2004年10月11日発行(第2・4月曜日発行)

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聴能情報誌  みみだより  第3巻  第482号  通巻567号


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【目次】第482号

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中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育特別委員会委員名簿

 委員長   高倉 翔   明海大学長
 委員長代理 宮崎 英憲  東洋大学文学部教授
 委員    阿部 貴明  社団法人東京都小学校PTA協議会会長
       市川 宏伸  東京都立梅ヶ丘病院長
       伊東 公章  世田谷区立駒沢小学校長
       伊藤美奈子  慶應義塾大学教職課程センター助教授
       今井 英弥  船橋市立旭中学校教諭
       大南 英明  帝京大学文学部教授
       川邊 重彦  武蔵野市教育委員会教育長
       斎藤 佐和  筑波大学教授
       佐藤 昇   豊島区立千川中学校長
       瀬戸ひとみ  神奈川県立茅ヶ崎養護学校教諭
       中島 幸男  福岡県芦屋町教育委員会教育長
       西嶋美那子  日本アイ・ビー・エム人事サービス株式会社
       藤田 直子  茨城県守谷市立松前台小学校教諭
       藤原 治   社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会理事長
       宮田 広善  姫路市総合福祉通園センター所長
       横山 洋吉  東京都教育委員会教育長
                    (役職は、平成16年3月18日現在)

【目次】


中央教育審議会 初等中等教育分科会 特別支援教育特別委員会は,『特別支援教育を推進するための制度の在り方について」(中間報告)素案』を9月13日に公表した。今回は,その概要と,この素案がまとまる経緯となった特別支援教育特別委員会の議事を紹介する。

なお,委員会(第1回),委員会(第2回)の要旨は,「みみだより477号7ページ」から紹介している。併せて,再度,ご一読願いたい。



【はじめに】(略)

【第1章 障害のある児童生徒等に対する教育の現状と課題】(略)

【第2章 特別支援教育の理念と基本的な考え方】
これまでの「特殊教育」では、障害の種類や程度に応じて盲・聾・養護学校や特殊学級といった特別な場で指導を行うことにより、手厚くきめ細かい教育を行うことに重点が置かれてきた。
「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、一人ひとりの教育的を把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導や必要な支援を行うものである。今後、特別支援教育の理念と基本的考え方の一層の普及・定着を図るため、関係法令への位置付けを検討する必要がある。

【第3章 盲・聾・養護学校制度の見直しについて】
1.障害種別を超えた学校制度について
(1)基本的な考え方
障害の重度・重複化への対応が喫緊の課題。このため、現在の盲・聾・養護学校を、障害種別を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)とすることが適当である。
(2)特別支援学校(仮称)の内容
@特別支援学校(仮称)は基本的には現在の盲・聾・養護学校の対象になっている5種類の障害及びこれらの重複障害に対応した教育を行う。法令上の組織として「教育部門」を設けるのではなく、そのような組織を設けるかどうかを含め、設置者等に委ねることが適当。LD・ADHD・高機能自閉症等の児童 生徒に対する適切な指導や必要な支援の在り方についても、先導的役割を果たすことが期待される。
A特別支援学校(仮称)の配置については、地域の事情に応じて判断されることになるが、次のような視点についても十分考慮される必要がある。
ア.複数の障害に対応できるようにするべきとの視点
イ.地域の身近な場で教育を受けられるようにするべきとの視点
ウ.障害の特性に応じて同一障害の幼児児童生徒による一定規模の集団が学校教育の中で確保される必要があるとの視点
エ.各障害種別ごとの専門性が確保されるようにする視点
オ.センター的機能が効果的に発揮されるようにする視点

2.特別支援教育のセンター的機能について
(1)基本的な考え方
地域で特別支援教育を推進するうえで、特別支援学校(仮称)は中核的な役割を担うことが期待される。特に、小中学校に在籍する障害のある児童生徒のニーズに応じた適切な教育を提供していくため、高い専門性を生かしながら地域の小中学校を積極的に支援していくことが求められる。
(2)センター的機能の具体的内容(略)
(3)センター的機能が有効に発揮されるための体制整備(略)

【第4章 小・中学校における制度的見直しについて】
1.基本的な考え方
小・中学校の通常学級に在籍しているLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援が喫緊の課題になっている。特殊学級に在籍する児童生徒や通級による指導の対象となっている児童生徒も、障害の状態が多様化している。今後は、障害のない児童生徒との交流及び共同学習の推進を含め、学校全体の課題として取り組んでいくことが求められる。
小・中学校における特別支援教育の推進に関して、通常の学級も含めた教育活動全体での適切な推進が図られるよう、関係法令等における位置付けを検討するとともに、教育委員会や学校における推進体制の整備を促進することが必要である。

2.LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する指導及び支援の必要性
LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒の状態像は様々であり、周囲の環境によって変化することも多いため、個別的かつ弾力的な指導及び支援が必要となる。このため、指導及び支援の形態については、通常の学級における教員の適切な配慮、TTの活用及び授業時間外における個別指導を基本としつつ、必要に応じて、通常の学級を離れた特別の場での指導及び支援を受けられるようにすることが有効。

3.特殊学級の見直し
@特別支援教室(仮称)について
特別支援教室(仮称)は、通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒を含め、障害のある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた柔軟かつ弾力的な対応を可能とすることを目的として構想され、小・中学校における特別支援教育を推進するうえで有効なシステム。
一方、現行の特殊学級等を廃止して特別支援教室(仮称)に転換することに関しては、固定式の学級にも障害の種類や程度によっては一定のメリットがあるとの指摘や、特殊学級に在籍する児童生徒の保護者の中に現行制度の維持を望む声も見られた。また、「教室」を制度化するに際しては、「学級」編制を基本とする公立学校の教職員配置システムとの関連をさらに検討することが必要である。特別支援教室(仮称)の構想が目指すものは各学校に、障害のある児 童生徒の実態に応じて特別支援教育を担当する教員が柔軟に配置されるとともに、LD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒も含め、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍しながら特別の場で適切な指導及び必要な支援を受けることができるような弾力的システムを構築することであると考えられる。
以上を踏まえ、「特別支援教室(仮称)」については引き続き、具体的な制度内容に関する検討を進めるとともに、当面、研究開発学校制度の活用などによる実践的研究を行い、その成果を検証する必要がある。
A現行制度の弾力的運用について
特殊学級等については、「特別支援教室(仮称)」の検討と併せて、以下のような弾力的運用についても検討を進める必要がある。
ア.特殊学級における交流及び共同学習の推進と担当教員の活用
イ.通級による指導の見直し
ウ.いわゆる「巡回による指導」について

【第5章 教員免許制度の見直しについて】
平成14年2月の本審議会の答申「今後の教員免許制度の在り方について」では、障害のある児童生徒等の重度・重複化等の課題に対応するため、「現在、盲・聾・養護学校の別となっている特殊教育諸学校免許状の総合化については、早急に実現すべき課題として、教具.養成部会に専門委員会を設けて具体的な検討を進める」旨が示された。
これを踏まえ、教員養成部会に「特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループ」が設置され、盲・聾・養護学校教員の免許制度について、障害の種類に対応した専門性を確保しつつ,多様な障害に対応することが可能となることを目指し、免許制度の改善について検討が行われてきた。
本審議会としては、協力者会議最終報告を踏まえた制度的見直しに関連する以下の事項も含め、引き続き教員養成部会において総合的な審議を行い、その結果を答申に反映することが適当である。
@特別支援学校(仮称)の教員免許制度について
特別支援学校(仮称)の教員には、障害の種類に応じた優れた専門性が求められる一方、多様な児童生徒の受入れやセンター的機能の発揮により、様々な障害に関する幅広く基礎的な知識も必要となる。こうした資質能力を確保するため特別支援学校(仮称)の教員免許制度について検討する必要がある。
A小・中学校の特別支援教育に携わる教員の免許制度について
現行の教員免許制度においては、特殊学級や通級による指導を担当する教員には特殊教育免許状の保有は義務付けられていないが、今後、特別支援教育を担当する教員については、特別支援教育に関する高い専門性と幅広い資質能力が求められるようになることから、その在り方について検討する必要がある。

