「養成講座」にて 川村正明

 こんにちは。
 本日、要約筆記に興味を持ち講座へ参加の皆様と要約筆記会「すまいる」の皆様へ心より感謝申し上げます。 今、ご紹介いただきました川村です。

 皆様は、チャールズ・チャップリンという喜劇俳優をご存知でしょうか?
作品「ライム・ライト」があります。チャップリン最後の映画ですが、良い言葉があります。

 ・・足を痛め、生きていく勇気をなくしたバレリーナが自殺しようとしたのを助けられた時、チャップリンに聞きました。
「どうしたら生きていけるの?」と。
「人生なんて簡単さ。希望と勇気とサムマネー、この3つがあれば生きていけるんだ」と答えました。私はこの映画が好きでよく見ていました。

 私は聞こえがおかしいと感じ始めたときに、希望も夢も考えることができなくなりました。
 このまま聞こえなくなるなら、仕事だけはしっかりしていこうと決意するものの、実際の現場では聞こえないことで、トラブルになったり、心の病気になったりで安定することがなく、いろんな職を転々としてきました。
 自分自身ではどうしようもない“聞こえ”のことで仕事を辞めたり、辞めさせられたりで、収入もなく「生きる意味があるの?」「聞こえない人は仕事にも就けないの?」など本当に投げやりな気持ちになり人生をあきらめかけてしまいました。

 その頃、友人に会っても「頑張れ!」とは言うけど、その意味さえ分からなくなり、「何をどう頑張るの?」と聞き返したことがありました。
 仕事が、できる・できない、ということよりコミュニケーションがとれないということで、なかなか面接さえしてもらえませんでした。
 聞こえに障害があると仕事にも就けないのか・・・。
どうにもならない。

 そんな時「要約筆記」と出会いました。
「音声を文字に変換して伝える」と聞き、「そんな人たちが本当にいるの?」と思いました。
 気持ちが沈んでいた時でしたから、関心はあまりありませんでした。
でも、「無いよりはあった方が良い」と職安で勧められ、久しぶりに面接会場に行きました。
 面接はすごく大事ですが、その時は「どんな人が来て、どんな事をするのか?」と面接のことより要約筆記のことが心配でした。
いざ面接が始まると、面接官の話し声を文字で書いてくれているんです。
驚きました!
 この方法なら、会話ができる、面接は大丈夫と自信を持たせていただいたことに、ある意味、目が覚めるような感覚を覚えました。

 その後も面接時には同行していただき、“聞こえ”の不安なく受け答えができ、就職も決めることができました。
 何より、要約筆記の支援を受けることで、きちんとした受け答えができたことは、大きな喜びと自信を得た経験でした。

 先ほどのチャップリンの言葉を思い出してください。「希望と勇気とサムマネーの3つ」を。
 自分一人ではできないこと、考えもしなかったこと。 私は要約筆記と出会い支援を受けながら夢を新たに抱くようになりました。
「人の役に立てるようになりたい」と。
 難聴者のために活動している要約筆記者の力になりたい、そして要約筆記者の認知度も高めていきたい。
 漠然とですが、先ず、できることからやってみようと行動する意欲も持ち始めました。

 「サムマネー」は給料のことですね。社会人として仕事を持ちその対価を得る。多くは稼げませんが、今、満足しています。楽しく生きていける自信も持ち始めています。勿論、要約筆記者の支援は必要です。
 このような支援を受けることで、難聴者は希望を持つことができます。
また、生きるための勇気と自信を持つこともできます。

 受講者のみなさん、最後まで学習を続け、聴覚障害を理解していただき、取得した技術を必要としている人々のために活かして忘れないで欲しいです。
 当事者の私にできることはお手伝いしますので、一緒に頑張りましょう。

( 会報誌 『心の耳で聴きたい』 第36号 8−9頁 より 転載 )

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