JDF-日本障害フォーラム-Japan Disability Forum

JDF は、障害のある人の権利を推進することを目的に、障害者団体を中心として2004年に設立された団体です。

JDF

要望書・意見書

■最終更新 2012年2月27日

HOME>要望書・意見書>障害者総合福祉法(仮称)の制定に関する緊急の質問と重点要望

障害者総合福祉法(仮称)の制定に関する緊急の質問と重点要望

2012年2月27日

民主党
 代表 野田 佳彦 様
 厚生労働部門会議 座長 長妻 昭 様

日本障害フォーラム(JDF)
代表 小川 榮一

障害者総合福祉法(仮称)の制定に関する緊急の質問と重点要望

 平素より、障害関連政策の増進に尽力いただいていることに対して、心より感謝申し上げます。
 さて日本障害フォーラム(以下、JDF)は、大詰めを迎えている障害者総合福祉法(仮称)に強い関心を抱き、まさに固唾を飲む思いで検討の行方を見守っているところです。
 JDFは、骨格提言の実現を求める立場で、「障害者総合福祉法制定に向けて」など、数回にわたって要望書や提言の提出を行なってきました。しかしながら、厚労省ならびに民主党障害者WTでのこれまでの検討動向をみる限りでは、これらの要望書や提言がどの程度反映されているのかが甚だ疑問であり、憂慮の念を深めているところです。
 後掲する緊急要望事項に先立って、特に次の諸点について質問させていただきます。

1.障害者権利条約との整合性について
 近々の条約批准を考慮した場合に、新法と条約水準との整合性が問われることは明白です。条約の全条項との関係を問いただしたいところですが、特に①第1条・目的(障害者の定義・対象の範囲など)、②第4条・一般的原則(特に本条第3項、新法に関わる検討事項等における障害当事者参加の審議システムの確立)、③第19条・自立した生活及び地域社会への包容(特にa項、b項について)、の諸点について、条約水準をクリアしているでしょうか。

2.基本合意文書との整合性について
 障害分野の混乱を防ぐ観点からも、いわゆる基本合意文書との整合性が肝要と考えます。新法(現段階では案)はこれに抵触しないものになっているでしょうか。

 以下、骨格提言の遵守という観点から、またこれまでの要望内容と一部重複しますが、改めてこの時点で与党・民主党の政策審議に反映していただきたく、下記の諸点について緊急に要望します。

1. 障害の範囲
 昨年改正された障害者基本法第二条第一項に規定する「障害者(断続的、周期的なものを含む)」として、新たな谷間を生むことのない、社会モデルに基づく包括的規定として下さい。また、今後、関係法の改正・政令等の検討においても、上記の改正・障害者基本法の規定を踏まえ、新たな谷間を生むことがないようにしてください。

2.支給決定のしくみ
 2月8日に示された厚生労働省案に比べ、支給決定全体への見直しを検討事項で明記していることは評価します。現行の制度の持つ問題点を解決し、支援ニーズを的確に汲みとることのできる制度を目指す旨を明記してください。

3.支援体系
(1)パーソナルアシスタンス制度の導入に向けて
 見守り介助なども含む長時間介助サービスである重度訪問介護が肢体障害者のみに限定されています。骨格提言では、障害者の地域生活を支えるための必須の福祉サービス制度としてパーソナルアシスタンス制度の導入と、その段階的実現のために重度訪問介護の対象者の拡大を提言しています。第一段階として重度訪問介護を必要とするすべての障害者が使えるよう法制化してください。
 なお改正障害者基本法第23条では、相談支援業務における意思決定支援への配慮が明記されましたが、それを十分に、かつ日常生活等でも担保するには、意思決定支援のシステムづくりが不可欠です。その開発を進めてください。

(2)コミュニケーション支援
 昨年8月に改正された障害者基本法では、コミュニケーションについて第3条で手話が言語として明記されるなど、我が国の法体系における理念が大きく前進しました。そうした前進をきちんと現実の生活で実感できるようにすべきです。コミュニケーション支援については、参政権など国民が享受している権利行使のため基礎となるというものであるという視点から、全国共通の仕組み(義務的経費)としてください。

