JANNET障害分野NGO連絡会  メールマガジン 第107号 2012年6月29日発行 昨年3月11日の東日本大地震で被災された皆様、そのご家族様へ心よりお見舞い申し上げます。 JANNETの会員で、被災地にて支援活動を開始した団体の状況をお知らせしています。 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet ++ 目次 トピックス 1.報告会「アメリカの障害法の概要と障害者権利条約批准への取組み」(5月23日開催) 参加報告 2.国際セミナー「アメリカから日本へ、そして今、アジアの国々へ」 −障害分野における人材育成の在り方から考える−(5月25日開催) 参加報告  インフォメーション 1.平成24年度 NGO・外務省定期協議会全体会議(6月12日開催) 出席報告 2.CANPAN・NPOフォーラム(6月16日開催) 出席報告 3.JANIC総会(6月25日開催) 出席報告 4. 国連障害者の権利条約批准国情報 ++ 今月号のトピックスでは、5月23日に日本障害フォーラム(JDF)主催でおこなわれた報告会「アメリカの障害法の概要と障害者権利条約批准への取組み」ならびに、5月25日に日本障害者リハビリテーション協会主催でおこなわれた国際セミナー「アメリカから日本へ、そして今、アジアの国々へ」を取り上げます。米国国務省・障害分野特別顧問のジュディ・ヒューマン氏がそれぞれの会でご講演くださいました。 各会参加者からお寄せいただいたご報告を皆様にご紹介いたします。 トピック 1 JDF主催院内集会 ジュディ・ヒューマン氏の講演会に参加して 全日本ろうあ連盟職員  大山 博   2012年5月23日の午後、参議院議員会館講堂で、ジュディ・ヒューマン氏(米国国務省国際障害者の権利に関する特別顧問)による「アメリカの障害法の概要と障害者の権利条約批准への取り組み」と題する講演会が開かれました。ヒューマン氏は、生後ポリオに罹って車イス生活を余儀なくされ、小学校への通学拒否、公立学校教師への赴任拒否等、ほとんどの障害者が大抵一度は通る社会的差別を経験しました。現在は、国務省において、部局を超えて障害者問題を国務省の中に浸透していく仕事をしているということです。 ヒューマン氏も制定に関わった米国差別禁止法は1983年に運動を開始しています。障害者がどういう差別を受けたか、障害者や家族にどんなバリアがあるかを話してもらう集会を全米各州で開いてきました。議員と障害者のリーダーが草案を作り、上院・下院でも公聴会が開かれ、共和党と民主党が協力しあい、あらゆる障害種別の当事者が参集し、自分たちが受けた差別について証言しました。議員たちは障害者と一緒に座り、差別とはどんなものかを知り理解する機会となりました。その結果、7年後の1990年に障害差別禁止法が制定されることになりました。さらに、最新のニュースとして、オバマ大統領が国連障害者権利条約の批准を上院に送ったというホットな報告もありました。 このように、障害者だけのものではない強力な法律の制定・施行を実現するには、障害種別を超えた広範囲な市民を巻き込む運動が必要であり、議員の結束もまた重要であるということが講演のポイントであったと思います。とりわけ超党派の議員結束が強調されたのは、院内の講演会であるという集会の性格上、特に、参加できなかった国会議員たちを念頭に置いて訴えたかったことではないでしょうか。 出席議員からも様々な意見や感想、質問等が寄せられました。障害者制度改革推進会議や総合福祉部会等で当事者の意見を集約していながら、いまだに政策に反映されていないことを説明する発言もあり、講演の締めくくりにヒューマン氏が発した「差別をなくすために臆病になってはいけない。それが今直面の課題である」という言葉は、一体誰に向けられたものであったか考えさせられました。 + トピック 2 国際セミナー参加報告 「アメリカから日本へ、そして今、アジアの国々へ」 −障害分野における人材育成の在り方から考える−   JICA人間開発部社会保障課 池田 直人                                                2012年5月25日に開催された、障害分野における人材育成に関する国際セミナーに参加しました。日本障害者リハビリテーション協会の主催したこのセミナーには、約200名が参加しました。このセミナーは、日本国内の関係者だけでなく、アジア太平洋地域の障害者リーダーたちの集いの場にもなっていました。 セミナーの基調講演(ラーニー・パトリック氏)・特別講演(ジュディ・ヒューマン氏)においては、「障害を人権の問題/分野横断的な問題と捉えること」「これらの問題に立ち向かう障害者リーダーを育成すること」によって、「障害者運動の持続性を確保する」「自ら社会を変えていく」という点が強調されていました。 続く事例報告とパネルディスカッションにおいては、人材育成の成果が様々な立場から発表・報告されました。特にダスキン愛の輪基金によるリーダー育成研修については、長年に渡り継続していること、次年度候補者の選考を兼ねて毎年事務局が各国を訪問し帰国研修員をフォローしていることが、成果をあげている要因であると感じました。 あらためて私の過去十数年間のパキスタンでの障害分野での活動を考えると、ダスキン愛の輪基金、JICA、JICA−APCDプロジェクト等のリーダーシップ研修によって育成された障害者リーダーとの連携が常にありました。彼らはパキスタン国内で欠かせない障害分野のリソースパーソンとして活躍していたのです。