JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第235号 4月号 2023年4月28日発行 ―目 次―  トピックス 1. 更なる障害インクルーシブ開発の促進をめざして -JANNET設立30周年を迎えて- 障害分野NGO連絡会(JANNET) 会長 清水 直治 〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 2. カンボジアで開催された、第5回アジア太平洋CBID会議に参加して 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)/障害分野NGO連絡会(JANNET) 企画委員長 野際 紗綾子 3. 第5回アジア太平洋CBID会議 発表報告 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)プログラム・コーディネーター 峯島 昂佑 インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1. 第16回「リハ協カフェ」 〜RI100周年記念対談〜 2023年5月10日(水) トピックス 1. 更なる障害インクルーシブ開発の促進をめざして -JANNET設立30周年を迎えて- 障害分野NGO連絡会(JANNET) 会長 清水 直治 「国連・障害者の十年(1983-1992)」に続く取り組みとして、アジア太平洋地域の障害のある人たちへの認識を高め、障害者施策の質の向上をめざして、「国連・アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)」総会において、「障害者の完全参加と平等の実現」を目標に掲げた第T期「アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)」が採択されました。 次いで、地域内の障害者のための、インクルーシブでバリアフリーかつ権利に基づく社会の形成に向けた行動目標「びわこミレニアム・フレームワーク」のもとに第U期「アジア太平洋障害者の十年(2003-2012)」が、その後さらに十年延長が決議され、行動計画「インチョン戦略」のもとに第V期「アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)」が展開されました。その中間年である2017年には、「北京宣言と行動計画」が発出され、障害の視点からのSDGs行動計画・実施推進と「障害者の権利条約」との関連が指摘されました。 こうしたなかで、障害分野NGO連絡会(JANNET)は「インクルーシブ社会の実現を目指して、アジア太平洋地域を中心に、障害分野の民間での国際協力や交流を推進するための、国内の関係団体の間での情報交換および協力・連携の強化、推進を図るとともに、海外における関係する国際団体との情報交換及び経験交流の推進を図る」(規約)ことを目的に1993年12月に設立され、今年設立30周年を迎えることができました。 設立以来、JANNETが継続的に取り組んできたテーマの一つにCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)研究があり、CBR/CBID(地域インクルーシブ開発)の実践や障害インクルーシブ開発に関する課題を重点的に検討し、2015年東京で開催された「第3回アジア太平洋CBR会議」では、「CBID東京宣言」が採択されました。 「JANNET中期計画(2021-2025)」は今年中間年に当りますが、「障害がある人も誰も取り残さないインクルーシブ社会の実現」を理念として、「日本の民間団体による障害分野の国際協力を一層推進させる」ことを目標に、3つの成果を明示し、それらを評価する指標を掲げ、その達成をめざす活動を企画・実施しています。また、これらの成果を確認する指標としてSDGsのインディケーター(指標)の改善も視野に入れながら、活動を行っています。 今後とも、障害インクルーシブ社会の形成に向けて、これまでのアジア太平洋地域の障害がある人たちとの30年を礎に、これからの新たな10年のJANNETの構築に尽力したいと考えます。皆様の益々のご支援とご協力をお願い申し上げます。(なお、12月には「JANNET設立30周年記念大会」を開催する予定です) 「JANNET設立30周年記念大会」コンセプト: 障害インクルーシブ社会の形成に向けて -アジア太平洋地域の障害がある人たちとの30年を礎に、新たな10年のJANNETを-   〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜 2. カンボジアで開催された、第5回アジア太平洋CBID会議に参加して      特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)/障害分野NGO連絡会(JANNET) 企画委員長 野際 紗綾子 2023年3月15日から17日まで、カンボジアの首都プノンペンで、「第5回アジア太平洋CBID会議」が開催されました。2006年にタイでスタートしたこの会議は、マレーシア、日本、モンゴルと、およそ4年に一度の頻度で開催され、今回で5回目を迎えました。そしてこの国際会議に、JANNETから参加させていただいたことに、心から感謝しています。 会議名に「CBID」のアルファベットが入っていますが、こちらは、地域に根差したインクルーシブな開発(Community Based Inclusive Development)の頭文字をとった略称となっています。本大会の詳細や「CBID」については、脚注のウェブサイト等から確認できますが 、本国際会議は、毎回、地域に根差した、障がいインクルーシブな開発に関する様々な発表や報告が行われ、参加者間のネットワークが広がる場になっています。 今回のメインテーマは、「パンデミックとその後における、障がい者のための社会的・経済的エンパワーメントの強化」で、 サブテーマは、1. パートナーシップの強化、2. 