【第六章 関連する諸課題について】(略)

【目次】



中央教育審議会初等中等教育分科会(第20回)の論議で誕生した「特別支援教育特別委員会」の審議が始まっている(詳しくは「みみだより472号6ページ参照)。今回は,第3回以降の議事を紹介する。全文を載せられないので,聴覚障害関連の部分を主に抜粋し,順序なども変えてある。お時間のある方は,ぜひ全文を読んでいただきたい。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/index.htm#gijiroku
なお,資料も公開されている




【目次】


中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育特別委員会(第3回)議事要旨(抄)
1.日時 平成16年4月28日(水曜日)10時〜13時
2.場所: グランドアーク半蔵門 3階「光」
3.議題
(1) 特別支援教育の在り方について関係団体からのヒアリング
(2)その他
4. 配付資料
資料1−1  ナショナルセンターとしての取り組み
資料1−2  独立行政法人国立特殊教育総合研究所の組織・構成図
資料1−3  特別支援教育コーディネーター指導者養成研修への取り組みについて
資料1−4  特別支援教育コーディネーター養成研修のために
資料2  全日本中学校長会提出資料
資料3  特別支援教育の制度化に関する意見や要望(各都道府県・指定都市教育委員会)
資料4−1  特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループについて
資料4−2  特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループ委員名簿

5. 出席者 ( 委員)
高倉委員(委員長)、宮ア委員(委員長代理)、今井委員、西嶋委員、阿部委員、市川委員、伊東委員、伊藤委員、大南委員、川邊委員、斎藤委員、佐藤委員、瀬戸委員、中島委員、藤田委員、藤原委員、宮田委員
(事務局)
金森初等中等教育局担当審議官、竹下教職員課長、山下特別支援教育課長、内藤特別支援教育企画官、宍戸視学官、細村特殊教育総合研究所理事長、中山特殊教育総合研究所理事、松村教育研修情報部総括主任研究官、その他関係官

6. 概要
○:意見発表者、●:委員
(1) 特別支援教育の在り方について関係団体からの意見聴取

独立行政法人国立特殊教育総合研究所(以下、特総研)より、特に特別支援教育コーディネーターに関する意見を聴取。
●今回のカリキュラム案を見ると、盲・聾・養護学校のコーディネーターに対しても、新しく対象になる子どもたちのことを理解してほしいというところにかなりウエートが置かれている印象がある。特別支援教育というのはやはり新しい対象の子どもたちが中心になるのではないか、というイメージを助長するのではないかという心配がある。
盲・聾・養護学校の特別支援教育コーディネーターの役割としては、特別支援教育の中で、障害の重い、支援のたくさん必要な子どもたちの乳幼児期から学校卒業後までの一貫した相談支援体制をつくる仕事が重要であり、医療、福祉、労働機関との連携などの内容もカリキュラムに入ってくるべきだと思う。
また、通常の学校の中には、新しく対象になるお子さんのほかに、認定就学で、障害の重い方たちも在籍している現実がある。これを考えると、盲・聾・養護学校のコーディネーターと同じようなカリキュラムも加えていくべきではないかと考える。
さらに、もともと特別支援教育コーディネーターがどのような役割をすべきかという、もう少し広い立場からの講義などがあるべき。
○コーディネーターに必要な資質はたくさんある。また、盲・聾・養護学校と、小・中学校のコーディネーターはやはりそれぞれ違うという認識もあったかと思う。

全日本中学校長会
●コーディネーターとしては、教頭や主任や養護教諭等ではなくと書いてあるが、例えば全く教育の外の人がなった方がいいという考えもあるか。
○今の学校を考えたとき、例えば教頭や、教務主任、学年主任、養護教諭に重ねて仕事をしてもらうのは、現状では非常に困難。
別に教員でなければいけないとか、教育以外の方のほうがいいということではない。コーディネーターは学校のシステムの中で非常に重要な役割を果たすことになると思うので、当然、管理職的な資質もないとできないと思っている。校内委員会、対外的な対応、本人の相談など、役割は非常に多様になると思うが、そういう意味での専門家である必要があると考えている。


事務局より、都道府県、指定都市からの意見及び特殊免許総合化に関するワーキンググループについて説明
●市町村教育委員会として特別支援教育を推進していくために幾つか課題を感じている。
第一は、特別支援教育の具体的な方向性をいかに早く周知させるかということ。そこが、まだまだ足りない。
第二は、教員の資質をどう高めていくかということ。そのために、研修をどう組んでいくか。あわせて、一般の教員に特別支援教育についてしっかり理解させる必要がある。
第三は、障害のある子どもと障害のない子どもの保護者の意識改革。同じ学校に共生していく中での保護者の理解が非常に重要である。
第四は、障害者が、地域の学校で学び、生活していくことへの地域の意識改革。これには町長部局も含めて取り組む必要がある。
現在、特殊学級を担当している教員の質を高めていくことにより、障害のある児童生徒の保護者の理解も得られ、地域の方々にも、障害のない児童生徒の保護者にも理解を得やすくなるという思いがある。
市町村合併が落ち着いてから特別支援教育に取り組むべきとの意見があるが、合併については、総論賛成、各論反対みたいなところがあり、なかなか進みそうにないのが実態である。一方、LD、ADHD等の子どもたちについては、約6%いるというデータが出ており、合併など待っていられない。早急に取り組むべきだと思う。

●養護学校の特別支援教育コーディネーターと小・中学校のコーディネーターの任務の違いについて、研修会を受講された人たちが、どんなイメージを持っていたかということをお聞きしたい。
○受講者それぞれは、盲・聾・養護学校、小・中学校のコーディネーターの役割の違いということはある程度は意識していたと思う。
○研修会の様子では、盲・聾・養護学校と小・中学校のコーディネーターの違いが、まだまだはっきりしない様子であったと思う。
●特別支援教育の現状の中で、盲・聾・養護学校に在籍する児童生徒は、平成2年を境に増加の傾向にある。特に知的障害養護学校は、どこも児童生徒が増え、学級も足りなくなっている。保護者も適切な教育の場を求めるようになってきているということだと思う。
特別支援教育の中で課題とされる軽度発達障害の子どもたちについては、どういう教育をするかということが一番のポイントである。そういう点で、盲・聾・養護学校、特殊学級、さらには小・中学校と連携をし、新しい教育の仕組みをつくるというのが今回の「特別支援教育の在り方」である。

【目次】


中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育特別委員会(第4回)議事要旨(抄)

1.日時  平成16年5月11日(火曜日)14時〜17時15分
2.場所  都市センターホテル 5階 「オリオン」
3.議題
(1) 特別支援教育の在り方について関係団体からのヒアリング
(2) その他
4.出席者 ( 委員)
高倉委員(委員長)、宮崎委員(委員長代理)、今井委員、阿部委員、市川委員、大南委員、川邊委員、佐藤委員、瀬戸委員、中島委員、藤田委員、藤原委員
(事務局)
結城文部科学審議官、金森初等中等教育局担当審議官、辰野初等中等教育企画課長、宍戸視学官、山下特別支援教育課長、内藤特別支援教育企画官、細村国立特殊教育総合研究所理事長、中山国立特殊教育総合研究所理事、その他関係官

