JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第151号 3月号 2016年3月30日発行 ―目 次―  トピックス 1.シンポジウム「遺贈と国際協力NGOのあり方を探る」が開催されました  名取 智子(公益社団法人日本キリスト教海外医療協力会 事務局次長) 2.NGO×企業連携シンポジウム「SDGsでソーシャルイノベーションを」 藤森 みな美(特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)広報・渉外グループ) 3.ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は、古くて新しいチャレンジ 林 かぐみ(アジア保健研修所(AHI))               インフォメーション 1. JANNET第2回あり方検討会を開催しました              2. アカウンタビリティーセルフチェック2012を実施しました 3. アジア保健研修所(AHI) 英文ニュースレターの紹介 4. 「Community-based Inclusive Development Good Practice」(日本の事例)と「Good Practices on Community-based Inclusive Development in Asia and the Pacific」の掲載サイト紹介 5. World Down Syndrome Day (世界ダウン症の日) 6. 国連障害者の権利条約批准国情報 イベント情報 1.第2回CBR世界会議 2.世界自閉症啓発デー(4/2~4/8は、発達障害啓発週間です) 3.JOCS国際保健医療勉強会「弱さがまく種の物語」 4.持続可能な開発の主流化を目指して:G7サミットプロセスを視野に  トピックス 1.シンポジウム「遺贈と国際協力NGOのあり方を探る」が開催されました 名取 智子(公益社団法人日本キリスト教海外医療協力会 事務局次長) 2016年2月25日に公開シンポジウム「遺贈と国際協力NGOのあり方を探る」が外務省主催、公益法人に関するNGO連絡会・遺贈分科会7団体(アジア協会アジア友の会、オイスカ、ケア・インターナショナルジャパン、シャンティ国際ボランティア会、ジョイセフ、日本キリスト教海外医療協力会、日本国際民間協力会)の共催で開催されました。遺贈分科会メンバーは、オイスカが受託した外務省主催「NGO研究会」に協力し、日本の国際協力NGOが遺贈・相続財産・生前贈与による寄付先として広く受け入れられるようになるための方法を調査研究してきました。今回のシンポジウムでは、公益法人協会理事長太田達男氏の基調講演の後、遺贈分科会による調査報告、それを受けてのパネルディスカッションが行われました。 調査報告から、既存支援者と丁寧なコミュニケーションにより信頼関係を構築・維持することが、遺贈・相続財産の寄付につながることがわかりました。また、遺贈市場そのものを拡大するためのナショナル・キャンペーンが世界16ヵ国で実施され成功しており、日本国内でも分野や法人格を超えて協力して取り組んでいくことが提案されました。 パネルディスカッションでは中村雅男弁護士から、NGOと弁護士が協力して、寄付っていいなという雰囲気づくりを進めたいとのコメントがありました。アジアコミュニティセンター21の鈴木真里氏は受入れ体制をつくることの必要性に言及しました。デロイトトーマツコンサルティングの長川知太郎氏は、「データベースを、団体のファンの顔や姿が浮かぶように活用する。ファンがどのような人か、今後ファンになってくれる人がどのような人かを把握する。そして、その団体にしかない価値を、活動を通して支援者に提供することが、将来の遺贈につながる。」と述べました。遺贈を社会で広く認知してもらうために、今後もNGOが協力して取り組んでいければと思います。 2. NGO×企業連携シンポジウム「SDGsでソーシャルイノベーションを」 藤森 みな美(特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)広報・渉外グループ) 2016年、ミレニアム開発目標(MDGs)が一定の成果を生んで終了し、世界は新たなゴールに向けて走り始めました。2030年までに全世界が取り組むべき17のゴールと169のターゲットを掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成のためには、各国政府、国連機関、企業、NGOなど、多様なセクターがマルチ・ステークホルダーで連携・協働していく必要があります。 (一社)グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと、NGOと企業の連携推進ネットワーク(事務局:JANIC)は、2/24にシンポジウム「SDGsでソーシャルイノベーションを~マルチ・ステークホルダーで実現する持続可能な社会~」を共催で開催し、NGO、企業、関係者含め約150名が参加しました。 基調講演に東京大学の武内教授から「持続可能な開発目標(SDGs)」について全体的なお話をいただき、その後キリンホールディングス(株)の森田氏からSDGsに向けたCSV注1(Creating Shared Value:共通価値の創造)の取り組みを、(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの堀江氏からNGOとしてSDGsにどう取り組むかについてご紹介いただきました。パネルディスカッションでは、ファシリテーターに(一財)CSOネットワークの黒田氏をお迎えし、キリン森田氏、SCJ堀江氏に加えて消費者の立場からサステナビリティ消費者会議の古谷氏もパネリストとしてご登壇いただき、様々な立場からSDGsにどう取り組み、イノベーションを起こしていくかを話していただきました。みなさまからたくさんのメッセージをいただきましたが、共通のメッセージは、「持続可能な社会を実現するためには、マルチ・ステークホルダーで取り組む必要がある」ことでした。 全ての組織、全ての人が知恵や意見を出し合い、連携・協働しながら、SDGsという共通の目標の達成を目指すことが出来れば、2030年はきっと希望にあふれる社会となっているはずだと、今回のシンポジウムで感じることができました。JANICは今後もSDGsの達成に向け多様なセクターと共に歩んでいきます。 