JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第121号 2013年8月26日発行 ++ 目次 + トピックス 1.JANNET訪問プロジェクト報告 【訪問先:草の根ささえあいプロジェクト】 2.「第4回Children Protection Forum for Central Asia(中央アジアの子ども保護フォーラム)」参加報告 【タジキスタン・ドゥシャンベ】 3.2013年度第二回障害と開発研究部会@JICA東京(2013年8月3日) + インフォメーション 1.Beyond MDGsへのJANNETの参加 2.シャプラニール=市民による海外協力の会、『ピースアワードHIROSHIMA』受賞 3.アジア保健研修所(AHI)英文ニュースレター発行のお知らせ 4.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.グローバルフェスタJAPAN2013 『ボランティア求む!』 2.スペシャルイベント 災害と障害者−日本からの教訓 (9月24日、米国・ニューヨーク) ++ トピック 1 JANNET訪問プロジェクト報告 【訪問先:草の根ささえあいプロジェクト】 林 かぐみ アジア保健研修所 事務局長  2013年7月29日名古屋市内に、一般社団法人草の根ささえあいプロジェクト(略して「草の根P」)を訪問しました。  草の根Pは、生きにくさを抱え、社会の中で孤立している人たちに何かの手がかりを提供したいと設立され、2012年4月に一般社団法人化しました。  その始まりは、それぞれの支援現場で、「見て見ぬふりをしたんじゃないか」「何かもっとできたんじゃないか?」という思いを抱えてきた人たちが集まった勉強会でした。話し合う中で手がかりとして見えてきたのは、一人の専門分野ではできないことでも、少し隣にいる詳しい人や手伝ってくれる人とつながることで、解決につながるのでは?ということでした。  現在、主に次の活動を行っています。 1.よりそいホットライン   24時間365日開設の問題解決型フリーダイヤル何でも悩み相談電話で、厚生労働省の事業です。愛知県では草の根Pが行っています。 2.困り事ささえあい猫の手バンク   制度や専門機関によるサービスではなく、草の根Pのメンバーがボランティアとしてその人の 状況に応じた身近な暮らしの応援をします。家庭訪問や同行による支援が中心です。 3.名古屋市子ども・若者総合相談センター   NPO法人起業支援ネットとのコンソーシアムで、名古屋市の委託事業として受託し、今年6月 25日にスタートしたばかりです。子ども・若者のワンストップ相談窓口として、専門の相談員が面談や家庭訪問にてお話を伺い、地域の支援機関や応援してくれる資源につないで自立までを見守ります。  このほかに、支援者のネットワーク組織も作り、重複した困り事を抱えた人をそれぞれの機関の得意分野で、漏らさず支えあえるようにしています。  代表渡辺ゆりかさんは、「CBRマトリックス」は「当人が抱えている多様なニーズを示してくれ、同時に支援する側に広い視野を提供してくれます」「ただ自分たちの経験をじっくり振り返ると、次の3つを丁寧に取り組んでいくと、本人を取り囲む社会資源が急速に広がっていくと実感しています」  ひとつは、パーソナルアシスタント。その人に寄り添って、その人が一番解決したいことに一緒に取り組む。  ふたつめは、アドボカシーとコミュニケーション。その人が社会とつながるために周りの人たちとのコミュニケーションを支援する。  三つめは、スキル開発。生活スキル、暮らしのコツなどを伝えることで社会とのつながりを維持、拡大できるようにする。  最後に渡辺さんの原動力を聞きました 「10年ほど前に、社会から孤立した母親が追い詰められ、子どもの口に食べ物を押し込んで窒息死させてしまう事件がありました。  私もいつそういう状況になっても全くおかしくない・・・この人は自分自身でもあると感じ、孤立した人を放っておかない社会にするために力を尽くそうと決めました。」 + トピック 2 「第4回Children Protection Forum for Central Asia(中央アジアの子ども保護フォーラム)」参加報告 【タジキスタン・ドゥシャンベ】  石井 清志 難民を助ける会(AAR Japan)タジキスタン駐在員  8月1日〜3日までタジキスタンの首都ドゥシャンベにおいて「第4回 Children Protection Forum for Central Asia」が開催されました。このフォーラムは、中央アジア地域における子どもの権利保護を見直し改善することを目的に、2006年以降2年に一度開催されています。今回はユニセフとタジキスタン政府の主催で、中央アジアの国々を中心に、政府や国連関係者、当事者団体、NGO等から120名を超える関係者が出席しました。