6. 概要 (1) 特別支援教育の在り方について関係団体からの意見聴取
意見聴取の後、各団体について質疑応答。主な発言は以下のとおり。
○:意見発表者、●:委員

日本盲人会連合
様々な障害のある子どもが同じ学校で学ぶことについてどのようにお考えなのか。例えば、字が読めない子どもと字が読める子どもを同じ机に並べて、同じ教材で学習をするというようなことについてはどうか。
私は、障害が違う者を集めて教育するということの難しさということを痛切に感じている。現実の問題として、障害の違う方々とのコミュニケーションについては大きなギャップがある。
したがって、さまざまな障害のある子どもを統合した教育がどういう形で行われるのかが気がかりでである。よほど優れた教育技術、専門性がない限りは不可能ではないかと考えている。
○目の悪い者と健常者とが一緒に学習することは、条件さえ整えば非常に優れた結果を招くのではないかと考えている。
●条件が整えばというのは、具体的にはどんなことか。
○まず、障害は障害として、人間を人間として認めるという周りの理解があるということ。
さらに、障害のある者の障害をどう克服させるかの手だて、例えば全盲の者であれば点字の指導とか、歩行の指導がそれなりにきちんと行われるのであればやっていけると考えている。ただ、重複障害のお子さんについては、重複した障害を抱えたまま普通学級に入っていくことは、ちょっと無理があるのかもしれない。例えばこの子たちの指導には、視覚障害の専門の技術を持ち、さらに知的障害の教育技術を持った方が必要だということになるのではと考えている。
いろいろな障害のある子どもを1ヵ所に集めて教育する場合は、本当に一人一人の障害のある子どもに合った教育が必要である。ただ1ヵ所に集めただけという教育では、今よりもはるかに質が劣ることになると考える。

社団法人全国肢体不自由児・者父母の会連合会、社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会及びNPO法人難病のこども支援全国ネットワーク(略)

財団法人全日本ろうあ連盟
●口話、リップリーディングは今あまり使われていないのか。
○私がろう学校にいたころは、口話が中心だった。今は、障害者や障害に対する理解も広がっており、聾学校でも手話が見直されて、幼稚部から手話を使う学校も増えている。そのようなときに特別支援教育との関係の中で聾学校の統廃合が進んで、ほかの障害のある子どもと一緒になることを私たちは非常に心配している。
ほかの障害のある子どもと一緒になることについて、同じ教室で机を並べて障害の違う子ども達が学習をする、そういうことを考えているか。
また、特殊教育総合免許を仮につくるとすれば、聾教育としてはどういうことを絶対にその中に盛り込んでほしいのか考えを伺いたい。
統合によって聾児とほかの障害のある子どもが同じ教室で机を並べて勉強するということは考えにくいのではないかと思う。やはり聾学校の機能は統合化の中でも残してほしい。ただ、その場合でも、集団的な交流とか、障害児同士の活動の中で、聞こえない子どもたちとほかの障害を持っている子どもたちとの共通のコミュニケーションができないという問題が出てくる。そういう意味で、もし統合化される場合でも、それはほかの障害のある子どもと一緒に学ぶのではなく、普通の小・中学校の中で聾学校の機能というものを入れ込むほうが適当ではないかと思う。
特殊教育免許の問題だが、教員免許の中で聾教育に携わる者の絶対的な条件として、聞こえない子どもときちんとコミュニケーションができることを入れるべき。手話を言語として認めて教員免許の中で位置づけていくということを願っている。
最近、聾学校で学んでいる児童生徒の数は少ないとのことだが、聾学校に在籍していない聴覚障害教育の対象になる児童生徒の数はもっと多いのか。
通常の学校で勉強している聴覚障害の子どもが多くなっている。私が聾学校で勉強していたころは、県内の聾学校の児童生徒数が、300名近くいた。その時代と現在とは非常に違っている。
●聾学校以外で勉強している子どもたちは、現在、十分な手話教育や、コミュニケーション能力の教育がなされているのか。
○そういった子どもたちには、ほとんど手話教育は行われない。手話も配慮されていないし、要約筆記などもほとんどない。聴覚障害児を持つ親の努力とか、先生たちの努力にゆだねられている。
聞こえない子どもにとっては通常の学校では情報保障されない。でも、学力は求めたいから通常の学校に行く。一方、手話で学びたいと思う子どもは、聾学校に入る。でも、聾学校でも手話の保障はない。聾学校で手話で教え、聾児の選択できる幅を広げるということは大切ではないか。学力だけを求めるならば、通常の学校において、情報保障をする方法も考えられるが、基本的には、聾学校できちんと学力をつけられる条件をつくるのが一番いいと思う。
以前は、聾児を持つ親の中には、聾学校が障害児学校なので、親としてその子どもを障害児と認めたくないために聾学校に子どもを入れたくないと言われる方もいた。今はそのような差別的な見方はなくなってきているが、普通の小・中学校の学力と聾学校の学力の差があり過ぎて、聾学校で学ばせることは親として心配なので、普通の学校に入れたいという気持ちもある。けれども、今の普通学校の中で、聴覚障害者がひとり入っても、他の児童の勉強についていけず、高校に入る時点になって、また聾学校に戻ってくるというような例もある。特別支援教育の中で、普通の学校に入っている聴覚障害のある子どもたちの教育的な保障がどうなのかという問題まで広げて検討する必要があるのではないかと思う。
障害別の学校を統合するとした場合、聞こえない子どもと見えない子どもでは、コミュニケーションがなりたたない。こういう状況があるのに、障害種別にかからわず一緒にするのは非常に難しいと思う。

全国難聴児をもつ親の会及び全国言語障害児をもつ親の会
(全国難聴児をもつ親の会:資料から離れて以下の要旨の意見を発表)
聴覚障害のある子どもにとって、集団で教育を受けることが不可欠。そのために、固定制の難聴学校の制度はぜひ残してほしい。
それから、通級については、個別の指導ということではなく、集団で通級指導を受けることができるようにしてほしい。
また、集団の力をうまく発揮して、子どもたちの能力を開発していく指導者が重要になってくる。
総合免許状については、どちらかというと賛成の立場。専門的な知識を薄く広く持つことが大切だが、総合免許状の上に聾免許を取得した先生方が聾学校あるいは難聴学級を担任するということで、しっかりと指導の底上げをしてもらいたい。
特別支援教室には、いろいろな形態のものがあっていいと思う。しかもそれは、国が考えるのではなくて市町村が考える、あるいは都道府県がその方向を出して考えていけばいいと思うが、どうか。
○それぞれの地域でやり方が違う、それぞれの学校でも違う。さらに、担当の先生の考え方、校長先生の考え方も違うと思うが、願わくば、あまり地域や学校間のレベルの格差が広がらないようにしてほしい。公教育という意味で最低限度は確保するということを堅持してほしいと思う。また、いろいろな障害のある子どもがいる中で、全部の障害について指導ができる先生はいないと思う。
従って、理想を言えば、教室担当者よりさらに高度な専門性が必要な場合は教育委員会等から先生を派遣するとか、あるいはそのときにだけ子どもが相談に行くとかという、柔軟性がなければ、この教育はとても進展していかないと思う。