(3)通訳・介助支援
 盲ろう者向け通訳介助員派遣事業は地域生活支援事業のために、支給量の絶対量が少なく、地域格差が極めて大きい現状にあります。地域間格差を解消し、どの地域においても必要な支援を得られるように、盲ろう者の希少性・ニーズの多様性から都道府県単位での実施は維持した上で、全国共通の仕組み(義務的経費)としてください。

(4)移動支援の個別給付
 今回の法律においては、社会モデルの理念規定を設けるとされています。「他の者(障害のない市民)と平等」な社会参加を実現するため、障害者の基本的権利に関わる移動支援についても、全国共通の仕組み(義務的経費)としてください。

(5)相談支援の義務的経費化
 障害者福祉の基礎である相談支援の地域格差が深刻です。1か所あたりの基礎的必要経費と個別件数に応じて支払われるサービス利用計画費とを組み合わせて運営費とし、どちらも義務的経費としてください。

4.地域移行・地域資源整備の法定化
 社会的入院、入所解消のための地域移行促進を法に明記するとともに、障害者が地域生活を営む上で必要な社会資源を計画的に整備するための「地域基盤整備10カ年戦略」を法定化し策定してください。
 なお、先般パイロット研究として行われた、障害者入所施設および精神科病院の入所者・入院者に対する実態調査は、予算を組み全国調査を行ってください。

5.利用者負担
 収入認定にあたっては、家族依存からの脱却という観点と合わせて、本人のみの収入としてください。また、利用者負担で、高額な収入のある等利用者負担の発生する場合は、現行の負担水準を上回らないようにしてください。障害福祉サービス、補装具、自立支援医療(地域生活支援事業)、介護保険を合算し、過大な負担とならないようにしてください。また、利用者負担はサービス利用を抑制する効果を生まない範囲にすべきことを規定してください。
 なお、コミュニケーション支援については、その支援の性格から無償としてください。
 また、施設入所支援における応能負担制度の導入に際し、特定日常生活費以外は、本人負担から除外してください。

6.権利擁護の法定化
 相談支援、申請、支給決定、利用を含むすべての段階において、相談支援とは別に、障害者本人への権利擁護制度を法定化してください。

7.報酬
 支払い方式については、日払いと月払い、それぞれのメリットを活かして、施設系については、利用者個別給付報酬=事業費は日払い、事業運営報酬=事務費・人件費は月払いと、日払いと月払いを組み合わせた形にしてください。(在宅系については、時間割を維持)
 また、安定した支援を確保していくために、常勤換算方式の廃止をお願いします。

8.長時間介助等の地域生活支援のための財源措置
 障がい者WT意見書における「訪問系サービスに関する国庫負担基準については、国と地方公共団体の役割分担も考慮しつつ、引き続き、検討すべきこと」との規定を踏まえて、国庫負担基準超過の有無に関係なく、長時間介助等について市町村の財政負担を軽減する措置の検討を早急に行ってください。

9.今後の検討における障害当事者参画の保障
 検討事項二で「政府は、一の検討を加えようとするときは、障害者及びその家族その他の関係者の意見を聞くものとすること」とされています。権利条約の批准に向けた改正、ということ、社会モデルへの転換、ということであれば、少なくともこの間の障害者制度改革の議論を踏まえた形で検討することができる協議体が必要です。制度改革の趣旨にふさわしい検討の場を設置してください。

10.工程表の設定等
 工程表の設定が不可欠と考えますが、それに際しては具体的な目標や確実な方向性を明示してください。また、最終的な制度体系の全体像がどのようになるか、明示してください。
 なお、新法の名称については、仮称を含めて、くれぐれも障害者政策の後退をイメージさせることのないよう特段の注意を払ってください。

 以上、質問事項については速やかに書面にてご回答いただき、また要望事項については政策審議に反映いただきますよう、重ねてお願い申し上げます。

ページの先頭へ