JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第128号 2014年3月28日発行 ++ 目次  + トピックス 1.「アジア太平洋地域障害者10年 第1回ワーキンググループ会議」報告 2.「MDGsカウントダウン・ネットワーク会議2014 ポストMDGsとSDGs:最新動向を探る」出席報告 3.「コミかるカフェ作ろう!」第17回フィリピンにおける台風30号被災と支援活動報告 4.主役は被災女性自身−途上国と東北の女性が教えてくれたこと 〜「障害者権利条約批准記念特別フォーラム」リレートークより〜 5.「防災とポストMDGsに関する国会議員勉強会」参加報告 + インフォメーション 1.CBRガイドライン日訳CD完成 2.CBID国内事例集作成について 3.国連障害者の権利条約批准国情報 ++ トピック 1 「アジア太平洋地域障害者10年」第1回ワーキンググループ会議報告 宮本 一郎  全日本ろうあ連盟   2014年2月25日・26日に、韓国・仁川市の国連ESCAP−北東・東アジア小地域事務所で会議が行われました。 Kilaparti Ramakrishna代表、ナンダ社会開発部長、韓国政府・保健福祉省政策局副大臣ヨン・ジュ・パク氏らの挨拶により、会議が始まりました。  CSOワーキンググループの規則草案について検討議論が行われて、1日かけて、最終案がまとめられました。  次に、2022年までの仁川戦略実施のロードマップ案に関する議論が行われました。2015年予定の、災害に関する国際会議をはじめ、様々な国際会議が行われる際に、仁川戦略に則って、盛り込んで行くという具体的な行動が説明された後、意見などの議論が行われました。  他に、国連ESCAPにおいて、仁川戦略に関する取り組みの報告が行われました。韓国「Make the Right Real」基金の現状や、資金提供の協力依頼に関する話も出されました。「アジア太平洋障害者インクルーシブ・ビジネスESCAP笹川賞」の表彰式が2013年12月3日に行われたことの報告が出されました。  次回の2015年開催は、インド・デリー市と決まり、この会議が締め括られました。 + トピック 2 「MDGsカウントダウン・ネットワーク会議2014 ポストMDGsとSDGs:最新動向を探る」出席報告 金澤 真実 JANNET事務局   MDGsカウントダウン・ネットワーク会議2014が、2月28日に東京で開催されました。外務省NGO研究会の一環として、国際協力NGOセンター(JANIC)が実施したものです。テーマは、「ポストMDGs(*)とSDGs(**):最新動向を探る」で、講演とディスカッションが行われました。  初めに、◆国連開発計画(UNDP)広報官の西郡俊哉氏より「MDGsの達成状況とポストMDGsの検討状況について」、◆外務省国際協力局審議官/NGO大使の南 博氏より「SDGsオープン・ワーキング・グループに関する最新動向」、◆一般社団法人コンサベーションインターナショナル生態系政策マネージャーの名取洋司氏より「SDGsの検討状況について」、◆一般財団法人CSOネットワーク理事・事務局長の黒田かをり氏より「MDGsとポストMDGs策定に向けた各セクターの役割〜企業の取組を事例として〜」の4講演が20分ずつ行われました。国連、外務省、環境、企業といった講演者の背景から、MDGsの現状とポストMDGs、SDGsに向けた課題や取組みなどが話されました。  次に、出席者を6つのグループに分けディスカッションが行われました。@MDGs達成に向けて、どのような連携・取組をしていくか、AポストMDGs策定プロセスにどのように関わるのか、というテーマが示され約30分の話し合いの後、グループごとに発表しました。グループ発表をまとめると、MDGsについての啓発やアドボカシー、他分野NGO・企業・一般の人々との連携、障害分野などMDGsで取り残された課題へのアプローチや当事者の声を届けることなどの必要性が挙げられました。JANNETからは、松井会長、上野事務局長と金澤が出席し、それぞれのグループでMDGsやポストMDGsにおける障害課題について積極的に発言し、グループ発表や全体のまとめに反映されました。全体の出席人数は41名でした。 (*) MDGs:ミレニアム開発目標 (**) SDGs:持続可能な開発目標 + トピック 3 コミかるカフェ作ろう!