JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第116号 2013年3月26日発行 ++ 目次 トピックス 1.ネパール盲人福祉協会創立25周年、ネパール・バクタプールCBR 2.アメニティフォーラム参加報告 3.宗教間・文化間対話を通したアジアの共存と平和のための国際シンポジウム、   カンボジア、フィリピン巡回報告会 4.第一回CBR世界会議報告会に参加して 5.世界のハンセン病セミナー第1回「エチオピアのハンセン病回復者団体ENAPALの歩み」 + インフォメーション 1.国連障害者の権利条約批准国情報 + イベント情報 1.第39回コーヒーアワー「障害と開発」シリーズ開催(4月19日開催) 2.平成25年度JANNET総会ほか 開催のご案内(5月25日) ++ トピック 1 ネパール盲人福祉協会創立25周年、ネパール・バクタプールCBR 野崎 泰志 日本福祉大学国際福祉開発学部教授 【ネパール盲人福祉協会創立25周年】  昨年の9月にネパール盲人福祉協会(以下NAWB)の創立25周年記念式典があり、招待されたので出席しました。政府に正式に登録された時から数えているのですが、発足は1985年でした。その12月に、当時、東京ヘレン・ケラー協会の職員だった私は、田中徹二さん(現日本点字図書館理事長)と一緒に最初のネパール調査で訪問しました。その時にNAWBが数ヶ月前に設立されたと聞きました。  25年の間に様々な事がありました。点字教科書が手作りのみで殆ど行き渡ってないので、最初の支援は点字印刷所の建設でした。人材育成が第一と、ネパール人職員を一人呼んで、3ヶ月間の研修を行い、日本ライトハウス、日本点字図書館、仲村点字機他の皆様のご協力を得て、2年後には稼働出来ました。今では200人もの視覚障害の教師が普通学級も含めて全国で働いています。NAWBの現会長のタパさんは全盲で大学講師をされていますが、私たちが初めて訪問した時はラボラトリーハイスクールの高校生でした。その後、日本では初めての経験としてCBRを平野部で1から立ち上げるプロジェクトもNAWBと共同で実施しています。  式典は副大統領公邸で執り行われ、副大統領閣下も参列し表彰状などを関係者に手渡されました。海外からはドイツの団体他と共に東京ヘレン・ケラー協会も表彰されました。海外の個人として表彰されたのは私だけで記念スピーチの機会も与えられました。こうした地味な団体が四半世紀も継続的に活動できていることは途上国では稀有なことです。今後の発展を願ってやみません。 【バクタプールCBR】  カトマンズ盆地の古い街の一つであるバクタプールには、これも昨年で25年になるCBRが続いています。初めはユニセフ、そしてセイブザチルドレン他の支援で活動してきましたが、いまは、予算の75%を地方政府と中央政府から得て運営されています。連邦共和国になって起きた大きな変化です。この2月に学生のリサーチ指導で滞在中も、障害者の主流化を目指す障害ガイドラインが閣議決定され、関係者は誇らしげでした。  16の村落ごとに自助組織などがあり、チャング村では村人の努力で大きな障害者センターが建設されています。また、ナガルコット村では、障害者自身によるマイクロクレジットが始まっていて、CBRが社会開発に繋がりながら発展しつつあると言えるでしょう。私たちが25年前に始めた頃のCBRは医学モデル的発想のものでしたが、今やCommunity Based Inclusive Developmentへと、様々な形で変化しています。これも、今後が楽しみです。 + トピック 2 アメニティフォーラム参加報告 上野 悦子  2月8日から10日まで、滋賀県大津市でアメニティフォーラムが開かれ、一日目に参加しました。主催は全国地域生活支援協議会で、主に知的障害、発達障害の人達の地域生活を支援する活動をしています。新しい代表者に選ばれたのは、北海道のNPOゆうゆうの理事長の大原裕介さんです。NPOゆうゆうの活動については、昨年8月25日に、JANNETのCBID検討会で、日本の事例として取り上げさせていただきました。  アメニティフォーラムの初日にはオランダから来日したBuurtzorg(ビョルツォグ)という、コミュニティケアを起業している組織の代表者、ヨス・デ・ブロック氏と、日本で推進する堀田聡子さんから活動が紹介されました。ビョルツォグは2006年に、一つのチームがコミュニティナースにより起業され、現在では540の独立チームがあり5,700人の看護士・介護士・リハビリテーション専門職がかかわり、年間50,000人の利用者にサービスを提供しています。利用者の満足度、働く人の満足度も高い結果が出ています。  背景には、1990年代から2000年に起きた、病院の大規模化、アセスメントの全国統一基準、進む分業に対して、生活の質を改善し続けたい、住んでいる街に社会参加したい、あたたかい人間関係がほしい、という利用者の希望が高まったことがあります。そして関係の構築や問題解決へのパーソナルコーチを目指す新しい在宅ケアモデルとして起業により開始されました。特徴としてあげられるのは、最大12人で編成される1つのチームが自律して運営できる仕組みがあること、リーダーをおかず、関わる人たちはフラットな関係を持つことです。利用者との対話を中心に利用者と地域の力を引き出すことを目指しています。もうひとつの特徴は、Buurtzorgwebと呼ばれる、ナリッジマネージメント(知識創造)のサイトを持っていうことです。