JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第238号 7月号 2023年7月31日発行 ―目 次―  トピックス 〜第17回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. 第10回国際アビリンピック(フランス・メッス大会)報告 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)障害者雇用開発推進部長 村田 裕香 〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 2. 第5回アジア太平洋CBID会議参加報告 国際医療福祉大学 教授/国際リハビリテーション研究会 代表 河野 眞 〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 3. 第5回アジア太平洋CBID会議(カンボジア)に参加して 東洋大学社会学部社会学科 助教/Learning Crisis研究会事務局長 松崎 良美 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第18回「リハ協カフェ」  2023年9月22日(金) 2.グローバルフェスタJAPAN2023 2023年9月30日(土)・10月1日(日) トピックス 〜第17回「リハ協カフェ」登壇報告〜 1. 第10回国際アビリンピック(フランス・メッス大会)報告 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)障害者雇用開発推進部長 村田 裕香 ※去る2023年7月14日に開催した、(公財)日本障害者リハビリテーション協会主催『第17回「リハ協カフェ」』にてご登壇いただいた内容を、まとめていただきました。 「アビリンピック」は「アビリティ」(職業技能)と「オリンピック」を合わせた造語であり、障害者の職業能力の向上を図り、雇用の促進を図ることを目的とした大会です。アビリンピックは日本を発祥とし、国際アビリンピック連合の創設から現在まで、日本が一貫して会長国、事務局を務めています。日本人としても大変誇らしく思える大会です。 このアビリンピックの国際大会である「国際アビリンピック」は、東京で第1回大会が開催された後、概ね4年に1度、世界各地で開催されてきました。そして本年3月22〜25日にフランス・メッスで、記念すべき第10回国際アビリンピックが開催されました。当初、第10回大会は、2021年にロシアでの開催が予定されていましたが、コロナで延期、その間にロシアのウクライナ侵攻が始まり、その後の世界情勢を受けて中止を余儀なくされました。このため、多くの選手・関係者がこの大会を待ち望んでいました。 8か月という短い準備期間で進められ、またコロナ禍ではありましたが、世界27か国・地域から44競技種目に329名の選手が参加し、日本からも17種目に30名の選手が参加しました。結果、日本選手団は、金賞1名、銀賞4名、銅賞3名と、8名が入賞する好成績を収めました。 第10回国際アビリンピックにおける日本選手団の奮闘の映像はユーチューブ動画でもご覧いただけます。 (フルバージョン) https://www.youtube.com/watch?v=n9brgfy1Znw (ダイジェスト版) https://www.youtube.com/watch?v=NihgRDm3cUM 本年度の全国アビリンピックは11月17〜19日に、愛知県国際展示場で開催されます。会場で観覧いただくことも、WEBでのご視聴も可能です。皆さまのチャレンジを、マスコットキャラクター「アビリス」とともに、お待ちしております。       〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 2. 第5回アジア太平洋CBID会議参加報告 国際医療福祉大学 教授/国際リハビリテーション研究会 代表 河野 眞   少し時が過ぎてしまいましたが、今年3月15日〜17日にかけてカンボジアのプノンペンで開催された第5回アジア太平洋CBID会議に参加して来ました。CBR(Community-Based Rehabilitation)からCBID(Community-Based Inclusive Development)へと名称を一部変更しつつ4年に一度開催されてきたこの会議に、筆者自身は幸運にも第1回を除く計4回に参加することが出来ています。 この間、常に感じ続けてきたのは参加者のエネルギーです。それは元々、障害インクルーシブな社会の実現へ向けた個々の参加者のエネルギーの強さがあると思いますが、参加者同士の触発を通して会議の場で一層大きなエネルギーが生み出されている面もあるように毎回感じて来ました。