JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第136号 2014年11月27日発行 ++ 『第3回アジア太平洋CBR会議にむけて』 When, I was in Japan for the preparation of third CBR Asia Pacific Congress, which will be held in Tokyo, 2015, I met with different people and organizations in Japan. I heard that in the emergency situation the person who can reach you first; that person could be your neighbor or from your community where you live. These voices from Japan strengthened my belief more towards living in the community. The sense of belonging to a community is an essence and root cause of community development. The Community development must start from the community internally, not from the outside or external element. This sense of belonging ultimately will lead towards the inclusive communities where everyone can feel part of the community on an equal basis, regardless caste, gender, race or disability. Being from a rural area of Pakistan, within a tribal setup, I am strongly bonded with my community. Such bond and affiliation is helping me in inclusive community development. Now these days, I am working in the community and engaged developing capacities of youth. I believe, third CBR Asia Pacific Congress in Japan will bring more stories on community based initiatives and inclusive development. Ghulam Nabi Nizamani An Activist with Physical Disability <日訳>  2015年に東京で開かれる第3回アジア太平洋CBR会議の準備のために東京に滞在した際に、日本の様々な方たちそして団体にお目にかかりました。耳にしたのは、緊急事態に先ずあなたのところに駆けつけてくれる人がいる、その人は隣人であったりあなたが住んでいる地域の人でありうるということでした。日本からのこれらの声によって、地域社会で生きるべきだという私の信念がさらに強められました。地域社会への所属意識は地域開発の最重要点であり、根本要因です。地域開発は地域社会内部から始まるべきで、外部もしくは外的要因からであってはなりません。所属意識は、究極的には、階級もしくは性別、民族、障害に関わりなく平等な基盤で地域社会の一員であると感じられるインクルーシブな地域社会へと導きます。  私はパキスタンの同族から成る地方の出身ですので、地域社会に強く繋がっています。そのような絆と愛着はインクルーシブな地域開発で私の助けとなります。ここしばらく私は地域社会の中で仕事をし、若者の能力開発に携っています。日本での第3回アジア太平洋CBR会議は、地域に根ざしたインクルーシブ開発についてさらなる物語を生むことと確信しています。 グーラム・ナビ・ニザマニ 身体障害の活動家 『世界CBRネットワーク事務局長グーラム・ナビ・ニザマニさんから、開催準備に関わる人たちに障害者個人として連帯の意を表したいということでメッセージをいただきました。』 訳・注 中西由起子 ++ 目次 トピックス 1.地域ささえあいネットワーク作りに向けて−CBRセミナー・ワークショップ− 2.CBID事例集の最終的なまとめ方に関する意見交換会 3.JANNET研究会 マヤ・トーマスさん講演会 −CBIDの実践、インパクトの指標への考察等−  4.「日本熱帯医学会大会・日本国際保健医療学会学術大会」合同大会に参加して インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 ++ ◆11月1日から4日にかけて、世界的なCBR専門家であるマヤ・トーマス氏をお迎えして開催した3つの会について、各会ご参加の方々にご報告いただきました。 【以下、トピック1−3】 + トピック 1 地域ささえあいネットワーク作りに向けて−CBRセミナー・ワークショップ− 杏林大学保健学部 日本作業療法士協会国際部 河野 眞  今回のマヤ・トーマスさんジャパン・ツアーの最初のイベントは11月1日(土)に福島県白河市で開催されました。  