障がいのある子ども達の権利をテーマに、障害者の権利条約(CRPD)と子どもの権利条約(CRC)に関する各国や国際社会の取り組みについて、活発な議論と報告が行われました。  ユニセフからはCRPDとCRCに沿った取り組みの重要性が繰り返し述べられました。また、グルジアとセルビアの政府関係者からは国内の障がい児に関する制度改革の成果が報告されました。DPI(障がい者インターナショナル)議長のジャビッド・アビディ氏からは、中央アジアでの関係団体同士のパートナーシップ拡大の意向が述べられました。  タジキスタンの当事者団体からは、国内の障がい者の現状が報告され、体験を交えたスピーチはどれも胸をうつ素晴らしい内容でした。特に自閉症の息子をもつ母親からのスピーチでは、タジキスタンでは自閉症が精神疾患と診断されてしまうこと、障がい児は家族や地域から離れた寄宿舎学校で学ばなくてはならない現状が報告され、障がい児に関する取り組みと支援の必要性が強調されました。  フォーラムへの参加を通じ、障がいの有無に関わらず、子どもが健やかに成長できる教育や医療の整備、家族への支援などの重要性を改めて感じました。また、現地の当事者団体や親の会がときには私財を投じて、行政からは受けることができないサービスを自分たちで構築している様子に感銘をうけました。  私が所属しているAAR Japan[難民を助ける会]は、タジキスタン国内で活動する唯一の日本のNGOとして、同国で職業訓練などの障がい者支援を行っています。中央アジアは日本となじみの薄い場所ですが、日本の皆さんにももっともっと関心をもって頂ければと思います。 + トピック 3 2013年度第二回障害と開発研究部会@JICA東京(2013年8月3日) 土橋 喜人 JICA農村開発部計画・調整課主任調査役  今回は、JICAの国際協力専門員の久野研二さんとDPI日本会議の堀場浩平さんに発表をしていただきました。暑い中にも関わらず、30人程が集まって熱のこもった議論を繰り広げました。今回は、大学院生(国際協力、保健医療、等)、コンサルタント、障害当事者、財団(民間ドナー)、出版社、NGO、研究所、開発援助実施機関など、広い分野の方にご参加いただきました。(名古屋からいらした方も!)  研究部会の主宰である森壮也さんからの挨拶で幕を明け、二人の発表がなされました。以下、概要です。 (1)DPI日本会議職員・堀場浩二氏 「ハノイ市における自立生活センターの活動―開発途上国における障害者のエンパワーメント―」 ベトナムにおけるILについて、話をしていただきました。堀場氏は、インタビュー形式における調査結果についての発表でした。日本財団とDPI/APの支援により開始されたハノイのIL活動について調べ、どのような可能性と阻害要因があるのかを分析して、解説してくれました。利用者は60名弱。自己肯定や生活管理能力の獲得により、自己決定ができることが障害当事者のエンパワーメントとなることが説明されました。調査項目として自己決定の獲得、生活管理能力の獲得、システムアドボカシーへの参加を選定。結果として、ILが自己決定を促していること、循環性があることの可能性がある一方、社会資源の限界等の課題も明らかになりました。 質疑応答では、ILの意義などについて議論がなされ、自己決定だけでなく、システムアドボカシーへの関与の重要性、家族との同居であってもILが成り立ちうること、国連障害者の権利条約による後押しの期待、などが説かれました。 (2)JICA国際協力専門員・久野研二氏『「障害と開発」における障害者平等研修(DET:Disability Equality Training)の可能性と課題:ケイパビリティ・アプローチと伏線アプローチの可能性について』 世の中が障害者をベースとする世界で健常者が困っている(点字が読めない、手話が分からない等)ビデオを見せてアイスブレークが始まり、「課題を切り取る、考えてもらう、発見を促す質問をしていく」というDETの手法の説明がなされました。具体的に、LCCのAir Asiaでは新人研修でDETを取り入れていることの紹介がありました。 DETの根幹は、障害当事者がファシリテーターとして、健常者相手にやることであることの説明がありました。そして、知識ではなくて、「視点」をもつことが重要とのこと。DETとともに具体的な合理的配慮のための訓練(DRST:Disability Related Service Training)も必要であると説きました。 質疑応答では、日本での取り組み可能性等について質問があり、まずはDETをやれる人材を育てる必要があること、日本国内の取組はこれからの課題であることの説明がなされました。 (3)全体討論 森氏がファシリテーターとして都市部だけではなく農村部にも目を向けないといけないこと、堀場氏からはリーダーの育成をしないといけないこと、久野氏からは万能薬はないことやピア(仲間)の概念の重要性、の問題提起がなされました。また、フロアーからは、障害者間にも格差があること、ひとくくりにはし切れないこと、といった指摘がなされました。 