注1:2011年にマイケル・ポーター教授によって提唱された、ビジネス戦略として社会的課題の解決に資するとされる製品・サービスや事業を開発し、経済的価値とともに社会的価値を創造しようとするものの概念(参考「CSRとCSVに関する原則」http://www.csonj.org/csr-csv/) 3.ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は、古くて新しいチャレンジ 林 かぐみ(アジア保健研修所(AHI))  数年前から国際保健の分野で聞かれるようになったこの用語。2013年以降日本政府もUHC推進の牽引役を果たし、2015年9月に国連で採択された、持続可能な開発目標(SDGs)にもUHCが盛り込まれました。その背景と私たちにとっての意味合いを考えてみたいと思います。   そのまま意味を考えると、「だれでも保健医療サービスにカバーされていること」 WHOでは、ensure that all people obtain the health services they need without suffering financial hardship when paying for them.  <すべての人が必要とする保健サービスを経済的な負担に苦しむことなく、受けられることが確保されていること>と定義されています。UHCをめぐって医療保険制度などが語られることが多いようですが、それらは本来めざす状態を生み出すための方策です。  あれ、すでにそういうことって言われてきたよねと思われた方があるかもしれません。 "Health for All by 2000" 2000年までにすべての人に健康を が謳われたのは、1978年のアルマアタ宣言でした。そこでは、住民の参加に基づき、コミュニティレベルで予防に向けた取り組みを政府が責任を持って取り組もうと打ち出されました。  それから40年近くを経て今なぜUHCか?そこにはいくつかの新たに重要となった要素があると思われます。最も大きなものは「財政」。お金という側面です。保健医療を持続的に提供し、さらに貧困層の人たちにとって医療費負担を減らすためには、当然ながら、財源が必要です。先進国による援助資金がしぼむ傾向にある中で、途上国内で国内財源をいかに確保していくか。公的医療保険制度や各種の税金によって賄う仕組みが論じられています。  このようにそれぞれの国の保険制度や財源というと、私たちがどう関わるという問題ではないようにも思えます。しかし、保健医療サービスを受ける側、つまり個々人や地域の人たちにとってみれば、必要と判断することができ、そのときには医療機関に行くことができ、そこではちゃんとした治療をしてもらえて、そのために多額の借金をしなくてもよいということです。これはしばしば、4つのAで表されます。 Accessibility そこに行けること、Availability そこにあること、Affordability 払えること、Acceptability 受容できること です。最後のAには、そこで治療してもらいたいと思うかどうかといったことも含まれるでしょう。  AHIがつながりを持っているフィリピンのNGOは、ルソン島山間地に住む先住民の人たちの間で保健ボランティアの育成をしています。彼らの集落から町の中心部の診療所まで車で1時間以上かかります。先住民であることから社会的な差別もなお残っています。そんな中保健ボランティアの女性たちは、薬草など伝統的な知恵を復活させ、身近にあるもので自分たちの健康を守る力を高めつつ、一方で行政の保健医療サービスやフィリピンの公的健康保険制度について正しい情報を持ち、町の診療所とのつながりを強くしていこうとしています。交通費をカバーするために掛け金を出し合って草の根保険の仕組みも2年ほど前に作りました。その名前は彼らが伝統的に続けてきた相互扶助の仕組みに由来しています。そういった自助努力も彼女たちの誇りにつながっているのでしょう。町の診療所のドクターたちとのやりとりも臆することがなくなってきたそうです。  いろいろな要因がからみ、健康を手に入れることが難しい状況が途上国のみならず日本においてもあります。制度でカバーされていない部分、取り残されている人たちに目を向け、必要なサービスを提供することも必要でしょう。同時に、取り残されている人たちを生み出している社会的な排除の問題に対して、制度を変えていくよう要求していく取り組みもNGOに求められると思います。Healthを手に入れるためのいくつもの壁をどう取り除くか。壁を生み出している社会的な排除の問題として取り組むことが私たちに求められていると思います。 2014年度外務省NGO研究会(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとNGO)の成果物として作成されたUHCハンドブックを参考にさせていただきました。 読者の皆さんもぜひご参照ください。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000079718.pdf         ************************************************************************************** インフォメーション 1.JANNET第2回あり方検討会を開催しました 3月23日に第2回あり方検討会が開催されました。1月20日の第1回あり方検討会では、JANNETの強み、弱み、役割などについて話し合いましたが、第2回は2020年を見据えたJANNETの目標や目標に向けた今後の活動について、参加者22名が4つのグループに分かれてディスカッションを行いました。パラリンピックに焦点を当てた取り組みや斬新な広報戦略が紹介され、新鮮なブレインストーミングができました。 2.アカウンタビリティーセルフチェック2012を実施しました JANNET事務局は、3月2日にJANICの立会いのもと、アカウンタビリティーセルフチェックを行いました。これは、「組織運営基準」「事業実施基準」「会計基準」「情報公開基準」の4分野から成る41指針項目を実施しているか否かに自己評価するもので、34項目については実現している、6項目は実現していない、1項目が該当なしと判断しました。この結果を踏まえて、組織や事業の中長期計画の策定、行動基準の策定、事業評価の実施、組織運営にかかる内規の改訂、環境配慮への取り組みを実施し、組織強化に繋げていきたいと思います。 