県立八戸第一養護学校教諭


中学校肢体不自由特別支援学級における「個別の指導計画」の活用
―樫の木学級の取組から―
木村 広美
山形市立第三中学校教諭


「個別の指導計画」を授業改善につなげる
―「個別の指導計画」の見直しと活用―
原田 敬子
岡山県立早島支援学校教諭



・連載講座
訪問教育の今(一)
 訪問教育の現状と課題
大崎 博史
国立特別支援教育総合研究所主任研究員
・講座Q&A
見え方と目の使い方について

・施設紹介
地域に育ち、地域に根ざした支援
長門 展弘
社会福祉法人 青い鳥
横浜市南部地域療育センター 通園課園長
・スヌーズレンの基礎知識 4
スヌーズレン教育の効果と教育課程上の指導形態
姉崎 弘
三重大学教育学部教授
・ちょっといい話 私の工夫
肢体不自由の児童生徒の学習意欲を高める教材づくり
鬼武 明子
山口県防府総合支援学校教諭
・学校保健と医療的ケアの今
東京都新宿区立新宿養護学校における食物アレルギー対応
宮崎 雅子
東京都新宿区立新宿養護学校栄養士
・特別支援教育の動向
第56回「全国肢体不自由特別支援学校PTA・校長会合同研究会(和歌山大会)」報告
佐藤 正一
全国肢体不自由特別支援学校
PTA連合会 事務局長
 
・読者の声
 
子供たちの笑顔を支える地域の輪
下方菜穂子
豊田市立豊田養護学校教諭

 「ただいまー。楽しかったよ。」と笑顔で教室に入って来る子。表情や身振りで充実した時間を過ごせたことを伝えてくれる子。居住地校交流から帰って来た児童の様子を見ると、友達との関わりの中で貴重な経験をしてきたことが伝わってきます。
  本校は、人口約42万人の街である愛知県豊田市内唯一の特別支援学校(肢体不自由)で、平成25年度に20周年を迎えました。本校の交流及び共同学習は、開校時から学校間交流や居住地校交流、地域交流を行ってきまし
た。
  私が所属する小学部では、全体の約6割の児童が年2〜3回、居住地校交流で小学校の授業に参加しています。交流を重ねていく中で「近所の友達が遊びに来て、学校の話を聞かせてくれます。」と、保護者からうれしい報告を受けることもあります。地域の方々の理解と協力があり、子供たちにとって楽しみな活動になっています。
  私は、24年度、特別支援教育コーディネーターとして地域支援に携わりました。関係機関が支える総合的なシステムの中で、本校に支援を求めるニーズは年々高くなり、センター的機能を果たすべき本校の役割の重要性を強く感じました。
  子供たちを支える地域の輪の中の一員として、子供たちが安心して笑顔で学校生活を送れるように本誌を指南書とし、職場の仲間とともに様々な障害や特性に応じた指導及び支援ができる専門性の向上を目指し、研鑽に努めていきたいです。


専門性の向上を目指して

秦 耕平
福岡県立福岡特別支援学校教諭

 本校は、平成23年度に、隣接する新光園分校との一体的整備によって、「福岡養護学校」から現在の名称となり、新たに開校しました。それに伴い、肢体不自由教育の専門性の更なる向上を目指し、校務分掌上に「専門性向上部門」が新設されました。私は、24年度からその専門性向上部門・研修部の主任を担当しており、日々、専門性の向上を目指して取り組んでいます。
  職員研修では、24年度、国立特別支援教育総合研究所の専門研究「肢体不自由のある子どもの教育における教員の専門性向上に関する研究」の研究成果を参考にしながら、3年間の専門性向上研修計画を策定しました。また、他の校務分掌の研修を含めて、より効果的な研修の内容及び評価の在り方を適宜検討しています。
  学校教育研究では、25年度から「表現する力」をテーマとして、授業実践を中心に研究を行っています。各教科、自立活動等、全13の研究グループを編成しており、研修部と研究グループの連携・調整を図りながら、研究の一体的な推進に努めているところです。
  私は、25年度、同研究所の専門研修「肢体不自由教育専修プログラム」に参加させていただきました。本研修を通して、研修主任として、更に視野を広げて、最新の情報に触れることの大切さを学びました。
  本誌の様々な実践や情報から学び、自身の指導を振り返るとともに、本校の専門性の向上につながるよう、活用していきたいと考えています。

 
・図書紹介
・トピックス
研究紹介/第38回 日本肢体不自由教育研究大会予告
 
■次号予告
■編集後記