文責:土橋喜人 *なお本原稿の作成にあたり発言者の確認は取っていません。 『国際開発学会・障害と開発研究部会ブログ』に掲載中 http://blog.canpan.info/disability_d/                                                                    ++ インフォメーション 1.Beyond MDGsへのJANNETの参加  2015年以降の開発の枠組みに関するゆるやかなネットワークである、Beyondo MDGs(MDGsを超えて)に障害分野で国際強力・交流を行っている団体のネットワークとして、JANNETにお誘いがあり、8月23日に開催された運営委員会で、正式に迎えられました。今後さらに広い連携に参加することになります。 + 2.シャプラニール=市民による海外協力の会、『ピースアワードHIROSHIMA』受賞  JANNET会員団体のシャプラニール=市民による海外協力の会が、8月2日、広島県より平和貢献活動を続ける個人や団体に与えられる、『ピースアワードHIROSHIMA』を受賞したことをお知らせいたします。昨年の「沖縄平和賞」に続いて、平和を冠する賞を受けられました。 +      3.アジア保健研修所(AHI)英文ニュースレター発行のお知らせ  アジア保健研修所発行の英文ニュースレター(92号)をご紹介いたします。下記よりダウンロードの上どうぞご覧ください。   http://ahi-japan.sakura.ne.jp/english/html/modules/pico/index.php?content_id=12   http://ahi-japan.sakura.ne.jp/news_letter/NL92 (ニュースレターPDF版) + 4.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 標記批准国の国と地域の数は以下の通りです。                    計:133の国と地域  (2013年8月23日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.グローバルフェスタJAPAN2013 『ボランティア求む!』 国際協力活動を行っている政府機関、NGO、企業などが一堂に会する国内最大の国際協力イベントであるグローバルフェスタJAPANが今年も開催されます。日時、場所は以下の通りです。 【開催日】 2013年10月5日(土)〜10月6日(日) 【会場】  日比谷公園(東京都千代田区) イベントの詳細につきましてはこちらをご覧ください。 http://www.gfjapan.com/ JANNETでは例年通りテントブースを借り、出展します。販売・展示を希望される会員の方は事務局までご連絡ください。また当日の出展準備、展示販売等のボランティアも募集しております。ご協力いただける方は事務局までご一報ください。 皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたします。 【連絡先】 事務局・佐々木 TEL: 03-5292-7628 E-mail: sasaki.yuka@dinf.ne.jp +     2.スペシャルイベント 災害と障害者−日本からの教訓 (9月24日、米国・ニューヨーク) 国連総会「障害と開発」ハイレベル会合(9月23日)のサイドイベントとして、標記イベントが日本障害フォーラム・日本財団の共催により開かれますことを皆様にお知らせいたします。 http://www.normanet.ne.jp/~jdf/event/20130924/ 【日時】 2013年9月24日(火)18時〜21時 【場所】 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ ラン・リサイタルホール 【プログラム】  来賓挨拶: 国連経済社会局、国連国際防災戦略、米国連邦緊急事態管理庁等を予定 基調報告: 藤井 克徳(日本障害フォーラム幹事会議長) ドキュメンタリー映画上映: 「生命のことづけ−死亡率2倍 障害のある人たちの3.11−」 活動報告: 久保田 崇(岩手県陸前高田市副市長) 他 ++ 編集後記   夏休みはいかが過ごされましたか? 私は震災以来、久しぶりにゆっくり休暇を取り、山登りしてきました。帽子やサングラスのせいで、ムラの多い日焼けをしました。海だと綺麗に焼けるのですけどね。 さて、障害者差別解消法も成立し、障害者権利条約の日本批准も近いのではないかと言われています。一方、2015年以降の新たな開発目標に向けて、民間からもさまざまな働きかけが行われています。日本の障害分野も、内向きばかりではいられません。 JANNETのようなネットワークの存在が、ますます重要になってくるなと感じています。 原田 潔 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/