JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第123号 2013年10月30日発行 ++ 目次 トピックス 1.シンポジウム貧困と格差のない日本と世界を作るために、いま、できること 「ミレニアム開発目標(MDGs)レビュー・サミットin東京に参加して 2.RI総会と国連・障害と開発に関するハイレベル会合に出席して 3.グローバルフェスタJAPAN2013に参加して・・・ + インフォメーション 1.JANNET研究会「障害インクルーシブな開発とは?」、JANNET20周年記念レセプション   (10月27日開催) 2.池住義憲氏平和研究報告書完成のお知らせ 3.国連障害者の権利条約批准国情報 ++ トピック 1 シンポジウム貧困と格差のない日本と世界を作るために、いま、できること 「ミレニアム開発目標(MDGs)レビュー・サミットin東京に参加して 上野 悦子 JANNET事務局長 9月11日に動く→動かすというNGOネットワークが主催したシンポジウムに参加しましたので報告します。 第一部はこれまでの世界の取り組みと課題について、早稲田大学大学院教授の勝間靖さん、JANICの堀内葵さん、動く→動かす(*)から堀江由美子さん(セイブ・ザ・チルドレン)が報告しました。 第二部は日本の課題は世界の課題と題する発題(大崎麻子さん、湯浅誠さん)とパネルディスカッションがおこなわれました。 勝間さんはMDGsの進捗と課題として、これまでの国際的な開発の流れを紹介しました。 堀内さんは、国連総会の意義と市民社会からの提言と題して、今年の国連総会での話題、予想する到達点、ポストMDGsに向けての世界の動きなどを紹介しました。中でも9月25日に行われるMDGs達成に向けた特別イベントではポストMDGs開発目標に関して、環境分野で議論されている国際的な流れ(SDGs:持続発展性のある開発目標)がMDGsを基礎としてどう反映されるかについて確認する重要なイベントであると紹介しました。この特別イベントはUNWebcastで生中継されるとのことでした。環境・障害(9月23日)の会合も予定されることに触れました。JANICは10月10日に報告会を東京でおこないました。 堀江さんは、動く→動かすのこれまでの取り組みとして、MDGsがどういう変化をもたらしたか、不足していたのは何かを紹介し、世界の貧困層の75%は中所得国に集中していること、そのため援助のあり方の問い直しが必要であるとし、新たな課題の3つの側面として、国内格差、若年失業・高齢化、災害多発・気候変動に触れ、共通の責任を果たす仕組みを作ることが重要と述べられました。 後半で大崎さんは日本ではジェンダーの視点から見直すべきことを明らかにしました。たとえば、東日本震災では、防災計画が仕事に没頭する成人男性の視点で作られたことが指摘され、自治体の備蓄品リストはチェックされるべきと述べました。 湯浅さんは、貧困と格差の拡大について、知っておくべき基礎的なことを豊富なデータを基に話された、この日本で餓死者が出ていること、所得再分配機能が貧弱であること、働いているのに貧困から抜け出せないワーキングプア大国に日本がなっている現状を話されました。 日本での貧困は、働いているのに生活が楽にならない、シングルマザーたちのことを含めて、様々なことが連鎖的に起きて問題を引き起こしていることが紹介されました。 「希望はあるのか」ということを自らにも問いかけ、湯浅さんは、そっせんして人を信用すること、実態に対して評論家になるのではなく、実践者になることを呼びかけた。 ポストMDGsの開発の目標は私たちにとっても身近な目標になることが予想されます。 参考:シンポジウムで湯浅誠さんがある雑誌『はるまち』を紹介しました。それは生活保護利用者、過去に利用していた人たちの顔が見えるようにして、信頼を築くことを目的に創刊された雑誌です。その中でSROI(エスアールオーアイ、またはエスロイ)が紹介されていました。SROIとは、Social Return on Investmentの頭文字をとったもので、直訳では「社会的投資効果」とされます。これは費用対効果が理解されづらい、社会的活動の効果をお金で表すという方法です。最近では聞く機会が増えてきましたが、障害分野でも注目したいと思います。 (*) 動く→動かすは、72団体が参加するネットワークで2009年に発足。グローバルなネットワークである2005年発足のGCAP(Global Call for Action Against Poverty)につらなる国内ネッワーク。世界の貧困問題の解決に向けた日本からの取り組み、開発政策に対するアドボカシー、キャンペーンを行っています。 + トピック 2 RI総会と国連・障害と開発に関するハイレベル会合に出席して 松井 亮輔 RI国内事務局長 国際リハビリテーション協会(RI)は、毎年各国持ち回りで役員会および総会を開催しています。今年の総会は、9月23日(月)に国連総会の一部として「障害と開発に関するハイレベル会合」がひらかれることから、多くのRI加盟団体関係者がそれにも参加できるようにするため、その前日の22日(日)ニューヨークで開催されました。会場は、国連本部の真向かいにある国連チャーチセンターの会議室。総会の主な議題の1つは、現在マンハッタンのイースト・サイドにある事務所を売却し、ウェスト・サイドにある、こじんまりとした事務所を購入することでした。その理由は、ここ数年会費収入がかなり減ったことから赤字が続き、基金をとりくずしてそれを埋めるという状況が続いているため、事務所の売買で得た差額の220万ドルの一部を使って活性化事業に使うとともに、残りの大半は基金として積み立て、その利子を運営費の一部に充当するというものです。国際障害団体のうち、ニューヨークに事務所を持つ唯一の団体として、国連とも密接に連携した活動を展開してきたRIならではの役割を継続するための、苦肉の策とはいえ、これはRIが直面している財政問題の根本的な解決にはならないことから、その問題解決が今後に残された大きな課題といえます。 国連のハイレベル会合は、9月23日9時から18時までひらかれました。それには、政府代表団に加え、500人以上の障害分野のNGO関係者が参加したということからも、この会合へのNGO関係者の期待の大きさがわかります。会合の冒頭で「ミレニアム開発目標およびその他の国際的に合意された障害者関連の開発目標の実現に関するハイレベル会合『さらなる前進へ―2015年およびそれ以降に向けた、障害インクルーシブな開発課題』成果文書」が、まったく議論もなく、いきなり採択されました。国連総会議長、国連事務総長およびスティーヴィー・ワンダー国連平和親善大使などによる来賓スピーチのあと、昼食休憩を挟んで、ラウンドテーブル1(10時〜13時)「国際および地域協力と障害インクルーシブ開発のためのパートナーシップ」およびラウンドテーブル2(15時〜18時)「ポスト2015年開発課題と障害者のためのインクルーシブ開発」が行われ、それぞれ40名程度の政府代表(そのうち全体で、障害当事者が3名)から、ポスト2015年の開発目標に障害を含めることの重要性を強調する発言がありました。 しかし、25日(水)にひらかれたMDGsにかかる中心的な会合といえる「MDGs特別イベント」で採択された成果文書には、障害についてはまったく言及されていません。ポスト2015年開発目標は、正式には2015年9月にひらかれる「国家首脳によるサミット」で採択されることになっていますが、障害をそのなかに確実に入れるためには、MDGsにかかわるメインストリームのNGOの協力を得て、各国政府に根気よく働きかけることが不可欠と思われます。 + トピック 3 グローバルフェスタJAPAN2013に参加して・・・ 八代 富子 アジアの障害者活動を支援する会:ADDP 代表 今年のグローバルフェスタは、初日が雨でしたが、その天候の中、若者たちが日比谷のフェスタイベントゲートに次々と傘の花を咲かせながら集まって来ました。ジャネットのブースに、私たちADDPは初参加させて頂きました。 ラオスの障害者支援を始めてから随分と長い年月が過ぎ(17年)障害者リーダー養成セミナーからスタートして、障害者スポーツ支援や就労支援を一つ一つ計画しながら階段を上って来ました。ジャネットの会員として、国際セミナーなどに参加させて頂きながら、その折々に得たヒントをアジアの後発国の中で活かすことが出来ました。今回のグローバルフェスタに参加して、ラオスの活動を多くの参加者にご説明することも出来、沢山の収穫も得ました。 近くのブースに、国際NGOとして有名な団体が数多く参加されており、若い学生ボランティアが声を枯らしながらチラシを配っている姿は印象的でした。 10月6日の二日目の人出は、驚くほどの人数で、通路は、どこも人、人、人でジャネットを通じて障害者支援をする団体のネットワークの広がりに心も弾む思いでした。それぞれの団体の情報交換の場にもなるグローバルフェスタは、情熱を持ったリーダーの集まりと、その活動に関心を持つボランティア志願の若者たちで賑わってもおり、ADDPの小さなブースにも、インドシナ半島の小さな国ラオスに、興味を持ってくださる方が足を止め、私たちの活動の話を聞いてもくれました。