JANNET 障害分野NGO連絡会

ここから本文

車いす寄贈に関する意見交換会

社団法人大阪脊髄損傷者協会会長
辻 一

6月22日(月)、戸山サンライズで開催されたJANNET主催「車いす寄贈に関する意見交換会」に出席しました。当日、車いす使用当事者の参加者は私だけでした。

私はJIMTEF(財団法人国際医療技術交流財団)のJICA医療技術スタッフ練成コースの講師を務め、毎年4〜5名の各国の中堅のリハビリテーション専門職と各国での車いす使用者への支援について、わが国の戦後の歴史的経験や現状から実際的、実務的情報提供やアドバイスを行っています。

そこでは常に各国の地域・地方によっても大きく異なる国内状況の中でどうすればよいかとの意見交換になります。そのおおよそをお伝えしたいと存じます。

現状、発展途上国にとって車いすは非常に高価で手に入りにくいものですが、欧米の支援団体なども活発に提供しているので、最近はある程度台数は手当てできるようになっているとのことです。しかも一部の欧米の支援団体は強度を増した特製の車いすを作って贈っています。わが国からの支援については感謝していることと、期待していることが常に伝えられています。

さて、車いすの利用の状況については、各国の都市部では旧宗主国の欧風の都市づくりが残っているのでアクセスが相当可能ですが、その範囲を越えると林や森はもちろん平原でも平地が少ないことなどで車いすの利用は困難とのことです。また、日本製については、フレームやタイヤの強度の問題と共に、各国には日本のJIS規格の部材がないので補修に問題があってあまり活用されていません。また、単なる移動の手段であれば従前のそれぞれが工夫した方法でできているとのことです。

では、車いすに対して何を期待しているかというと、行動範囲の拡大、姿勢の安楽さ(但しサイズやシーティングがきちんと合っていること)、そして何より就業につながることです。そしてこれらの目的によって車いすは異なります。

先進国の車いすの歴史的発展を見ても補装具としての面と、利用目的のための両面があります。利用目的には、スポーツ、レクリエーションと共に、生活や就学、就労のためのものがあります。

わが国では医療的判定による公費助成で車いすを作成するので、電動車いすはごく一部の手にマヒのある方に限定されています。また、手動式車いすのみで大きく移動することも考えられていません。

例えば、大阪は比較的平地が多いので私も普段自動車を運転しているものの、公共交通機関と手動式車いすの利用でほとんど疲れません。しかし、東京は原宿と渋谷間、戸山サンライズ前の坂道など坂が多く、地形を知っていれば下り方向を使って苦になりませんが上りになると手動式車いすでは相当困難です。

反対に、欧米では活動性の高い腰髄損傷者やポリオなどの松葉杖使用者が仕事に専念するために電動車いすを使用してきびきびと移動しているケースがたくさんあります。中国でも最近になって余裕のある障害者は手漕ぎ三輪自転車や三輪オートを使っています。

欧米では第一次世界大戦後から郊外などの都市環境が整わないエリアで芝刈り機のエンジンを使った車いすが活用されていました。エンジン式や電動式のゴルフカートを小さくしたものを想像していただければと思います。

私たちがCBRとして発展途上国の車いす使用者に対して支援する最も大切な視点は、地域で生活できるようにすることではないかと思います。もちろん、家屋内で働けるようにミシンなどを使ったり、編み物をしたりなどの手工芸的な支援も役立ちますが、家屋外で働くとなると移動の手段が必要で、ここでタフで活動的な車いすが必要になります。

車いす使用当事者として、車いすがあるだけではあまり喜べないとの意見があることを知っていただきたいと存じます。 なお、私案ですが、台数が少なくなっても、発展途上国で普及しているホンダのスーパーカブの中古品や放置自転車、リヤカー的なものを組み合わせてエンジン付車いすを創り出すような取り組みが必要かと思います。

(2009年7月24日発行 メールマガジン72号掲載)

> 車いす寄贈に関する意見交換会ページへ