第17回フィリピンにおける台風30号被災と支援活動報告 福田 能文 東京都中途失聴・難聴者協会コミュニケーション対策部 日本福祉大学大学院国際社会開発研究科 3月6日、東京都中途失聴・難聴者協会コミュニケーション対策部では、青年海外協力隊の曽田夏記さんを招いて標記のワークショップを開催しました。  コミかるカフェとは、名前がちょっと変ですが、難聴者のコミュニケーションの課題やコミュニティとの関わり方について、コミカルに話し合う「場」として、参加者が主体的に協力して築いていくことを狙いに2011年6月から始めました。そのきっかけは東日本大震災の後に開発教育ワークショップに参加し、話し合いの必要性を感じたためです。難聴者の生活と密接に関わるテーマを掲げて対話の機会を設けています。これまでは主に難聴者にとって大きな課題である職場のコミュニケーションや防災をテーマに開催してきました。  第17回は、曽田さんがフィリピンで起きた台風で被災したこと、復興にあたって聴覚障害者とともに支援活動に従事したことを知り、東日本大震災を風化させずに自分の問題として認識を持ち続けること、アジア、特にフィリピンの障害者のことをもっと知ってもらうことを目的に企画しました。 難聴者の世界的なネットワークは欧米の国々が中心となっています。アジアの国々では最近になって組織化、ネットワーク化が進んでいますが、日本では交流がまだありません。  カフェではその場で話し合われたことは外に漏らさないことをルールにしており、今回のお話の内容を報告することができず残念ではありますが、災害から1週間後にはボランティアが減る中で聴覚障害者は参加し続けたのは何故か?という曽田さんから問いかけがありました。2、3人のグループを作って話し合い、発表して全体で共有しました。  今後も自分に課している壁や社会の壁を破っていくきっかけとなる場を設けていきたいと思います。 + トピック 4 主役は被災女性自身−途上国と東北の女性が教えてくれたこと 〜「障害者権利条約批准記念特別フォーラム」リレートークより〜 宮原 契子 公益財団法人ジョイセフ 企画マーケティンググループ 課長  3月10日、衆議院第一議員会館にて、国連障害者の権利条約推進議員連盟と日本障害フォーラム(JDF)の主催により「障害者権利条約批准記念特別フォーラム」がおこなわれました。  条約の批准を記念したセレモニー(第1部)、「批准への期待と課題」をテーマにしたパネルディスカッション(第2部)に続いておこなわれた「東日本大震災から3年 いま求められるインクルーシブな復興」(第3部)のリレートークの報告者のおひとりであったジョイセフの宮原さんより、ご講演の概要を本メルマガにご寄稿いただきました。 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★    ジョイセフは創立以来、途上国の妊産婦と女性を守る活動を行ってきた国際協力NGOです。が、あの震災後、止むに止まれぬ思いから東北の支援を開始。1年目は被災産婦と女性を対象に女性支援キットと義援金「ケショ」の支給など主に緊急支援を、2年目は複数の心のケアプログラムを、3年目は心のケアに加え、東北のために頑張りたい女性たちを対象にスキル開発を行ってきました。  これら3年間の活動を通して気づいたことがあります。1つめは、女性が直面する困難は途上国も日本も非常に似ているということ。多くの途上国では家父長制のもと、女性が自分の意見を主張したり自分の財産を持ったりすることが出来ないのですが、驚くことに東北の被災地でも同様の状況だったのです。たとえば、緊急物資として女性が生理用品やスキンケア用品が欲しいとはとても言えなかったとか、泣く赤ん坊を抱える母親たちはいたたまれずに避難所から消えたと言います。義援金「ケショ」を受け取ったある母親は「結婚後初めて自由に使えるお金を手にしました」とも。  2つめは、そんな社会的に弱い立場にある女性たちこそが実は、未来を切り拓く強さを秘めているということ。たとえば2年目の心のケアプログラムで、初日には震災のトラウマと避難生活のストレスからガタガタと震えるばかりであったある母親が、プログラム終盤にはみんなの前でこんな言葉を口にしたのです。「私は過去に戻らない。だから前へ進み続けたい」。何という生きる力でしょう。その場にいた誰もが希望と勇気をもらい、涙が止まりませんでした。  3つめは、だからこそ、復興の主役は被災した女性たち自身でなければならないということ。東北の女性自身が声を発し、東北の女性同士が支え合い動き出すところから全てが始まるということです。私たちは、その声に耳を傾け、互いに学び合うことで初めて女性が本当に輝く東北が実現できる、そう信じて共に歩みたいと思うのです。 + トピック 5 「防災とポストMDGsに関する国会議員勉強会」参加報告 伊藤 智典 日本理学療法士協会  3月18日、参議院議員会館で開催された「ポストMDGsと防災に関する国会議員勉強会」に松井会長、上野事務局長とともに参加しました。衆参の党を超えた呼びかけ議員を中心とする議員、外務省そしてNGOが主な出席者でした。  代表呼びかけ議員、山田俊男議員(参議院・自由民主党)と城内 実議員(衆議院・自由民主党)が挨拶をした後、外務省地球規模課題審議官組織・審議官の南 博氏より「防災分野に関するポストMDGsの検討状況」をテーマに報告がありました。内容は、2012年6月のリオ+20 (SDGs:持続可能な環境)と2013年5月のハイレベルパネル(ポストMDGs)から、2014年7月を目途に報告書まとめること。またイベント、その後の加盟国間の交渉と首脳会議、2015年の国連総会を経て2016年以降の開発アジェンダまでの流れについて概説されました。2015年がポストMDGsの策定と第3回国連防災世界会議(3月)の重要な位置づけとして防災の主流化を進めるための車の両輪だと強調されたことが印象的でした。  次に、JANIC理事長・2015防災世界会議日本CSOネットワーク代表の大橋正明氏が「ポストMGDsにおける防災の目標〜NGOの視点から」をテーマに報告されました。行政府とNGOとの継続対話と勉強会、被災三県からの発言機会と公的な交流機会の設定、複合的災害をポスト兵庫行動枠組みに含めることなどをお願いした後、ODAに原発災害に関する情報提供を含めることが途上国の方の意思決定および準備に資すると提言されました。  その後の議員を含めた質疑受付では、様々な議員からの国際的な目標に向けた意見や考え方を共有し、全体で1時間程度と短いながら意味のある時間となりました。                                                                  ++ インフォメーション + 1.CBRガイドライン日本語訳CD完成  日本障害者リハビリテーション協会が、2010年に世界保健機構(WHO)が発行したCBRガイドラインの日本語訳CDを作成しました。完成までの「翻訳」、「専門家による編集」そして「監訳」には個人会員の高嶺 豊氏をはじめ、27名の方がボランティアでご協力くださいました。  完成したCDはJANNET総会(5月または6月、開催日未定)にて配布いたします。総会より前に欲しいという方は事務局・佐々木(E-mail: sasaki.yuka@dinf.ne.jp)までご連絡ください。基本的には1部ずつの配布とさせていただきます。  なおCDの内容はDINFホームページ(http://www.dinf.ne.jp/)での掲載を予定しております。アップが出来ましたら、皆様にMLでお知らせいたします。 + 2.CBID国内事例集作成について  日本障害者リハビリテーション協会が、標記事例集の作成のため平成26年度、日本財団から助成を得ることになりました。作成にあたってはJANNET会員からも協力する予定です。 + 3.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )     新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。                       142. アンドラ  143. グルジア                  計:143の国と地域  (2014年3月26日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ 編集後記  ご存じのとおり、障害者権利条約が日本で批准され、去る2月19日に国内で発効しました。本文でも一部ご紹介いただいたように、批准を記念してのフォーラムが、東京を含む各地域で連続的に開催されています。  国連の条約というと、遠い世界の話のようにも思えますが、国内で発効した今は、地域の暮らしに活かされていくものでなければなりません。  2015年には、世界の新たな開発目標と、防災の枠組みが策定されますが、これらの国際的な枠組みも、やはり地域の暮らしとつながっていてほしいと思います。  東日本大震災を経験し、そして権利条約に批准した日本から、世界に発信していけるものは少なくないと感じています。 原田 潔 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/