目的や志を同じくする一方で、障害当事者・コミュニティ住民・行政関係者・リハビリテーション専門職その他の異なる背景を持つ人たちが混じり合い交流することで生まれるエネルギーであるように思います。それは、仮想的で一時的なものではあるけれども、障害インクルーシブな社会が実現したらこんなものになるのではないかと思わせる、ワクワクするような場と時間の経験でもあります。 そんなふうにこれまでと変わらぬエネルギーを感じたアジア太平洋CBID会議ですが、一方で、過去の会議との違いもいくつか気になりました。 一つには、いくつかの常連国からの参加者の姿が見えなかったことです。例えば、アフガニスタンからは毎回多くの参加者があったと記憶していますが、今回は参加がなかったように思います。もちろん自国の政情の影響と思われますが、筆者個人の勝手な印象として明るいムードメーカーの多いアフガニスタンからの参加者がいなかったことは少し寂しく感じました。その他、南太平洋島嶼国の人たちも今回はほとんどいなかった印象です。 また、前回のモンゴル大会辺りからその傾向を感じているのですが、発表を聴く限り、「行政組織やその代替機関としてのNGOがコミュニティを場として展開する活動としてのCBR/CBID」という色合いが濃くなっているように思いました。それによって、学術的に枠組みや方法論の整った発表が増えているのは良い面かも知れませんが、一方で、障害当事者やコミュニティ住民による発表は減った印象です。Community-Based Inclusive Developmentという意味において、コミュニティや障害当事者の主体性が見えにくくなっている印象と言えるかもしれません。ちゃんと数えたわけではないので間違った印象なのかも知れませんが。 次回は4年後にネパールで開催されるとのことです。その時はまた、多様な国から多様の背景を持つ人たちが集まり、祝祭的な雰囲気の中で障害インクルーシブな社会のありようを実感できる機会になればと願います。     〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 3. 第5回アジア太平洋CBID会議(カンボジア)に参加して 東洋大学社会学部社会学科 助教/Learning Crisis研究会事務局長 松崎 良美 COVID-19感染拡大もあって、2020年度以降、対面での学会開催は国内外ともに制限がかけられてきた中、とても久しぶりの対面での国際会議ということもあって、その意味でも非常に嬉しい気持ちで、第5回アジア太平洋CBID会議に参加してきました。しかも私にとっては、初めてのCBID会議、初めてのカンボジアということで、緊張と高揚感の入り混じった形でプノンペンの地に足を踏み入れたのでした。 今回のCBID会議では、Learning Crisis研究会のまなキキ・プロジェクト(以下、まなキキ)の活動を口頭報告で紹介してくる機会を持つことができました。Learning Crisis研究会は、COVID-19感染拡大を受け、障害や事情があって学びづらさを抱えている子どもたちの学びの支援を目指して立ち上げられた研究会です。2021年からは遠隔会議システムを活用したオンラインの家庭学習支援「まなキキ・フォスタープラン」に取り組んでおり、今回は、その取り組みについてご報告させていただきました。 「まなキキ・フォスタープラン」の構想とは、「学び」をきっかけにして、また「学び」を通じて、地域とともに若い世代を育てていく基盤づくりを目指すものです。障害のある子どもたちや大学生の「学び」がその本人たちにとっての「個人的な問題」なのではなく、社会全体の「危機」であって、その危機に抗していくために、地域とどう協働していくことができるのか、実践的に取り組んできた内容をシェアしてくることができました。 「まなキキ・フォスタープラン」の活動を支えてくれているものの一つが、地域の障害者就労支援施設とコラボレーションして作ったコーヒーやナッツの売り上げです。障害のある人たちが「作り手」として丁寧に製品を生み出し、その製品の売り上げの一部が家庭教師役をする大学生たちの有償ボランティア代にあてられます。地域のイベントなどに、まなキキも出店して活動紹介などをしてきましたが、地域の方がたに対して、障害者就労支援施設の作り手のみなさんの紹介や製品の魅力を伝えていくことにも至り、活動が地域の中での新たな出会いやつながりを持つきっかけにもなっていた、という実感もありました。手探りながら進めてきたこうしたこうしたまなキキの活動が、「CBIDの理念と重なるところがありますね」と上野悦子さん(日本障害者リハビリテーション協会)にアジア太平洋CBID会議をご紹介いただき、今回の報告に至ったのでした。 