JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第239号 8月号 2023年8月31日発行 ―目 次―  トピックス 〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 1. 第5回アジア太平洋CBID会議参加報告 株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング 主任コンサルタント(障害と開発)/JICA「モンゴル国障害者就労支援制度構築プロジェクト」業務主任者 労働政策担当 千葉 寿夫 〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 2. 「第5回アジア太平洋CBID会議」参加報告:カンボジアの「障害」を取り巻く状況 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 主任研究官 山口 佳小里 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 2.第26回アジア知的障害会議(マカオ)参加ツアーのご案内 イベント情報 1. グローバルフェスタJAPAN2023 2023年9月30日(土)・10月1日(日) 2.第45回総合リハビリテーション研究大会 2023年11月10日(金)・11日(土) トピックス 〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 1. 第5回アジア太平洋CBID会議参加報告 株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング 主任コンサルタント(障害と開発)/JICA「モンゴル国障害者就労支援制度構築プロジェクト」 業務主任者 労働政策担当 千葉 寿夫   私はモンゴルで独立行政法人国際協力機構(JICA)の「障害者就労支援制度構築プロジェクト(通称DPUB2)」で業務主任を務めており、株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング(KRC)に所属しています。プノンペンで開催された第5回アジア太平洋CBID会議に、DPUB2の発表者および本会議の国際運営委員会メンバーとして参加しました。2つの立場から参加した感想をお伝えします。 会議テーマは、「CBIDを通したコロナ禍・後における障害者の社会的・経済的エンパワメントの強化」で、優良事例の共有、参加者の連携促進、CBID方針の検討を通して、より効果的なCBID実施のため開催されました。22カ国から約350名の参加者で、「プノンペン宣言」が採択され成功裏に終了できたことを、運営委員の一人として嬉しく思います。 アジア太平洋地域では、かつて「アジア太平洋障害者の10年推進NGOキャンペーン」があり、現在のCBID会議はその代替的機能を果たしています。しかし世界保健機関(WHO)が提唱したCBRマトリックスは、CBR/CBIDの概念を分かりやすく示す一方で、概念が拡大し、国際運営委員の中でもCBID定義に多様性が見られました。その結果、発表内容が多岐に渡り、発表者の選考基準も委員により異なっていたように思います。第6回会議は2027年にネパールで実施されますが、この課題は継続されると思います。 私の発表は、会議3日目の全体会4「コロナ禍およびコロナ・パンデミック後の好事例・証拠・イノベーション」、ジョブコーチ就労支援サービスの中間成果報告をさせて頂きました。ジョブコーチに関する発表は3件あり、専門性を有した障害者就労支援事例が注目されていると実感できました。モンゴルでは26人のジョブコーチが48人の障害者を支援し12人が就職したこと(2022年12月時点)、ジョブコーチは助成金を受け活動していること、障害者法定雇用率制度の納付金が財源になっていることを伝えると、会場から多くの質問がありました。一般的に途上国では政府助成金は少なく、NGOは寄付や自主財源で活動しているため、今回の発表は興味深かったようです。 CBIDの発展を考えると、NGOの草の根活動だけでなく、政府との連携事業が今後重視されるように思います。障害者権利条約の目標を達成するために、途上国政府の自主財源事業、NGO連携が増加することを期待しています。     〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 2. 「第5回アジア太平洋CBID会議」参加報告:カンボジアの「障害」を取り巻く状況 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 主任研究官 山口 佳小里 2023年3月に開催された5th Asian Pacific Community-Based Inclusive Development (CBID) Congressにおける初日のプレナリーセッションにおいて、カンボジアの状況に関するご報告があり、障害統計や政策等についてご紹介いただきました。 障害統計に関して、調査により若干数値は異なるものの、2019年の国勢調査では、5年以上何らかの障害を持っているカンボジア人は689,457人(4.9%)で、障害の程度別では、軽度な障害を持つ者が約4%、中〜重度がそれぞれ1%未満と報告されました。特筆すべき点は、2019年の国勢調査を含む複数の調査において、障害統計に関するワシントングループの設問(Washington Short Set of Questions on Disability)を用いていることでしょうか。ワシントングループの設問(ショートセット)は、視覚、聴覚、歩行・移動、認知、コミュニケーション、セルフケアに関して、困難の程度を4段階で回答するもので、国際的に広く用いられています。障害の種類や重症度別のデータが得られることで、より正確にニーズを把握することが可能になると考えられます。本会議の他のセッションにおいてもワシントングループの設問を扱ったものがあり、関心の高さがうかがえました。 