パキスタンにおいて、今年から開始予定のJICAの事業においても、育成された障害者リーダーとの連携を進めるとともに、彼らのさらなる活躍を期待したいと思います。 ++ インフォメーション 1.平成24年度 NGO・外務省定期協議会全体会議 出席報告 6月12日(火)の標記会議にはNGOから50名を超える出席者があり、議論は2時間を超えました。そこではまず、ODA上位政策のあり方についての協議がNGOと外務省の間で行われ、その後いくつかの報告がNGOと外務省の双方からなされました。 ODA上位政策に関する協議では、我が国のODAを規定する3つの上位政策―「ODA大綱」、「ODAのあり方」、「中期政策」―について、それぞれの位置付けを問う議題がNGO側から提示されました。そのうえで、現段階ではどの政策に見直しが必要で、その見直しプロセスをどう進めるべきかという問いかけがなされたのです。外務省は「ODA大綱」の見直しの必要性を認識しているようでしたが、実際の見直しはポストMDGsの国際的議論の進展を踏まえながら進めるとのことでした。逆にいうと、日本政府はポストMDGsの国際的議論をリードするつもりがないという印象を筆者は持ちましたが、そうだとすると少し残念に思います。 その後の報告では、G8食糧安保/G8説明責任報告書、世界防災閣僚会議IN東北の開催、リオ+20成果文書に関する議論の進捗などの多彩な外交課題が話題となりました。 今回の会議参加を通して、大きな外交的課題に関するNGOと外務省の意見交換を垣間見られたことは筆者にとって収穫でした。特にNGO側が多大な熱意と準備をもってこの場に臨んでいることには感銘を受けました。筆者自身も障害分野に関することだけではなく、広く国際的・外交的課題について知見を深める必要があると感じました。それは、障害分野のことであっても、他分野の国際的動向の影響を受けないわけがないからです。 先ごろリオ+20の文書に障害に関する記載が盛り込まれたとのニュースが流れました。このような成果を持続し押し広げていくためにも障害分野を専門とする我々が他分野の動向についても知る必要があるのだと思っています。 日本作業療法士協会国際部 杏林大学保健学部 河野 眞 + 2.「日本財団CANPAN NPOフォーラム 本気の情報発信!白書とブログ」 6月16日、日本財団ビル2階で開催されたセミナーに、事務局の上野悦子さんと参加いたしました。 基調講演は、「IIHOE人と組織と地球のための国際研究所」から川北秀人さんをお迎えし、企業のCSRやNPOのマネージメント、東日本大震災復興支援活動などを支援してきた経験から、市民社会の手で問題解決を図るための情報発信について、誰の代弁者か、誰をターゲットに発信するか等、自分などは発信するばかりで中々意識の向かなかった方向への動機付けを促す、説得力あるお話を伺いました。 続いてCANPAN(日本財団が提供する公益事業コミュニティサイト)から山田泰久さんが、CANPANブログ利用者に行ったアンケート結果より、ブロガーの工夫や苦労が浮き彫りになる調査結果を伺いました。 午後は、お2人に加え、実際に白書を出された団体を交えてパネルディスカッションとなりました。若年層問題に取り組んでいるNPO法人NEWVERYの山本繁さんからは、「中退白書」と名前で既に目を引く白書を出された経緯の話があり、若者への調査結果を公表する手段として「白書」を出しつつ、大学には別途ソリューションを提供している戦略性が印象的でした。他方、産後ケアに取り組むNPO法人マドレボニータから吉岡マコさんが壇上に立ち、自己紹介をラップで行って強い印象を与えると、既に3冊出ている「産後白書」の今後に就いて熱く語られました。 最後に分科会で、参加者が実際に「白書」の構想を描き、他の参加者がコメントする作業を行いました。参加者にはブログなどで情報発信に取り組んでいる方が多く、取り組んでいる問題を解決するために発信力を向上させたいという熱意に満ち溢れていました。 今回のテーマだった「白書」を出すには、労力もリソースもかなり必要になりますが、こうした発信時の意識付けを持って、通常の会報やニュースレターに活かすことは充分に検討に値すると感じました。 尚、今回の参加に際し、JANNETより補助をいただきました。末尾に、心より御礼申し上げます。 日本盲人会連合 田畑 美智子 + 3.JANIC総会に出席して JANNETは国際協力NGOセンター(JANIC)の正会員として様々な支援を受けています。昨年はJANICが行っている、アカウンタビリティ・セルフ・チェックに参加して、一定の評価と改善点の指摘を受けました。JANNETのホームページにこのセルフ・チェックを終えたことがわかるバナーが掲載されています。 6月25日に開催されたJANIC総会(早稲田奉仕園)に参加しました。主な議決は、2011年度の事業報告で、JANIC事務局の各グループ(調査・提言、広報、渉外、能力強化)からの報告と、3.11後にJANICに設置されている東日本大震災タスクフォース代表から報告等がありました。JANICは福島駅から徒歩一分のところ、ふくしまNGO協働スペースを設置して、会員や地元の関係者が会議やイベントの開催や情報収集を行う場の提供を行っているという報告もありました。 (問い合わせ先:JANIC福島事務所 電話024-573-1470、fax 024-573-1471) また2012年度の事業計画については、議決ではなく事務局から会員への報告という形で紹介されました。ことしは、JANIC設立25周年記念の年にあたり、12月7日には記念事業として公開シンポジウムが予定されています。 