難聴の通級指導教室について、現在、個別指導であるのを、今後、集団で教育をする方向性をぜひ検討してほしいとのことだが、現在、地方では聾学校の子どもたちが大変少なくなっており、難聴学級でも大変少ない状況であるが、どういった対応をすべきかお考えを伺いたい。

過疎地の通級や固定制の難聴学級において、低学年の発音とか、聴能の訓練とかという、自立活動的なことでは1対1の指導もいいとは思うが、学習となると、集団で勉強するという時間がないと、自分がどう思っているかとか、人の意見を聞いてどうするかというようなことが全く育たない。聴覚障害については、個別ではなくて集団が必要だということを考えていただきたい。
例えば、校長の校内人事で、全く専門性のない先生が難聴学級や言語障害の指導をする例は多いのか。
また、通級指導は、個別に支援するという面と、何人かが集まってお互いにコミュニケートするという機会もつくりながら指導するという面、個別と集団をあわせてやっているのが、これが通常の在り方かなと思っていた。しかし、お話によると、どうも一人一人の指導になってしまっているようだ。全国的な状況なのか。
自分の経験では、やはり大体60%ぐらいの教員が経験年数3年未満というところが全国的にかなり多い。業務命令で担当をさせられるので、その際に3年たったらまた通常学級の担任にするという約束を交わすということもある。
もう1点については、障害種別にもよるが、言語障害については、徹底した個別指導も必要であるし、やはり集団指導もどうしても必要である。
集団で通じ合う方法で教育を受けた経験があまりないのは大きな問題だと思っている。
お互いが今何を言っているのかわかる方法で育っていないと、大人になってから、手話を覚えても、他人の話を聞くという習慣が身に付いていない。
特殊教育免許総合化について皆さんの意見を伺ったところ、トータルとしては賛成だが、それに加えて、現在のような聾免許のようなものを残し、専門性を高める必要があるのではないかという意見。それに対し、総合免許状というよりは、むしろ各種別ごとの免許状を重複して取得する方がよいという意見。さらに、特殊学級についても免許状をつくったらどうかという意見と、かなり際立った違いのある御提言をいただいた。

社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会
●特殊学級がなくなるということについてどんな考えをお持ちか。また、特別支援教室がどういう教室であったらいいと考えているのか。
○結局、そのそれぞれが持っている個人のニーズに対する特別支援教室があればいいのではないかと思う。
本当は、何か固定的にあったほうが、職員の配置や財政面で安心感がある。しかし、これからはハードよりもソフトが大事な時代になってくるので、その点は説明責任をきっちり果たしてもらえれば、固執する必要はないと思う。
障害児教育において、私は啓発が非常に大事だと思う。地域に対する啓発とともに、普通学校の場合は、一般教員や一般の保護者の理解、これが進まなかったら、幾ら特別支援教育ということで通常学級の中に入れても、孤立してしまうと思う。

社団法人日本自閉症協会、NPO法人えじそんくらぶ、全国LD親の会(略)

【目次】


中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育特別委員会(第5回)議事要旨(抄)

1.日時: 平成16年5月17日(月曜日)11時30分〜14時30分
2.場所: 都市センターホテル 5階「オリオン」
3.議題
(1) 特別支援教育の在り方について関係団体からのヒアリング
(2) その他
4. 出席者 (委員)
高倉委員(委員長)、宮崎委員(委員長代理)、西嶋委員、市川委員、伊東委員、斎藤委員、瀬戸委員、中島委員、藤田委員、藤原委員、宮田委員
(事務局)
辰野初等中等教育企画課長、山下特別支援教育課長、竹下教職員課長内藤特別支援教育企画官、宍戸視学官、細村国立特殊教育総合研究所理事長、中山国立特殊教育総合研究所理事、その他関係官

6・ 概要 (1) 特別支援教育の在り方について関係団体からの意見聴取
意見聴取の後、各団体について質疑応答。主な発言は以下のとおり。

○:意見発表者、●:委員

京都府教育委員会
○コーディネーターの養成研修については、各小・中学校は1名、盲・聾・養護学校は2名以内で各校長から推薦をいただき、研修を実施した。
●コーディネーターの指名については、モデル事業の段階では、校務分掌的な指名というのが主流をなすと思うが、将来的には、コーディネーターを指名するというような校務分掌的な人的配置でいいのか又は免許状を持った専門家を養成した方がよいのか。
○まずは、校務分掌上の位置づけをしっかりする必要がある。さらに資格が必要か否かについては、十分に考える必要がある。コーディネーターには一定の専門性が求められるので、スキルアップを含め、制度としてどのように整えていくかは今後の検討課題である考えている。
●3点お聞きしたい。まず、センターの役目を果たしている通級指導教室の実情が全国から報告されている。こうした通級指導教室と特殊学級との連携は今後どのようにすべきと考えているのか。2点目は、京都市では既に、病弱、肢体不自由及び知的障害の一体型の養護学校が動き始めている、とのことだが、一方、盲・聾学校については、市の設置校がない。その点で、盲・聾学校と養護学校の連携を今後どのように考えているのか。
○まず1点目については、京都府では、通級指導教室を各市町村のセンター的な役割を果たす形で設置しており、その高い専門性を生かし、特殊学級の先生方と連携しながら教育相談を行い、アセスメント等の支援を通じて小・中学校での教育内容を支援する役割を果たしている。今後、今の形を発展させることができると思っているが、どのように発展させたらいいか、ということについては今後の課題である。
2点目の盲・聾・養護学校制度の一本化については、盲・聾学校の教育的機能が一律に各特別支援学校に分散されるのでは、障害の出現率、集団の編成、専門性の蓄積という点を考えるとよくないのではという意見が、特に盲・聾学校のほうから強く聞かれる。地域密着型の特別支援学校に視覚障害や聴覚障害部門を設けることができるようにすると同様に、視覚障害や聴覚障害に特化した特別支援学校も残せるようにすればよいのではないか。


長野県教育委員会及び長野市教育委員会
●養護学校については、総合化を考えられているが、盲・聾学校については、専門性の見地から今までの学校にセンター機能を充実させるという認識か。
○長野県の盲・聾学校は、北と南に松本と長野と一つずつしかなく、子どもによっては片道2時間以上もかけて学校に通っている。今年から立ち上げた自律教育の長期的ビジョンづくりの中で、盲・聾・養護学校の総合化について今後とも考えていきたい。
●特殊教育の免許制度の問題についてはどうか。
長野県の場合、小・中学校から自律学級(特殊学級)、又は盲・聾学校へ教員が異動するというのは、かなり頻繁に行われている。その為、特殊教育の免許を総合免許化するというのはとてもありがたい。一方で、特に盲・聾学校の先生方から、教員の専門性が薄くなってしまうのではないかという心配を聞いている。
●2点お聞きしたい。まずは、長野県は広いということから、特別支援教育について全県的に一つのやり方でできると判断しているのかどうか。2点目は専門家チームを編成するに当たって苦労していることはあるのかお聞きしたい
○1点目については、長野市と松本市には教育的な資源がかなりあるが、それ以外の市町村では、規模が小さく、教育資源がなかなかない。その為、長野市、松本市とその他の地域とでは、やり方を大きく変えていかざるを得ないと考えている。
長野県では「重層的な自律教育圏」というのを考えており、大筋では盲・聾学校と病弱・肢体の養護学校が県内北半分、南半分に1校ずつあり、さらに、知的障害の養護学校は全県にほぼ均等にあるため、ここの養護学校が中心になっていくというような、そういう大きなシステムを考えている。また、教育的な資源という意味で言うと、大きな町とそれ以外のところで地域に合わせて行っていくという方向になると感じている。

