JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第118号 2013年5月30日発行 ++ 目次 + トピックス 1.障害インクルーシブ開発課題に関するアジア太平洋地域協議  2.アジア太平洋地域準備会議に参加して +   インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.JANNETミニ研究会− 「隔離」から「共生」へ 〜ハンセン病療養所の「内」と「外」から社会を変える〜 (6月16日) 2.第1回JANNET研究会 (7月10日) 3.2013年度CBRセミナー (7月13日) 4.第2回JANNET研究会 (10月27日開催) ++ トピック 1 障害インクルーシブ開発課題に関するアジア太平洋地域協議 松井 亮輔 JANNET会長  この5月15日(水)〜16日(木)の2日にわたりバンコクで「2015年に向けておよびその後の障害インクルーシブ開発課題に関するアジア太平洋地域協議」会合(以下、地域協議会合)が行われました。この会合は、今年9月23日(月)ニューヨークの国連本部で開催される「ミレニアム開発目標およびその他の国際的に合意された障害者のための開発目標の実現に関する国連総会ハイレベル会合」で採択される成果文書に、アジア太平洋地域としての意見を反映させることを意図したものです。  地域協議会合は、オーストラリア政府、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、世界銀行およびアジア太平洋障害者センター(APCD)の協力を得て、タイ政府が主催しました。  その参加者は、27カ国の政府代表83名(うちタイ政府関係者43名)、7国連関係機関代表8名、2地域間政府機関代表2名、28の市民社会組織(CSO)代表50名およびその他14名(パネリストとして参加した専門家5名を含む。)をあわせ、全体で約160名。筆者はアジア太平洋障害フォーラム(APDF)のメンバーとして参加しました。  地域協議会合では、3つのパネルディスカッション(1.障害インクルーシブ開発および障害者権利条約履行における好実践とチャレンジ、2.均等機会、アクセシビリティ、障害統計およびステークホールダーの能力構築において講じられるべき手段、3.障害インクルーシブ開発の促進におけるCSO,開発機関および民間セクターの役割)などが行われ、その議論などを踏まえて事務局により作成された成果文書草案についてかなりの時間をかけて協議が行われました。そして、16日午後「ミレニアム開発目標およびその他の国際的に合意された障害者のための開発目標の実現に関する国連総会ハイレベル会合(ニューヨーク、2013年9月23日)へのアジア太平洋インプット」が全会一致で採択されました。この文書の核となる「バンコク・コンセンサス」のベースとなったのは、今年のESCAP総会最終日の5月2日に承認された「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」の10の目標です。つまり、アジア太平洋地域としては、9月の国連総会ハイレベル会合で採択される成果文書にインチョン戦略が何らかの形で反映されることを期待しているといえます。 + トピック 2 アジア太平洋地域準備会議に参加して 門川 紳一郎 社会福祉法人全国盲ろう者協会評議員  去る5月15、16日にバンコクの国連会議場において、「障害と開発のための国連ハイレベル会合に向けたアジア太平洋地域準備会議」が開かれ、私は世界盲ろう者連盟アジア地域代表(World Federation of the Deafblind Representative of Asia 以下、WFDbRA)代行として出席してきました。  WFDbRAはCSOの中でも15ある障害者当事者団体の一つです。WFDbRAが国際会議等に出席するためには、情報とコミュニケーションへのアクセスが保障されていなければなりません。今回の会議には2人の指点字通訳の他、日英音声言語通訳が保障されたからこそ、参加することができました。以下は、今回の会議に参加しての個人的な感想をご報告させていただきます。  会議の協議事項の原案として出されていたバンコク・ビジョンに対して、CSOや国際機関から発言が自由にでき、国連やESCAP関連の会議が徐々に障害当事者にとってオープンになっていることが実感できました。  さて、私たち盲ろう者にとって、「情報とコミュニケーション」へのアクセシビリティは何より大きな観点です。今回のバンコク・ビジョンにも「ユニバーサルデザインとアクセシビリティ」という項目が設けられ、そこで情報とコミュニケーションについても言及されていました。  私はアクセシビリティには2つの意味があると考えています。一つは建物や交通などの目に見えるアクセシビリティと、もう一つは情報やコミュニケーションなどの目に見えないアクセシビリティです。ですので、ユニバーサルデザインとアクセシビリティという項目にも、そしてそれに続く言及についても大きな危惧を感じました。  そこで、世界ろう連盟やインクルージョン・インターナショナル(知的障害者の国際組織)と共同宣言を出したり、発言をしたりしました。翌日に出された報告案を確認したところ、やはり私たちの想いが反映されているとは思えず、あらためて発言をし、文言の修正を提案しました。その結果、最終文書ではなんとか妥協できるラインで盲ろう者をはじめ、情報やコミュニケーションに困難を抱える人たちのニーズがおとしこむことができました。  終わってみて思ったことは、盲ろう者としてこのような会議に参加することはやはりハードルが高く、心身への負担は大きいと感じました。それは、会議の内容が濃いというだけではなく、通訳に物理的な限界があるからです。  私たちは通訳を通して会議に参加するわけですが、どんなにすばらしい通訳であっても、一度に一つのことしか通訳はできません。会議の進行を追いかけながら、その場で出される資料も確認し、あちらこちらで流動的に発生する非公式な会話にも注意を向けていなければなりません。時として、会議の進行そのものよりも、ちょっとした会話や情報を逃してしまうことが、最終的な痛手となることもあります。断片的な情報を自分の中で整理し、そして、それを周囲に伝わるように発信するプロセスというのは、とてもエネルギーが必要なのです。  