政策に関しては、国家障害者戦略計画(National Disability Strategic Plan: NDSP) 2019-2023や、インクルーシブ教育に関する国家行動計画2019-2023の紹介や、物理的インフラのアクセシビリティに関する省庁間省令(2018)、障害者の運転免許証発行に関する省庁間省令(2020)、各省庁および州知事に対し、障害者が利用しやすい通路やその他の公共建築物を維持することを表明する書簡(2022)など、近年の動向が紹介されました。これまでの成果として、テレビ放送に手話通訳が導入されたこと、障害をもつ方の就労が促進されていること、COVID-19に関しては多くの障害をもつ方にもワクチン接種が複数回なされたことなどが報告されました。また、障害関連セクターのマネジメントに関する報告があり、国レベル・州レベルの障害行動協議会(Disability Action Council: DAC)を中心とした、障害関連団体・組織や政府の関連機関・部門を含むネットワークにより、関連団体や障害を持つ方々が公的な協議・会議や研修に出席し、政策立案等に関与できる枠組みがあることが報告されました。 カンボジアの障害を取り巻く状況をとらえられる、貴重な報告でした。   ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 187 (2023年8月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en 2.第26回アジア知的障害会議(マカオ)参加ツアーのご案内 アジア知的障害連盟では、1973年以来、会員国の持ち回りで2年ごとに、会議を開催してきました。今回は第26回にあたり中国のマカオで開催します。前回の第25回アジア知的障害会議は、フィリピンのマニラでしたが、コロナ感染症の影響で、オンライン会議のみの開催になりましたので、現地で対面での開催は、2019年の第24回のネパールのカトマンズでの開催以来、4年ぶりの開催になります。 この会議では、知的障害、発達障害のある当事者の皆さんによる意見発表、体験の交流も活発に行われます。当事者、支援者、家族、専門家・行政等の関係者が一堂に会して、思いと知恵を語り合い、分かち合って、真の共生社会づくりを目指しましょう。 【会議概要】 大会期間:2023 年11 月27 日(月)〜 11 月30日(木) 主催:アジア知的障害連盟 テーマ:Realization, Nurturance, Development ? Living by Values プログラム:11/27に登録、11/28日〜29日会議、11/30日はスタディーツアー、観光、夜に晩餐会 言語:英語、日本語 会議登録料:《一般参加者》・早期申込み(〜9/15):USD400 ・9/16以降:USD450 《障がい者とその随行者》・早期申込み(〜9/15):USD250 ・9/16以降:USD300 【ツアー期間】 2023年11月27日(月)〜12月1日(金) 5日間 旅行代金:《羽田空港発着の場合》145,000円(1人あたり/エコノミークラス利用) ツアー申込締切:2023年9月15日(金) ※詳細は、以下のホームページをご覧ください https://jldd.jp/project/project-10633/     【会議に関するお問い合わせ】 公益社団法人 日本発達障害連盟 アジア会議全般担当:芳野(よしの) 〒114-0015 東京都北区中里1-9-10 パレドール六義園北 402号室 e-mail:yoshino@jldd.jp (メールでお問い合わせください。) 【ツアーに関するお問い合わせ・お申し込み】 株式会社JTB横浜支店 営業二課 担当:西村・谷亀・佐藤 〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町3-29-1 第6安田ビル6階 TEL:045-316-4602   e-mail:jtb_yokohama_operation@jtb.com イベント情報 1.グローバルフェスタJAPAN2023 2023年9月30日(土)・10月1日(日) 「グローバルフェスタJAPAN」は、国際協力活動、社会貢献活動、SDGsなどに取り組む官民様々な団体が一堂に会する国内最大級の国際協力イベントです。 今年のテーマは、 “世界をつくる国際協力。仲間は多い方がいい!” 気候変動やウクライナ情勢による影響など、世界のどこかで起きた危機は、決して「対岸の火事」ではありません。日本が、途上国の開発を含む世界が抱える課題の解決に協力することは、国際社会での日本の信頼を高め、協力しあう関係を築く上でも重要です。本年6月には開発協力大綱が改定されました。開発課題が山積する中、様々な主体がその強みを持ち寄り、解決策を共に創り出していくことが求められています。  今年は日本ASEAN友好協力50周年などの周年事業の年です。また、SDGs達成に向けた中間年でもあります。本フェスタを通じて、諸外国への理解が深まるとともに、より良い世界をつくるため、国際協力に参加する仲間が増えていくことを期待いたします。   <開催概要> 日時:2023年9月30日(土)・10月1日(日)10:00-17:00 開催テーマ:「世界をつくる国際協力。仲間は多い方がいい! 」 実施形態:参加者が来場する対面形式とオンライン配信を両立したハイブリッド形式 場所:リアル会場:東京国際フォーラム(ホールE2/ロビーギャラリー) JR線「有楽町駅」から徒歩1分、「東京駅」から徒歩5分 東京メトロ有楽町線「有楽町駅」(B1F地下コンコースにて連絡) オンライン:下記特設サイトに当日オンライン会場を設置します。「オンライン会場」ボタンよりご参加ください 入場料:無料 主催:グローバルフェスタJAPAN2023実行委員会 URL: https://gfjapan2023.jp/ ※JANNETは、10月1日(日)14時より「サブステージ(オンライン配信)」で 手話講座を出展します!