JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第135号 2014年10月31日発行 ++ 『第3回アジア太平洋CBR会議にむけて』 「専門性を日常性にいかす」地域の支援づくり 全国手をつなぐ育成会連合会  統括 田中 正博  私が33年前、地域に根ざした支援を作ろうと思い取り組んだのは、「24時間365日、いつでも支援します。」を売り文句にした「緊急一時保護の専門施設」づくりでした。国際障害者年が始まったばかりで、時代の風は「完全参加と平等」この実現を私も本気で信じてました。親がぎりぎり追い込まれて維持する生活。そんな親に何かあれば障害のある子どもの地域での生活は根こそぎ奪われてしまう。そんな日常になんとか地域で踏みとどまれる支援を作りたいとの一念でした。ところが当時、どこにもこの事業のモデルが無い。そんな時に出会ったのが、東大阪市で療育センターを地域生活の拠点にしようと取り組んだ中新井邦夫医師のドキュメント「たたかいはいのち果てる日まで」でした。  中新井先生の実践にも心打たれたのですが、本に書かれた次の文章は今でもバイブルです。「専門的なシステムと日常のかかわりが要るのです。必要な時に、ざあっと流れていける二重、三重の援助機構です。困っている時、緊急預かりや相談を受けるチーム、それから幼稚園や学校に出かけていってサービスをするチーム、住んでいる近隣で住みやすいようにできてるかどうかアプローチする訪問チーム。もろもろのサービスと、子どもと地域をコーディネイトするスタッフも要ります。」「乳呑子を抱え、老人を抱え、この地域で生きている人たちがさらに、たまたま障害を持って生まれた子を育てることになっても、そのことが苦しみにならずに、自然に共に生き合っていけるように。専門職とよばれる人間たちや行政システムとは、そもそも、そこに住む人たちが共に生き合っていけるための手だてを提供する立場にあるのではないか。邦夫は、幾度もくり返し口にしてきた「専門性を日常性にいかす」ということばの、具体化を、療育センターに試みようとしていたのだった。」  「専門性を日常性にいかす。」この言葉の意味を生かした取り組みを求めて行きたいと思います。CBRからCBIDに向かう時代に、気に留めておきたい言葉です。   ++ 目次 +  トピックス 1.「”Exclusion”から考える、インクルーシブなポストMDGs」  〜ポストMDGsの今が分かる!パネルトーク参加報告〜 2.グローバルフェスタに参加して 〜ミャンマーの作業所の紹介とカードの販売〜 3. 南太平洋医療隊のトンガ王国における活動報告 + インフォメーション 1.第10回JICA理事長表彰 受賞者・団体の決定 2."Statement on Disability Inclusion in the Third World Conference on Disaster Risk Reduction and Beyond" 3.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.JANNET研究会「マヤ・トーマスさん講演会」 - CBIDの実践、インパクトの指標への考察等 ? ++ トピック 1 「”Exclusion”から考える、インクルーシブなポストMDGs」 〜ポストMDGsの今が分かる!パネルトーク参加報告〜 独立行政法人 国際協力機構(JICA)アフリカ部 曽田 夏記  平成26年10月4日(土)、Beyond MDGs Japan及びアフリカ日本協議会の主催で、シンポジウム「ポストMDGsの今が分かる!」が開催されました。第一部でのポストMDGsに関する国連総会での進捗報告に続き、第二部では、「ポスト2015に期待すること」と題し、「企業」「学生」「環境」「ジェンダー」など、様々な立場から関係者が登壇、各々の発表に続き、約70名の参加者と活発な意見交換がなされました。私は、「今回は、ポスト2015を担う、若い世代に出て欲しいの!」という依頼者のひとことに背中を押され、「障害」分野のパネリストとして登壇しました。  ポストMDGsに関する様々な文書の中で、繰り返し強調されている一つの言葉があります。それは、「インクルーシブ(inclusive)な開発」というもの。私は、この言葉を目にし、耳にする度に、いつも一つのことを思っていました。それは、「インクルージョン(Inclusion)の前に、エクスクルージョンを(Exclusion)考えるべきなのでは・・・」という、想いでした。  障害当事者として、就職など、様々な場面で感じてきた壁。青年海外協力隊として活動していたフィリピンで見た、未曽有の大型台風から逃げ遅れ、命を失う障害者たちの現実。