障がい者の福祉や充足した暮らし(Well-being)と社会的保護の促進、3. インクルーシブな経済の促進、4. パンデミックおよびその後におけるCBID 関連の優れた事例及び革新的な取り組みの4本柱で構成されていました。また、会議期間中は常に、全体会、分科会、ポスターセッション、ブース展示、昼食会、夕食会、フィールド見学等で賑わっていました。 過去4回の会議と比較した上での決定的な違いの一つは、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大の影響を受けた後で、初めて、対面形式で開催された会議ということでしょうか。会議場では久々に再会した参加者が喜びを分かち合っていました。他方で、アフガニスタンやミャンマー等の政治的混迷が続く国や地域からの参加者や、タジキスタン等の経済的に苦しい状況が続く国からの参加者はほとんど見当たらず、未来の参加を切に願っています。 JANNETからは、研修・研究委員長の伊藤智典さんと私が「日本における障がい者NGOネットワークの パートナーシップ評価」についてのポスタープレゼンテーションを行いました。振り返りと評価の結果、JANNET会長、事務局と各専門委員会と参加団体との密なコミュニケーションや、Zoom等のオンライン会議システムを通じた調整の場の活用や、日々のメールのやりとり等を通じた信頼関係の醸成や、リハ協等の関連イベントとの協力体制の構築等が、新型コロナウィルスの感染拡大が続く中でも、JANNETのネットワークとしての活動の活性化につながったこと、加えて、中期計画の策定プロセスを通じて、国際的な潮流を踏まえつつ、今後の方向性や活動計画が明確になったことなどを報告しました。JANNETのようなネットワーク型組織が、集学的な意見交換の場を創出していることはユニークな点であり、アジア太平洋の他国においても少しでも参考になればと願っています。 AARからは、カンボジア事務所、ラオス事務所、ミャンマー(パアン)事務所から、駐在員と現地職員がそれぞれ1名ずつ、東京事務所から私の計7名が参加しました。カンボジアとパアン事務所ではインクルーシブ教育についてのポスタープレゼンテーションを行い、ラオス事務所はCBIDについてのセッション発表を行いました。詳しくは、本メールマガジンにてそれぞれの発表者が数カ月にわたってご報告する予定ですので、お楽しみにしていただけましたら幸いです。 次回会議は、4年後に、ネパールで開催される予定です。世界に平和と安定がもたらされ、一人でも多くの障がい当事者を含む参加者が集まることを祈念しています。   *第5回アジア太平洋CBID会議オフィシャルサイト(英語):https://cbid5.dac.gov.kh/ CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)・CBID(地域に根ざしたインクルーシブ開発)の意味や参考資料(日本語、一部資料は英語):https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/intl/cbr.html       〜第5回アジア太平洋CBID会議参加報告〜  3. 第5回アジア太平洋CBID会議 発表報告 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)プログラム・コーディネーター 峯島 昂佑 3月 15 日から17日にかけてカンボジアのプノンペンで行われた「第5回アジア太平洋CBID会議」に出席し、私たちの活動について発表をしてきましたので報告いたします。 私は人道支援団体AAR Japanに所属しており、ラオスのビエンチャン事務所にプログラム・コーディネーターとして勤務しています。ラオスでは、「障がいインクルーシブな地域社会推進事業」を実施しています。ラオス北部の都市ウドムサイを訪問し、収入手段を持っていない障がい者が生計を立てることができるようキノコ栽培などの支援活動を行うとともに、障がい啓発活動や公共施設のバリアフリー化整備などを行っています。 今回の国際会議では、3月15日のパラレルセッション2.1に登壇し、私たちビエンチャン事務所の活動内容について報告しました。具体的には、ビエンチャン事務所として実施してきた実績の報告や、現行事業の概要および支援内容の説明と今後の見通しについて活動写真を用いて発表しました。多くの聴衆の方々が来場し、大変緊張感の漂う雰囲気の中で発表できたことは、非常に貴重な経験となりました。また、共同発表者として、当会ビエンチャン事務所の現地スタッフも1名帯同し、共に登壇しました。彼女自身初めて大きな会場で発表する機会を得ることとなり、資料の作成や発表の練習など、入念に準備を重ねてきました。その成果もあり、円滑に発表を実施することができ、また同じ登壇者である他団体の方々にも理解ある温かい言葉をかけていただきました。 別日には、他団体や有識者の発表に参加し、それぞれの活動について報告や実績を聞くことができました。私たちの事務所は障がい者への生計支援を軸として活動しているため、特定疾患への支援活動やジョブコーチ支援など、類似の活動に関する新しい見解や方法を知ることができる貴重な機会となりました。また、最終日に行われたガラディナーでは、ラオス政府関係者や日本から参加された方々と意見交換することができ、事務所として成長していかなければならないことを改めて認識することができました。 私は以前に国立病院機構や療育センターで理学療法士として働いていました。障がい者支援を志しAAR Japanに入職し、このような国際会議へ参加するなど貴重な経験を得ることができ、理学療法士として成長できたと感じています。本会議での経験を活かし、今後も社会的に脆弱な立場にある方々へ多くの支援を実施することができるよう、邁進していきたいと思います。 ******************************************************************************** インフォメーション 1.