JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第81号 2010年4月28日発行 ―目次― +++++ トピックス 1.ミャンマーで初の本人活動グループが結成される (2010年2月14-18日) 2.CSR推進NGOネットワーク 第6回定例会 報告 (2010年3月25日) 3.協力隊まつりでのミニ集会「途上国で障害のある人たちと共に生きるということ」 4.タジキスタンでの調査(2010年3月3日〜14日)を終えて 〜難民を助ける会 タジキスタン現地活動報告会で話したこと (2010年4月7日) +++++ インフォメーション 1.AAR緊急支援活動 2.JANIC緊急災害活動状況報告書のご紹介 3.国連障害者の権利条約批准国情報 (2010年4月28日現在) 4.CBRネットワーク関連情報  +++++ イベント情報 1.平成22年度 JANNET総会 (2010年5月30日予定) 2.第12回 高齢障害者のための移動と交通に関する国際会議 +++++ トピック1 ミャンマーで初の本人活動グループが結成される (社福) 全日本手をつなぐ育成会 袖山 啓子 全日本手をつなぐ育成会はAPCD(財団法人アジア太平洋障害者センター)の協力機関として、JICA APCDプロジェクト第2フェーズの「知的障害分野セルフ・ヘルプ・グループのエンパワーメントとバリアフリー事業」に関わってきました。2007年10月の最初の専門家派遣から数えて5回目となる今回は、この分野としては初となるミャンマーへの派遣が実現しました。派遣期間は2010年2月14日(日)−18日(木)、派遣された短期専門家は知的障害者本人1名、支援者1名、家族1名です。 ミャンマーはこれまでバンコクで開催されたワークショップなどに、参加してきました。そして今回、ミャンマー国内では初となる知的障害当事者と知的障害児・者の親のワークショップが、社会福祉省管轄の学校を会場に開催されました。 中でも特筆すべきことは、この機会を利用して知的障害当事者が本人活動のためのグループ「ユニティー」を結成したことです。ワークショップ開催中に別個に時間を取り本人同士が話し合いをする中で、グループ内の役割分担を決定し、今後の活動計画も作成されました。これからは親の会とミャンマー国内唯一の学校が中心となり、この活動を支援していくことになります。 またここには日本の専門家だけでなく、タイからもリソースパーソンとして本人1名、支援者1名、親1名が参加し、活動を通じて助言等を行いました。この地域内での今後の協働関係がさらに強まっていくことが期待されます。 +++++ トピック 2 CSR推進NGOネットワーク 第6回定例会 報告 (社福)東京へレン・ケラー協会 福山 博 3月25日(木)花冷えの小雨がそぼ降る午後、東京・神宮前の環境パートナーシップオフィス(EPO)会議室において、標記の会議が事務局6名を含めて26名の参加者で行われました。 前回の第5回定例会は「企業と国際協力NGOの連携のためのガイドライン」策定という重いテーマがあり、参加者も多く議論も活発でしたが、今回は年度末の多忙な時期に重なったことと「ガイドライン疲れ」もあったのか、参加者が3割以上も減りました。 今年度最後の定例会ということで、まず始めに2009年度の活動実績と総額63万5,000円の2009年度収支計算書が示され、ほとんどが定例会の会議費、NPO学会の交通費等と事務局の経費であったため、特に質問もなく、参加者全員で確認・了承しました。 次いで、「2009年度活動の振り返り」ということで、5グループに分かれてディスカッションを行い、その後、全体でシェアするために、各グループの代表が報告しました。 各グループでは、参加者全員に3枚のメモ用紙とサインペンが渡され、同ネットワークに参加するメリットと運営方法、その他の項目を各自が記載し、各グループのファシリテーターが、ブレインストーミングの要領で模造紙に貼りながら討議しました。 メリットとしては、「CSRに関する多様な意見が聞け、新たな情報収拾ができた」に集約できたが、運営方法については、事務局への苦言が出たり、コアメンバーに頼り過ぎとか、分科会をやれとか、定例会を増やせとか、否今のままでいいなど様々な意見が錯綜しました。結論を求めた会議ではなかったのですが、結局は現状肯定的な意見に落ち着いたように思います。 