長形県教育委員会及び寒河江市教育委員会(略)

長崎県教育委員会、長崎市教育委員会
●要望のなかで教員免許に関するものがあるが、特殊教育免許状を総合化することについてはどう考えるか。平成10年に小・中の教員免許取得の際にも、障害のある児童生徒についての学習をするように改正したが、これを独立した必修科目とすべきという意見についてはどうか。
さらに、障害児教育の指導の専門性の向上について言及があるが、現在、免許取得の際に特殊教育の内容については独立した科目として必修化されていないが、独立した科目を必修科目とし、その中で学習障害児についての指導の専門性を高めるようなカリキュラムを組むという意見なのか。また、例えば専修免許状の裏書きに学習障害児の指導について勉強したことをも書き込むというようなことについての意見はどうか。
○大学のカリキュラムというところまで踏み込んだことは想定していない。できるだけ多くの学生に学校現場を知ってもらう。特殊学級も知ってもらい、普通学級も十分知ってもらう、そういった意味での連携を深めていくべきという趣旨である。
●長崎市の発表のなかで「通級指導教室の今後」とあり、「言語、聴覚、情緒障害の通級指導教室があるが、市独自に存続することを選択肢として残してよいものか」とあるが、これについて県教育委員会のお考えをお聞きしたい。
県教育委員会としては、現在の固定の特殊学級はできればそのまま存続させ、そのほかにリソースルームとしての特別支援教室というようなものを設置していただきたい。その場合には、通級指導教室の子どもたちもリソースルームのほうに通えるようになるのではないかと考えている。

全国公立学校難聴・言語障害教育研究会、東京都公立学校難聴・言語障害研究協議会の試算によると、小規模校、中規模校、大規模校の全てにリソースルームを設置して通級指導を行うと現在の3倍の指導者が必要とされている。それだけの人的、財政的支援が保障されるのかどうか。その一方で通級指導教室に対し、保護者や先生方からニーズがあるのかどうかお聞きしたい。
長崎市内の通級指導教室においては、年度当初の開級式以後も、各学校又は保護者より言葉の教室又は聞こえの教室に通わせたいという要請が現実にある。また、一度入級すると3年ぐらいは引き続き入れてほしいという保護者の要望もあり、やはり切実に考えている保護者の方にとっては大切な制度なのではないかと思っている。

【目次】



提出資料

特別支援教育・学校構想についての意見
財団法人 全日本ろうあ連盟

ろう児の教育的ニーズ
ろう児教育に関しては、日常的な場面や教育における児童同士、あるいは教師との意思疎通を図るコミュニケーション言語(主に手話)と教科指導を受けるために必要な教育言語(手話・口話等)の確立と、それらの明確な位置付けが求められる。
個々の児童の障害の特性を考慮することが望ましいが,基本は,視覚によるコミュニケーションを主とするのが自然であり、日常的に使用するコミュニケーション手段が手話である場合は、手話を教育言語として位置付けるべきである。

特別支援教育コーディネーターに求められる資質
ろう児教育には,「聴覚障害の特性」の把握が必須であり、特に手話については言語学的な素養も含めて、学校及び教師に対しての適切な指導を行うことが求められる。なお,手話には,手話通訳士の資格を条件とするなどレベルの高い手話技術を考慮するべき。

特殊教育教諭免許の統合化について
現在、ろう学校の教師の手話に関する知識及び技術的なレベルは,ろう児のニーズに対応可能なレベルではない。免許の統合化によって、その専門性の更なる低下が懸念される。
従って、統合免許については,ろう教育に限定した専門的な免許を残す必要がある。その場合,現在の「ろう免許」を手話に関するエキスパートを含有したレベルとする。ろう教育(手話を含む)に熟達した教師についてはマスターティーチャー制度を設け、管理職レベルの扱いとし、全国のろう学校への移動、配置を可能にすることが望ましい。
養成レベルでは,大学における教諭養成課程、特にろう教育に携わろうとする学生に、手話の知識及び技術の課程を充実した上での養成を行なう必要がある。特に日本語(国語)の教師については、児童のニーズに沿った教育を行う必要があることから手話通訳士の資格、あるいは同等の技術、知識を有することが求められる。
また、ろう児の教育を行なう場合、聴覚障害の特性を充分に理解し得る同じ聴覚障害教師によって行なうことが好ましいので都道府県教育委員会においては、特別枠を設けるなど、聴覚障害をもつ教師の選考に充分な配慮を行なう必要がある。

ろう教育を担当する教師について
口話教育を絶対視する教育によって、大多数の教師が,音声言語を理解させることに固執し,ろう児との自然なコミュニケーションを図る努力すら怠ってきたと言える。ろう学校という聴覚障害児専門の学校に教師として在籍しながら手話すら出来ず、児童とのコミュニケーションや発達に対する自己研鑽の不十分な教師が存在するためにろう学校の専門性を高められない結果となっていると指摘できる。
ろう教育に携わる教師に対しては,手話や聴覚障害問題に関する研修を継続的に行なうことによって、その専門性を高めることが重要である。

特別支援学校について
基本的には,ろう学校が必要であり,特別支援学校に解消することに反対である。また,都道府県のろう学校の名称は残すべきである。
ろう児の教育については,在籍する児童の減少により、集団教育の環境の崩壊などが指摘できる。これは,専門性を失ったろう学校への魅力が薄れたことや学力等の問題で普通校へインテグレーションするろう児童が増えたことも一因としてあげられる。
ろう学校の専門性と学力を高めることによって、児童数の増加に結び付け、障害を同じくする児童の集団教育の場の確保を図らなければならないし,最低でも1県1ろう学校は残すべきである。 また,統合が避けられない場合でも,他の障害児との統合ではなく,普通小・中学校における教育形態とすることが望ましい。
インテグレーションは,聴覚障害児のコミュニケーション環境の保障を考慮した場合は、個別的な統合、同化ではなく、集団的な統合、同化であらなければならない。これはコミュニケーション手段の配慮、聴覚障害集団の一員としてのアイデンティティの確立には,聴覚障害児の集団教育の場が必要とされるからである。また、現在のインテグレーションにおける聴覚障害児の情報・コミュニケーション保障が救済措置的な性格(補聴システム、パソコン要約筆記、)を有するものであることから普遍的な保障を考慮しなければならない。
学習指導要領に「手話」を明記すること。その際,以下の理解が必要である。
1)幼児から高等部、専攻科まで
2)単に口話の補助的手段ではなく、手話が多くのろう者にとっては不可欠な言語、コミュニケーション手段となっていること。
3)手話に関する系統的な指導「教科としての手話科」
4)聴覚口話法と対等のものとして手話を位置付けること。
5)「準ずる教育」ではなく一般校と同等の達成目標の設定。

手話に関する研究について
ろう児に対する手話教育の確立のためには、行政支援による研修センターの設置運営並びに民間研究研修団体への支援と認知及び研究・研修の委託を行なうことが考えられるべきである。また、手話教育のための教材開発などを社会福祉法人全国手話研修センターなどに委託することも求められる。

ろう学校の設置・管理制度の見直し
ろう学校の高等部など財政的な事情により従来の都道府県の枠を越えた広域形態の学校運営も視野に入れなければならないと考える。
この運営については都道府県教育委員会においては聴覚障害の特性についての理解が十分でなく,適切な運営・管理に懸念がある。
従って、ろう学校の運営に関しては広範囲な関係者〔生徒・保護者・教員・卒業生・親の会・聴覚障害者団体・聴覚障害教育関係者・医療関係・福祉・企業等〕を主とした幅広いコミュニティを形成し、管理運営することが望ましい。