こうしたExclusionの状況がなくならない限り、インクルーシブな社会など決して達成できないのではないか―。私たちは、「インクルーシブ」と唱える時、Exclusionの問題に対し、しっかり目を向け、耳を傾け、「取り残される」立場の人たちの心に寄り添っていると、果たして言えるだろうか―。冒頭発表に与えられた時間はわずか7分。メッセージを、この想いだけに絞り、発信しました。  上述の問いかけは、私自身に対するものでもありました。今回のシンポジウムで強調されたのは、「私が動く→変える」ことの大切さ。「誰も、取り残されない社会」の実現に向けて、今後も行動を続けていけたらと思います。 + トピック 2 グローバルフェスタに参加して 〜ミャンマーの作業所の紹介とカードの販売〜 元全日本手をつなぐ育成会事務局長 宮武 秀信 さる10月4日、日比谷公園で開催されたグローバルフェスタJAPAN2014でJANNETのブースの一角をお借りし、ミャンマーの障がい者の作業所の紹介とそこで作られているグリーティングカードの販売をおこないました。ミャンマーは3年前の民主化でこれからの発展が期待されますが、障がい者福祉、教育はほとんど手付かずというのが現状です。個人的に7月にミャンマーにいく機会があり、その折、ミャンマーで唯一のパンナンエンという障がい者の作業所を訪問することができました。ヤンゴンの川向うのダリという村にあり、それまで行き場がなく家に閉じこもっていた青年たちの働く場としてつくられたそうで、皆さんの表情は明るく、そしてとてもなごやかな雰囲気のなかで働いていました。グリーティングカードはミャンマーの風物などをイラストした切り絵の裏に、これもミャンマーのさまざまな民族の織物を貼ったもので、切り絵の精緻さ、布地の色調などにセンスが光り、そのクオリティの高さに驚かされました。帰国後、このカードを日本で販売し作業所の運営に還元できないかと考えましたが、ミャンマーはまだ流通、送金のシステムができておらず、入手すること自体が難問でした。そこで、当てはありませんでしたが、ミャンマーの人たちが多く住むという高田馬場にいき、たまたま入ったミャンマー料理店で事情を話したところ、その店を介して帰国・来日するミャンマー人、そして日本人ビジネスマンなどのリレー・ボランティア(?)の輪ができ、現地からカードを入手することができたものです。 ブースではフイリッピン、ラオスなどの支援をしている皆さんと一緒で、また、日比谷公園一杯に広がるさまざまな国際支援の活動に接し、その幅の広さ、関わる人たちの熱さを感じた一日で、さらに、その中に「これからのミャンマー」も加わることができ大変嬉しく思いました。 + トピック 3 南太平洋医療隊のトンガ王国における活動報告 南太平洋医療隊 鈴木 千鶴 2014年8月4日〜9月12日6名参加 南太平洋医療隊は、JICAと共同で草の根技術協力事業パートナー型「トンガ王国における口腔保健のアプローチから生活習慣を改善するプロジェクト」を実施しています。プロジェクト開始から3回目の訪問です。 トンガ王国は世界有数の肥満国なので、口腔領域だけでなく全身の健康を考慮したプログラムを実施しています。         ババウ諸島にも訪問し、歯科スタッフだけでなくNCDナースも参加し、生活習慣の改善を指導できるよう技術支援をしています。 学校健診では、4つの中高学校の計1,032名に対して健診(内容は身長・体重・腹囲測定、歯科検診)、保健指導、質問調査を実施し、教員には血圧、血糖値測定も実施しました。 成人教室では、首相府33名、Westpac銀行48名で実施しました。健診、保健指導、血圧、血糖値測定、う蝕活動性検査※、唾液潜血検査を実施し、リスクに応じて歯科受診の予約をしました。 妊産婦は、火曜日毎に約30名がバイオラ病院を訪れ各科で健診を受けています。歯科では口腔ケアの講義をし、成人と同様のメニューを実施しました。 今年から保健省主催のオーラルヘルスウィークを開催し、国王も出席し教会から開催宣言を発した幕開けとなりました。 ワークショップでは、教育省大臣も出席し、前保健省大臣Tangi氏が基調講演を行いました。 4ヶ所でヘルスフェスティバルを開催しました。 早朝のウォーキングラリー(参加者37名)を開催し、毎日のラジオ体操の奨励を行いました。 ポエム大会では12校の小学校が参加し、口腔衛生や生活習慣改善について替え歌や劇を行いました。 ぬりえ大会は23の幼稚園が参加しました。 <障がい者施設>  毎年、OTA(通所施設)、ALONGA(入所施設)に訪問しています。OTAには毎週トンガ人歯科スタッフが訪問し保健指導を行い、JICAの隊員も派遣されている為、管理は行き届いています。