最後に、コアメンバー/事務局から、「広報活動を強化し、企業メンバーを増やす。首都圏以外のNGOや企業へ呼びかける」などを骨子とした新年度の活動方針が示され、次回(5月13日を予定)、討議することに決まりました。 +++++ トピック 3 協力隊まつりでのミニ集会「途上国で障害のある人たちと共に生きるということ」 埼玉医科大学かわごえクリニック JOCVリハビリテーションネットワーク 立教大学異文化コミュニケーション研究科博士課程前期 作業療法士 石井 清志   平成22年4月3日(土)・4日(日)の二日間、東京の広尾のJICA地球ひろばにて第4回協力隊まつりが開催されました。当日は小雨が降る肌寒い中での開催となりましたが、二日間で1000人余りの来場者がありました。今年はJOCVリハビリテーションネットワークのブース設置のほか、「途上国で障害のある人たちと共に生きるということ」というテーマで5名の協力隊OVによる活動報告を行いました。 鈴木さとみ氏(ナミビア・ソーシャルワーカー)、大塚天貴氏(ベリーズ・言語聴覚士)、石井(パキスタン・作業療法士)の3名からはそれぞれの任国での協力隊活動について報告しました。ソーシャルワーカーや言語聴覚士の体験談はこれまであまり報告される機会がなかったので、参加者も真剣に聞き入っていました。鈴木氏の報告では、自分の行った支援が任期終了後も現地スタッフによって継続的に行われる為に奮闘した様子が伝わってきました。大塚氏の報告からは言語の異なる国での言語療法の提供に苦労しながらも、その努力が少しずつ実を結んでいく様子が伝わってきました。 河野 眞氏(タジキスタン・作業療法士)と加藤久美氏(ラオス・理学療法士)からはNGOでの活動経験についての報告がありました。限られた活動期間の中での活動における工夫や苦労について活動写真を交えて解りやすい説明がありました。 協力隊まつりの会場を利用したミニ集会でしたが、職種や派遣形態、派遣国の異なる発表者の経験から学ぶ事が多く、非常に充実した時間となりました。発表後は参加者を交えて活発な質疑応答が行われ、参加者の障がい者支援への関心の高さも伺えました。 今後ともJOCVリハビリテーションネットワークの活動としてこの様な機会を作り、より多くの人に発展途上国の障がい者支援に対して関心を持ってもらえるよう活動していきたいと考えています。 +++++ トピック 4 タジキスタンでの調査(2010年3月3日〜14日)を終えて 〜難民を助ける会 タジキスタン現地活動報告会(4月7日開催)で話したこと 国際医療福祉大学/日本作業療法士協会 河野 眞 人はみな、ある家族の下に、そしてあるコミュニティの中に生まれてきます。それは、東アジアの先進国であっても中央アフリカの途上国であっても変わりませんし、今回調査を行なったタジキスタンも変わらないはずです。  しかし、その「人」が障害を持つ場合、誕生後にたどるライフコースはそれぞれの文化や社会の影響を受け、時に大きく異なったものになるようです。 タジキスタンの場合、障害のある人たちは生まれてきた「家族」や「コミュニティ」から自動的に切り離され、特有のライフコースをたどらざるを得ない、そういう仕組みがあるように見えました。  首都ドゥシャンベのある孤児院では、収容している子どもの約3分の1が障害児であるとのことでした。子どもの障害の発生率よりも遥かに大きいこの比率の理由は、そう、タジキスタンで障害のある子どもは家族やコミュニティから切り離されて、孤児院に預けられる傾向が強いからです。 そうして孤児院に預けられた障害児たちは、6歳になる時点で「教育不能」と「教育可能」に分類されます。 「教育不能」と分類された子どもたちは障害児入所施設に収容されます。その後16歳になると成人向け収容施設に移され、そのまま終生を施設で過ごすことが多いようです。 一方、「教育可能」と分類された子どもたちは全寮制の特別支援学校に入ります。しかし、それは決して家族やコミュニティに戻る道ではありません。16歳で学校を卒業すると、多くの卒業生がそのまま全寮制の障害者向け職業訓練校へと移っていくのです。この職業訓練校は修了しても就職にはつながりにくいようで、多くの修了生が無職で過ごしていました。 