CBIDでも、COVID-19が人々の暮らしに与えた影響について、さまざまな立場から報告がされていました。障害のある人たちが、COVID-19感染拡大を受けて一層周縁化されてしまったということばかりでなく、支援者/医療従事者たちも、COVID-19の予防策や感染経路が未知であったがゆえに、不安や緊張感の中にあったことが指摘されていました。それでも、限られたデバイスをコミュニティの中で活用していくことの可能性や、障害のある人たちが感染予防の情報発信の担い手となっていった取り組みなど、障害のある人と障害のない人とがつながり合っていった経験や工夫がシェアされ、大変勉強になることばかりでした。 また、報告をきっかけに、他の参加者の方々と食事をご一緒させていただいたり、ふとした機会に声をかけていただくなど、参加者の皆さんとの交流の機会にも本当に恵まれました。「地域に根差す」とは、同じ時間をともに過ごす人たちが、少しでも居心地よく居るための工夫や配慮であって、それをいかに持続可能な形で発展・展開させていくか、なのかもしれません。これといった正解を指し示すことは難しいものですが、参加されていた方々の活動報告ひとつひとつ、実際の参加者の方々のたたずまいや声の掛け合いなどからも、多くを学ぶことができた機会となりました。今回の機会を通じて出会ったすべての皆さまに心からの感謝と御礼をお伝えしたい気持ちです。ありがとうございました。   ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 187 (2023年7月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.第18回「リハ協カフェ」 2023年9月22日(金) 日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、コロナ禍においても国際交流の火は消してはいけないとの思いから、関係者への情報提供を行うべく、リモートによる報告会「リハ協カフェ」を立ち上げ、2020年8月より隔月で開催してまいりました。今回は第18回目の開催です。 第18回は、福祉機器関連の最新の国際動向ならびに、国内の福祉機器の動向(3Dプリンタで作成する自助具)につきまして、国立障害者リハビリテーション研究所福祉機器開発部長(リハ協国際委員)の井上剛伸氏、同研究所福祉機器開発部福祉機器開発室長の硯川(すずりかわ)潤氏よりご報告いただきます。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。 ◆日時:2023年9月2日(金)13:30〜15:15 ◆会場:リモート開催(Zoom) ◆主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ◆参加費:無料 ◆定員:100名 プログラム(敬称略) 13:30-13:35 開会挨拶 君島淳二(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:15 報告1「福祉機器関連の最新の国際動向について」(仮) 発表者:井上 剛伸氏 (国立障害者リハビリテーション研究所 福祉機器開発部長) 14:15-14:25質疑応答 14:25-15:05 報告2「3Dプリンタで作成する自助具について」 発表者:硯川 潤氏 (国立障害者リハビリテーション研究所 福祉機器開発部長 福祉機器開発室長) 15:05-15:15質疑応答 15:15    閉会 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【発表者プロフィール】 ・井上 剛伸 氏 (国立障害者リハビリテーション研究所 福祉機器開発部 部長) 【略歴】 1989年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。 1989年より国立(身体)障害者リハビリテーションセンター研究所福祉機器開発部にて、福祉機器に関する幅広い研究に従事。1996年〜1997年 科学技術庁在外研究員派遣制度にてトロント大学派遣。2004年〜2007年 東京大学工学部客員助(准)教授。 日本技師装具学会,日本生活支援工学会,日本リハビリテーション工学協会,ライフサポート学会,日本機械学会,日本人間工学会,IEEE,AAATE,RESNA等の会員。社会保障審議専門委員会(生活機能分類専門委員会)委員。介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 座長。博士(環境学)[東京大学]。 ・硯川 潤 氏 (国立障害者リハビリテーション研究所 福祉機器開発部 福祉機器開発室 室長) 【略歴】 2009年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了、博士(情報理工学)。 同年、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を経て、国立障害者リハビリテーションセンター研究所福祉機器開発部研究員。2013年同福祉機器開発室長、現在に至る。 2011年より(独)科学技術振興機構さきがけ研究者を兼任(「情報環境と人」領域、2015年3月まで)。先端的福祉機器の開発・評価、情報通信技術を活用した福祉機器の臨床評価支援手法の開発、障害者の防災対策支援などに従事。自身も電動車椅子ユーザであり、研究者・当事者双方の立場から障害者の自立支援に取り組んでいる。 電気学会、ライフサポート学会、日本リハビリテーション工学協会、各会員。 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.jsrpd.jp/cafe18/ 申込受付:2023年9月21日(木)15:00まで ※情報保障が必要な方は、9月14日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。  【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp 2.グローバルフェスタJAPAN2023 2023年9月30日(土)・10月1日(日) 「グローバルフェスタJAPAN」は、国際協力活動、社会貢献活動、SDGsなどに取り組む官民様々な団体が一堂に会する国内最大級の国際協力イベントです。 今年のテーマは、 “世界をつくる国際協力。仲間は多い方がいい!” 気候変動やウクライナ情勢による影響など、世界のどこかで起きた危機は、決して「対岸の火事」ではありません。日本が、途上国の開発を含む世界が抱える課題の解決に協力することは、国際社会での日本の信頼を高め、協力しあう関係を築く上でも重要です。本年6月には開発協力大綱が改定されました。開発課題が山積する中、様々な主体がその強みを持ち寄り、解決策を共に創り出していくことが求められています。 今年は日本ASEAN友好協力50周年などの周年事業の年です。また、SDGs達成に向けた中間年でもあります。本フェスタを通じて、諸外国への理解が深まるとともに、より良い世界をつくるため、国際協力に参加する仲間が増えていくことを期待いたします。   <開催概要> 日時:2023年9月30日(土)・10月1日(日)10:00-17:00 開催テーマ:「世界をつくる国際協力。仲間は多い方がいい! 」 実施形態:参加者が来場する対面形式とオンライン配信を両立したハイブリッド形式 場所:リアル会場:東京国際フォーラム(ホールE2/ロビーギャラリー) JR線「有楽町駅」から徒歩1分、「東京駅」から徒歩5分 東京メトロ有楽町線「有楽町駅」(B1F地下コンコースにて連絡) オンライン:下記特設サイトに当日オンライン会場を設置します。「オンライン会場」ボタンよりご参加ください 入場料:無料 主催:グローバルフェスタJAPAN2023実行委員会 URL: https://gfjapan2023.jp/ 事務局:グローバルフェスタJAPAN2023実行委員会運営事務局 (株)プランニングオフィス エスエムエス 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-5-2 BUREX麹町B1F Mail:globalfesta_exhibit@plan-sms.co.jp      編集後記 去る7月7日から16日まで韓国・済州島にて第19回世界ろう者会議が開催されました。コロナ禍中から、約4年振りにようやく世界中の仲間たちが対面で再会する事ができた会議でした。100ヵ国以上、約2000名が集まり大いに盛り上がりました。開会式では元国連事務総長、Ban Ki-Moon氏の講演があり、またウクライナろう協会会長も来韓、ウクライナに於ける戦火の中、ろう者に対する状況や支援等及び世界の仲間から支援の御礼についてお話がありました。 現在、国連に加盟している国は193ヵ国ですが、世界ろう連盟に加盟しているろう団体の国は136ヵ国です。4年後の次回開催までにはすべての国が加盟できるよう取り組みたいとお話しがありました。中でもアジア諸国に未加盟国が多いので支援できたらと思っています。その頃の日本に於いては、2回目の障害者権利条約の総括所見に向けて取り組んでいる事でしょうか。 (嶋本 恭規/JANNET広報・啓発委員長) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上