今回はOTA 11名、ALONGA 14名に、健診、保健指導、質問調査、血圧測定、唾液アミラーゼテスト、口腔水分測定、フッ化物歯面塗布を実施しました。保健省歯科室において治療が必要な方に受診できる体制を整備する活動を推進していきます。 ※ う蝕活動性検査 唾液中に含まれている細菌を採取・培養して、その菌数に応じた変色の程度から口腔内の衛生状態を調べる検査。唾液量がすくなくなってくると、むし歯、歯周病、口臭、ドライマウス、舌痛症などが現れ、日常生活に支障を来すようになるため注意が必要。 ++ インフォメーション 1.第10回JICA理事長表彰 受賞者・団体の決定  国際協力機構(JICA)がおこなう国際協力事業に貢献・協力し、途上国の人材育成や社会発展に尽力した事業・個人・団体の功績をたたえる「第10回JICA理事長表彰」の受賞者・団体が決定し、表彰式が10月6日にJICA市ヶ谷ビルでおこなわれました。JICA理事長賞には7事業と個人2名が、JICA国際協力感謝賞には個人22名と7団体が選ばれました。 JICA理事長賞受賞・事業部門では、JANNET団体会員の全国盲ろう者協会が日本側として実施した「タシケント市における盲ろう者のコミュニケーション支援」(ウズベキスタン)が受賞しました。 他に福祉関係で賞(国際協力感謝賞)を受けたのは、社会福祉法人旭川荘でした。   2."Statement on Disability Inclusion in the Third World Conference on Disaster Risk Reduction and Beyond" 国連人権委員会のホームページに来年3月に仙台で開催される「第3回国連防災世界会議」について、障害インクルージョンのステイトメントが下記URLに掲載されています。 http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=15184&LangID=E 3.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )  標記条約批准国の国と地域の数は以下の通りです。                   計:151の国と地域(2014年10月30日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.JANNET研究会「マヤ・トーマスさん講演会」 - CBIDの実践、インパクトの指標への考察等 ? 来年9月に開催する第3回アジア太平洋CBR会議に先駆けて、CBRといえばこの方と世界に知られているマヤ・トーマスさんを講師にお迎えし、CBID(コミュニティにおけるインクルーシブ開発)を促進することの意義やCBIDの事例をお話しいただきます。質疑、ディスカッションの時間も予定しております。 現在も申込みを受付けておりますので、ぜひ皆様ご参加ください。 日時:2014年11月4日(火)午後6時−9時 会場:戸山サンライズ 2階 大研修室B  (TEL 03-3204-3611、FAX 03-3232-3621) ◆参加費(資料代):会員500円、非会員1,000円、学生500円 ◆お問合せ:JANNET事務局・佐々木 TEL 03-5292-7628、FAX 03-5292-7630 E-mail:sasaki.yuka@dinf.ne.jp ※本研究会の「詳細」および「申込方法」については、下記URLをご覧ください。   http://www.normanet.ne.jp/~jannet/kenkyukai/141104kenkyukai.html ++ 編集後記  毎年思うのですが、この時期はセミナーやワークショップなど講演会が目白押しです。その多くは東京で開催されるのですが、首都圏に住んでいるJANNETの会員でもなかなか興味があるものすべてに参加することは難しいのが現状です。 そのような人のために、Ustreamやウェブのビデオでの会議の模様が配信されています。実際その場にいるわけではないので、発言に対して会場がどのように反応しているかは残念ながらほとんどわかりません。しかし目の前に発言者がいてその顔を直接見ながら話を聞く事は、会場で舞台から遠く離れた自分の席からメモを取るよりも、ずっとよく内容が理解できます。画面の下にキャプションが流れるように編集されたビデオも多いので、一語一句残さず聞ける場合もあります。 特に日本語以外の会議ではこれはとても便利なことです。でも先日のジュネーブでの権利条約委員会では、韓国政府の発表を見ようと勇んで当日ビデオ配信を探したら、韓国語の手話通訳しかなかったということもありました。 中西 由起子 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/