恐らく旧ソ連時代に確立されたと思われるこの硬直的な分離の機構が、より柔らかで人々の交流に満ちたものへと変わっていくための道筋を、現地のさまざまな人々や難民を助ける会との協働を通してこれから見つけ出したいと思っています。 報告会HP (難民を助ける会HP上に掲載):http://www.aarjapan.gr.jp/lib/act/act0706-2tadjik_shousai.html +++++ インフォメーション 1.認定NPO法人 難民を助ける会による被災地での緊急支援活動 JANNET団体会員である認定NPO法人 難民を助ける会が、インドネシアとフィリピンの被災地において、緊急支援、特に障害者支援の活動を展開しています。詳細は以下のサイトをご覧ください。 ・フィリピン台風緊急支援速報 http://www.aarjapan.gr.jp/lib/act/act0910-3philippinesvictim.html ・スマトラ沖大地震緊急支援活動 http://www.aarjapan.gr.jp/lib/act/act0910-4sumatra.html +++++ 2.JANIC 各被災地でのNGOによる人道支援に関する活動速報リンクのご案内 JANNETが加盟しているJANIC(国際協力NGOセンター)では、NGOによるフィリピン台風16号、サモア沖地震、スマトラ沖地震における被災地の支援活動状況について紹介しています。ぜひご覧下さい。 HP:http://www.janic.org/news/ngo.php +++++ 3.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 1. バングラデシュ 2. クロアチア 3. キューバ 4. エクアドル 5. エジプト 6. エルサルバドル 7. ガボン 8. ギニア 9. ホンジュラス 10. ハンガリー 11. インド 12. ジャマイカ 13. ヨルダン 14. マリ 15. メキシコ 16. ナミビア 17. ニカラグア 18. パナマ 19. ペルー 20. フィリピン 21. カタール 22. サンマリノ 23. スロベニア 24. 南アフリカ 25. スペイン 26. チュニジア 27. ケニア 28. サウジアラビア 29. ニジェール 30. オーストラリア 31. ブラジル 32. チリ 33. タイ 34. アルゼンチン 35. 中国 36. パラグアイ 37. トルクメニスタン 38. ニュージーランド 39. ウガンダ 40. オーストリア 41. コスタリカ 42. レソト 43. 大韓民国 44. ルワンダ 45. スウェーデン 46. オマーン 47. アゼルバイジャン 48. ウルグアイ 49. ドイツ 50. バヌアツ 51. グアテマラ  52. イエメン 53. モロッコ 54. スーダン 55. クック諸島 56. モンゴル 57. イタリア 58. 英国 59. ベルギー 60. シリア 61. ブルキナファソ 62. ハイチ 63. デンマーク 64. セルビア 65. ドミニカ 66. マラウイ 67. ポルトガル      68. ラオス 69. チェコ 70. トルコ 71. セイシェル 72. イラン 73. モンテネグロ     74. タンザニア       75. ボリビア 76. アルジェリア     77. モーリシャス      78. ボスニアヘルツェゴビナ 79. フランス         80. カナダ          81. ラトビア 82. ウクライナ       83.ザンビア 84. モルディブ (2010年4月28日現在) ・国連 批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=257 +++++ 4.CBRネットワーク関連情報 ・CBRに関する世界の情報をWHOがHPで公開しています。詳しくはこちらをご覧下さい。 HP: http://www.who.int/disabilities/cbr/global_database/en/index.html  ・CBR AP Networkの事務局を担当するAPCD(アジア太平洋障害者センター)は定期的ニュースレターを発行していますが、4月号より、CBR ネットワークのコーナーを設けて、アジア太平洋地域のCBRに関する情報を提供してくれることになりました。