日本の本州と同じくらいの面積に数多くの少数民族が暮らし、途上国として、まだまだ発展の途上であることや、それ故に障害を持つ人たちの苦しい生活環境や貧しさゆえの現状の中で、障害者が自立しスポーツを楽しみ、明日に希望が持てるようになることを願いながら支援活動をしていることをご説明すると「私も行ってみたい!ボランティに参加したい!・・・」と暖かい声も頂きました。 そのラオスの女性障害者たちが就労への研修を重ね、日本のパテシエの指導で自立の第一歩となっているクッキーを用意させて頂き、皆様に召し上がって頂き、それを販売させて頂いたのですが、あっという間に用意したクッキーは完売となり、お互いが語り合い、活動の意とすることをご説明し、支援をお願いすることで、会場にお出でになった皆さんが、優しい心をくださって、今回のグローバルフェスタで学んだことはとても多く、関係者の皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。                                                                  ++ インフォメーション 1.JANNET研究会「障害インクルーシブな開発とは?」、JANNET20周年記念レセプション CBRガイドラインをテーマとした標記JANNET研究会およびJANNET20周年記念レセプションが10月27日(日)にJICA地球ひろば(市ヶ谷)にて開催されました。 午前、午後とおこなわれた研究会には62名、夕方のレセプションには34名の方にご参加いただきました。参加者、講師、関係者の皆さまのご参加・ご協力のお蔭でJANNETの新たな10年のスタートに ふさわしい良い会となりました。 皆さま、これからもどうぞよろしくお願いいたします。 事務局 + 2.池住義憲氏平和研究報告書完成のお知らせ JANNET個人会員の池住義憲氏(立教大学大学院キリスト教学研究科教員)が『草の根・非暴力 平和研究報告書』を完成されました。この報告書は立教大学大学院キリスト教学研究科が主催し、JANNET加盟団体のアジア保健研修所(AHI)、日本国際ボランティアセンター(JVC)、非暴力平和隊(NPJ)とそれらの海外カウンターパートの協力・協働でおこなった研究の報告となっています。研究テーマは「宗教間・文化間『対話』を通したアジアの共存と平和〜〜国連プロジェクト『文明の同盟』のアジアにおける実践と今後」です。 報告書全文は下記よりダウンロード可能です。 ■日本語版 https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=sites&srcid=ZGVmYXVsdGRvbWFpbnxyaWtreW9raXJpa2VufGd4OjQ5NTAzMDUxMWQ2NWU1M2E ■英語版 https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=sites&srcid=ZGVmYXVsdGRvbWFpbnxyaWtreW9raXJpa2VufGd4OjZlM2YxNWM1OGMzZmU4MTU 報告書冊子をご希望の方は、送料(1冊210円、日本語、英語版合わせて2冊では290円)分の切手を同封のうえ、池住氏の下記ご住所まで冊子希望の旨をご連絡ください。 〒470-0131 愛知県日進市岩崎町竹ノ山149−549 池住義憲 宛 +  3.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。             135.ジンバブエ  136.ベネズエラ  137. パプアニューギニア 138.キリバス              計:138の国と地域  (2013年10月29日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ 編集後記   前回の編集後記でも述べられていたように、東京オリンピック・パラリンピックが2020年に開催されることとなりました。身体運動に関わる理学療法士の一人として、また個人として、心から嬉しく思います。 さてJANNETが今年、20周年を迎えるにあたり、10月27日に記念レセプションを開催いたしました。来賓、会員さんなどを含め30名ほどの参加を得てなごやかなムードでおこなうことができました。 ご参加いただいた皆様にお礼を申し上げますと共に、大人になったJANNETを、これからも どうぞ、よろしくおねがいいたします。 伊藤 智典 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/