近畿教育オーディオロジー研究協議会
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飾り 会長挨拶
近畿教育オーディオロジー研究協議会
会長 天知 吾郎(兵庫県立神戸聴覚特別支援学校長)
   
 年一度の花月観劇を続けて いる。ここ数年は難波より祇 園に足を向けるようになった。 終演後に京都散策が楽しめる からだ。
 笑い−誰かの失敗や痛い目 を面白がる類いのものでなく、 物語性と視覚効果だけで沸か せる。聴覚障害の子どもの支 援に携わって以来の密かな主 題だ。「緊張と緩和」の演出。 今は亡き天才落語家桂枝雀さ んの言葉が頭をよぎる。
  一つの問いを立てた。「健聴 者と聾者・難聴者は一緒に爆 笑できるか」
 健聴者の笑いは音声として のことばだけでなく、そこに 埋め込まれたリズムや間さら には情や気などの相乗効果で 生まれる。テレビの新喜劇を 消音と日本語字幕モードで観 てみるとすぐわかる。一方、 聾者独特の笑いの存在を知り、 その表現の違いに大いなる距 離を感じた。問いは揺れた。
 オーディオロジーの究極の 成果は問いの答えを提示でき るか。壁は高く多いことが分かり始めた。しかしそれを諦 めることは日本語の力強さや 美しさをも伝えることを断念 することにほかならないと思 い直す。では補聴機器は文字 にならない部分を伝える力あ るのか?あったとして伝わっ た記号としてのことばを言霊 として子どもに感じさせるこ とはできるのか?素人の浅知 恵は果てしない空回りを始め、 袋小路に迷い込んだ…。
 ご挨拶が遅れた。平成 28 年 度に引き続き本協議会の会長 を仰せつかった。今年は会の 発足 19 年目。人間なら成人式、 学校なら周年行事に似た計画 が噂されてもよい時期だがそ の気配はない。むしろ節目の 年に向けて、来し方を総括し、 行く末を見定める一年とする 静かな意気込みだけが充満す る。
 今年も多彩な講師を招いた 講演会や現場の最前線の成果 を披露し合う研修会を計画中 である。魅力あふれる内容を 提示しながら、学校、医療、 福祉の協働をさらに進めよう。
一方でどの学問でも専門性が 極度に研ぎ澄まされていくと、 まるで大地に針を立てるよう にその普遍性がおざなりにさ れることがある。私たちの目 指す場所がどこにあるのか 時々確認しながら歩んで行き たいものだ。
 すべての聾学校を笑い声の こだまする場所にしたい。心 からそう願う。そしていつの 日か中高等部の遠足を祇園花 月→鴨川周辺散策コースにし てみたい。大爆笑のあとは午 後の日差しの京都を満喫する。 そんな日が訪れるのを夢見て 本会の振興に全力を尽くす。 それこそ聴覚障害のある子ど もへの真摯な献身を続ける会 員の皆さまに報いる術と信じて。