その他
人工内耳や新生児スクリーニングを推進している医療関係者には,ろう教育に関する知識が不十分なまま暴走している傾向が見受けられる。
文部科学省としては、ろう児教育を根拠として,このような事態に対応すべき責任があると考える。
結果として,特別支援教育・学校の構想は,ろう児の手話コミュニケーション環境に何らの配慮も見出せないものとなっている。
過去、特殊教育の対象にならなかった障害児童を掬い上げる形になった点では評価に値するが、この方法をろう児に当てはめるのは、「森を見て、木を見ない」の類であると指摘できる。ろう児のコミュニケーション手段は様々なものがある。このような多様なコミュニケーション手段に対応できるのは、専門性を持った教育システムである。この原点を踏まえ、慎重に進めていただきたいものである。

【目次】



「特別支援教育の在り方についての意見」
全国難聴児を持つ親の会

(1) 人口密集地と過疎地における問題点
人口密集地は難聴児の人数も多く、交通網も発達していますので「ろう学校・難聴学級」についても現状の維持が可能だと考えますが、過疎地は難聴児の人数も少なくどのような学校・学級制度になるのか心配しています。
(2) 教員免許状についての問題点
現在は経過措置として普通免許状でも、盲・聾・養護学校や特殊学級の担任になれますが、このような経過措置の撤廃の予定はどのようになっていますか。総合免許状と特殊免許状の関係についての見解をお教えください。総合免許状方式が実施された後、現在の特殊免許の存続はどうなるのでしょうか。
(3) 個別の特別支援教育プログラム作成者(特別支援教育コーディネーター)の能力について
障害を持つ子どもについて、個別の支援プログラムを作成するとお聞きしていますが、作成者の養成についての責任はどこが持つのでしょうか。現在の通級制度でも、年間の指導プログラムを作成し達成状況について年度の終わりに親も参加して検証することになっていますが現実はほとんどなされていないのが現状です。
(4) 特別支援教育コーディネーターは校内の誰が担当するのか
現在の難聴学級(固定・通級)においても、専門性を持った先生が配属されていない状況があり、いろんな障害を持つ児童・生徒のプログラム作成担当者としてコーディネーターの能力はかなり高度な能力が要求されると思います。現在の忙しい状況の上に、より高度な能力が必要とされるコーディネーターを担当できる教員が存在するのでしょうか。
聞くところでは、教頭や教務主任が担当するのでは、とのうわさを聞きますがこの点についての文部科学省の見解をお教えください。
(5) 教員の異動との関係について
教員の異動は7〜8年の周期で行われ、教頭・校長の管理職は4〜5年での異動が現状です。教員の異動については都道府県立のろう学校と市町村立の一般学校間の異動はなかなか困難ですし、聴覚障害についての基本的な知識を持つまでには研修や自己学習を含めても5〜6年以上の年月が必要だと考えています。現状のような異動の周期では特別支援教育コーディネーターとして必要な知識の習得についての時間があまりにも少ないのではないかと考えますが、文部科学省の見解をお教えください。
(6) 現在の通級制・固定制難聴学級の存続について
今後、どのような状況になるとお考えでしょうか。