今後も公式・非公式を問わず、情報とコミュニケーションにニーズのある参加者がいる場合には、ゆっくりわかりやすい発言を心がけたり、点字や拡大文字の資料を用意したり、進行のスピードをコントロールしたり、適宜、休憩を入れるなどの配慮をしていただきたいと思っています。  障害者問題をテーマとした会議には、障害当事者が参加することに大きな意義があります。これからもWFDbRAは他の障害者団体や関係者の皆様と協力し合いながら、こうした国際会議に積極的に参加していきたいと思っています。                                                                   ++ インフォメーション + 1.国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html )  標記批准国の国と地域の数は以下の通りです。                         計:130の国と地域  (2013年5月29日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 + 1.JANNETミニ研究会 「隔離」から「共生」へ 〜ハンセン病療養所の「内」と「外」から社会を変える〜 JANNET加盟団体の笹川記念保健協力財団、IDEAジャパン、JANNETの共催による標記セミナーのご案内です。今回のセミナーではハンセン病問題をテーマに、療養所の「内」と「外」それぞれの立場から共生の在り方を探ってきた方々と一緒に、共生とは何か、インクルーシブ(包摂的)な地域発展とは何かを考えていきます。 <スピーカー> 鈴木 禎一 (ハンセン病首都圏市民の会代表) 森元 美代治 (IDEAジャパン理事長) 佐久間 建 (都立武蔵台学園府中分教室ひだまり学級教諭) 高久 洋子 (ハート相談センター元職員) 村上 絢子 (ライター、IDEAジャパン事務局長) <コーディネーター> 公益財団法人 笹川記念保健協力財団 【日時】6月16日(日) 13時00分〜16時30分 *当日、11:00より、会場近くの国立ハンセン病資料館の学芸員ツアーも行います(任意参加、要事前申し込み、昼食は各自持ち込み) 【場所】国立ハンセン病療養所多磨全生園(ぜんしょうえん)中央集会所 東京都東村山市青葉町4-1-1 http://www.hosp.go.jp/~zenshoen/koutuu.html 西武池袋線清瀬駅(南口)より西武バス・久米川行きにて全生園下車 【お問合せ先】笹川記念保健協力財団 E-mail: smhf@tnfb.jp Tel: 03-6229-5377 【お申込方法】笹川記念保健協力財団の上記メールアドレスまで、ご氏名、ご所属と連絡先を お知らせください。 【参加費】 無料 【使用言語】 日本語、日本手話(手話通訳を必要とされる方は、申込み時にお知らせください) +    2.第1回JANNET研究会  海外から講師を迎えて開催するJANNET研究会のお知らせです。今回はバングラデシュで、障害のある人そして家族が社会にインクルーシブされるコミュニティーを目指して研修・啓発をおこなっているCDD(開発と障害センター)所長であるナズムル・バリさんにご講演いただきます。 【日時】 7月10日(水) 18時〜20時30分 【場所】 戸山サンライズ 大研修室B 【講師】 Mr. Nazmul Bari CDD(開発と障害センター)所長、バングラデシュ 会の詳細とお申込みついては、後日MLでご案内いたします。どうぞよろしくお願いいたします。 + 3.2013年度CBRセミナー 「CBRマトリックスを使って考える」公開研究会  日本障害者リハビリテーション協会主催による本年度CBRセミナーを、今年は名古屋で開催します。上記JANNET研究会でも講師をつとめるナズムル・バリさんに講演いただきます。そして、開催地・愛知県の地域福祉の具体的事例についてCBRマトリックスを使って読み解いていきます。バングラデシュと日本各々の地域福祉を理解し、参加者各自の地域での活動を見直す機会としたいと考えています。 【日時】 7月13日(土) 10時〜17時 【場所】 名古屋国際センター 〒450-0001 名古屋市中村区那古野一丁目47番1号(名古屋駅から徒歩7分) TEL: 052-581-0100  【講師】 Mr. Nazmul Bari CDD(開発と障害センター)所長 戸枝 陽基      社会福祉法人むそう、NPOふわり代表 渡辺 ゆりか   一般社団法人草の根ささえあいプロジェクト代表 本セミナーの詳細、お申込みについては、後日MLでご案内いたします。どうぞよろしくお願い いたします。 + 4.第2回JANNET研究会  10月に下記日程で第2回研究会を開催いたします。開催は少し先となりますが、ご予定にぜひ加えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 【日時】10月27日(日) 10時〜17時 【場所】JICA地球ひろば      〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5      TEL: 03-3269-2911 【内容】CBID検討会のまとめ * 終了後にJANNET設立20周年記念懇親会開催を予定しています。 ++ 編集後記   今号のトピックスでは、バンコクで行われた「地域協議会合」に参加されたお二人よりご報告いただきました。アジア太平洋地域としての意見を9月の国連総会ハイレベル会合で採択される成果文書に反映させるという会合の意図と合意のプロセスの雰囲気が活き活きと伝わってきます。特に、世界盲ろう者連盟アジア地域代表代行として参加された社会福祉法人全国盲ろう者協会評議員の門川さんのご報告からは、会合の議論への「参加」における情報やコミュニケーションに困難を抱える人たちのニーズがひしひしと感じられました。障害者問題をテーマとした会議で障害当事者の方が参加することの意義とそれを実現するための環境や必要な配慮に関する率直なご感想は、JANNETにとって大変ありがたい情報の「財産」といえます。  全国各地、梅雨入りの移り変わりの時期となりました。曇りや雨の日が続きますが、体調を崩されませんよう、皆さんお気をつけください。 公益社団法人 日本理学療法士協会 国際部 古西 勇       ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/