どうぞ拡散・ご参加ください! 事務局:グローバルフェスタJAPAN2023実行委員会運営事務局 (株)プランニングオフィス エスエムエス 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-5-2 BUREX麹町B1F Mail:globalfesta_exhibit@plan-sms.co.jp 2.第45回総合リハビリテーション研究大会 2023年11月10日(金)・11日(土) 国連総会で採択された障害者権利条約は、日本においても2014年に批准され、障害分野の全体に広がりつつあります。また、昨年夏には、国連障害者権利委員会によって、日本の権利条約の履行状況が初めて審査され、その結果が総括所見(勧告)としてとりまとめられました。 権利条約や総括所見に、総合リハビリテーションを重ねた場合にどんな景色が見えてくるのだろう、これにチャレンジしようというのが今研究大会の趣旨です。まずは、リハ関係者を含む参加者に権利条約とその関連動向を正確にお伝えし、そのうえで、権利条約と総合リハビリテーションの対話と交流が深められればと思います。障害観や支援観を今一度振り返り、明日からの実践の着眼点を磨く機会となれば幸いです。 【第45回総合リハビリテーション研究大会 −障害者権利条約と総合リハビリテーション− 】 https://www.normanet.ne.jp/~rehab/2023/ 日時:2023年11月10日(金)〜11月11日(土) 会場:戸山サンライズ2階大研修室(東京都新宿区戸山1-22-1)    会場地図 https://www.normanet.ne.jp/~ww100006/tizu.htm 参加費:一般3,000 円、学生1,000 円 主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 生涯学習:日本作業療法士協会生涯教育制度ポイント      日本言語聴覚士協会生涯学習ポイント ■お申し込み・お問い合わせ 申し込み方法などについては、こちらをご覧ください。 https://www.normanet.ne.jp/~rehab/2023/45moushikomi.html 「第45回総合リハビリテーション研究大会」事務局 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1  (公財)日本障害者リハビリテーション協会内 TEL:03-5273-0601 FAX:03-5292-7630 E-Mail:rehab@dinf.ne.jp ■大会プログラム (順不同・敬称略) 1日目:11月10日(金) 10:00〜10:10   主催者挨拶 (公財)日本障害者リハビリテーション協会会長 10:10〜11:00 調講演「わかりやすい障害者権利条約―日常の実践にどう生かす」 藤井 克徳 (特非)日本障害者協議会代表/大会実行委員長 11:00〜12:00 鼎談 「権利条約がもたらしたもの、もたらすもの」 田中 伸明 (福)日本視覚障害者団体連合/弁護士/JDF政策委員長 北村 弥生 長野保健医療大学特任教授 藤井 克徳 (特非)日本障害者協議会代表 12:00〜13:00 昼休み 13:00〜16:00 シンポジウム1 多様性を認め合う社会に 〜権利条約と総括所見の課題から パネリスト: 南 由美子 (一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 土橋 喜人 金沢工業大学教授 赤松 英知 きょうされん常務理事 黒岩 海映 弁護士 座長: 田中 伸明 (福)日本視覚障害者団体連合/弁護士/JDF政策委員長 増田 一世 (特非)日本障害者協議会常務理事 2日目:11月11日(土) 10:00〜12:00 国内の重要課題に関するセミナー 〜権利条約の視点から日々の取り組みを考える 1.精神障害分野をめぐって 講師: 岡田 久実子 (公社)全国精神保健福祉会連合会理事長 座長: 洗 成子 (公社)日本精神保健福祉士協会副会長 2.優生保護法問題をめぐって 講師: 板原 愛 弁護士/優生保護法被害東京弁護団 座長: 遠藤 愛 文教大学人間科学部臨床心理学科准教授 12:00〜13:00 昼休み 13:00〜16:00 シンポジウム2 権利条約と総合リハの交流と対話〜当事者と専門職が、向き合い、語り合い、明日を展望する パネリスト: 高岡 徹 横浜市総合リハビリテーションセンター長 藤原 久美子 DPI女性障害者ネットワーク代表 村井 千賀 (一社)日本作業療法士協会 常務理事/石川県立こころの病院 認知症疾患医療センター副所長 家平 悟 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会 事務局長 座長: 栗原 久 (一財)フィールド・サポートem.代表理事/日本福祉大学実務家教員 佐藤 聡 (特非)DPI日本会議事務局長/JDF幹事会議長 16:00〜16:10 次回開催地挨拶 閉会挨拶 伊藤 利之 (福)横浜市リハビリテーション事業団顧問/総合リハビリテーション研究大会常任委員長 *プログラムは予告なく変更することがあります 編集後記 JANNETメルマガ8月号を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 皆様、残暑お見舞い申し上げます! 今年の夏は暑い! どうしても暑い!寝ても覚めても暑い! 世界の平均気温が史上最高となった7月、国連のグテレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と警告したとのこと。 この尋常じゃない暑さを何とか乗り越え、あるいはやり過ごし、又は呆然と見送り、過ごしやすい秋を、行動制限のない秋を、元気に迎えてまいりたいものですね。 どうかご自愛くださいませ。 (伊藤 丈人/JANNET広報・啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上