【目次】



特別支援教育に関する意見書
全国言語障害児をもつ親の会

1. 特別支援教育の在り方に対する評価
平成13年1月に発表された『21世紀の特殊教育の在り方について』、および平成15年3月に発表された『今後の特別支援教育の在り方』に関しては、長年、私共親の会が実現を望んでいた内容であることでもあり、高く評価すると共に、全面的に支持・支援をしていきたいと思っているところです。
2. 教育レベルの低下をさせないことが大前提
今後、特殊教育から特別支援教育に移行する場合、これまで特殊教育諸学校・特殊学級、または通級指導教室が培ってきた教育のレベルを低下させることなく、むしろ、更に充実・向上させることを、大前提とされるようお願い申し上げると共に、言語障害のある児童生徒の教育がより一層向上することを願い、言語障害児をもつ親の会の立場から、意見や要望を申し上げたいと存じます。
障害の性質上、特殊教育諸学校の対象ではなく、特殊学級・通級指導教室[今後は『特別支援教室(仮称)』「以降(仮称)を省略します」]の対象となりますので、「特別支援教室」に限った内容となりますことをお断り致します。
3. 担当職員の資質向上
教育は、人(学習者=児童生徒)と人(教育者=教員)との関わりによって営まれると考えると、教育の質の向上は、教育者=教員の資質の向上によることが大きく、障害のある児童生徒の特別な教育的ニーズに応じた教育のためには、担当する先生の専門性の向上が不可欠と考えます。
(1) 特別支援教育コーディネーターについて
教育・福祉・医療機関との連携協力を行うための連絡調整役であり、保護者との関係では、学校の窓口となるコーディネーターには、地域住民から信頼されており、連携すべき機関、協力や助力を得られる人材等について熟知し、各種障害についての基本的知識を持つ教員を当てる必要があると考えます。
従って、コーディネーター養成を更に充実されるよう要望致します。
(2) 特別支援教室担当者について
障害のある児童生徒の障害種および教育的ニーズに応じた教育を直接担当する教員には、十分な知識・技術が要求されることは当然と考えます。
しかし、現行法制下では、小・中学校教諭等の免許状を所有する者は、特殊学級・通級指導教室の担当が可能ですので、基礎的な知識もない先生が担当を命ぜられ、2〜3年で通常の学級に戻ってしまう例が多く、専門家が育たないとの報告が、各地から寄せられています。
特殊学級・通級指導教室の対象者は『軽度障害者』と考えられていることによるものなのかとも思いますが、コミュニケーションが不自由な者(言語障害)、人間関係づくりが不得手な者(LD、ADHD、高機能自閉症等)は、医学的には軽度疾患なのかも知れませんが、社会生活を営む上では、軽度障害とは考えられず、また、現在軽度障害者とされている児童生徒の教育は容易で、専門性が不必要とも考えられません。
従って、特別支援教室を担当する先生の専門性確保について、格別の配慮をお願い致します。
(3) 全教職員の障害に関する理解の増進
現在特殊学級に在籍する児童生徒の親たちは、特別支援教育の実施と共に、学籍が通常の学級に移った場合、通常の学級担任の先生のご理解が得られるのか、いろいろな場面で、今まで通りの特別な配慮のもとでの生活ができるのか、という不安を払拭できず、通常の学級担任の教員の理解促進が不可欠と考えています。
理想的には、障害のある児童生徒の特別な教育に関する基礎的な事項の単位修得を、教員免許状付与の条件とすると共に、現職教職員については、認定講習等で研修を義務付けることが望ましいと考えています。
4. 担当教員の専門性確保の方向について
教育専門免許法によると、教員の免許状は、学校の種類ごとに制定されていますから、障害のある児童生徒教育(特別支援教育)に関しては、特殊教育諸学校(盲者・聾者・知的障害者・ある児童生徒の教育(特別支援教育)に対応する免許状に限られていて、特殊学校・通級指導教室(今後は特別支援室。以後単に「特別支援室」といいます。)に対応する免許状の規定がありません。
従って、小・中学校に設置される特殊学級・通級指導教室(特別支援教室)担当者は、小・中学校教諭免状を所有していればよく、見方を変えると、特殊学級・通級指導教室での教育には障害に応じた専門的知識・技能は不要とも受け取れる規定になっていて、担当教員の専門性を向上させようとしている現在の方向に反します。
免許制度というのは、「業務独占」という排他的な性格を持っていますが、最低限必要な知識には、各障害別ごとの免許状制定が極めて有効と考えます。
つきましては、特殊学級・通級教室(特別支援室)に対応する教諭免許状について、ご検討くださるようお願い申し上げます。
なお、特殊学級・通級指導教室(特別支援教室)に対応する教諭免許状については、次のように考えています
(1) 綜合免許状について
「21世紀の特殊教育のあり方について(最終勧告)で提言された『綜合免許状』を保有すればよいと意見もあるようですが、これは「盲・聾・養護学校在籍者の重要化の進行に対する施策で、特殊学級・通級指導教室を視野に入れたものではく盲・聾・養護学校に対応する免許状である上、全生涯に関して広く浅く履修した綜合免許状所有者では、言語障害・LD・ADHD・高機能自閉症等の教育を、十分に行うことは不可能と考えます。
重複障害者の教育を充実させるためには、各障害種別ごとの免許状を重複して取得させることの方が、効果的ではないでしょうか。
(2) 特別支援教室に対応する免許状は、各障害種別ごとの免許状に
言語障害に限ってみても、器質的講音障害・機能的講音障害・言語機能の基礎的事項の発達遅滞等々の障害種別の違いに加え、各個人ごとに指導法を工夫する必要があり、更に、吃音に至っては指導法も確立していない状態で、極めて専門的な知識・技術等を所有する教員が、持てる能力を駆使して、創造的・意欲的に取り組むことが不可欠の状態にあります。
従って、特別支援教室を、それぞれの障害種別の専門家の協働によって指導体制を構築できるようにし、障害種別ごとの免許状を制定する方向でご検討をお願い申し上げます。
障害種別ごとの免許状に関しては、すでに昭和58年に教育職員養成審議会が特殊学級に対応する免許状について答甲している通り、以前から不備が指摘されていた事項でもあります。
5. 多様な特別支援教室の設置を
具体的な事項が不明なこともあって、前述の通り、特別支援教育では、「終日学校生活を送る特定の学級(特殊学級)がなくなり、今までに特殊学級に在籍していた児童生徒も、通常の学級に在籍をし、週に何回か特別な教育的支援を受ける」というイメージで捉えている人が多くいて「特殊学級で生活できたからこそ通学ができたのに、今後どうなるのか」また「特別支援教室に適応できない者は特別支援学校に就学すべき、という論を聞かされたが、遠距離通学は無理、結局学校へ行けなくなるのではないか」と、不安感を払拭できない親も少なくはありません。
特殊学校・通級指導教室というのは、それなりの重要機能を持っておりましたし各障害種別ごとに、指導法等の開発・データの蓄積がされ、特殊学校・通級指導教室を必要としている児童生徒が、今も今後も、存在することは否定できない事実ですので、枠組みの固い、画一的な特別支援教室とするのではなく、最終報告で「一人一人の教育的ニーズに応じて弾力的に」と述べている通り、一人一人の教育のニーズに応じた対応が可能な、柔軟性を持った教室とされるよう、お願い申し上げます。
全国言語障害児をもつ親の会としては、特殊学級に類似した特別支援教室、通級指導教室に類似した特別支援教室、巡回指導を中心とする教室等々、多様な教室が必要ではないかと、考えています。
6. 教員の適正配置について
盲・聾・養護学校に地域の特別支援教育のセンター的機能を付加し、すべての学校にコーディネーターを配置、LD・ADHD・高機能自閉症の特別支援教育の開始による対象者の急激な増加等々が行われることになりますが、これに対する教職員の増配はなく、各自治体の裁量に委ねられるとのようです。
このことに関しては、二つの心配があります。
第1には、新しい業務に応じた教職員の配置が不十分となり、教育レベルに低下にならないか、という懸念があり、第2には、各自治体の裁量にまかせる結果、地域格差が大きくなり、公教育の大原則である『教育の機会均等』が損なわれるのではないかという懸念です。
従って、一定の配置数については、義務付けられ必要があると考えますので、ご検討いただきたいとおもいます。
7. 十分な周知徹底を
現在検討中なので、当然と思われる部分もありますが、「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」を読んだ後、理解を深め確実に理解しようとして、行政担当者に質問しても、学校長・教頭に質問祖しても十分な回答が得られず、通常の学級担任に至っては、全国各地から、「通常の学級に障害児が入り込むなどもっての外と言う」等々の報告が寄せられています。
確かに、今までの概念砕きをしないと、理解出来にくいほどの大改革ですので、情報を公開し、国民の意識を喚起することも大切と感じております。
そのことにより、地方教育行政の動向に関する県民・地域住民の関心も高まり、特別支援教育の開始、移行も円滑におきなわれるのではないかと思料致します。

【目次】



資料3:特別支援教育の制度化に関する意見や要望(各都道府県・指定都市教育委員会)
1. 特別支援教育(共通)
○制度化の進行に関するタイムスケジュールを明示。
○制度変更に当たっては、準備期間を置き、体制を整備した上で実行すべき。
○市町村合併が終わり、各自治体の教育行政が安定してからの特別支援教育への移行。

2. 特別支援学校
○具体的な転換手続き・スケジュールを明確化。
○特別支援学校の設置は、移行期間と財源移譲が必要。
○盲・聾学校制度と、養護学校制度の一本化。
○特別支援学校のセンター的機能について法令上位置付ける。
○「欠陥」、「心身の故障」等の文言について検討。
○都道府県の設置義務について、義務教育期間は、市町村が就学決定する責任を持つ関係上、設置義務を負うことに改正。
○盲・聾・養護学校の寄宿舎の設置義務について「設けることができる」規定に改正。
○特別支援学校の児童生徒に小・中学校の副籍(支援籍)を設けること。
○特別支援学校の幼稚部(早期教育の必要性)・高等部(LD、ADHD等の適切な教育のためのコース設置等)の充実。
○特別支援学校の設置基準を新たに設ける。
○分教室に関する設置基準を示す。
○特別支援学校の教員定数、学級編成、配置基準を弾力的にする。
○在籍する児童の障害種に合わせた定数算定としてほしい。
○障害種ごとの定数配置の廃止。
○特別支援学校又は県教育委員会に、児童生徒総数に対する一定の割合で特別支援教員を置き、院内学級の対応、途中入学等への対応を行う。
○センター的役割に伴う教員定数配置についての充実。
○自立活動教員定数は学級数でなく、児童生徒数で算定。
○重複障害学級の基準の見直し。重度の知的障害を有する自閉症児を重複対象に含める。
○教員定数や学級編成は、原則として現行の標準法を基準にする。
○病弱部若しくは肢体不自由部のある特別支援学校において、看護師若しくは看護師免許を有する養護教諭を置くこと。
○教諭以外の専門職員の配置について法令上位置付ける。