3.アジア保健研修所(AHI) 英文ニュースレターの紹介 AHIの英文ニュースレター最新号「No.98 Resilience – Relief – Rehabilitation(Feb.2016)」が発行されました。2015年4月に発災したネパール地震への対応として、AHIでの研修経験があるネパール人たちが復興支援事業を展開しています。         http://ahi-japan.sakura.ne.jp/english/html/modules/pico/index.php?content_id=72 4.「Community-based Inclusive Development Good Practice」(日本の事例)と「Good Practices on Community-based Inclusive Development in Asia and the Pacific」の掲載サイト紹介 Asia-Pacific Development Center on Disabilityのホームーページに掲載されています。 ○「Community-based Inclusive Development Good Practice」(日本の事例の紹介) http://www.apcdfoundation.org/?q=content/community-based-inclusive-development-good-practices ○「Good Practices on Community-based Inclusive Development in Asia and the Pacific」     http://www.apcdfoundation.org/?q=content/good-practices-community-based-inclusive-development-asia-and-pacific 5.World Down Syndrome Day (世界ダウン症の日) 3月21日は世界ダウン症の日。今年で11回目迎え、ダウン症への理解を深める意識啓発活動やイベントが各国で行われました。      https://worlddownsyndromeday.org/wdsd-2016 6.国連障害者の権利条約批准国情報   ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 標記条約批准国の国と地域の数は以下の通りです。    計:160の国と地域  (2016年3月30日現在)  国連批准国リスト(英語): https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=TREATY&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.第2回CBR世界会議  ◆テーマ: Empowering and Enabling(エンパワーし、可能にする) ◆日時: 9月27日(火)~29日(木)  ◆場所: マレーシア クアラルンプール ◆参加費:350ドル(7月31日まで) 400ドル(7月31日以降) ◆発表要旨提出: 4月30日まで ◆主催: CBRネットワークマレーシア ◆詳細・申込: http://www.2ndcbrworldcongress.com/ 2.世界自閉症啓発デー(4/2~4/8は、発達障害啓発週間です)  ① 東京タワー・ライト・イット・アップ・ブルー ◆日時:4月2日(土) 15:00 ~ 22:00 ◆場所:東京タワー ② 世界自閉症啓発デー2016・シンポジウム ◆テーマ: つながる、世界とみんなの青い光 ◆日時: 4月9日(土) 10:00 ~ 16:30  ◆場所: 全社協・灘尾ホール(東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル内) ◆主催: 厚生労働省、一般社団法人日本自閉症協会 ◆詳細・申込: http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/index.php?action=pages_view_main&page_id=166 国連による取り組みはこちら⇒ http://www.un.org/en/events/autismday/index.shtml 3.JOCS国際保健医療勉強会「弱さがまく種の物語」  ◆日時: 4月16日(土) 15:00 ~ 17:00   ◆場所: JOCS東京事務局(東京都新宿区馬場下町1-1 早稲田SIAビル4階) ◆参加費: 学生500円、一般1,000円 ◆主催: 日本キリスト教海外医療協力会(JOCS) ◆詳細・申込: https://jocs.or.jp/event/healthstudy/5344.html 4.持続可能な開発の主流化を目指して:G7サミットプロセスを視野に ◆日時: 4月16日(土) 14:00 ~ 17:30    ◆場所: 国連大学 ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区神宮前5-53-70) ◆参加費: 無料 ◆主催: SDSN JAPAN ◆詳細・申込: http://ias.unu.edu/jp/events/upcoming/mainstreaming-sustainable-development-toward-the-2016-g7-summit-and-beyond.html#overview 編集後記  またもやヨーロッパで大きなテロ事件が発生しました。様々な考えがあるとは思いますが、最終的に武力に頼る社会に成らないように、問題の本質を理解したり、解決策を探ったりし続けることの大切さを改めて深く感じています。そのことは障害分野においても全く同じことだと思います。多くの志が報われる社会に少しでも近づけるように、非力ではありますが努力できればと思います。  私はこの夏若い視覚に障害のある高校生とイギリスに研修旅行にいきます。その研修においても、異文化・移民・障害者の生活など様々なことを学び、将来を担う世代に持続可能な共生社会をめざして活動するきっかけとなることをねがっています。 青松 利明(国際視覚障害者交流・協力ネットワーク 代表)  JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/