愛知県から草の根ささえあいプロジェクトの渡辺ゆりかさんも迎え、マヤさんの「コミュニティにおけるインクルーシブ開発のためのネットワーク作り」という講演の後、渡辺さんをファシリテーターとして「できることもちよりワークショップ」を行なうという内容です。  このイベントでの経験は、講演の冒頭でマヤさんが紹介した、「早く歩きたいなら一人で歩きなさい。遠くまで行きたいなら一緒に歩きなさい」という西アフリカのことわざに見事に凝縮されていると感じました。  まずマヤさんの講演を通して、地域づくりにおけるネットワークの重要性やネットワーク作りの原則、CBRやCBIDとの関連などネットワークの理屈の面を学びました。続いて、提示された事例への支援をグループで検討するワークショップを通して、ネットワークの有効性を体験することができました。  特にワークショップでは、さまざまな背景を持つ人たちがネットワークに加わることで、いかに自由で豊かな支援の可能性が広がるか、参加者はみな実感したことと思います。  振り返りの中で指摘されていたことですが、提案された支援策のうち、特にインフォーマルな支援が参加者に好印象を与えていたようです。これは、フォーマルな制度や施策は充実しているものの、インフォーマルな支援は薄く乏しい、日本のコミュニティの現状を反映していたのかもしれません。  筆者の入ったグループは気持ちのいい人たちばかりで、グループワークの中で出てきたような支援をぜひこのチームでやってみたいと勝手に思ったりもしました。しかし、支援を自由に発想することと、その中のたった一つでも実現することの間には、もちろんまだ大きなギャップがあります。ワークショップの経験を実際のネットワーク作りにつなげるにはあと一押し二押し何かが必要となるようです。  「一緒なら遠くまで行けそうなことは分かったけれど、実際どうやって最初の一歩を一緒に踏み出すのか」  そこのところを今後は考えなくてはと感じています。 + トピック 2 CBID事例集の最終的なまとめ方に関する意見交換会 特定非営利活動法人エンパワメント沖縄  理事長 高嶺 豊  CBID(地域を基礎としたインクルーシブ開発)事例集の最終的なまとめ方に関する意見交換会は、2014年11月3日開かれました。CBRの世界的な専門家であるマヤ・トーマスさん及びアジア太平洋障害者センター所長二宮アキイエさん等を含む、国内外の50余の発表者及び関係者が集い、一日熱心に意見交換を行いました。  意見交換会は、まず全国から選ばれた10の事例(午前5事例、午後5事例)の実践者及び訪問者による報告、そして質疑応答が行われました。また、前半、後半の発表後、各々の実践についてCBIDとしての特徴の確認のための意見交換が行われました。  午前中は、社会福祉法人こころん、JHC板橋サンマリーナ、NPO法人いけま福祉支援センター、社会福祉法人一麦会・麦の郷、東近江・チームチャッカの報告があり、午後には、NPO法人ハックの家、社会福祉法人むそう半田、むそう東京、のわみ相談所、一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトの報告がありました。  事例報告には、様々な視点から素晴らしい取組が含まれていました。報告後、事例集を来年のアジア太平洋CBR会議に向けてどのように言語化していくかが話しあわれました。この事例集は、国内外の関係者へ日英両語で出版されます。各事例の特徴、共通する点、人間的なストーリーを含むべきだ等、様々な意見が出されました。  国際的視点として、ローカルリーダーの発掘、ビジネスモデルの導入、利用者と支援者の共感性、医療と福祉サービスの連携、都市部における人間関係の貧困、震災の経験、利用者(当事者)との共同発表、アウトプットの記述等が含められるべきだとの提言がありました。  マヤ・トーマスさんからは、発表された事例は全てCBIDの実践例であり、それはツイントラックアプローチを採用している点からも明確。日本では、社会的基盤が整備されている中で実施されているが、開発途上国では、貧困問題が大きな課題、障害問題もその中で取り組まれている。しかし、コミュニティ力や家族力がまだ健全で、NGOを中心にCBR活動がなされているとのことです。また、途上国のCBRサービスでは、軽度、中度の障害者への支援が中心であるが、日本での重度の障害者支援の取組は、今後途上国でも必要となるだろうとのことでした。 + トピック 3 JANNET研究会 マヤ・トーマスさん講演会 −CBIDの実践、インパクトの指標への 考察等− アジア保健研修所 清水 香子  11月4日、講師にCBR事業評価や能力開発の分野で著名なマヤ・トーマスさんを迎え開催されました。CBRの発展と意義、アジア太平洋CBR会議のテーマであるCBID(地域におけるインクルーシブ開発)の概念、CBR評価事例、課題と可能性についてお話しいただきました。  最初に、80年代に始まったCBRが、医療・教育分野におけるサービス提供型の個人へのアプローチから社会へのアプローチ=包括的・他分野、権利に基づく活動へと変化したこと、続けて2010年のCBRガイドライン策定、障害者権利条約においてその枠組みと哲学を実践する戦略として位置づけられたこと等、発展の歴史が述べられました。ここでマヤさんが強調されたのは、「CBRガイドラインはマニュアルではない。各地域の文脈に応じ実践者自身が読み替え、企画・実践するもの。科学的根拠のある評価を行うツールである」ということです。また「CBIDは障害に特化せずどの分野においても誰もが開発から排除されない社会を作ること。CBRはCBIDを達成するツールである」と説明されました。CBRの評価事例からの学びとしては、活動を持続的にする要素が述べられました。