3. 特別支援教室 
○特別支援教室を設置すべき障害種及び設置義務の主体を明記。
○特別支援教室の対象に、LD、ADHD、高機能自閉症等を加える。
○特別な教育的支援を必要とする児童生徒が在籍している場合、特別支援教室を置かなければならないとする。
○特別支援教室における教育課程の特例を認める。
○特別支援教室と併行して特殊学級の設置も可能とする。
○特殊学級は時間をかけ段階的に解消。
○通級による指導の制度を継続するとともに、その対象にLD、ADHD、高機能自閉症等を加える。
○特別支援教室は様々な形態が考えられることを明文化。
○院内学級については、これまで通りの人的配置が必要。
○特殊学級に準じた地域拠点的な設置形態を認めてほしい。
○巡回式の特別支援教室を認めてほしい。
○特別支援教室の対象について障害種別の示し方は適切でない。
○障害別の特別支援教室の設置や特別支援教育担当教員の配置が必要。
○特別支援教室における指導時間数の根拠について一定程度の目安を明示。
○特別支援教室は、幼稚園、高等学校にも規定。
○高等学校で特別支援教室の設置を可能にするとともに、教育課程の特例を認める。
○特別支援教室の教員配置基準の整備。
○教員配置の地教委(又は学校長)の裁量権の拡大。
○特殊学級、通級指導教室と同水準の定数措置。
○担当する教員の持ち時間数の計(基準20時間)で教員数を算定。
○通常学級の児童生徒数の基準緩和。
○高等学校でのLD、ADHD等の受け入れ体制の整備。
○市町村が雇用する介助職員や看護師等に国からの財政的支援を制度化。

4. 教員免許
○総合化の早期実現とともに、専修免許状への専門的分野の明記
○特殊教育教諭免許状の総合化について、視覚障害や聴覚障害といった単一の障害のある児童生徒の指導の専門性をより深めるという点にも積極的な対応を。
○総合化を目指した研修内容と併せて、専門化に向けた研修内容も位置付ける。
○特別支援教室の担当者に総合免許状の取得義務と経過的に義務免除の規定を設ける。
○特別支援教育コーディネーターに必要な免許の要件を加える。
○附則16項の廃止。
○教員養成課程において、特別支援教育に係る単位取得の義務付け。
○教員養成大学に、現職教員の上進による免許取得に有効な養成課程の充実。
5. 特別支援教育コーディネーター等 
(1) 特別支援教育コーディネーター 
○特別支援学校のコーディネーターを各部ごと等、複数名の配置を法的に明記。
○特別支援教育コーディネーターの新たな定数配置。
○法令上での位置付け(主任等)を明確にする。幼・高等学校も含めて。
(2) 校内委員会 
○校内委員会の設置も制度化が必要。
○校務分掌等チームとしてコーディネートを担当する組織を置き、学校としてその機能を整備。
(3) 広域特別支援連携協議会 
○特別支援連携協議会のスタッフの確保と財政的な措置。
○厚生労働省との連携を積極的に進め、各県での設置をスムーズにすること。
(4) 巡回相談 
○巡回相談の支援内容に応じた体制作り。
○経費についての国の補助。
(5) 個別の教育支援計画 
○作成主体の明確化、引継体制のための法的な整備、作成方法についての研修や情報管理の定義付けること
○個別の教育支援計画の策定を学習指導要領に明記。
○乳幼児期を含めて、早い時期にモデルを示してほしい。
○いくつかの具体的なフォーマットや項目の観点等を示す。

6. 施設設備
○特別支援学校や特別支援教室の整備に必要な補助制度を設ける。
○整備等に係る猶予期間を設ける。 

7. 研修
○特別支援教育体制に関する研修の充実(管理職を含めた全教員対象)。
○中央研修の中に「特別支援教育」に対する理解啓発を図るための研修の実施。
○コーディネーター、巡回教育相談員、専門家チーム等の構成員となるべき専門家の育成。
○教育関係者だけでなく、広く国民全体に周知させるような情報の発信と説明会の実施。
○関係機関と連携した個別の教育支援計画の作成の具体的方法についての研修の充実。
○免許状の総合化に伴い、特別支援学校教員の研修機会の拡大。

8.その他 
○特別支援教室の就学について、就学指導委員会の役割を考えるべき。
○就学時健康診断において発達障害の発見に努めるよう法的に位置付ける。
○幼稚園、小学校、中学校、高等学校での介助員を国庫補助対象に。
○特別支援教室においても、107条本の無償給付。
○特殊教育関係教員に支給される調整額の廃止とその財源の活用の裁量の拡大。
○特別支援教育コーディネーター及び特別支援教室担当者への「調整額」の支給。
○特殊研からもっと現場に生かせる研究や情報を示す。
○高等学校への特別な支援が必要な生徒の入学に際し、教員の加配、施設設備の整備に関する国庫負担等十分な対応が必要。

【目次】



・・・ひとこと・・・

秋晴れの土曜日,久々に聾学校の運動会を観させていただける機会に恵まれた。
確かに全幼児児童生徒の数は減ってきた。しかしそこには聴覚障害ゆえの配慮,子どもに応じた配慮のもので,精一杯する走る集団があった。
特別支援教育の名の下に,旧来の障害分野は結果として縮小の方向に向かわさせられている。聾学校では,期末試験のテストを印刷する紙代に苦労するという声さえ聞こえるようになってきた。
「障害児教育」が「特別支援教育」と呼び名が変わろうと,今,校庭を走っている障害のある子どもの実態には何の変化もない。そこに子どもがいる以上,いかなるラベリングをなされようとも,子どもに適切な教育をすることが,教育の責務であることに変わりはない。
聾学校半減計画や,盲聾合併など教育環境の悪化を招く計画が安易に立案され,検討されている。センター的活動で実績をあげてきた聾学校が,市の中央部の駅から徒歩一〇分の場所から,一時間に二本しかJRが走らない駅近くの盲学校内の敷地に合併されるような計画は,まさに今回の答申を読み違えているとしか思えない。聾学校が長い歴史の中で築いてきたセンター的活動をさらに充実させることが期待されている中,なぜ交通不便な場所に追いやるのかという理由が想像できない。
もちろん聾教育が高コスト下にあることは理解している。とはいえ,盲学校と聾学校が同じ敷地に同居したり,合併することによってどれだけの経費軽減が図れるのであろうか。またそうした試算をした上での合併計画なのだろうか。仮にそうした試算があるのであれば,単独校として設置しつつ,聾学校内の何かしらの合理化で同様の経費軽減が可能な策はないのだろうか。
しかし,なぜこのようにコストに追われるようになってしまったのだろう。思い返せば,『「この子らに世の光を」ではなく「この子らを世の光に」』との糸賀氏の辞世の講演は,今なお,心に響くものがある。この子らがいるからこそ,私たちの社会は成立しているとの訴えは崇高であり,コストという世界と反極に存在する。
かつて盲唖教育と言われた盲聾一体教育の中で寄宿舎が火事になり,盲児は逃げ出せたが,残念ながら聾児が焼死した。感覚の違いが人間の生活に大きな差として存在することをまさに示している。
コストと相反する教育の崇高な理想を掲げ,聾児焼死の反省を経て,盲聾分離を経た過去の盲聾教育先達の足跡をたどらずして,安易に盲聾合併に向かう方向性には危惧を感じざるを得ない。
いくつかの聾学校の保護者たちが自分たちの聾学校を守ろうと立ち上がっている。教育を受ける側だけではなく,教育をする側は漫然とそれらを見ているだけでよいのだろうか。聴覚障害の子どもに聴覚障害ならではの教育を行い,聴覚障害児の集団生活を保障し,聴覚障害に必要な自立生活指導を行う・・・これらは「聾学校」という環境があってからこそできるものなのである。私たちには聾学校に集まってくる子ども,目の前の子ども達に,これからも必要な教育,確かな教育を行っていく責務がある。一人ひとりの子どもが,発達し,成長を遂げる過程を支える教師と環境は欠かすことができないものなのである。
そこに子どもがいる以上,その子どもに必要な教育環境を確保していくために,血流の覚悟で守るべきものを守ることが必要なときもあると私は思う。
四十二年間守り続けられた聾学校運動会の優勝旗は,また来年も「聾学校」に受け継がれていかなければならないのだ。

【目次】



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