国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数164/ 締約国・地域数 186 (2023年4月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1. 第16回「リハ協カフェ」 〜RI100周年記念対談〜 2023年5月10日(水) 日本障害者リハビリテーション協会の国際委員会では、コロナ禍においても国際交流の火は消してはいけないとの思いから、関係者への情報提供を行うべく、リモートによる報告会「リハ協カフェ」を立ち上げ、2020年8月より隔月で開催してまいりました。今回は、2回のシンポジウムも含めて第16回目の開催です。 第16回は、5月19日から23日まで中国・北京にて開催される、RI100周年記念式典を前に、来日されるJoseph Kwok氏 (RI社会委員会副委員長)をお招きし、RIに貢献された松井亮輔氏(法政大学名誉教授)との対談をお届けいたします。 関係者以外にも広くご参加を募ります。皆様のご参加をお待ちしております。 日時:2023年5月10日(水)13:30〜16:30 会場:リモート開催(Zoom) 主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 参加費:無料 定員:100名 ※逐次通訳あり。 プログラム(敬称略) 13:30-13:35 開会挨拶 君島淳二(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 常務理事) 13:35-14:55 報告「RIの100年のあゆみとアジア太平洋地域で果たしてきた役割」 登壇者:Joseph Kwok氏 (RI社会委員会副委員長) 14:55-15:40 対談「アジア太平洋地域においてRIに求められる今後の取組と日本(の関係団体・関係者)に期待される役割」−RI活動の再活性化に向けて― 登壇者:Joseph Kwok氏 (RI社会委員会副委員長) 松井 亮輔氏(法政大学 名誉教授) 15:40-15:50休憩 15:50-16:30質疑応答(予定) 16:30 閉会 *逐次通訳が入ります。 *プログラムの内容に変更がある場合がございます。ご了承ください。 【発表者プロフィール】 Joseph Kin Fun Kwok 氏(RI社会委員会副委員長) キン・フン・ジョセフ・クオック氏、博士 【主な経歴】 2006年 糸賀一雄記念賞受賞 「アジア太平洋障害者の十年」推進者(Promotor)として国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)から表彰 2020年 ポール・ハリス・フェロー認証(ロータリー財団) 2020年THE ONE International人道支援大賞 ロータリー第3450地区最終審査会審査員 香港復康連会(Hong Kong Join Council for Persons with Disabilities)副会長 香港復康会(Hong Kong Society for Rehabilitation)副会長 香港特別行政区リハビリテーション諮問委員会 元委員長 香港機会平等委員会 元委員 マカオ特別行政区リハビリテーション十年計画作成プログラム 元主席顧問 国際リハビリテーション協会 社会委員会 元委員長、現副委員長 国際アビリンピック連合 実行委員 アジア太平洋障害フォーラム副会長 松井 亮輔 氏(法政大学 名誉教授/日本障害者リハビリテーション協会 副会長) 【略歴】 米国ノースイースタン大学大学院リハビリテーション・アドミニストレーション研究科を修了。 社会福祉法人日本キリスト教奉仕団 アガペ身体障害者作業センター 所長 独立行政法人 雇用・能力開発機構・職業能力開発総合大学校 福祉工学科 教授 国際労働事務局(ILO)アジア太平洋地域担当 職業リハビリテーションアドバイザー 労働大臣認可法人日本障害者雇用促進協会(現・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)審議役 北星学園大学社会福祉学部教授 法政大学現代福祉学部教授 【申込方法】 以下のサイト、またはFAXにてお申し込みください。 https://www.jsrpd.jp/cafe16/ 申込受付:2023年5月9日(火)15:00まで ※情報保障が必要な方は、4月27日(木)までにお申し込みください。 満員になり次第、締め切りとなりますので、ご了承ください。 お名前、ご所属、ご住所を明記の上、手話通訳、要約筆記、点字資料など必要があれば申し込み時にお知らせください。 参加登録された方へZoomのURLをお送りいたします。  【お申し込み、お問い合わせ先】 《公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 国際課》 担当:村上・仁尾(にお) 〒160-0052東京都新宿区戸山1丁目22番1号 TEL: 03-5273-0601   FAX: 03-5273-1523    Eメール:kokusai@dinf.ne.jp    編集後記 アジア太平洋CBID会議が対面開催で開かれた記事を読み、ふと、数年前にフィリピンで行った盲ろう者支援プロジェクトを思い出しました。オンライン会議はすっかり浸透した感がありますが、画面越しでは伝わらない熱量や空気感といったものは、対面でこそ得られるものです。前述の支援プロジェクトは、現地に赴き、決められた時間枠の中で、日本の盲ろう者支援の情報を伝えてきましたが、こうした情報は、セミナー外での挨拶や会話、同じ部屋で共にした食事、現地の気候(夏のフィリピンの室内温度設定の低さには驚きました)といった要素と結びつき、人の心により深く刻まれるのではないかと思います。国際情勢はまだまだ不安定ですが、障害分野の人的交流が、今後も順調に回復することを期待したいところです。 (小林 真悟/JANNET広報・啓発委員長) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会  〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上