私たちも気になる広報については、JANICは「100万人の市民がNGO(JANICでは、国際協力活動を行う非営利組織のことをNGOと言います。)を好きになるための広報活動」というキャッチコピーのもと、国際協力をしらない層にも届くように今年も企画しています。JANICをとおして、様々な分野で国際活動を行う団体に障害分野に触れてもらえることはお互いにメリットがあると言えるでしょう。また、JANICはNGOサポート募金という寄付をJANICがまとめて受け取り、会員団体を分野別にグループ分けに振り分けるという方法で会員団体を支援しています。法人格を持たないJANNETも寄付を受け取れる大変ありがたい仕組みです。 またJANICは他セクターとの連携の一環として、企業の社会貢献とNGOとの連携ネットークの場の提供を継続しており、JANNETから毎回役員が出席して情報を共有しています。 JANNET: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ JANIC: http://www.janic.org/ + 4. 国連障害者の権利条約批准国情報 ( 関連サイト: http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html ) 1. アルジェリア  2. アルゼンチン  3. オーストラリア 4. オーストリア  5. アゼルバイジャン  6. バングラデシュ 7. ベルギー  8. ボリビア  9. ボスニア・ヘルツェゴビナ 10. ブラジル  11. ブルキナファソ  12. カナダ 13. チリ  14. 中国  15. クック諸島 16. コスタリカ  17. クロアチア  18. キューバ 19. チェコ共和国  20. デンマーク  21. ドミニカ 22. エクアドル  23. エジプト  24. エルサルバドル 25. フランス  26. ガボン  27. ドイツ 28. グアテマラ  29. ギニア  30. ハイチ 31. ホンジュラス  32. ハンガリー  33. インド 34. イラン  35. イタリア  36. ジャマイカ 37. ヨルダン  38. ケニア  39. ラオス 40. ラトビア  41. レソト  42. マラウイ 43. モルディブ  44. マリ  45. モーリシャス 46. メキシコ  47. モンゴル  48. モンテネグロ 49. モロッコ  50. ナミビア  51. ネパール 52. ニュージーランド  53. ニカラグア  54. ニジェール 55. オマーン  56. パナマ  57. パラグアイ 58. ペルー  59. フィリピン  60. ポルトガル 61. カタール  62. 大韓民国 63. ルワンダ 64. サンマリノ  65. サウジアラビア  66. セルビア 67. セイシェル  68. スロバキア   69. スロベニア 70. 南アフリカ  71. スペイン 72. スーダン 73. スウェーデン  74. シリア 75. タイ 76. チュニジア  77. トルクメニスタン  78. トルコ 79. ウガンダ  80. ウクライナ 81. イギリス 82. タンザニア連合共和国  83. ウルグアイ  84. バヌアツ 85. イエメン  86. ザンビア  87. アラブ首長国連邦  88 エチオピア  89. マレーシア  90. リトアニア 91. アルメニア  92. ナイジェリア  93. モルドバ共和国 94. シエラレオネ  95. セネガル  96. セントビンセント及びグレナディーン諸島 97. 欧州連合 EU 98. ルーマニア  99. トーゴ 100. コロンビア  101. ベリーズ   102. キプロス 103. パキスタン  104. バーレーン  105. ルクセンブルク 106. カーボヴェルデ  107. インドネシア  108. ミャンマー 109. マケドニア  110. モザンビーク  111. ブルガリア 112. モーリタニア  113. エストニア  114. ギリシャ 115. ジブチ (2012年6月28日現在) 国連批准国リスト(英語): http://www.un.org/disabilities/countries.asp?navid=12&pid=166 ++ 編集後記  ロンドンオリンピック開始まであと1か月を切りました。楽しみにしている人も多いと思います。スポーツに関していえば、昨年8月に施行されたスポーツ基本法等に関する地方公共団体等宛ての文部科学副大臣通知(平成23年8月11日付)で、「法第2条第5項において,基本理念として,スポーツの推進の観点から障害者に必要な配慮を行うこととされていることを踏まえ,各地方公共団体及び関係機関におかれては,障害者と健常者が共にスポーツに親しむことのできる環境等の整備に努めること」と、障害のある人への配慮について書かれていたことを思い出します。皆さんの周りでは、スポーツに親しみやすい環境はできつつありますか? 梅雨明けが始まり、身体が暑さに慣れていないうちに猛暑がやってくるこの時期が一番熱中症になりやすいそうです。スポーツをするときもそうでないときも、この時期は特に、水分補給など気をつけて充分な対策を取って暑い夏を乗り切りましょう。 公益社団法人 日本理学療法士協会 古西 勇 ++ JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 + JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/