当事者と家族の積極性と行動力、地方行政の計画にCBRを組み込むなど既存の仕組みの利用、キーパーソンの能力向上とエンパワメント、権利に基づくアプローチ(Right based approaches)の理解促進、地域の住民組織と協働し障害以外の問題を含めること等です。マヤさんは、CBRは「中・低諸国および先進国においても、その新たな課題(都市化、非感染症疾患の増加、災害と気候変動、高齢化、貧困、重度・重複障害者への対応)に対応する戦略になる」と考えています。現在、開発概念等に障害を含めることは当然となり、行政や障害者団体との連携は容易になるなどCBRを取り巻く環境は進展しています。国内・国際的なネットワークによる学び合いも生じています。これを更に進めていくため、科学的根拠に基づくCBRの実践が求められるという言葉で発題が終わりました。  マヤさんが繰り返し触れていたのは、CBRの実践者が地域の分脈でCBRの概念を翻訳する大切さでした。それが評価をより具体的で明確な成果を示すものにしCBRの意義を確かにします。どんな概念や手法も、実践者と地域の関係者が自分たちの言葉で理解し同じ具体的な展望をもち、実践しなければ意味がないことを、再確認させられました。 + トピック 4 「日本熱帯医学会大会・日本国際保健医療学会学術大会」合同大会に参加して 日本理学療法士協会(新潟医療福祉大学) 古西 勇  11月1日から3日まで、東京都新宿区の東京女子医科大学弥生記念講堂(1日目)と国立国際医療研究センター(2、3日目)で、「第55回日本熱帯医学会大会・第29回日本国際保健医療学会学術大会」合同大会が開かれました。「官民連携時代における人材育成」というテーマの下、基調講演やシンポジウム、一般演題の発表などが行われました。  私は、日本国際保健医療学会の会員として参加し、一般演題のポスター発表を行うとともに、ミニシンポジウムの一つにも演者として参加させていただきました。そのミニシンポジウムのテーマは「Community-based RehabilitationからCommunity-based Inclusive Developmentの新時代へ」で、座長はJANNETの幹事・広報委員会委員長の中西由起子氏(アジア・ディスアビリティ・インスティテュート(ADI)代表)と長谷川幹氏(三軒茶屋リハビリテーションクリニック院長)のお二人でした。演者として、合澤栄美氏(JICA人間開発部高等教育・社会保障グループ社会保障課長)、長谷川氏、中西氏、そして私が加わり、約1時間半で、それぞれの発表に続いて、来場者の皆さんを交えての議論を行いました。  今回のミニシンポジウムの企画では、要約筆記と手話のそれぞれ専門の方に来ていただき、それらを用いて発表と議論の内容を口述と同時に来場者の皆さんに伝えるという、主催者側においても初めての「インクルーシブな」試みが採用されました。もちろん、それらの準備に尽力してくださった企画のコーディネーターの方や協力してくださった関係者の皆さんのおかげで実現できたものです。このような試みが学術的な大会でも自然発生的に行われることが、21世紀の社会では求められていると考えました。  演者の合澤氏には、「アジアにおけるCBRからCBIDへの新潮流とJICAの役割─人材育成への取り組みを踏まえて」と題して、障害のある人たちを地域社会に貢献できるリソースとしてとらえるというCBIDの考え方を分かりやすく説明していただきました。長谷川氏には、ご自身が代表をされている「脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会」の活動なども含めて、「主体性を軸にした援助」の視点について実例を通して説明していただきました。中西氏には、「危険をおかす自由と選択の自由の容認」など、障害のある人たちの願いからインクルージョンのための取り組みを考え直すきっかけを与えていただきました。私からは、日本の大学が途上国の教育機関と連携して、そこの地方行政とともにCBRを促進するということで、日本での教育のリソースとして活用している例を報告させていただきました。  会場の皆さんとの議論も、大変有意義なものでした。補聴器を使われている聴覚障害のある方からも率直なご意見をいただき、障害のある人たちと(今はまだ)そうでない人たちとの対話と気づきの重要性について、深く心に刻まれるよい機会となりました。                                                                  ++ インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )      標記条約批准国の国と地域の数は以下の通りです。               計:151の国と地域  (2014年11月25日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ 編集後記   今月のメールマガジンでは、2015年のCBR会議にもつながるさまざまな取り組みについて取り上げました。  2014年は日本の障害者権利条約の批准から始まった感がありますが、そろそろ一年の取り組みついて振り返る時期に差しかかりました。  来月12月は障害者週間をはじめ、障害関連の各種行事が目白押しです。読者のみなさんも、ご多忙の方が多いのではないでしょうか。  2015年から始まる、世界の新たな開発目標や、国際防災枠組みも視野に入れながら、引き続きご一緒に、日々の取り組みを重ねていきたいと思います。 原田 潔 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/