JANNETが1月に行ったインド現地研修会の報告を載せてもらいましたのでご覧ください。 JANNET HP: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/cbr_net/index.html +++++ イベント情報 1.平成22年度 JANNET総会 インド現地研修会報告会 (2010年5月30日予定) JANNETでは5月30日に、平成22年度総会およびインド現地研修会報告会の開催を予定しております。先日、MLで送付した詳細について、ご不明な点等がありましたら事務局までお問い合わせ下さい。 当日配布資料は、完成次第、送付させていただく予定です。 日時: 2010年5月30日(日) 13:00〜17:00 (報告会:13:00〜14:00) 場所: 早稲田奉仕園 日本キリスト教会館 6階 ABC(〒169-8616 新宿区西早稲田3-2-1) 会場HP: http://www.hoshien.or.jp/index.html 主な議題案: 報告事項(会員の動向等)、役員改選、事業計画案、予算案等の検討事項、会員の活動報告など (注) 議決権のある会員でご欠席の場合は、委任状を5月14日(金)までにFAXしてください +++++ 2.高齢障害者のための移動と交通に関する国際会議 2010年6月2日から4日にかけて、香港リハビリテーション協会(Hong Kong Society for Rehabilitation)が第12回 高齢障害者のための移動と交通に関する国際会議12th International (Conference on Mobility and Transport for Elderly and Disabled Persons (TRANSED 2010) )を開催します。会議のテーマは、「すべての人のための持続可能な交通と旅行(Sustainable Transport & Travel for All)」です。参加方法等、詳細については、http://www.transed2010.hk/front/ をご覧下さい。 +++++ 編集後記 1月より、内閣府の障がい者制度改革推進会議が始まり、松井会長とともに参加している、7回の会議を経て、障害者の権利条約に基づいておおよその問題点についての討議が終了した。しかし、当初から時折話題にはなった国際協力は議題の中には取り上げられずにきたので、緊急提議を行い是非とも審議に含めるように要請した。内閣府が行った「平成21年度障害者施策総合調査」では、約50%がアジア太平洋諸国の障害者との交流を希望し、過半数が何らかの情報交換を希望していた。日本の障害者の国際協力・国際活動への関心はこのように非常に高いという背景もあり、おりから、JDF(日本障害フォーラム)はポスト第2次アジア太平洋障害者の十年としての、2013年からの「権利条約推進の十年」を提唱しようとしている。このような動きと合わせても、是非新しい政権の中で障害分野の国際協力がきちんと位置付けられてほしいと願っている。 松井会長によれば、現在のところ障害者基本法を含め、わが国の障害関連法には国際協力に関する規定はなく、現行の障害者基本計画(2003〜2012年度)に「国際協力」が含まれている根拠は、基本法ではなく、わが国が共同提案国となった「第2次アジア太平洋障害者の十年(2003〜2012年)」の政策ガイドラインである「びわこミレニアムフレームワーク(BMF)」にあるという。つまり、第2次アジア太平洋障害者の十年が2012年に終了しその後に続くものがなければ、障害者基本計画においてすら「国際協力」の項目がなくなることもありうるという「お寒い状況」にある。今までの障害者の国際協力分野での取り組みを継続・拡充していくことは、JANNETにとっても緊急課題である。 編集委員: 中西 由起子 (アジア・ディスアビリティ・インスティテート) +++++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。 団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 Email: eueno@dinf.ne.jp URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/