このサイトでは、すべての活動がわかり、ウェブ上でのディスカッション、実際に会うオフ会議が可能になり、変革(イノベーション)が続く仕組みができていることです。利益が出ると、イノベーションコストとして予防等に関する事業費に使うそうです。  一度決まったら動かないのではなく、チーム毎に常に進化させ、他のチームと共有する仕組みを持っている、という点は興味深いと思いわれます。 + トピック 3 宗教間・文化間対話を通したアジアの共存と平和のための国際シンポジウム、 カンボジア、フィリピン巡回報告会 林 かぐみ アジア保健研修所  3月9日立教大学で「宗教間・文化間対話を通したアジアの共存と平和のための国際シンポジウム」が開かれました。フィリピン、カンボジア、イラク、およびスリランカにおいて、NGOが実践している平和活動を事例として取り上げ、住民に現地のNGOが聞き取り調査を行い、どのような変化があったかを検証するというプロジェクトが過去2年間行われました。9日は関係者が一堂に会し、報告が行われました。  パネルディスカッションでは、各地での対立・紛争が異宗教間のそれと見られがちであるが、実はその背景に力と資源をめぐる対立構図があり宗教間対立という図式にすり替えられたものであること、そこに平和を取り戻そうとするならば、草の根からの動き、住民一人ひとりの内なるプロセスが不可欠であること、さらにそれは、具体的、日常的に問題を抱えた個々人がそれを解決しようとする中で、自分のアイデンティティを確認し、他者との関係を作り直す作業であることが語られました。  このシンポジウムに招かれたカンボジアとフィリピンの人たちは、アジア保健研修所(AHI)の元研修生とそのパートナーで、3月10日以降は各地で講演をしました。  フィリピンからの2人は、ミンダナオ南部のバシラン州で活動するNGO関係者です。400年近い植民地支配、独立後も1970年代初頭の戒厳令以降の国内での分断の構図、資源の収奪などをめぐる不公正が暴力の文化を作りだしてきたという認識のもと、多用な働きかけを通して「平和の文化」に変えていこうとしています。そのひとつが教育局と連携し、公立学校で薦めている平和教育です。また、一般の住民以外に、政府軍兵士への研修もおこなっています。  カンボジアの人たちは、NGOの代表とその団体の活動地域の地元のリーダーです。彼らの地域では、村の「もめごと解決委員会」を作り、この数年取り組んでいます。そこに持ち込まれる問題は、土地の境をめぐるいざこざ、家庭内暴力、相続争いなどです。1970年代後半のポルポト時代を経験した2人は、誰かに頼り従うのではなく、自分たちで考え、行動することがいかに大切かを、大きな犠牲とともに知っています。  人びとが十分食料を得られ、安心して日常生活が送れ、自分たちの力で問題解決にあたること、そして一人ひとりが公正な扱いを受けること。そこにこそ草の根の平和活動がめざす姿がある、フィリピンとカンボジアの人たちの実践がそのメッセージを伝えています。 + トピック 4 第一回CBR世界会議報告会に参加して 谷島 邦雄 NPO法人日本ポーテージ協会  去る3月8日(金)18時15分から戸山サンライズ2階中会議室で行われた「第一回CBR世界会議報告会」に参加しました。  JANNET個人会員で広報・啓発専門委員の宮本亮平さんから、同会議は2012年11月26日から28日までの3日間「障害者権利条約実現への鍵」をテーマにインドのアグラで開催され、86か国から1,200人、日本からはJANNETを中心に12〜3人の参加があり、開催中多くの発表やポスターセッションが行われ、会議終了後には日本からの参加者有志はデリー近郊の村でのCBRを見学する機会を得ることができた、とのご報告がありました。続いて宮本さんの会議に参加しての所感をお話しいただき、出席された分科会で行われた発表の中で「エビデンスに基づくCBRの実践」というシドニー大学の発表が印象に残ったとのことで、その概要を説明して下さいました。  私自身の勉強不足もあり、十分に理解できなかった部分もありますが、私たちの日本ポーテージ協会が長年にわたりアジア各地において行ってきたCBR活動が、各国の中で持続していくためにはどうすればいいのか、我々に求められているのはどういう活動かということを改めて考えさせられる機会になりました。昨年から再開したネパールポーテージ協会との協力関係を深めていく上での参考にさせていただきたいと思います。  また、宮本さんから特に印象的だったとご報告があった「CBRは、障害者の権利条約を実現するための重要要素という認識が強調されていたこと」ということで、2015年に開催が予定されている「第三回アジア太平洋CBR会議」が、日本で開催されることの持つ意味も大きなものがあることを改めて感じました。 + トピック 5 世界のハンセン病セミナー第1回 「エチオピアのハンセン病回復者団体ENAPALの歩み」 星野 奈央 笹川記念保健協力財団  公益財団笹川記念保健協力財団は、1974年の設立以来39年にわたり、保健医療と社会的側面からのハンセン病問題解決に向けた活動を行ってきました。 ハンセン病対策活動は長く、医療従事者や宗教関係者、NGOワーカーなどが、患者さんや回復者のために働いていましたが、近年では、回復者自身が立ち上がり、自分たちの力で自分たちの人生を変えていこうという動きが活発になってきています。 