センター通信より

ボランティア紹介

    音訳の余得
佐世保音声訳の会 H.Y.


 平成十年朗読奉仕員養成講座を受けた。介護退職したのだが、どこかで社会と繋がっていたかった。以来、良き先輩良き仲間に支えられてあっという間に充実した二十年が過ぎた。 本来、音訳は利用者の皆さんのための仕事であるが、数ヶ月もかけて本を読み込んでいく間に興味が深まり、思いもよらぬ世界が開けることがある。音訳にはそんな喜びもある。

 平成二四年「面白いほどよく分かる世界地図の読み方」世界情勢を読む会編を音訳した。
利用者さんから「地図を読んで欲しい」との要望があると先輩に言われ、受験用参考書売場からやっと見つけた。地図や図表の説明に四苦八苦したが、校正やデイジー編集の方々に助けられ一年半がかりで完成、届けることが出来た。おかげでアフリカや東欧、カリブ海諸国の名前も覚えた。オリンピックの入場行進などで国名が呼び上げられると懐かしくなる。

 昨年、音訳した本「メディアの崩壊」では、校正して下さった方々に大変お世話になった。 「音に気を付けるともっと聞き易くなる」と、まず指摘して頂いた。また「 」や引用部分の処理の仕方の諸方法、その他もろもろについても丁寧にご指摘とご助言を頂いた。 とかく内容に惹かれがちで、括り方やピッチには留意するのだが、呼吸音や口中音は聞き逃す傾向が元々あったのだ。年甲斐も無くと(もう、年なのよね!と)恥じ入りながら、この機に校正とデイジーの方々の時間と手間を惜しまぬご助言に深く感謝申し上げたい。

 今音訳しているのは『歴史の残像』瀬野精一郎著である。あまり好きではない歴史本。
びっしり書いてあって、五百ページ近い。
なかなか手強い。古今の人名・地名、見慣れぬ用語、古文書の写真や引用、複雑な家系図・・・・・。
私の理解力で正しく伝えきれるのか? ふだんの私ならまず手に取る本ではないが、引き受けたからにはと読み進めている。 内容はなかなか面白い。筆者は佐世保出身、1931年生まれの日本史学者である。  歴史上の事項を史料に基づいてのみ検証していく「史料主義の歴史学」という歴史研究のあり方を初めて知った。

 また研究に纏わるさまざまなエピソードは、いわゆる「研究者・学者の世界とその裏側」を覗かせてもらっているようで興味深かった。 最も印象深く読んだのは、「第1章 戦前・戦中の残像」「第2章 戦後の残像」である。 太平洋戦争終戦の夏、瀬野氏は旧制中学二年生であった。日常的に「お国のために死ね」「二十歳まで生きられると思うな」と言われていたという。そして、敗戦後の世の中の激変。 瀬野氏は「政治に拘わらず」と心を決め、貫いておられるとか。終戦時5歳だった私には思い当たることも有り、納得・共感できる事も多くある。利用者さんの反応は如何に?
退職後の二十年、もしこの音訳ボランティアに出会っていなっかたらどんな日々だったのだろうか。優しく厳しく育ててくださる先輩方に感謝。それぞれ優れた才能と技量を有し、困った時にはすぐ手を差し伸べて下さる仲間のみなさんに感謝。 ボランティア仲間は いつも周囲の人々に優しい。