笹川記念保健協力財団は、これまでにエチオピア、中国、インド、インドネシア、フィリピンなど様々な国の回復者団体を支援してきました。  2013年3月12日(火)に「世界のハンセン病セミナー第1回 エチオピアのハンセン病回復者団体ENAPALの歩み」を開催し、元事務局長のMr Menberu Adane YihunieにENAPALの歩みについて話してもらいました。 現在でも年間4,000人以上がハンセン病と診断をされるエチオピアでは、病気に対する誤解から、親族や家族からさえも厳しい偏見と差別を受け、回復者の多くは社会行事に参加できない、就職ができない、教育を受けられないなどの問題を抱え、多くが同じ病気にかかった人たちが寄り添って暮らす「定着村」で生活をしています。重度の障がいを持ち、定職が持てず、また教育を受けられなかったために物乞いをする人たちが集まって暮らしているために、村自体が差別の対象とされ、生活環境は劣悪で、住人は気力を失い、地方行政サービスも届かず、強制立ち退きの不安を抱えながら生きています。 ENAPALは全国7地域支部と63定着村支部を持ち、会員数約15,300人。 回復者だけではなく、障がいを持つ人たちとも連携し、全エチオピア障がい者連盟の創設メンバーでもあります。  現在のENAPALは各地域支部が、それぞれの地域にある定着村支部と協力をし、活動をしていくための基盤強化に努めており、笹川記念保健協力財団も支援をしています。 海外・国内の支援に頼るだけでは、長期的に持続性がないということで、積極的に中央・地方行政の協力関係も強化しています。また、それぞれの地域の緊急的ニーズは、行政、国内・海外NGOなどの協力を得ながら解決をしています。 会員たちの「自分たちの団体」という強いコミットメントに支えられ、ENAPALは中長期的なビジョンのもと、国内外のさまざまなネットワークを活用し、今後も発展を続けていくことが期待されます。 ++ インフォメーション 1. 国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 新たに標記批准国となった国と地域は以下の通りです。                 128. アルバニア   129. バルバドス   130. イラク                     計:130の国と地域   (2013年3月20日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ イベント情報 1.第39回コーヒーアワー「障害と開発」シリーズ開催 世界銀行東京事務所は、開発の様々な領域をわかりやすく紹介するコーヒーアワーを毎月数回行っています。そのひとつ「障害と開発」シリーズの企画は、世界銀行、日本財団、障害分野NGO連絡会(JANNET)の共同企画で1−2カ月に1回程度開催してきました。 この度は「教育についての障害者の権利を認める」というテーマで以下の通り開催いたします。今回は、国際視覚障害者教育協議会(ICEVI)名誉会長のLawrence F. Campbellさんをスピーカーとして、そして元筑波大学教授の鳥山由子さんをコメンテーターとしてお迎えします。 障害者の教育の分野で様々な活動を展開されているお二人のお話を伺う良い機会となりますので、皆様ぜひご参加ください。 【日時】2013年4月19日(金) 午後6時30分〜8時00分 【場所】世界銀行情報センター(1階 PIC東京) 【お問い合わせ】世界銀行情報センター(PIC東京)  E-mail: ptokyo@worldbank.org  Tel: 03-3597-6650 【お申し込み】下記URLからお申込みください。会の詳しい内容もご覧いただけます。 http://go.worldbank.org/CKQ352PVD0 + 2.平成25年度JANNET総会ほか 開催のご案内 下記の通り、JANNET総会等の開催日程、場所についてご案内いたします。 【日時】 5月25日(土)  13時〜14時45分 JANNET総会 15時〜17時  2015年第三回アジア太平洋CBR会議組織委員会              *傍聴を希望される会員の方はご自由に参加ください。 17時過ぎ〜 懇親会(JANNET会員、上記組織委員) 【場所】 戸山サンライズ 2階 大会議室 なお詳しいご案内は後日、会員MLにてお送りいたします。ご出欠用紙もその際に送らせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 事務局 ++ 編集後記  トピック1ではネパール盲人福祉協会創立25周年、ネパール・バクタプールCBRについて、 著者の経験や経緯を含めて報告されています。トピック2では滋賀県で開催されたアメニティフォーラムについて報告。変革を続けるチームとそのシステムの重要性について触れています。トピック3では、立教大学で開催されて平和構築に関する国際シンポジウムとアジアの巡回報告会、そしてトピック4では、ついに2015年に日本で開催されるCBR国際会議を見据えての報告。初めての会議開催に向け、関係者のご協力は不可欠です。これからもどうぞよろしくおねがいします。 伊藤 智典      ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集 しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/